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 日本政府というものを、司たちは少し舐めていた。


 魔族の出現から一時間もしないうちに一般人がいなくなり、日が沈むころに渋谷駅に潜んでいた所を自衛隊に取り囲まれ、捕まってしまった。


 かなり厳重に運ばれ、警察署に入っていく。

 ただ、周囲を固めているのは迷彩服で銃を持つ人たちだけのようだ。


 バラバラにされ、司は狭い一室へと連れてこられた。

 窓には鉄格子、テーブルが置かれている部屋。

 どう見ても兵士二人と、中央にスーツを着た腰の低そうな30代ほどの男性が入ってきた。


「初めまして、東大智と言います」


 彼は穏やかに自己紹介をした。

 司は、正直嫌な感じだった。

 こういうタイプをよく知っている。


「このような手荒な真似をして申し訳ありません。しかし状況が状況だけに、急ぎ情報が欲しかったのです」

「もちろん協力させてください、東さん。僕にできる事なら何でもお教えします」


 彼は安堵したように微笑んだ。

 ゆっくり間を開け、尋ねた。


「知っていることを、お教えくださいませんか?」

「ええ、もちろん」


 司は、確かに聞きましたよと、頷いた。


「では、今渋谷はどうなっていますか?」

 質問を質問で返した。


「・・・地面が割れ、何やら巨大な生き物が這い出ています。あれはいったい何なのでしょう?」


「そうですね、それから?」


「ええ、大変ですよ」


「・・・」


 ああ、やはり、この人はプロだ。

 こちらの情報は一切出さず、あちらの情報だけを引き出す。


「私は司くん、君を救いたいんです。信じてください、私はあなたの味方です。しかし現在とても難しい状況に陥っています。司くん、君の身に危険が及ぶかもしれない」


 どのような小さな情報も、もしかすると危険な情報に成り得るかしれない。

 故に、聞くだけ聞き、彼らは何も教えてはくれないだろう。


「もちろん理解しているつもりです。どんなことでも聞いてください」


「そうですね、君たちに話しかけてきた少年は誰なんですか?」

「ええ、そうですね。僕たちはいつ頃、開放してもらえますか?」

「もちろん、できるだけ早く元の生活に戻れるように尽力するつもりだよ。私は君の味方だ、それを信じてほしい」

「もちろん、僕は東さんを信じていますよ。それで、黒い巨人は暴れていますか?」


 こんなもの、苦笑しあうしかない。


 情報を与えるだけ与えたら、司は用済みだ。

 下手な動きをされて問題をこじらせてしまっては困る。

 情報は与えないまま、監禁し続ける。


 そうなってはたまらない。


 こちらも何が何でも情報を出すわけにはいかない。

 仲間たちがベラベラと喋っている可能性はあるが、情報を聞き出す側からすると少しでも多く情報が聞きだしたいだろう。


 あちらも情報が出せない。

 こちらも情報が出せない。

 どこまで行っても平行線という訳だ。


「それでは、彼女は誰なんでしょうかね」


 しばらく埒が明かない問答を繰り返し、東は司を動揺させ情報を引き出す方向性に変えてきている。

 さすが、だからこういうタイプは嫌いなのだ。


 彼女という言葉に興味を引かれたが、心を強く持つように思いながら差し出された写真に目を向けた。


 テーブルを叩き、思わず立ち上がってしまう。


「ゆ、ユリナ」


 それは魔族をイメージした黒いドレスを着た若いユリナが、魔族に囲まれ映っていた。




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