#41 追われる者と追う者
元は何らかの倉庫として使われていたのだろうか、今は使用されていないのか放棄されたのか、伽藍洞であり端に僅かにある木箱が名残惜しそうに散らかっている。
その床に男が数人倒れていたが、内一人が起き上がってきた。
辺りを見渡し状況を確認する。今回は暗殺任務ではなく、対象の情報集および接触後、何らかがあった場合の後始末役といつもの仕事であった。
この場所とて街の外に建てられ廃棄された仕事場の一つであり、表立って管理や登録はされているものの誰も入ってこられない様、周囲には注意喚起はされている。
少々騒いだところで誰も気づきはしない上、通報される可能性も低い。そして武力制圧後の処理にも街の外だけに容易いという利点もあった。
それらの処理はすぐにされるため、今の様に仲間のであったとしてもそのままという事はない。
対象がいなく仲間が倒れている現状がそのまま残されているという事はもはや不測の事態は明白であり、ここは破棄されたのだろう。
対象は生き残っており、この場所を憲兵に知らされるとなっては身動きが取れなくなる。捕まろうものなら極刑は免れないのであれば逃げるしかない。
せめて仲間の遺体だけでも始末したいところではあるが、その時間があるか分からない今は手を出すべきではないだろう。
一人で五人の処理だけでなく、この場所の惨状の後を消すとなると時間はどれほどいるか考えるまでもなく、一時放棄後に落ち着いた時に処理するしかない。
もしくはこのまま街から逃げることもあり得るが、任務放棄とみなされ見つかり次第始末される。腹立たしいが今は街へと戻り潜伏するしかない。
今後のどうなるかは末端には通達されるだけではあるが、予測ぐらいはしておかなければ組織から捨て駒にされるだろう。
誰も居ないことを確認したのち隠し通路を通って街中へ、街の住民に溶け込む様、いつもの生活を繰り返すべく、痛む身体に無理を言わせ扉より外を伺う。
怪我の言い訳などいくらでも出来る。まずは周囲に怪しまれない様いつもの生活をし、夜になれば報告しに行けばよい。
それまでに連絡があれば従うだけだ。
街の外と内を隔てる壁。門はあれども街を守る為多くの兵が交代で詰めかけ番をしている。外敵の攻撃を想定し長い年月を経て高く分厚く作られた壁は、そう易々と壊すことは出来ないだろう。
だけど壁を作った際にどのような経緯があったのかは知らないし知る必要もなく、ただそれがあったと言う事実と利用できるいう事。
決して大きくはないが検問されずに外と内を行き来でき、知っている人はごく一部の人だけ。
隠し通路の出入り口は壁より離れた猟狩小屋の中に隠蔽されている。
周囲を警戒しつつ小屋の中へと滑り込むと、決して広いとは言えずともそれでも数人は休める広さがある。
その床に取っ手に指をかけ持ち上げると床の一部が開いく。床下収納であり備蓄倉庫として使用できる空間。そこへ降りさらに床を持ち上げると、地下へと降りる階段が出てくる。
床を元へと戻し、地下へと降りると隠し通路の床も閉じる。
暗く見通すことは出来なくとも通りなれた道、灯りがなくとも問題はない。
いつも通りの歩数、壁に手を付きその感触から進み、右手の階段を上ると扉にたどり、聞き耳を立てて扉の向こう側を探る。
物音ひとつせず聞こえるのは自分の息遣いだけ。扉を開け中を確認しようとしたときに、急に背中に熱を帯びたのを感じた。
熱はすぐに痛みへと変わり、背中に何かが刺さったのだと理解した。そして同時に自身の迂闊さを呪った。
警戒していたのは人の有無だけであり、罠は仲間が仕掛けた物以外は仕掛けられていないなどと思い込み、確認を怠った。
罠は仕掛けられていた。仕掛けたやつに心当たりどころか、あの女以外ありえない。どうやってここに気付いたのか、どうやって調べたかなど最早どうでも良い。
