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昨日、消えてしまった吸血鬼さんは非常に残念だったが起きたことはしょうがない。オレはぶっ壊された壁を直し、吸血鬼さんの砂を庭に埋めてうろ覚えなお経を唱えると町に繰り出すことにした。
「森から出るだけで四半日とか、毎度のことながら家建てる場所間違えたかな」
異世界の町と言えば、ギルドがあり冒険者とか魔法使いがいて賑やかなイメージがある。この町にもそれっぽい建物や道具が有るが…
「外観だけそれっぽくても人っ子一人いないと味気ないなやっぱり。」
そう森を抜けて少し歩いた所にある町は人が誰一人としていないゴーストタウンと呼ばれる場所だ。初めて来たときは人に会えるとテンションが上がったが散策していくうちに徐々に鬱になった馴染み深い町である。
建物の中に入るとそこには食器や料理などがだされたままの状態であった。料理は完全に腐ってたから全部捨てたのを覚えている。
「さてと、使えそうな食器何個か見繕ってとっとと帰ろ」
小一時間程、食器や日用品を漁り持ってきた風呂敷の中に入れる。端から見たら完璧な泥棒スタイルですね。こんな格好誰かに見られたら通報待ったなし。
「…ん?なんか大量に近づいてくる気配が」
オレはこの体になって気配というモノを察知できるようになった。真祖の体ってヤバス。
今いる建物には二階があったので、そこに隠れる。窓の一つを開けて下の様子を伺う。
「騎士?…西洋甲冑とかカッコええな」
二個中隊分の西洋騎士がガッチャンガッチャンいわせながらやって来たんご。
「止まれ!さて諸君、仕事の時間だ。商隊から連絡があった通り人が一人もいないのは見ればわかると思う。原因の追求のために我々が派遣されたわけだ、草の根を分けてでも証拠を探さねばならん。行け!」
隊長らしき色違いの甲冑が命令を出すとガチャガチャと二人一組になり動き出した。
これ見つかったらアウトのヤツですやん。顔見えないけどたぶん人間だと思うし、吸血鬼のオレ見つかったら問答無用で犯人にされるやつやん。
「くそ。あいつらみたく影になったり、コウモリになったりできれば逃げやすいのに」
半年間襲ってくる吸血鬼集団のやつらはコウモリとか影とか狼とか色々な吸血鬼に関わりあるヤツに変身とか出来るっぽいんだが、やり方がわからん。
誰も教えてくれないから仕方ない。だって戦闘中に聞いてもあいつら攻撃しかしてこないんだもん。なんなの?見て覚えろ的なやつなの?
オレがいるのは、町の南方にある一軒家。騎士たちは中央広場から東西南北に一個小隊ごとに分かれて散策しだした。
うーん。本格的にヤバイですね。こっちに来る騎士たちの声聞いてどうするか考えよ。吸血鬼イヤーは地獄耳。
「証拠…特になし…疲れた…あそこの家…サボろう…ん?」
あそこの家?あーこっち指差してますねぇ。ちょっと隊長さん?部下の教育キチンとしよう?
玄関の開く音…はなく、壊れた音が家の中に響いてきたので息を殺して様子を探る。
「おい。この馬鹿力!人様の扉を壊すな!」
「わざとじゃねえよ!間違えて引き戸を押しただけじゃん」
「はぁ。まぁいい持ち主不在だしな。しっかしここの住人どこに行ったんだ?」
こちらに気づいてない様子なので、オレは二階の床に指で穴を開けて入ってきた二人を見る。てか小隊単位で行動しろよ小隊長なにやってんの。
兜を脱いだ金髪ガチムチと声が高い甲冑野郎。この甲冑野郎女じゃねぇの?
見た感じサボりに来たわけじゃなさそうだな。あっちこっち見回ってるし、おかげでコッチもあっちこっち床に穴あけるはめになってるんですがね…サボれよお前ら。
「つーか、お前兜脱げよ暑苦しい」
「今は職務中だ。それにお前の顔の方が暑苦しいぞ」
「それはひどい…あ」
「誰だ!」
あまりの言いぐさについツッコんでしまった。ガチムチが階段のある方に走っていき、甲冑娘は剣を構えて投げてきた。ちょっ投げんの!?
「ンギャ!?」
「キャッ!?」
オレがあの二人を追っかけて穴を開けてたせいで天井が脆くなっており、そこに剣の投擲。
剣はオレの頭に命中し、二階の床が抜けて一階へダイブ。致命傷だぜいろんな意味で、ちゃっかり甲冑娘は逃げてるし。
「天井が落ちた?どれだけ脆いんだ?」
「おい!何が…何したお前」
「剣投げたら床が…そういえば声の正体は?」
「あーあれじゃね?頭に剣刺さってる奴。本当になにしてんのお前」
「わ、わざとじゃない!威嚇のつもりで投げたら偶然…」
そう言いながら、甲冑娘は死体に変えてしまったであろう声の主に目を向けると。
「うぼぁー痛い。げっ頭蓋骨まで刺さってる、あの甲冑女め……ん?あー」
うん。頭に剣ぶっ指して痛いとか言ってるヤツは人間でしょうか?いえ化物ですね。