19話
俺は目の前の騎士を気にしつつ周りを見る。
俺が打ちのめし、あの騎士の攻撃で巻き込まれた奴の中で、危険な状態に陥ったのが何人か確認出来る。
その中でも盛大に吐血している奴と、うつ伏せで血溜まりの中で痙攣している奴は特に危険だ。
「おい、俺に剣を向ける前にそこの二人を何とかしろ、間に合わなくなるぞ。」
俺は倒れている兵士に指を刺し、目の前の奴に怒鳴る。
「黙れ! 我ら第四騎士団は、貴様のような化け物を討つ為の部隊!
死を恐れる者などおらん!」
こちらに向けている刃が光始め、何かを発動させる兆候が見える。
さっきから人の事を化け物、化け物と・・・
てかその剣、何で光ってんだよ。
また同じのが来たら本当に助からなくなるぞ、そこら辺の奴ら。
『逃げるのは後回しだ、目の前の奴をぶちのめすぞ。 その後そこのやばいのの手当だ。』
『ぶちのめすのは大賛成だけど、助ける必要ないでしょ?
向こうも死は恐れないとか言ってるんだし。』
あれ? 死にそうな人助けようって提案、2対1で否決されたぞ。
『カシヤ、お前修道女だろ! 慈悲の心とかどこ行った?』
『違うわパティ、私は元修道女っ 今はパティのマジカルステッキでしょ!
それより前! 何か来るわよ。』
俺は騎士の動きを止める為に飛び掛かり、カシヤを降り降ろす。
カシヤを受け止めた剣は光が散り輝きが無くなった。
「ふんっ貴様の攻撃など利かぬ!」
「くっ」
流石に別格、受けられたか。
だが、本当に時間が無い、ささっと決めさせてもらうぞ!
初撃は受け止める事が出来ても、バトルドレスを纏った俺の速度にはついてこれず、
数回打ち合うと騎士のバランスが崩れ隙が出来、広場の外まで蹴り飛ばす。
痙攣してる血溜まりの兵士に向かって移動しつつ、カシヤに魔力を込める。
到着するまでに込めた魔力が何倍になって帰って来る。
回復魔法なんて初級しか知らない俺としては、カシヤの補助に期待して魔法を発動した。
『くそっ回復が遅い、あと一人いるってのに。』
『遅い? 本来なら擦り傷とか小さい切り傷を治す魔法でこのスピードは、いくら私が魔力を増加させたからって驚異的よ。』
『それでも遅いもんは遅い、あと少しなのに。
・・・よしっ、これくらいなら何とかなるか。 次!』
『パティ! 後ろっさっきの奴!』
後ろから湧き上がった殺気に気が付き身をよじり振り下ろされる刃を躱すが、足元の血溜まりで足を滑らす。
しまった・・・
振り下ろされた刃が今度は振り上げられ、的確に俺の首筋を狙って来る。
首を反らし何とか避けられたが、ヴェールが剣先に掛かりまくれ上がった。
ヴェール越しではなく直に騎士と目が合うと、騎士が戸惑った様な顔を見せ固まる。
固まった騎士を俺は再び蹴り飛ばし、二人目に駆け寄り回復魔法を使う。
まずいな、完全に顔を見られた。
あの表情は絶対に俺の事を知っている感じだったな。
二人目の回復にも目処が付いた頃には、恐慌から回復した兵士や騎士達に囲まれてしまった。
強行突破は出来るだろうが、流石に大立ち回りになりそうだ。
『流石にこれだけの数は、何とかなるだろうけどめんどいな。』
『だから燃やせばいいのよ。』
『さっきも言っただろ、死人は出せない。
それに修道女の提案する内容じゃないと思うんだが?』
『だから元修道女よ、今はマジカルステッキなの。悪の最後は燃えるか爆発が相場じゃない。
でも爆発は町中だから危険でしょ、だから燃やすのよ。』
『・・・そか。』
一気にテンションが下がったところで、俺を囲む奴らの一角が割れ、見たくない奴と同格かそれ以上の力を持ってそうな騎士がこちらに向かって来る。
まだ動けるのかよ、タフだなぁ。
あいつらを相手にしながらだとこの人数は怪我人だけじゃ済まないな。
はぁ、大人しく投降するか・・・
直ぐ近くまで歩いて来た騎士に向かって、話しかける。
「俺の負「全隊、気を付けーーーーーーーーーーーい」は?」
俺の投降をかき消すように、俺を囲っていた連中の中から号令が聞こえると周りの奴らが直ぐに構えを解き背筋を正す。
目の前まで歩いてきた二人の騎士が俺に跪くと、それに倣うように周りも跪く。
そして蹴り飛ばしていない方の騎士が口を開いた。
「私は帝国第四騎士団、団長ライアン・ガードナーと申します。
数々のご無礼をお許しください、パトリシア様。」
俺は頭を掻き、ヴェールを外す。
「その、悪いんだが何が何だかさっぱりなんだけど・・・」
「それは儂から説明しよう。」
ライアンとかいう団長が歩いて来た方向から聞こえてきた声に目を向けると、スキンヘッドの髭と、親父がこっちに向かって来る。
『あれって、パティのお父様よね?』
『うん・・・』
『その隣の凛々しいお髭の方は?』
『この国の皇帝だ。』
『まぁ・・・』