背中に刺さったナイフを抜き確認するも黒塗りのナイフ。仲間と共に自身も使用しているナイフを見て、確信するも同時に自身の迂闊さはあの女への恨みへと変わって行く。
糞! と心の中で毒付きながらナイフを床へ突き立て応急処置をしてゆく。移動するに血糊を残してゆくことは出来ない。
ナイフには毒が塗っていた。致死性の毒ではなく弛緩系の毒だ。今回は殺すことではなく捕獲し情報を吐かせることを目的としていた為、たとえ抵抗しようとも大人しくさせるためにあえて弛緩性の毒を選んだ事が僥倖だったか、これならば強心剤を服用すれば何とかなる。
通常時に服用すれば身体機能が高まるが副作用として切れた時に倦怠感が襲ってくる。今は弛緩剤で体に力が入らない状況ではあるが、強心剤で打ち消し合う。それぞれが切れた時が地獄だろうが気にしている暇はないうえ、飲まないわけにはいかない。今動けなくなるのは殺してくれと言っているようなものだ。
余計な手間を掛けさせてくれると、次に会えば殺してやると、仲間を殺されたことも相まって憎悪を募らせてゆく。
腰帯から薬を取り出し一気に呷ると応急処置を終えた謂わんばかりに、隠し通路の扉から出る。さして広くもない部屋、掃除道具類が並べられ桶や何に使うかも知らない道具が整然と置かれている物置小屋。よく見慣れた小屋から外へと出る。
ここはもう街の中、警戒はしなければならないが挙動不審な態度はとらない様にしなければならない。
体中に打ち身、そして背中に刺し傷と兵に見咎められでもしたら誤魔化すのにどれほどの時間と労力がいるか、考えるだけでも辟易する。
もしも足が付くようなことがあれば、その先の事など考えたくもない。
どこかに身を潜めて休息を取るのが妥当なところ。表の仕事など体調不良だったと後で伝えればどうにでもなる。辞めてしまったとしても問題はないのだから。
後は休息を取る場所だが、家はだめだ。近所の目がある。誰にも邪魔されなくゆっくりと休める場所など、そう数かあるわけではない。
どれも組織がらみの場所ではあるが、背に腹は代えられない。追跡者だけには警戒を厳にしてゆくしかない。
朝日の上らないうちへと辿り着くために、痛む身体に鞭を打ち足早に街中を進んでいった。
その後ろ姿を物陰から眺める女、フォスレスがあった。
襲われた倉庫からここまでの道はそう難しくはない。
たとえ目を瞑っていたとしても、どちらから来たのか感覚から知る事は出来る。その道を逆にたどって行けば小屋があった。何も知らなければ特に怪しい箇所はないし、街の外にこのような小屋など少ないながらも立てられている。
その役目は色々で、街へ戻れなくなった住民が一晩過ごす場所であったり、外で使用するにあったて道具であったり、個人所有で言えば狩猟道具を置いていたりする。
中に入れば在るのはわずかな道具と毛布のみ。個人所有の小屋なのだろうか、街へ戻ることなく外で活動する人が寝泊まりするだけの小屋に思えるが、彼らが関わっている場所と思えばそれだけではないだろう。
森の中、周囲に何もない小屋。広さは知れてる、壁に仕掛けは出来ないとなると床に隠しているのだろう。
幾許も探さないうちに床の取っ手を見つけるも、罠の類を危惧するが可能性は低い。
もしも無関係の人が入ってきたとして、簡単に見つかる床を開けてしまうこともあるだろう。その時に危害が及ぼうものならば、この場所を維持することは出来ないだろう。
床扉を持ち上げ中を確認すると床下収納なのだろうか、少し広めの空間であり、何かあるという事はなかった。
だからこそここが一番怪しい箇所だろう。
手を付いて探ると床に似せてあるさらに下へと続く扉。怪しいと探さなければ見つけることは難しく、けれど探す場所が限定されていれば、そう難しくなく探し出すことが出来た。
後は罠を危惧しなければならないが、時間もかけてはいられない。時間を掛ければ誰かここを使用する……主に倉庫で昏倒させた男が戻ってくる。
