#21 夜の帷と奇妙な話し合い
暗闇の中から現れたのはラウムであった。
ネムロスとしては他の兵士がやって来るのかと思っていただけに、昼間もいろいろと動いていたラウムが現れるのは予想外であり、少々驚きを隠せなかった。
「フェンシオ殿ではありませんが、人を驚かせるのは少々病みつきになりそうですね」
驚いたこともあろうが、出た言葉がそれとは……、あれの影響を受け真似などされても困るだけなのだが。
「驚かせるだけに来たわけではあるまい」
「まぁ、驚かせようと思ったわけではないのですが」
「そのつもりであれば性悪すぎるな」
「ウィリデも来ましたので、順に休憩に入ってください。その間は受け持ちますので」
話を逸らされはするも、驚かせたことへの謝罪の言葉は無し。ラウムが確信犯であろうことはその言動から察しするものの、こちらとて怒っているわけではない。
これがラウムなりの緊張のほぐし方なのだろうと、自分なりに納得させラウムの後に続いてウィリデの元へと向かって行った。
「お疲れ様です。副隊長殿」
「ご苦労様です。交代いたしますので休憩に入ってください」
「了解しました。ではしばらくの間、よろしくお願いします」
夜更けだからだろうか規律は厳しいと聞いていたが、今の二人に至ってはかなり簡易的なやり取りであった気がした。
「ネムロス殿、お先に休憩を頂きます」
ネムロスにも軽く頭を下げると、与えられた仮眠室、簡易に立てられたテントへと向かって行った。
ウィリデを見送った後、ラウムの方へと顔を向けつつ。
「さて、ただ交代しに来た訳ではあるまい」
「えぇ、ネムロス殿と、一度ゆっくりと話をいたしたいと思っていましたからね。少々無理を通してみました」
幾度なく見てきた笑みではあるが、心根はいまだに読めぬ。その言葉の裏を読もうとするも、どうやらラウムの方が上手の様なので諦めて他の手段を取ろうとしよう。
暗闇の中から現れたのはラウムであった。
ネムロスとしては他の兵士がやって来るのかと思っていただけに、昼間もいろいろと動いていたラウムが現れるのは予想外であり、少々驚きを隠せなかった。
「フェンシオ殿ではありませんが、人を驚かせるのは少々病みつきになりそうですね」
驚いたこともあろうが、出た言葉がそれとは……、あれの影響を受け真似などされても困るだけなのだが。
「驚かせるだけに来たわけではあるまい」
「まぁ、驚かせようと思ったわけではないのですが」
「そのつもりであれば性悪すぎるな」
「ウィリデも来ましたので、順に休憩に入ってください。その間は受け持ちますので」
話を逸らされはするも、驚かせたことへの謝罪の言葉は無し。ラウムが確信犯であろうことはその言動から察しするものの、こちらとて怒っているわけではない。
これがラウムなりの緊張のほぐし方なのだろうと、自分なりに納得させラウムの後に続いてウィリデの元へと向かって行った。
「お疲れ様です。副隊長殿」
「ご苦労様です。交代いたしますので休憩に入ってください」
「了解しました。ではしばらくの間、よろしくお願いします」
夜更けだからだろうか規律は厳しいと聞いていたが、今の二人に至ってはかなり簡易的なやり取りであった気がした。
「ネムロス殿、お先に休憩を頂きます」
ネムロスにも軽く頭を下げると、与えられた仮眠室、簡易に立てられたテントへと向かって行った。
ウィリデを見送った後、ラウムの方へと顔を向けつつ。
「さて、ただ交代しに来た訳ではあるまい」
「えぇ、ネムロス殿と、一度ゆっくりと話をいたしたいと思っていましたからね。少々無理を通してみました」
幾度なく見てきた笑みではあるが、心根はいまだに読めぬ。その言葉の裏を読もうとするも、どうやらラウムの方が上手の様なので諦めて他の手段を取ろうとしよう。
「で、本音は?」
絡め手をやめて、正面からぶつかることにした。
「色々と疑惑に思っているようですが、他意はありませんよ。他の方々とは話をしていますが、ネムロス殿
は機会を得ることが叶いませんでしたから」
「まぁ、俺とて聞きたいことは無きにしも非ず故、丁度良かったのかもしれん。わざわざ出向いてきてくれのだ、そちらの話から聞こうか」
「ネムロス殿の話も気になりますが、こちらに譲っていただいたのは少々驚きました」
「ん? そうなのか」
「多くの人は、まず自身で持っている疑問に答えてもらうべく、自身を優先しますからね。そして一通り聞き終わるとこちらの話は聞くどころか、話は終わったと告げどこぞへと去ってゆく始末。自分勝手な方々が多く、ままなりませんね」
