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股間認証システム in 少女の男性器

 先程いた二階にも目ぼしいものはなく、一通り探索が終わった後階段を下り、ついに一階へと足を踏み入れる俺とジェーン。降りて早々だが、他の階との変化に気付く。

「窓が無いな……」

 先程いた階の、窓から見える景色から推測するにここはおそらく一階で間違いないだろう。ここに入れた者を外に出したくないという思惑を感じてならないな。照明がついているわけでもないのもあり、このフロアはとても閉鎖的な雰囲気を醸し出していた。

「それに、見たところ出入口のような物もないみたいね」

 二階以上のフロアとは階の構造が違うので、エントランスのようにはなっているが、ジェーンの言うとおり、出入りできそうな所は見当たらない。

「そして、あれは……」

 指を指すまでもなく、ジェーンも同じ場所に目を向けていることだろう。一切光が射さないフロアに一点、不気味に光る緑色の灯りが見える。

「自動ドアかしらね。あのランプはカードキーを挿す装置か何かかしら」

 ジェーンはもうそこまで見えているらしい。

 若い体な分、目が慣れるのが早いのだろうか。

「それに気付いた? あのドアのある方角」

 意味ありげな事を話しだすジェーン。

 まだあまり目も慣れておらず、フロア内の様子が分からないのでそれに対し俺は、

「何か思うところでも?」

「二階以上の階で、窓が無かった方角があったじゃない? それと同じ方角にあれがあるのよ」

「えっ? そうだっけ?」

 二階以上の窓のない方角……思い返してみれば確かに一つあった。一応ビルの形は四角形だとして、どこが北なのかは分からないが、ある方向にだけは確かに窓が無かった。

「よく気付いたなそんなの」

「ふふん」

 得意げな顔となるジェーン。中身が中身であれば可愛らしいが、この場合はそんな感情もわき起こらない。

「つまりはだ。あれが出口だったとしても、あのドアの向こうには何があるか分からないってことだな?」

「そうね」

 出られそうな出口が見つからないという問題点もだが、謎が一つ増えてしまった。

「無理やりこじ開けようにも、ランプがついているってことは警報とかが鳴ってもおかしくないわけだろう。あのドアには不用意に触れそうにはないな……」

「そうね……どこにも何も落ちてない中、都合よくカードキーが見つかるとも思えないし、他にプランがあるとすれば……」

 別の案はと、考えをめぐらせる俺とジェーン。

 とりあえず思いついた案を俺は口に出してみる。

「窓から脱出するか? 服を結んで繋げてロープ代わりにするとかすれば……」

「二人分、しかも一人は子供ので長さ足りるの? しかも建物内に結び付ける関係上回収できなくなるじゃない。下着姿で外歩くの? この寒い中……」

 ……やはり問題点はあるな。

 そもそもロープを結び付けられそうな物さえもないからな、この建物……。

 さあどうしたものかと重い雰囲気となるが、その空気を壊すには十分な出来事が訪れる。

「「……!」」

 静寂を割る音には嫌でも耳が傾く。それほど大きな音ではなかったが、この場合聞き流そうという気にはならない。

「今何か……」

 ジェーンも上層階でした物音には気づいたらしい。

 何の音かははっきりとは聞こえていないのでわからないが、音がしたということは何かがあるということだろう。

「……そういえば、俺達が目覚めた階より上の階があったな」

 思い出すに、数えてあのフロアは五階だったが、上りの階段はあった。何階まであるのかもわからないし、とりあえずビルを出ようとしていたのでそちらの探索はしていなかったのだが、今の物音はそちらからしたのだろうか?

「出所はそこからかもね。行きましょう」

 そうして他に行くあてもないので、ジェーンと共に階段を上がる運びとなった。

 

 階段を上り続けている中、四階付近で再び何かの物音が上層階から聞こえてきた。

 物音というよりは音声だ。黄色い声とでも言うのだろうか、「キャー」とか「嫌ー」とかそんな類の音声だ。だがしかし……。

「このキモい悲鳴はもしかして……」

「いやキモいとか言うなよ」

 声色は女性のものではなく男性のそれだ。

 そして俺はこの声には聞き覚えがある。予想が当たってくれればいいが……。

 

 そうしていざ六階へと足を踏み入れた我々二人だが、この体は運動不足なのか、小走りで階段を上がり続けた結果少々息があがり始めていた。一方で少女ボディーのジェーンはそうでもないらしい。ああ、恨めしい。

「誰かいるの?」

 フロア全体へ向けて呼びかけるジェーン。

 これ以上上のフロアは無いので入れ違いになったのでなければここに誰かいると思うのだが、返答はない。

「隠れてないで出てきなさい。私達は味方よ」

「おいそれ……」

 完全に悪役の台詞じゃねぇかとジェーンを窘める。

「仮にここにいるのが俺の体をした少女だとして、怖がらせるとまずい。あんたはここで待っていてくれ」

「そうね。退路を塞いでおきましょう」

「悪役っぽい言い回しはやめろ。狙ってやってんのか……」

 そして俺は階段に近い部屋から順々に部屋を調べ始める。

 