このまま何もせず彼を泳がしたところではあるが、何もしなければこの後の彼の行動は日常に戻るだけのだろう。此方の姿を現したところで姿を晦ますか、最悪自害しかけない。
こちらの姿は隠しつつも、それでも影は見せておくことが出来れば。かなり際どいが方法がない訳でもない。けれどそれはここではなが、道具は必要。
床下から部屋の中へと戻り周囲を見渡す。
部屋の中にあるのは僅かにある道具。手にしているのは彼らの暗殺用の短剣が二本。僅かにしかないが、凝ったものを作るわけではないのでこれだけあれば十分。
後はどこに仕掛けるかだが、これは狩りと同じで獲物が一番油断する時。ならば仕掛ける場所を自ずと限られてくる。
こちらは隠し通路へ入る側とすれば一番警戒する場所。ここに仕掛けたところで掛からない可能性は高い上に効果も薄い。
仕掛ける場所は入口より出口。抜けたと思い安心しうるところが狙い目。
床下倉庫へと戻り、床下の扉へと手を掛ける。一瞬罠の心配もしたが覚悟を決め少し持ち上げる。
警鐘音もなければ毒針が飛んでくることもなく……。一気に持ち上げる。少々物足りなさを感じながら出てき地下通路を見ながら。
「少々不用心すぎませんか……」
と溜息とともにつぶやいてしまった。
道具を手に石造りの地下通路を進んでゆく。広いという訳ではないが人一人担いで通るには十分な広さであり、彼らが良く利用したことを伺える造りになっている。
方角と距離で分かる。この辺りが壁を越え街へと入ったところになる。そこからしばらく進むと横側に階段があった。
この先に街へと入る出入り口となる扉があるはずだが、隠しておかなければならないのは街側の扉。
こちら側からすると探すこともなく階段を上った先にあった。
さて、扉を開けたら敵だらけでしたでは笑い話にもならないので、扉の向こうに意識を向け気配がないか確認する。
居たところで好都合でもあるのだが、確認することも大切なことである。いなければ当初の予定通りに事を進めるまでなのだが。
気配はなく罠の類も見当たらない。音を立てぬよう扉を少し開け様子を見るに特に何も無い。
気配を殺して隠れているようなこともなし。
気にするものは特に何もなく実は広く知られた通用口なのかと、造りからしてそうでないのは確実なのにそのように思ってしまうぐらいにただの物置部屋の様であった。
これで外にも何もなければ、よく今まで見つからずにいたと思うぐらいであるが、さすがに何か対策はしているだろう。
それはここから外に出ればわかる事、今気にしても仕方ない。
隠し通路の隠蔽工作を考えるのは彼等であって、私は嫌がらせをしてゆくだけである。
そして罠が仕掛けられていないのであれば好都合。よもやいつもの道に罠が仕掛けられているなどとは思わないはず。
仕掛ける罠は簡単。扉が開けばつるした短剣が落ちてくるようにするだけ。
問題は扉を開けてから短剣が落ちてくるまでの時間。早ければ目にする前に落ち事を成さず、遅ければ気付くことはなく通り過ぎるだけに終わる。
罠に掛からなくとも脅威には感じてもらわなくては意味がない。
扉を開けてから短剣が落ちるまでの時間差を確保しなければならないが、それが一番難しいだろう。部屋には天井付近に窓が付いており、僅かではあるが灯りが取れている。なので例え黒塗りの短剣と言えども光を反射して気付かれる可能性を視野に入れなければならない。
逆に考えるならば、扉を開ける際に必ずいる場所であれば時差を付けなくても良いという事と、常に暗闇のところであれば尚よし。
そのような場所は……一つある。
決まったのならば早々に仕掛けなければならないが、焦って仕掛けたとしても失敗してしまっては今までの苦労が泡と帰す。
決して難しいわけではない無いので確実に仕掛けなければならないだろう。
隠し通路へと戻り再度周りを見渡す。部屋に入る星明りよりこぼれ入る明かりでは隠し通路の闇を払うことはないが、暗闇に慣れた今となっては十分に見通すことが出来る。