初めて聞くラウムの愚痴ともいえる言葉に、今度はネムロスが驚いてしまった。
口調こそ変わらぬが、皆の前では見せたことのないような言葉遣いをするラウムに、なにかしら思うところはあるのだろう。
こちらを横目で見つつ、ほくそ笑むラウムを見るまでは。
「そのような顔をするので、お前たちの行動を疑わずにはいられぬのだ。それも分かっていてやっているところが何とも言えぬところだがな」
「処世術。……街や、衛士隊との中で渡り歩いて行くには、折衝は避けられませんからおのずと身に着けてゆくのですが、私の場合は見てのとおりです」
「だから胡散臭いのだな」
「これは手厳しい。まぁ、今回のことは裏目に出てしまったようで、私もまだまだという事ですね」
「他意が無いのは分かった。もともと俺の方も根拠なく猜疑心にかられただけなのでな。支援に来てもらっているのに頂けなかった」
「そうですね、やはりあなたと話せる場を持ててよかったと思います。フェンシオ殿とは色々と話すことが出来ましたが、ネムロス殿とは話す機会がなく、終ぞこのような形になってしまいましたが」
「それは構わぬが、これで最後という訳ではなかろうに。今回に限ってもこのように無茶をせずとも、話す機会などできように」
「一度機を逃すと話すことも聞くことも憚られるものがあります。つまり今しか聞けない様な事があるという事ですね。それに私たちはそろそろお役御免となりそうですからね」
「それは……いや、少々早すぎるのではないか」
「前にも言いましたが、私たちは先遣隊です。被害があった場所へと真っ先に駆け付け状況を把握、応急的な処置、情報を整理したのち上長へ報告した後は、正式な部隊が派遣されるまでの繋ぎです。そして被害に対し適切な部隊が編成され派遣されたならば先遣隊の役目は果たしたと言えるでしょう。後続隊の到着後、引き継ぎをすれば我々先遣隊は街へと戻らねばなりません」
「という事は……」
「えぇ、明日…今日というべきか、夕刻には到着する予定です。引き継ぎ事項なども含めると早ければその翌日の昼には街へ戻るかもしれません。これは村長殿をはじめフェンシオ殿にも伝わっていることです。明日にでも伝えられるでしょうから今話したところで問題は無いでしょう」
「だから話す機会がなくなったわけか」
「明日は予定していた周辺の探索については、昼までの制限となります。私としては少々残念な所があるのですが、任務ですので仕方ないですね」
「理由は理解した。ラウムたちには良くしてもらったのでな、残念としか言いようがない」
「次に派遣される方々については、私も知るところではありませんが、決して悪いようにはならない様、配慮されていることを願うばかりですね」
「いや、それはどういう……」
ネムロスはその先の言葉を飲み込んだ。ラウムの表情はいつもの微笑みだけであるが、その奥にあるのは堅牢であろうと思われる衛士隊の兵士でも様々な人たちが従事しており、皆の足並みがそろっているわけではないことを示唆していた。
いくらラウムが優秀であろうと、今持っている力ではどうすることも出来ないことは多々あるのだろう。だから願うしかないのだろう。他の誰にでもなく我々の幸運に……、街の上層部がここのどこまで重要としているかを……。
だから今それを指摘しても仕方ないのだと。
「いや、何でもない。そうだな、そちらの話を先に聞こうと思ったのだが、こちらが色々と聞いてしまったな」
「話が反れてしまっていましたね。まぁ、話と言っても大したことではないのですが」
「の割には口に出せぬような遠慮が見受けられるが」
ラウムは静かに上を仰ぎ見るも何かを考えるかのように目を閉じる。
何を思案しているか、何をためらっているのかはネムロスには測りかねるが、ラウムが話さぬならば無理に聞くこともなく、話すようなことであらば言葉を紡ぐときまで待てばよい。
話を聞くと言ったのは此方なのだから。
「……洞窟の探索を終えた後、何か言いかけていましたね。あの時、何を言おうとしたのか聞いても」
しばらくして聞いてきたのは、あの時に聞くべきか逡巡したすえ、ついには聞くことは無かったこと。
フォスレスの言葉の意味が分かぬ上に、ただの呟きに聞こえただけであり、故まずはその事を確認したうえで誰かに聞こうとしていた。いや、ラウムに聞こうとしていたことであった。
先ほどはラウムの言葉を待っていたがゆえに沈黙していたが、今はこちらがどうするか決めあぐねる。
静寂だけがあると思われた夜の帷の中、虫の音だけが響き渡っていた。
