088 エピローグ・例の少年たちのそれから。
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人族と魔族が双方の意思を確認してから2週間後、全ソルジャー管理所、そして世界各国に各国のトップから1つの知らせが届いた。
魔族との協定の存在を明かし、そして人族と魔族の争いを禁止する人権・魔権保護の決まりを制定したのだ。
今ではソルジャーに警察の役割も与えられ、軍とも連携をして人族、魔族双方を取り締まる立場になった。
ニーナとエインズは今もコンビを組んでいる。時々ジタも合流し、以前のように間の抜けた和気藹々とした旅を続けている。
「じゃあエインズ。長期休暇が終わったら、次は海を渡りましょ。私たちせっかく魔王公認の悪者退治屋なんだもの。稼がないと税金払えないからね」
「うん。また3週間後の金曜日に管理所の前で! チャッキー、このダイナ市からエメンダ村まで走ったら疲れるかな」
「おそらくはそうだと思われます。走って帰られますか?」
「うん、帰った時、あー疲れたって言うんだ!」
「以前ならば夢だった言葉ですね。しかし、エインズ様は最近疲れる事を率先してなさるので、持久力が付いている気がいたしますが」
「えっ……」
人族の間に混乱を招いたが、それも半年ほどの間。
数年も経てば、僅かずつだが人の住む町や村にも魔族が定住を始めた。
5年後、本格的にジュナイダ特別自治区が巨大な恐怖のテーマパークとしてオープン。人族の自由な訪問を歓迎し始めると、恐怖に飢えた人族が国境の砦に押し寄せた。
以降、宿泊型の超人気恐怖スポットは、老若男女を問わず大人気な観光地として、いつ訪れても砦前で最低5時間待ちの、長蛇の列を成しているという。
土産物一番人気はバターサンド。
何を使っているか分からない不気味な中身と、毒々しい色合いが気味の悪い逸品だ。
箱や包装紙には魔獣を抱いた少年の絵。「友好を築いた奇跡の味」という、何味かはさっぱり伝わらないが、都合の良い売り文句が添えられている。
「チャッキー、おいで」
「はいエインズ様。おや、そんな立派な紙袋をどちらで?」
そんな平和の象徴は1人と1匹、きっと今日もどこかで元気よく呪われているに違いない。
【CHUCKY】―弱くなりたい最強少年と、忠実で役に立たない猫型精霊の話―
Fin.