岩を積み上げて通路としての体裁を整えているが、隙間がないわけでない。修復も碌に行ってこなかったのだろう、決して長くはないとしても経年劣化は煉瓦同士に隙間が生じ始めている。
そこに短剣を刺せば十分な罠を仕掛ける下地が出来る。
彼がここを通る際に何らかの明かりを手にしていることも考えて、黒い布で覆っておけば十分に隠せるだろう。見つかった時のことは……その時に考えればよいか。
さて、場所は決まったが位置をどうするかだが、ここを通る時に自分はどうだったかを考える。
扉があるからと何ら確認もせず開けるわけではなく、まずは扉越しに誰かいないか確認し、扉を少し開け外を確認した。
ならばここを通る彼も同じ様な行動をとるのではないか。その時の立ち位置はどこであったかを思い出し壁を見る。
天井は低いが仕掛けられないほどではない。短剣も十分な長さはある。
壁を蹴り飛び上がり天井付近の煉瓦の隙間に短剣を突き刺す。縄を少し解いて細くしもう一つの短剣の柄に結び付け、壁に突き刺した短剣の柄へと掛ける。
後は扉に縄を挟むだけだが、このまま挟むと縄が太くが扉が閉まらない。無理に閉めると今度は開かなくなってしまう可能性があるのでもう少々細くする必要があるが、細くし過ぎると縄が切れる恐れがある。
失敗しても良いと思ってはいるが、彼が来る前に床に突き刺さっていましたでは不信感すら与えることはなく、笑い話にも上がらないだろう。
細く丈夫な……糸みたいな物があれば良いのだが、周りを見るもそうあるわけもなく。
糸と言えば服。着ている服は彼等から頂いた黒い服に外套。新しい服ではないので所々ほつれはある。
解いて使っても良いが、強度において不安がある為、挟まった摩擦で切れてしまうかもしれない。
少し悩みはしたものの、あまり使用したくはない手を選択することにした。
手で髪を梳き毛を手にする。引っ張るも切れず、これならば十分に耐えうる。
これを縄の先へ結び付け、後は扉に挟み罠は完成する。
髪の毛は細く隙間から抜けてしまう可能性もあるので、その辺に落ちている小さな木切れや小石などを、結び付けておくことで落下防止が出来る。
一通りの作業を終え、後はどうなるか楽しみである。
さて、外はどこに繋がっているのか、此方も楽しみである。ただここで油断しては笑うに笑えない。
気を引き締め直し、外へと通じているであろう扉に手をかける。
ゆっくりと扉を開き、見えてくるのは壁と貧民街では見られなかった小奇麗な建物の列。
壁は街壁とは違い高くはない。精々大人が飛びついても辛うじて届かない程度の高さしかない。
壁はそう広くない建物を囲んでいるようで、どうやらここは誰かの私有地か商業施設なのだろう。
街の外へと通づるここは物置小屋なのか、確かにこれは誰も来ないだろうと思わせる。
なら、ここの所有者が一連の事案の黒幕の可能性が高い。調べる方法はあるので、彼女らの行方の手がかりも掴めるやもしれない。
周囲を見渡すも誰か潜んでいる事はなく、明け方まで時間がある為か静かである。
彼が来る前に隠れる場所を見つけなければならない。そして彼以外の誰かが来たとしても対応できる場所を考える。
建物の屋根や壁の上は同じ高さから見られたりしたら直に見つかってしまうので却下。
建屋の角は、隠し通路から出てきた彼がどこへ向かうのか分からないので、隠れた通路へと来てしまうと回避する場所がなく見つかってしまうので、ここも却下。
建屋の中は窓がない為、外の様子が窺えない。
そこ彼処に植えている木の上は、葉が生い茂っている訳では無いので姿を晒しているのと何ら変わりはないだろう。
出てきた建屋は壁に沿っており、身を潜める場所はない。
やはりこのような時に地理に疎いと決め手に欠ける。
建物沿いに身を隠すように移動する。隠し通路の小屋からでて真っ直ぐに歩くと端へと着くが、外へと続く扉もあった。