ラウムの表情はいつもの様に微笑んでいるが、目だけは笑っておらずネムロスを射抜いている。
手にあるフォスレスからは何もない。自分には関係は無いかの如く静観しているようであるが。
ここでフォスレスのことを話すのも手ではあるだろうが、それはフォスレスを取り上げられ旅立つことはおろかネムロス自身もどうなるか、そのような最悪の事態しか思い浮かばない。
フォスレスから何もないのは、フォスレス自身がその身を晒すことを避けているのか、ネムロス自身に任せているのか……。
どちらにせよ龍脈口についてフォスレスが動かぬようでは、取れる手は二つ。
誤魔化すか、話すか。
ラウムからの問いに間を置かず答えていたならば、いくらでも誤魔化しようはあっただろうが、時間を掛け過ぎた。これでは何かしら気になることがあったと暗に語っているようなものだ。
今更ながら話を逸らしてもラウムの事、話を合わせてくれるであろうが、信は失うだろう。
フォスレスがどのように思うかは分らぬが、話されたくない事ならば何かしら合図でも送って来るか……、なにかしら送ってきてほしいと思うのは都合が良すぎというものか。
フォスレスを持つ手に一度力を入れ。
「……龍脈口」
空を仰ぎながら、その一言を絞り出すだけで精いっぱいであった。
「……少し驚きました。まさかここでその言葉が聞けるとは」
ラウムはわずかに驚くもすぐに微笑を湛える。ネムロスはラウムの驚いた表情を見て、思わずしてやったりと思わず口元を緩めてしまう。
が、その返答を聞き知っているのだなと思う頭の片隅で、知らなかった時のことを考えずにいた自分がいたことを恥ずかしく思い、そっと心の片隅に追いやって蓋をした。
「これはこれは、どこから聞いたものか、少し困りましたね」
「先に言っておくが、龍脈口については知っていることは無い。言葉だけでもどこで知ったのかは、悪いが黙秘させていただく」
「私も詳しく知っているわけではなく、たしか古い石碑を写した文献などの資料に出てくるぐらいですね。さすがにすぐには思い出せませんが」
「俺としてはこの様なものを知っている博識に驚嘆するのだがな」
「少し思い出してみますが、その文献が正鵠を射ているのかまでは確証まで至っていませんが、それでよろしければ教えることは出来ますが……」
「是非、お願いしたいところだな。今回の原因の一端ならば知っておいても損はないはずなのでな。またこちらが聞くことになるのだが」
「今回の件に龍脈口がかかわっているとなると、この超常現象に納得がゆく部分があります。しかしながらそれが事実かもしれませんが、真実ではないかもしれません。これから先そうあることではないかもしれませんが、その真偽についてまでは私も確証できません故、そのつもりでお願いします」
「やけに念を押すが、了承しよう。」
ネムロスの言葉に言質を取りましたと言わんばかりにラウムは頷いた。
「さて、どのように話したものか……、それは、地の中を走る力とありました。世界中の大地の中を走る力の道筋、それが龍脈と。そして時折、地表に近くを通る道筋より、空いた隙間から漏れた力が龍脈口と。別称として特異点ともいわれています」
「すまぬが、今一つ理解が追いつかぬ。それがどういったものなのか、それがなぜキメラなどと繋がるのか、分からぬよ」
地の中を走っていると言われても、見た事が無い故に想像し難い。それがあのようなバケモノを生むともなると、どの様に繋がり、どの様なからくりになっているのか、想像すらできない。
自分がいかに小さな村のなかで過ごしてきたのか、それ故に知り得ぬ事柄があるのは解っているつもりではあるが、実際に目にすると自身がいかに小さいか実感してしまう。
それを知り得るには此処には何もなく、あるのはただ日々を営むための先人たちの知恵と知識だけである。
外へ出るとしても、精々街までである。この近辺だけで生涯を終えるのならば十分であるが、一歩でも外に出てしまえば通用することは少ないだろう。
現に今、直面しているそれに対応できずにいる。旅に出るにあたり生きるための知識が必要になっているが、どのように得るのかが課題だな。旅慣れているであろうフォスレスに教えを請いても良いが、人と人外では違うことの方が多いだろう。
だが今は龍脈のことをラウムと話しているところ、考えが纏まらずに反れてしまったが、大事な話を上の空で聞いてしまっては、礼を欠くと言うもの。
「地面を掘ると出てくると言うものではないのですが、大地の中を通っていることは確かみたいですね。私も確かめたわけでもないですし、見られるものでもないですしね」
