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帝国博物館の見習い学芸員  作者: ヤマガム
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16話

「さぁ、この部屋から出ましょうか。」


カシヤの一言と共に魔法陣が現れる。


移転の魔法陣が無い理由はこういう事か。

やはり、連れて行かない限りここから出す気が無かったんだなこいつ・・・


「いや、ちょっと待ってくれ。」

「どうかしたの?」

「いきなりアーティファクトなんてものを手に入れちまったからちょっと戸惑ってな。」

「別に普段通りで良いんじゃないかしら?」


普段通り?

冗談じゃない、こうやってカシヤを握っているだけでも凄い量の魔力が込み上げて来ているのに、普段通りなんて出来るか。


「なぁ、カシヤを握っているだけで魔力が凄いことになってるんだが、こんなんで今まで通りの感覚で魔法なんか使ったら確実に暴発するぞ。」

「あら、じゃあ常時魔力を供給するより、私に魔力を込めたらその分だけパティの魔力を増幅する方が良いかしら?」


そんな事も出来るのか。

こいつ、俺が想像しているよりも遥かに高性能なんじゃなかろうか。

ロリコンだけど・・・

お、込み上げてくる魔力が無くなった。


「魔力を込める方にしてみたんだけど、どう?」

「ん、込み上げてくる感覚が無くなった。 ちょっと試させてくれ。」

「うん。」


左手にカシヤを握りしめたまま、魔力を込めてみる。

込めた魔力に比例するようにカシヤから魔力が供給され、体の中から爆発的に魔力が湧き上がってくる。


「凄いなコレ。」

「でしょでしょ、魔力の増加だけじゃないのよ、魔法の発動補助や身体能力の強化だって出来るのよ。」

「・・・お前、本当に杖なの? てか、俺よりもよっぽど有用に使ってくれる奴とか居そうなんだけど。」

「むさ苦しい男だの、けばけばしいオバサンなんかに使われるなんてまっぴらゴメンだわ。

 私を使っていいのは純黒の乙女だけ! だから長い時間をかけてここで私の所有者を探してたのよ!

 あぁ、パティとは私は運命の出会いだったのよ、その可憐な顔立ち、艶のある銀髪・・・最高だわ!」


いかん、今までは予想だったが遂に確信に変わったぞ。

こいつ本物だ。

どうしよう、鳥肌が立ってきた。


「でもねパティ、私の力はこれだけじゃないのよ。」

「正直、もうお腹一杯なんだけど。」

「だめよ、折角だからしっかり私の力を把握しておいて貰いたいの。」


これ以上は何か嫌な予感がする。

聞きたくはないが、だんだんテンションが上がって来たこいつを止められる気がしない。


「私のとっておきはね、バトルドレスなの!」

「バトルドレス?」

「聞いたことない? 聖剣使いが剣を構えると純白に輝く鎧に一瞬で着替えたりする奴って。」

「あー、あるねー」

「あら? なんか反応が鈍いわね?

 でも大丈夫、パティも私のバトルドレスを身に付ければ必ず喜んでもらえるわ。」

「あの、もう本当に充分だから。

 そうだ、一旦皆に合流してひと段落ついてからにしよう、それがいい。」


あっこいつ移転の魔法陣消しやがった。


「私を両手で掴んで目を閉じるのよパティ、そして意識を集中して!

 私の中にコアがあるのを確認したら、それをパティの体の中に引き入れる様にイメージするのよ。」

「なぁ、今やらないと本当に駄目かそれ?」

「いつ何が起こるかなんて分からないわ、今のうちに私の力を知っておくべきだと思うの。

 怖くないわ、私が全てサポートしてあげるからっ。」


俺の左手にある(ロリコン)が禍々しく感じられるようになって来た。

これ、先端の宝玉みたいの割れば止まるのかな?

もういいや、やるだけやってさっさとここから出てよう。


「はぁ、やればいいんだろ、やれば。」


俺は目を閉じ集中し、カシヤに意識を向ける。

暫くすると白く輝く力の塊のようなものが感じられた。


これがコアとかいう物だろうか。

神々しさを感じるのに、今までの会話のせいでドス黒いオーラが出ているイメージしか沸かない。

もう、どうにでもなれ・・・


カシヤの中にある力の塊を俺の中に移す様にイメージをすると、さっきまでと比べ物にならないレベルの力が体に満ちて行く。


「ぐっ・・・」

「パティ、力んじゃダメよ。

 気を楽にして、流れ込んだ力はもう全てあなたの力なのだから、全てを受け入れるのよ。」


力を抜き、ゆっくりと呼吸を落ち着けると体の中で暴れていた力が馴染んで行くのが分かる。

カシヤに魔力を込めた時に増幅した魔力が霞む程の力が体の中に満ちている。

バトルドレスを身に纏うと言う事がこれほどの物だったとは。


大きく深呼吸をした後、目を開けて身に纏っている物を確認する。


「・・・」

「どうしたのパティ、可愛すぎて声も出ないのかしら?

 この衣装のデザインはね、私が人間だった頃に流行ってた魔法少女のコミックと、私の着ていた修道着を掛け合わせたの。

 修道着をベースに魔法少女の可愛らしさを出すのに苦労したわ。

 特にミニスカートは熟慮したのよ、可憐さを残しつつ妖艶さが出ないぎりぎりのラインまで短く調節するのは大変だったわ。」

「・・・」

「さしずめ、マジカルシスター・プリティーパティってところかしら。

 私はマジカルステッキね。」

「・・・」

「パティ?」

「・・・」

「ねぇパティ、どうして黙ってるの?

 私一人で喋ってたら寂しいわ。」

「・・・チェンジ。」

「へ?」


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