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古口宗の意味怖モドキ

サクラ咲いたら...

作者: 古口 宗

解釈が作者の解釈と違っても、それは間違いではありません。むしろ知りたいので良ければ教えて頂きたいです。次回作の元になるかも?

 朝、顔に明るい朝日が差し込み、眩しさに目を細める。顔をしかめた少女は12才となったばかり。まだ早起きは苦手なのだ。

 それでもどうにか起き出して家を出ると、小学校に入って以来、ずっと仲良しの大親友が待っていた。あっという間に目が冴え渡る。


「恵衣ちゃん!おはよう!」

「うん、おはよう。」


 少女が声をかけると、彼女も挨拶を返してくれる。爽やかな風が少女の髪を揺らして通り抜けて行く。


「メイちゃん、今日から五月だね。お誕生日おめでとう。」

「えへへ、ありがとー!今日も一緒に行こうね?」

「うん、メイちゃん道間違えちゃうからね。」

「だから恵衣ちゃんがいるじゃない!」


 メイと呼ばれた少女は、手を引いて学校への道を駆けていく。先程、道を間違えると言われたばかりなのは既に頭から抜け落ちているのだろう。跳ねるように走り、体いっぱいで喜びを表す姿は子供らしく、すぐに疲れて歩き出すのも子供らしい。


「も~。メイちゃん、迷子になっちゃうよ。方向感覚が無いって皆に言われてたじゃない。」

「そこまではひどくないもん!」

「学校の教室の場所覚えるのに、毎年半年間はかかってるじゃん。そういうのを『ジコベンゴ』って言うんだよ。先生が言ってた。」

「恵衣ちゃん、難しい事言わないでよ~。私はそんなの聞いたこと無いもん。」

「メイちゃん寝てたもんね。可愛かったよ。」

「あー、誤魔化したー!」


 拗ねたように声を上げる少女だったが、その顔には嬉しそうに崩れた笑みが浮かんでいた。全てが事実であるため、反論も出来ないがそんな悔しさはたいしてない。


「着いたよ。」

「あれ?門が閉まってる。」

「どうする?今日はもう止める?」


 そう問われた少女は泣きそうな顔で頭を横に振った。


「ダメ!」

「でも、門が閉まってるよ?」

「それなら裏から入ればいいんだよ。ボロっちいから塀が崩れてるもん。」

「そっか、そこから入れるかもね。流石メイちゃんだね、この辺りの事いっぱい知ってる。」

「一緒に冒険したもんね!私だけだと帰れなくて泣いちゃったりしてさ。」

「懐かしいね~。一年生の頃だっけ?それからメイちゃんが私も連れていってくれるようになって。」

「そうだよ。恵衣ちゃん、頭いいけど大人しかったもんね。いっぱい綺麗な物探したよね。」

「夕焼け綺麗だったね~。」


 学校の裏につき、どちらともなく会話が止まる。壊れた塀は小さな穴が開いていて、小柄な子供ならば一人で十分通れる。

 こういう時は順番が決まっている。目を合わせてうなずき、先にメイと呼ばれた少女が塀を潜る。


「さっ、次は恵衣ちゃんだよ。急がないと遅刻しちゃうよ。」

「うぅ~。通れるかなー。メイちゃん、手握ってて?」

「もー、恵衣ちゃんは世話がやけるなー。」


 頼られて少し得意げな顔の少女が、塀の穴から引っ張りだす。


「プハっ!通れた?」

「うん、ありがとうメイちゃん。」

「当然だよ、私の方がお姉さんだし!」

「あと一月位だけね。」

「ナンだとー!それでも私の方がお姉さんだし!」

「それよりも急がないと。遅刻しちゃうよ?」

「あっ!そうだった!」


 慌てて駆け出した少女は、真っ直ぐに六年生と書かれた札の下がる教室に入る。


「セーフセーフ!」

「良かったね、メイちゃん。」


 ガランとした教室に少女の声が響く。その事にようやく気づいた少女がコテンと首を傾げた。


「あり?誰もいない。」

「メイちゃん...。これって...。」

「...そっか!皆遅刻したんだ!」

「えぇ~?それは無いんじゃないかな?」


 静かな教室は朝日が差し込むとはいえ、物悲しさと不気味さを覚える。


「ね、ねぇ、恵衣ちゃん。もしかして今日は学校お休みなのかも知れないよ?か、帰ろっか。」

「う、うん。そうだね。だから門もしまってたのかも。」


 少女はそっと廊下に踏み出した。






「誰だ!そこにいるのは!」

「ひゃあ!」


 小さな女の子が驚いた声を上げて、学校から飛び出して行った。僕は深いため息を落とした。なんで子供って言うのは冒険ばかりするんだ?休校中の保全を任された俺が始末書を書かないといけないじゃないか!冒険するやつは事務員の敵だな!


「第一、こんなところに子供だけで来るなよ...。休校になったのだって、あの悪名高き冒険大好きなお転婆娘、立花 五月(たちばな さつき)がいなくなったからで...ん?」


 侵入者の跡を隠蔽して回っていると、六年の教室に人形が落ちている。勘弁してくれよ、返さなきゃいけないの俺じゃないか。隠蔽が無駄に終わってしまったよ。


「しかし、人形なんて持って()()で何しに来たんだか。最近の子供は分からんなぁ。」


 桜の散り始めた校庭を振り返り、俺は人形をそっと鞄にしまった。

解説はこの先










解説(ネタバレ注意)


主人公の少女はいなくなった友達の人形と一緒に学校生活を続けています。友達が自分から動かないのは動けないから。

メイちゃんは絶望的な方向音痴です。なんで学校や教室にすんなり着いたのでしょうか。それに少女は恵衣ちゃんしか知らないような難しい言葉も知っていますね。

それは少女がメイちゃん(立花五月)ではなく、恵衣ちゃんだったからです。恵衣ちゃんがメイちゃんとして、恵衣ちゃんの人形を連れて歩いていたのですね。それだけ恵衣ちゃんにはメイちゃんに引っ張って貰えるのが当たり前な日常だったんでしょうね。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒネリが利いて面白いと思いました。他の作品もだんだんと読ませて頂きますね?
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