どうやら建物のこちら側に窓がないのは、この扉からの出入りを隠す意味もあったのだろう。
慌てず素早く扉に近づくと、壁を背にするとゆっくりと手に掛ける。扉は何ら抵抗もなく開き思わず身構えてしまう。
警戒しすぎと謂われようと、相手は暗殺集団。どの様な手を使って来るのか何処に潜んでいるのか分からない。警戒しすぎるに越したことはない。
小屋を一瞥する。今は出てくる気配はないが何時出てきてもおかしくはない。
意を決して扉より外へ踏み出す。ここまで何もないと退いたのか。それとも私が気付いていないだけで何らかの手を打たれているのか。
相手の手が見えないのは怖いものがある。何をしてくるのか分からないから。
だが今の状況は相手にも当てはまるはずである。彼らにしてみれば私の事についてなにも掴んでいないはず。
把握しているであろうことは彼らに残した此方の目的を簿化して伝えた事だけ。
向こうとしても此方の事は少しは恐れているはず。
今はまだ仕掛けてこないだけかもしれないが、いずれはまた相対すのは確実。ここで恐れて様子を見るより初志を貫くのみ。
彼の中の私の脅威度を上げるためにも、是非こちらに来てもらいたいものだ。
そしてそれを見逃さない為にもこの壁の中では不都合が多い。扉の外へと出るしかない。
彼が此方に来なければ此れから先が暗雲立ち込めてしまうのだが。
扉を出るとまず飛び込んできたのは壁であった。
そこまで大きくはない。丁度出てきた建物の壁とそろえているかと思えるぐらいの壁だ。
ただそれが此方と彼方を区切るかのように真っ直ぐに伸びている。
右手には街の外と内を隔てる壁がそそり立っており、壁はそこから真っ直ぐに伸びており行き止まりになっている。
左側は三差路はあるが、真っ直ぐに進む先はまだ暗い今は見えない。明るければその先まで確認できてかもしれないが、まだ夜が明けるには時間がある。
その壁より見える建物は二階建てが多く、小奇麗な建物ばかり見える。木々も剪定されており、どうやら裕福層と此方を隔てる壁なのやもしれない。
道幅は決して広くはないが、狭くもない。貧民区みたく人とすれ違う時には肩がぶつかるかと思えるような狭さでは、壁から壁へと飛び移れてしまうため裕福層への安全性が問われるのだろう。
が、このままでは身を潜める場所がなく、これ以上離れると対応に遅れが生じ結果失敗に終わる可能性も出てくる。
せめてこの建物の角を曲がった先にあれば良いのだが。
歩く速度は普段と同じ。焦る心を抑え角を曲がる。
左側に見えるのは出てきた建物の壁が続いているが、反対側は住居よりも大きな建物が壁で囲い建ち並んでいた。
ここは工房ではなく工場地帯か、けれど此れならば十分に身を潜める場所がある。
建物を囲う壁同士には人一人通れるほどの道とも謂えない隙間がある。
日が昇るぐらいまでは、建物の影に隠れて彼が出てくるのを待つことぐらいは可能だろう。
そして影に身を潜め数刻が過ぎた頃、そろそろ日も登るのではないかと思われ、当てが外れたかと半分諦めかけた時に彼が姿を現した。
その姿を見たときは安堵と同時に笑みが浮かぶ。
歩くその姿は精彩がなく足取りも少しふらついている。ある程度は手傷を負わせたが、それ以上におぼつかない足取りである。
短剣に塗布されている毒は拭っていない為、罠に掛かったのか。それはそれで僥倖と謂えるやもしれないが、少々間抜けとも思う。
解毒薬は服用しているだろうが、すぐに効くようなものではない。彼の様子を見る限りやはり死に誘う様なものではなかったらしい。
弛緩系か痺れ系か……。どちらにせよ関係ない話ではあるが、次は即死するような毒を使って来るかもしない。
気を付けなければならない状況にあるわけではないが、誰かを巻き込むことはあるかもしれない。
緩んだ気を引き締め、去って行く彼の後を追うとしよう。
少し遅れました、すいません。
一月に一回しか投稿してないのにすいません。




