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帝国博物館の見習い学芸員  作者: ヤマガム
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4話

「亜人類」 亜人と呼ばれ人外魔境に住み、その環境に合った独自の進化をした者たちを差す。

一部の物好きな冒険家以外はまともな交流すらない存在だったが、時の経過と共にお互いに人口が増え、

土地の開拓が進むにつれ生活圏が近づき自然と交流が始まる。


そんな中、一部の歴史学者達は警鐘を鳴らす。

まるで三種類に枝分かれした人類が争いを始める前に似ていると・・・




- - - - - - - - - - - - -


俺は部屋から出て親父の執務室に向かい始めたところで、

「へくちっ」


いかん、ドレスを脱ぎ捨てて肌着のままだった・・・

慌てて部屋に戻り部屋着を羽織り改めて執務室へ向かう。


ノックして部屋に入ると書類に目を通していた親父が俺に顔を向け物腰柔らかに俺をねぎらってくる。

「おやっパティか、今日はよく頑張ったね。

 ところで、こんな場所に来てどうしたんだい?」


親父の質問に、ベットの上で纏めた考えを聞いてみる。

今日、出席していた龍人は誰か、ぜひ話をしたいと。

でも、親父の返答は俺の求めていたものとは異なっていた。

出席した龍人は酋長の側近であり、社交辞令で来ただけで既に帰路に就いてしまっているそうだ。


何とか龍人と接点を持ちたい俺は親父に龍人の住む領地に行きたいことを伝えると。

「パティは龍人と会って何をしたいんだい?

 何かとても焦っている様に見えるんだけど。」


親父からの質問に流石に男になりたいからなんて返事も出来ず、どもりながらその場凌ぎで答える。

「うっ、えーと、異文化交流?」


疑問形で返答をする俺に親父は首をかしげつつ、微笑みながら語りかけて来る。

「今まで外に出たがらなかったパティが積極的になってくれたのはとても嬉しい事だけどね、

 龍族とはまだしっかりとお友達になったわけじゃないんだ。

 パティがもっと大きくなってきちんとお友達になってからじゃだめかな?」


本当の理由を答えられない俺としては、今の親父を納得させる返答が出来ず物腰が柔らかいくせに無駄に説得力のある親父の言葉にしぶしぶ了承する。

くそぅ、龍人は暫く無理か。


やはり、禁書棟しかないか。

10代中盤でも学問や魔術に秀でていると、特例で入棟許可が出ている奴も居るらしい。

もし俺が許可をもらえても10年近くかかるという事か・・・

地道に、やるしかないのか。


今日は色々ありすぎた、もう風呂に入って寝よう。


・・・


誕生日から数日後、マリーに起こされボーっとする頭を抱えたまま身支度をし、朝食を食べる。

「禁書棟に入る」当面の目標にしつつ他の方法も探してみよう。


ちょっとやそっとの事でオーバーヒートしない頭を作らないといけない。

その為にも、日常的に魔法を使い負荷を掛けるような訓練をしたい。

そんなことを思い一緒に食事をしているお袋の方に向き、

「そろそろ魔法の訓練の再開した「だめです。」・・・」


最後まで言い切る前にお袋に却下された。

食い下がるように言葉を続ける。

「いや、体も治ったし、もう大丈「だめです。」・・・」


兄ちゃん達の方に顔を向けると困った表情になったり、そっと顔を背けたりする。

使えない兄ちゃん達だ・・・

親父! 最後の希望はあんただけだ、お袋をどうにかしてくれ!

俺は一縷の希望をもって親父の方に向くが、ゆっくり首を左右に振った。


--魔法の訓練を再開したい。

俺は去年、魔法の訓練をする機会があったのだが「ちょっとした」失敗をして以降、魔法禁止を言い渡たされている。

親父の方は周りにサポートをする者を置き、節度を守った訓練をするなら問題ないと再開の許可をくれたのだが、普段おっとりとしたお袋が狂気に駆られたかのように猛反対する事により、再開出来ずに今まで来てしまった。


別に大した失敗じゃなかったのに、ここまで意固地になってしまうとは。



・・・



5歳の誕生日を3か月ほど過ぎ俺の学校への入学の話が出始めた頃、

頭の中で簡単な魔法の発動をシュミレートしてもオーバーヒートどころか、

眩暈もしなくなりそれなりに自信が持ち始めたので、

実際に魔法を使用した訓練をしたいと親父に相談した。


横で話を聞いていたお袋は度々オーバーヒートして倒れる俺に異常に過保護になり反対してきたが、

親父は一冊の本を俺に渡し本の内容を理解できれば許可を出すと試験を出してきた。


「よい子のべんきょう--はじめてのまほうへん--」

子供向けの魔法書である。

初歩の初歩を分かりやすく解説してくれる。

1800年前の知識しかない俺としては思いの外有り難い。


読み進めていると、まぁ子供向けである。 

大したことが載っていないが一つだけ1800年前と完全に異なる事柄があることに気が付いた。


この時代、どんな初級の魔法でも詠唱が必要になっている事に驚愕した。

幾ら平和な時間が長く続いたからって退化するとかありえないだろ・・・

初級なんて魔法の心得があれば誰だって無詠唱で出来たはずなのに。


俺が「俺」だった頃は初級から上級は勿論、一部の最上級も詠唱無しで使えることができた。

(最上級なんて今使ったら大惨事になるだろうが)


結局、得られたことは魔法の退化だけでがっかり。

子供向けだから仕方がないか。


内容がペラッペラの子供向け教科書を読み終わり、親父からの本の中身の質問も何の問題もなく答える事が出来、晴れて魔法の訓練の許可を得る。


訓練初日

俺の訓練は衛兵の訓練場の一角を借りて行うことになったのだが、周りを見回し視線の多さに溜息を吐く。


親父は許可を出した以上、居るのはわかる。

お袋も・・・まぁ、最後の最後まで俺の訓練を反対していただけあって心配で見守るのもわかる。

何かあった時の為に魔法が得意な衛兵と、回復魔法が得意な衛兵が控えているのもわかる。


でも、訓練日で訓練場に居る奴らや本来の業務を抜け出して訓練場の入り口から覗き込んでる奴、

お前ら仕事しようよ・・・



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