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ルンタッタルンタッタとオレは来た道を戻る。今日は稀に見る厄日だった。町で使えそうなモノを集めたのにそれ込みで焼かれるし水瓶に嵌まるし…散々じゃ。
吸血鬼アイで暗い森の中も全然平気、嫌なことがあったけどせめて帰りぐらいは楽しくなろうと思い結構した高速スキップ帰宅…もうそろそろやめたいけどもうすぐ家だから仕方なく続ける。
「愛しの我が家!ただいまぁ……へぅ?」
我が家に着いたわけだが何かおかしい。家自体には何の違和感もないが周りの木々がおかしい。具体的には何か魔物チックになってやがります。
「えぇなにこれキモ」
すげぇワサワサしてる。形容しがたい感じでワサワサしてる。ここだけめっちゃ吸血鬼の家感出てるわぁ、朝まで白雪姫の居た森の家的な感じだったのになんじゃこれ。
「マジでなにこれ、嫌がらせ?」
オレはとりあえず他の被害の確認をするべく家の周囲を散策することに。なにか見つかるかなぁぐらいの気持ちで行ったら……ガッツリ異常事態がありました。
「地面から手が生えとる…」
しかも朝勝手に日光に当たって灰になったドジっ子吸血鬼ちゃんのお墓じゃないですかぁヤダー。
「吸血鬼てゾンビ化すんの?てかゾンビってどうやってなるんですかねぇ」
魔力なんたらの関係なんだろうか、いやでも肺になってるし原型留めてなかったのにゾンビになれば復元されんの?わからん、まったくわからん。
「まぁ考えてもわからんしとりあえず引っこ抜きますかね」
大きなカブよろしく腰を落とし地面から生えてる手を両手で握る。あ、そーれ!
「にぎゃぁあああ!?」
「………ありゃ千切れた。なんかすんません」
そんなこんなで救出しました。
腐っても吸血鬼千切れた腕を引っ付けたドジっ子ちゃんは正座しているオレの目の前で仁王立ちをしていた。その間ずっとパンツ丸見えだけどオレは気にしない。ドジっ子ちゃんも見せつけてくれるじゃないか…赤ですかグヘヘ。
「私は並の吸血鬼ではないのだ。真祖の血族はたとえ日光を浴びて灰になったとしても徐々に再生する。知っているか?」
「いえ」
「だろうなぁ!再生して目を開けたら土の中だぞ!生き埋めだ!すごい怖いんだぞ土!わかるか!?」
「いやぁ生き埋めじゃなくて死んでた……」
「黙れ!生きてるとか死んでるとかこの際どうでもいい!」
「えぇ……」
「ギリギリ息はできるけど吸いすぎれば土が入るし、湿ってるし、なんかウゾウゾしてるし……怖いんだからな!わかってるのかド低脳!」
「ド低脳……すいません」
「しかも漸くの思いで腕だけでも外に出せたのにそれを引きちぎるとか……貴様は悪魔か!」
「いえ、吸血鬼だと」
「口答えするな!ただただ謝れ!私に誠心誠意謝罪しろ!あと死ね!」
めっちゃくちゃおこですわ。激おこプンプン吸血鬼さんですわ。あとしれっと死ねとか言うなしオレのガラスのハートにヒビが入るだろうが。
とりあえず一頻り叫んだら落ち着いたのか、ドジっ子ちゃんは椅子に腰かける。あぁオレの赤パンツが……
「……貴様は本当になんなのだ?毎回の襲撃を軽々と生き残り、攻撃を食らってもびくともしない……吸血鬼なのか?」
「さぁ。あんたらからは真祖だのなんだの言ってるから吸血鬼なんじゃねぇの?知らんけど」
オレは正座を崩して台所へ。初めて我が家でおもてなしセット活用できる日が来たぜ。ウキウキ気分でドジっ子ちゃんに紅茶を渡し、オレも向かい側の椅子に座る。
「……なぁもし私が真祖様のところに来てくれと言ったらどうする?」
「あちち、ん?んー別にいいよ」
「は?い、いいのか?」
「うん。たぶんオレの体を殺せる攻撃はそうないだろうし、あんたたちが言う真祖って人……吸血鬼にも会いたかったし」
その真祖には御中元を送らねばならんかったしな。そういえば名前なんだっけ?
「なぁ名前は?」
「私か?私はカルアだ」
「よろしく。オレは……オレは」
名前とか前の世界のしかねぇ!?決めてなかった!だって半年間以上誰にも聞かれたことなかったんだもん!仕方ないじゃん!
「どうした?」
「あーいや。オレはヨーデル、ヨーデル=クラレン」
「ヨーデル?変な名前だな」
「いやぁ自分でつけたんだよ」
ヨーデルヨーデルが頭から離れんとです。咄嗟の判断には金輪際頼らないと決めた今日この頃。
「偽名ということか?」
「いや名付け親がいないんでね。仕方なく…なんなら名前つける?」
「いや、遠慮しておく」
「そうっすか」
拒否られたでござる。まぁそんなこんなで真祖さんに会いに行くことになった。