 敵意が無い証明として、ノックと呼びかけをしつつ順々に扉を開けて回ったわけだが、最奥の一部屋を残し、誰かが見つかるという訳でもなかった。なので誰かがいるとしたらおそらくはこの部屋だが、いなかったらいないで気味が悪いな。幽霊の類とかやめてくれよ、いやほんとに。

「開けるよー?」

 おそらくいるであろう中の人物に対して呼びかけをし、ドアノブをひねる。

 ゆっくりとドアを開けると、部屋の片隅で怯えたように縮こまる男性が目に留まった。

「ひっ……嫌……」

 見た目や声とミスマッチな台詞が男性の口から洩れる。“男性”と呼称するのも、目に映った人物の容姿が記憶にある俺自身の本来の姿とは少々異なっていたからだ。

 なんだか妙に短髪になっているな。俺はあんな髪型じゃなかったはずだが……。

 本当にこれは俺か? と疑問が生じる。先程聞こえた声を判断材料としようにも、他人に聞こえてる自分の声と、自分に聞こえてる自分の声って違うからなぁ……。

 真相はどうなのかと考えていると、突然部屋の中にいる男性が動き出し、

「――うおッッ!?」

 扉の前に立つ俺を突きとばし、階段方面へと走って行った。

「まずい……ッ!」

 男性との体格差に耐え切れず、尻もちをついた俺は階段を上り続けた疲労もあり、とっさに立ち上がれそうもないので逃げる男性を呼び止めるべく口を開く。

「待ってくれお嬢ちゃん!」

 自分は状況を知る者だと伝えるべく、まだ憶測の域を出ないがおそらく中の人格であろう少女へとそう語りかけると、

「どうしてそれを……」

 男性ボディーの少女は、俺から数歩離れているあたりで一旦足を止め、俺の方へと視線を移した。

 先程とは違って立ち上がっているので服装もざっと目に入る。着ている服は珍しくもない物だ、誰もが持っていておかしくないような上下なのでこれが本当に俺なのかという判断はまだできないが、特別目に留まったのは腰あたりにあるカードだった。

 社員証のような感じで腰にクリップで挟まれている。まさかあのカードが――。

「で、でもだからって……!」

 あれがまさか一階のカードキーとかじゃないよな、と希望的観測をしていると、男性ボディーの少女は踵を返し、再び階段方面へと走って行った。

「くっ……」

 こんな状況だ、少女なら軽くパニックになっていてもおかしくないだろう。少女かどうかを差し引いても、この場合あれだけですんなりと俺を味方と認識できないのは当然かもしれない。

 階段方面へと逃げる男性ボディーの少女を小走りで追いかける俺は、追いついて体を掴めたとしても振り払われるだろうと考え、せめてあのカードだけでもと逃げる男性の後姿の腰付近に狙いを定める。運動不足のメンヘラボディーで階段を連続で駆けあがり、男性に突き飛ばされた後の小走りはなかなか脚に堪えるが、踊り場で待ち構えているジェーンにカードの奪取を頼むのも体のスペック的に無謀だ。ここは頑張り所だと俺は疲労を訴える脚に無理をきかせる。

 そして場所は移り変わり、踊り場へと男性ボディーの少女が到着する頃合いとなると、

「えっ……!?」

 踊り場で待ち構えるジェーンを目にした男性ボディーの少女は突如足を止めた。

 おそらくジェーンの体が自分のものだと認識したからだろう。だがこれでもまだ再び逃げ出さないとは限らない。男性ボディーの少女が、少女ボディーのジェーンを押しのけて階段を下る前提でものを考えていたため、俺は走る速度をそれほど緩めなかった。

 が、その時である。

 一旦後方確認をということなのか、突如男性ボディーの少女が振り返って俺の方へと体の向きを変えてきた。

 俺にとっては腰にあるカードをむしり取るチャンスだ。当然、腰にあるカードへと手が伸びる俺だが、無理がたたったのか突然脚が動かなくなって体勢を崩し……。

 

 もにゅっ。

 

 俺の手にはカードとは別の何か柔らかめの感触が伝わってくる。

 そして一拍置いた後……。

 

「ああああああぁぁぁん!!」

 

 悲痛な叫びがフロア全体、いや、ビル全体にこだました。

 そしてこのタイミングでひとつ、俺にある確証が芽生える。

 この男性ボディーは俺だ。

男性が自分の男性器を触ることなどまったく特別なことではありません。用を足す際などは自然とそうなることでしょう。なのでセーフです。少女が悲鳴をあげていますがおそらくセーフです。

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