「石碑にあったと言っていたが、そしてその石碑は」
「石碑を模写した資料ですね。知り得たのはそれだけではないのですが、何しろ龍脈と言うものを知っている人たちは少なく、研究しようにも触れることも出来ません。その末端とも思われる龍脈口といえど、どこにあるのか探すことが難しいのです。探すことすら困難を極めるそれを研究しようとするような酔狂な人はいませんからね。今回の件に龍脈口が関わっているなど思いもつきません」
しかし実際には関わっていた。フォスレスのことを疑うわけではないが、虚偽をつく意味もない。そこには痕跡しかなく、それを確かなものと判断できるものもない。
あるのは、誰かがそこにあった何かを利用し、村に災いを振り撒いたことだけ。
そして、その協力者が村の中に居たという事。
その誰かは、もう遠くに逃げているだろうし、追いかけても見つかるような痕跡など残してはいないだろう。
いなくなってしまった犯人を捜し、罪を償ってもらうのは当然ではあるがその役目は村の人々ではなく、街の治安を守っている衛士の仕事である。自分たちの責で探すことはできようが、街の協力は得られない故探し出すには時間も労力も途方もなくかかってくる。無論、村の復興もその分遅れるだろう。
ならば村に住まう俺たちは復興に向けて取り組まなければならない。
「元となっている石碑についてですが、国外より持ち込まれた雑多な資料の中に紛れていたので、どこから持ち込まれたのかまでは調べきれませんでした。その時にもっと早く動いていれば突き止められていたのかもしれませんが、今からでは遅すぎですね。資料として手元に残すことは出来ましたが、残念ですがどこから来たのか特定することまでは至ることが出来ていません」
「なるほど、ままならぬものだな」
フェンシオ程うまくは返せぬが、笑いながらも返せただろうと思う。
ラウムも少し驚いだだろう表情もするもすぐに微笑みを返してくる。その所作は至極自然であり、真似はするものではないなと思いに至る。
「龍脈のことについては、そちらの方が調べられるだろう。あの洞窟の龍脈口はもう一度出来るのかと言うことは……」
「その可能性は低いでしょう。同じ場所に再度現れたとはなく、過去にそこの場所に龍脈口があったとされるだけでした」
「そもそも龍脈口とやらはそこかしこに出来るものなのか」
「結論から言いますと、龍脈が通っているところにはどこに出来てもおかしくはないでしょうね。現に龍脈口があったと思われる痕跡はそれなりと聞きます。後は川の流れも変わってゆくように、龍脈事態もその流れは変化するそうです」
「流れが変わっては現れることもなく、変わるからこそ現れなかったところに現れるようになるか」
「地を流れていますが、どこをどのように流れているのか調べる方法がない今、どこに龍脈口が出来るのか予想することは出来ません。だからこそ、あの場所の龍脈口を見つけた犯人はどうやって見つけたのか、偶然で片付けるにはいかないでしょうね」
「犯人は龍脈口を追って、別の場所へと移動したと?」
「でしょうね。龍脈口が無くなったからこそ、ここを捨てたのでしょう。またどこかでしたり顔で活動していると思うと腹立たしいですね」
「ならばもうここに戻って来ることはあるまい。少しは安心した」
「そうですね。心配事があるとすれば、作物や村の周りの獣に影響が出ないかですが」
「まて、それはどういう意味だ」
「龍脈は地の中を流れる力そのもの。地に関連深い作物など影響がないとは言い切れませんからね」
確かに龍脈が地を中にあるのならば、そこにある植物に影響は与えていると考えるのが妥当だろう。それが無くなるという事は、作物の育ちに影響があるという事。あったものが無くなるならば、実りが減る可能性もある。
これまではどうであった。凶作であったことはなかった。毎年豊作であったかと問われると普通としか答えられぬ。この村の中だけで完結しているので他に比べるものが無い為、渋面になるしかなかった。
これから先、龍脈が何かしらの恩恵を受けていたとしたら、収穫量が減るという事。
それはキメラが村を襲った時とは違う悲劇が起こるという事。対策をと思うが、その頃にはこの村を出ている俺ではどうすることも出来なく、ただ無事を願うだけしかできない。
村の先を案じ黙してしまったネムロスに、ラウムは暗闇につぶやくように。
