一通の手紙
お楽しみ下さい。
「はぇ?」
我ながら情けない声だとは思う。
しかしそれもしょうがないと思わせるほどにその申し出は唐突だった。
「信じがたい話ではあるけど事実なのよ」
我が母親ながら若さを保つその女性は腕組みをしながら答えた。
「今更そんなこと言われても、どうすんだよ」
何とか我に返って言葉を紡ぐとため息混じりに言葉を返してきた。
「せっかくなんだし利用すればいいんじゃないの?」
「利用たってまだどんな式神か分かんねぇんだぜ?」
「これ逃したらもう先はないと思うけどねぇ」
「もっとマシな答えを寄越せっ」
やってられるかとでも言いたげなどうでもいい態度をとって更に続けてくる。
「まぁあんたの霊力じゃそんなに大きなものは従えられないわけだし」
「だから何だよ」
「最悪契約を結んだ後でも私で処理できるじゃない」
「エルにやらせるってのか?」
「式神の元来の意義は戦いの中にあるもんでしょ?」
「あのエルが望んでるとは考えられねぇけど」
「生まれる更に前からその魂に刻まれた衝動は消えるわけはない」
「例に漏れないってか?」
「まぁ全部仮の話じゃない。そう深刻になんなくてもいいって」
「軽いなぁ。相変わらず」
「ポジティブと言いなさい」
無駄だ。
これ以上我が母親と張り合ったところで結果は見えている。
丁度買い物に出ているエルがいれば少しは違った展開を望めたのかもしれないが。
ないものはないしいないものはいない。
せっかく式神を用意してくれたんだ。これに乗らない手はない。
時期がおかしいとかなんで俺に声がかかったとかそんなことは不問にしておこう。
「切符は予約しておいてあげるから明日にでも行ってきなさい」
「はなっから行かす気だったろ」
「はっは」
っとにこの親は。