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或いは逃げ方について。  作者: 相宮。
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研究所と逃げるための言い訳

 君が幸せになれるように。

 君が笑っていられるように。

 自分は、勝手なことをしたから。

 君は、幸せじゃなくなった。

 君が感じている幸せを壊したのは。

 自分、だったから。


 目を覚ましたのは、灰色の――研究所、みたいな所だった。

 三角フラスコや、ビーカーなどの実験器具のような物が置かれている。

 人は、誰も居なかった。

 居ないと言うよりは――何かをしている途中にいきなり消えたような。

 きっと実験をしている時に、消えたような。

 漫画で見るようなピンクの液体が溢れていたり、血のような赤黒い物が、火にかけられていたり。

 変だった。

 ピンクの液体や赤黒い物に近寄ってみる。

 ピンクの液体が、手にかかった。

「……痛い」

 チクリと、針で刺されたような痛みが何度も走る。

 チクチクと

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 近くにあった水道で洗い流すと、その痛みはなくなった。

 手に、火傷のような傷がついていた。


 部屋から出た。

 手の火傷のような傷が何だか気持ち悪くて、その手を見たくなかった。

「ね、誰かいるの?」

 ――誰だ?

 良くわからない声が、後ろから聞こえた。

 後ろを振り返る。

 視界に、得体の知れない生物らしきものがいた。

 気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて気持ち悪くて

「あはは」

 追いかけて――ッ

 咄嗟に逃げた。

 全部が灰色で、もうどこがどこだかわからないけれど、逃げた。

 行き止まり――

 近くの部屋へ飛び込む。

 得体の知れない生物らしきものが、まだ追いかけてきている。

 息切れが

 状況がわからない。

 あれはなんなんだ

 まだ、ドアの前にいる。

 ドンドンと、音を立てて開けさせようと――

 ドンドンと

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン

 息が、呼吸がだんだん出来なくなって

 胸が苦しい。

 意識が、途切れていくような感じがした。

 力が抜けて、倒れて――


 今日は、何もされなかった?

 自分は、傷付きたくないから。

 明日も遊ぼう。

 逃げて

 自分は、君が笑って

 君から今も

 泣かないでいられるようにしたいから

 逃げて

 だから、大丈夫。

 ごめんなさい。

 ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――

 自分が、君を、傷付けた

 ――ごめんなさい。

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