式神とは
俗に言う式神とはこの世を構成する有り難い神のことだ。
キリストやマリア様とはその最たるもので、式神界と称するそこにも縦社会がある。
例えば我が母が契約しているエルは精霊と呼ばれるものでそこそこランクが高い。
もちろん上に位置する式神ほど魔力が高く、成し得る範囲も非常に広く有用性がある。
反面、
どういうわけか人間に懐きにくいという厄介な特性がある。
エルは森の精霊であったが、あれは例外だとしかいいようがない。
いつもポワポワしていて疑うことを知らないような純粋な式神だ。
契約があの人でよかったなぁと時折思うことがある。
そして、俺達式神使いとは俗に言う何でも屋ってやつだな。
同業者はみな多目的処理とか言ってるけど言い方を複雑にしたところで業種が変わるわけじゃない。
式神使いには試験がもうけられており、それをパスしないことには資格はおりない。
悪用する連中は省かれるようになってるらしい。多分最後に手を翳した光の球のことだと思う。
まぁでも資格を持ってないからって式神を従えないってわけでもない。
ただ資格も無しに式神を従えているところを政府機関にバレると式神を無条件に消滅させられてしまう。
式神と契約を結べば資格と同じくして政府へ届け、名簿記入が必要だ。
管理されるのはカチンとくるが、世界の安寧を持ち出されてはこちらも強く出れない。
「しっかし今更だよなぁ」
資格は持っていながらも契約する式神がいなかった俺の元に届いた実家からの吉報。
母さんの母さん、ばっちゃんはかなり有名な式神使いで名が知れわたっている。
そんなばっちゃんから呼び出しをくらうのはこれが初めてってわけじゃないけど、
何やら切羽詰まっているらしい、とのこと。
なにやら不穏な空気が漂っているが、無視するわけにもいかない。
『次は奥森〜、奥森〜、左側のドアが開きます。忘れ物のないようお気をつけくだ〜さい』
駅名の通り深い森しか視界に入らないこの閉鎖っぷり。
歳を取るごとに魔力がたぎるあのばっちゃんはこの森に囲まれた屋敷にいる。
「式神、か」
はてさて何が待っているのやら。