未熟な翼
「あれは仕方ないことだったんだよ。気にしなくていいよ。」彼女はそっと言い聞かせるように私に言った。妙に冷静な声と生温い彼女の目が怖かった。すぐにでもこの場を駆け出したいのに私は俯いたまま動けずにいた。
呆れられたのか、彼女は理由をつけてこの場を離れた。私は一人になった。次第に辺りが騒がしくなった。もう色んな人に知れてる。自分がしたことがよく分かった。とうとう逃げ出そうとする私の腕を誰かが引き止めた。
「大変だ!」響き渡る大きな声。「助けてくれ!」全身痣だらけの男が私の腕を掴んだ。周りの視線が私に刺さる。さっきの情景が脳裏をよぎったが、どうやら緊急事態のようだ。今こそ「力」を使う時。私の体は動いた。
『クレバス内にて生存者発見!』
ああ…僕は生きている。朧げに映る手のひら、白銀の羽がくっついていた。
「結局1人しか救えなかった…。」
「君はよくやったよ。」
私達雪山の天使は、空から救出作業を見守っていた。