「この世界は残酷です。それは人に及ばず生きとし生きる者たちにとって世界は厳しく、生きて続けてゆくにはとてもではありませんが生きがたい世界です。弱者たちから淘汰され続け、隙を見せたならば強者であっても死に神の持つ鎌は容易く命を刈り取ります。そして人は弱い、それこそどこにでもいるような獣に食い殺されるぐらいに。故に人は考えます。どうすれば生き残れるかを。今私たちが生きている道程にはどれほどの犠牲があったかは推して知る由もありません。されどこのような世界でも人は生きています。どうすれば良いのか考えて、知恵を出して」
「それは……」
「ある人からの受け売りです。多少私の経験則も入っていますが。っと、そろそろ交代の時間ですね。彼も戻ってきたようです」
仮眠場所のある方へ振り向くと、そこに仮眠を終えたのかウィリデが待機していた。
ラウムとの話に夢中になり時間を忘れ話し込んでしまった。
今少し話の続きを聞きたくもあるが、我儘を言ってラウムはおろかウィリデも困らせることになる。
喉元まで出かかった言葉を飲み込み、ここまでだと自分に言い聞かせる。
「気付けば聞いてばかりであったな。色々と聞きたいこともあったろが悪いことをした」
「いえ、気にしないでください。面白い話を聞けましたし、なかなか有意義でしたよ」
「だと良いのだがな。さて、俺も少し休ませてもらおうか。しばらく頼む」
「えぇ、頼まれました」
「あと話している間、代わりに見張りをしてくれていた彼に迷惑をかけたと伝言をお願いする」
「気付いていましたか」
「これでも一応狩人なのでな。気配をよむことに関しては、負けてはいないと思っている」
「これは失礼しました。」
いつまでも止めどなく話を続けていると、仮眠をとる時間が無くなってゆく上に、ラウムやウィリデ、それ以上に見張りを肩代わりしてくれた、いまだ姿を現さぬ彼に負担がかかるだろう。
特に話は終わりと告げんばかりに背を向け、後ろ手を振りながら仮眠場所へと歩いて行った。
ネムロスが仮眠場所へと向かってゆく後姿を見ながらラウムは。
「今はゆっくり休んでほしいものです」
「それはどういった思惑か聞いてもよろしいですか」
ウィリデは、ラウム副隊長が人の心配を口にするのは珍しく思い、口を出してしまった。
「明日、いえもう今日になりますね。彼らにとって良くない知らせが届くでしょう。これからが大変でしょうからね」
「では、明日には……」
「そういうことです。このことはまだ秘密でお願いしますよ」
「はい、踏み込んだことを聞いてしまい申し訳ありません」
ラウムは頭を下げるウィリデに微笑みながらも、責める様なこともなく。
「では、無理をした責を果たすべく、時間まで見張りを続けます。あなたは戻り明日の為に休んでください」
前半は自分に言い聞かせるように、後半は木々の陰に隠れ見張りを代行してくれた彼に告げ。
今はまだ闇夜が覆うその先を見ながら、そのような心配も杞憂になるかもしれないと思いながら。
職業柄、派遣先は何らかの災害が起きた地域ばかり回されている。どこも災害が起きたばかりのところへ赴いている為、赴任した当初は誰もが心が荒んでいる。
ゆえにまず自分たちのやることと言えば人々の心を落ち着かせることから始まる。
だが、この村は色々と違っていた。あれほどの被害に遭いながらも皆が皆、落ち着いていた。
我々を迎えてくれた二人、フェンシオ殿とネムロス殿については、こちらを警戒しつつも落ち着いており協力的であった。
おかげで随分と助かったところが多い。
村長に至っては、この現状を利用し自分たちに不必要と思われるものまで出してきて交渉を持ち掛けてくるほどであった。
この村には他のところにはない強かさがある。
どのような境地に立たされてもあの手この手と使い、この村を復興してゆきそうな雰囲気がある。
それらを見続けてゆきたい気持ちはあるが、無理なのはわかりきっている。今までもそうであったようにこれからも変わらぬであろう。
だからと言って諦めるつもりもないが、今は我を通すことはできない。
彼らのこれからを見てゆくことはできないが、知ることはできる。
彼らがどのように乗り越えてゆくのか、今からが楽しみである。
かなり遅くなりました。
いつも読んでいただきありがとうございます。
パソコンが故障してしまい、二進も三進もゆかなくなりました。
いえ、まだ壊れているんですが……。
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更新が遅いですが、これからもよろしくしていただければ幸甚です。




