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Catch up with...  作者: deep
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契約の狐


「連れ戻したか」


式神を連れて帰るとばっちゃんはさも当然と言わんばかりに言った。

式神澄ました顔で瞳を閉じ、何をするでもなく静かに鎮座している。

しかしながらその姿を凝視するシンゲンはいつもとは少し違っていた。

しばらく沈黙が続いていたが、シンゲンの視線に居心地を悪くしたのか式神が言い放った。


「そう敵意を向けてくれるな。暴れ出そうとする気などない」

「かような配慮は持っていない」

「ならばただの畏れか?」

「貴様」

「止めい。お前も何を熱くなっておるのだ情けない」

「しかし」

「シンゲン、お前少し席を外しておれ。必要なら呼び寄せるでな」

「本気で言ってるのか?」

「戯れ言を信じるお前ではあるまい?」


不承ながらも仕方なしと言わんばかりにシンゲンが姿を消した。


「失礼を致しましたな。何分かような気性でありますれば」

「構わん。忠義は酷視するものではない」


ば、

ばっちゃんが敬語使いやがったっ。

人に頭下げるのを何より嫌がるばっちゃんが式神に敬語をっ。

こいつは大事になるやもしれんと今更ながらに感じとった。


「ソレはお目当てのもので?」

「あぁ」

「しかしかような愚物に許すとはまたどういう風の吹き回しで」

「愚物とて観るものによれば姿を変えるものであろう?」

「どのように見えていらっしゃるのか」

「俺にしかわからぬ。詮索は野暮というもの」

「なるほど確かに」

「にしても翔孔が全く開いておらぬではないか。何故だ」

「お見通しのままと言いまか」

「力そのものは問題ではない。結局はそれを使うこやつの問題」

「恐れながら、悪用は無いでしょうが持て余すことは充分考えられましたので」

「フンッ。阿呆かと思うほどの慎重ぶりは半世紀経とうとも変わらぬのか」

「それに身を助けられますれば、な」

「まぁ良い」


そこで会話を打ち切り、ばっちゃんは俺に向き直った。


「それで契約はまだ済ませておらぬのか」

「会ったばかりの得体の知れない式神といきなり契約なんて結べるか」

「まぁ、の」

「先んじて行うこともあるまい。まずは互いの波長も知らねばならぬのは違いではない」

「扱いに困りますぞ?これには」

「知っておる」

「ってかさっきから聞いてりゃばっちゃんは古い知り合いみてぇじゃんっ」

「よ〜く知っておる」

「それじゃ浮管から押し付けられたとか話が会わねぇだろ」

「いきなり話したところでお前の納得も得られまいと思ってな」


さっきから二人とも含みを持たせた言葉ばかり投げかけてくる。

一体何だってんだよ。


「契約どうこうはこの際置いておこう。お前にその気があるかないか、それはどうじゃ」

「式神と契約したいとは常々思ってた。それは嘘じゃない」

「いきなり契約にこじつけるのには不満が残ると、そうじゃな?」

「あぁ」

「ならば、取る道は一つだと思うが?」











「ってなわけでこれから居候になる式神だ」

「可愛い式神さんね」

「その形容は好みではないな」

「いいじゃありませんか。ねぇエル」

「えぇとっても」


エルはニコニコ顔のまま近づくとそっと頭を撫でた。

エルは俺より頭一つ分背が高い。その為こいつと並ぶとさながら親子に見える。


「っ、気安く俺に触るなっ。それとなるたけお前は俺に近づかないようにしろっ」

「女の子はオレ、なんて言っちゃダメなんですよ?」


シンゲンのことがあった手前ひょっとするとエルとも相性が悪いのかと思っていたのだが、杞憂に終わった。


「なぁ、母さんもあの式神のこと知ってたのか?」

「まぁね」

「なんでそれ俺に黙ってたんだよ」

「その疑問には既にお婆様が答えてくれたんじゃないの?」

「理解できなかったから聞いてんだよ」

「答えを急がないことね。これから一緒にいる時間を通して知っていくしかないんだから」

「・・・」






「大丈夫よ。どうせ逃げられやしないわ」





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