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合縁奇縁

昨夜はなんだか興奮して、なかなか寝つけなかった。


鏡の話をヒナタに打ち明けたことやこれから受ける融資のことを考えてると芯から寝れなくて、きっとヒナタもそうだったと思う。


彼女も寝返りを何度も繰り返してた。



日はまだ登っていない薄暗い夜明け。


あたしたちは銀行に向かうための準備を急いでいた。


ヒナタのこれまでの学歴や職歴…そして年収。



「よし、こんだけ揃えてれば融資もおりるでしょ」



ほんの短い間の援助でもいいんだ。


わずかなお金でも構わない。


その場しのぎの助けになってしまうことは解りきっているけど、それでも、


流白村の子供たちを死なせたくない。




「じゃぁおじちゃん!!行ってきます!!」



あたしたちが家を出る際、



「わしが借りられれば一番いいんじゃが…」


ってぶつぶつ呟いてるおじいちゃん。




「………」



朝からそう何度もぼやいてるおじちゃんに、苦笑いのヒナタは“もうお金稼げる体力ないでしょ!?”って肩を叩きながらなぐさめてる。



「融資がおりればいいが。二人とも気をつけて行っておいで」



「うん!!夕食までには帰ってくるよ」



終始心配そうな表情で送り出してくれたおじいちゃんを背に、あたしたちは東の町へと向かった。


東の地域は、

白虎最大の商業の町。



そこはちょうど、白虎と朱雀の土地の境らしく、ヒナタの話を聞くかぎり、


おそらく元の世界で言うと“県境”みたいなものだと思う。



あたしたちが目指した銀行は、白虎の中でも一番の大手で、


尚且つ、信頼度、知名度が共にある金融組織。



この世界には、車や電車は存在しない。


移動手段は、歩くか走るか…または飛ぶか…。



いっそう茶色の瞳をしたあたしが白虎だったら、走るのも速かっただろうに…


飛べるヒナタに歩かせるのは申し訳ないと思いながらも、あたしたちは先を急いだ。



何度か休憩をとりながらも、3時間ほど歩いて、少しずつあたしたちの足取りにも疲れが見え始めていたとき



「カンナ!!ヒナタ!!」



突然名前を呼ばれたその声にびっくりして、二人同時に振り返った。




「…モア!?」



あたしたちと視線が合って、ニコッと笑みを見せながら駆け寄ってくる彼女。


「モア…どうしたの?こんなところで…」



「さっきヒナタの家を訪ねに行ったら、おじいちゃんから事情を聞いて…ねぇ…流白村のために金融に行くって本当なの!?」



道中、まさかモアに出会うとは予想だにしてなかったあたしたちは戸惑いながらも顔を見合わせた。



「う、うん…。融資が下りればいいなぁって…」



そう言ったあたしを見て、モアはうつむきながら小さなため息を漏らした。




「そんなこと…しなくて…」


「ちょっと待って!!そんなことしなくていいとか、そのセリフは無しだよ?

あたいたちが好きでやることなんだからモアは気にしなくていいの!!ねぇ?カンナ?」



「うん。ヒナタと考えて決めたことなの。借りれるかわからないけど、金融に行ってみる」



モアは口を閉ざしたまま、遠慮気味に少し顔を上げてあたしたちを見つめてくる。



そんなモアを見て思う。


本当にユリそっくりだなって…。


こんなに、ここまで一緒の人間がいるなんて信じられない。



確かに、世の中には似てる人間が3人はいるっていうけど、そんなレベルの話じゃない。


まぁ~でもそれは

あっちの世界の話だけど。



ん…?あれ?ちょっと待って…。


あっちの世界の…話?



も、もしかして…。



ここは鏡の中の世界。


だから、あっちの人間と同じ顔の人間がここの世界にも存在するとしたら…。


ありえるかもしれない。



ちょっと非現実的すぎるけど、そう考えれば、ユリとモアが瓜二つなのも納得いく気がした。



それくらい、二人は仕草やしゃべり方以外は全く同じ人物に見える。



「じゃぁ、あたいも一緒に東の町に行く!!」



「えっ!?」



上の空だったあたしの前で、いきなり突拍子もないことを言い出したモア。



「お願い。あたいも連れてって。あんたたちにこんなことさせる原因を作ったのは…あたいだもの…」



その言葉を聞いて、ヒナタは無言のままあたしの方へ視線を移した。



思わず三人の間に沈黙が続く。



「じゃぁ…一緒に行く?」



あたしがそう言うと、モアは満面の笑みを浮かべた。



「本当?あ、ありがと!!」




それからさらに2時間ほど歩いて、やっとの思いでたどりついた目的の銀行。




受付を済ませてから、

かれこれ…20分。


これは尋問だろうか…。


まるで、いたずらをしたガキが警察につかまって取り調べを受けているかのようで…。



「職はなんだ…」



「半年前まで役場に勤めていたよ」



「役人か…で、今は?」



「だから、今は無職だって言ってるでしょ?」



あたしとモアはただ黙って、ヒナタと、担当のおじさんのやり取りを聞いているしかない。



生年月日から住所やら淡々と必要事項を書類に記入していたおじさんは、


気だるそうにあたしの方へ視線をうつした。



「で?…君は?なんの仕事をしてる」



えっ?あたし?


あたしは今まで働いたことなんて一度もないし…。



「あぁ…はい…あたしは…まだ学生…というか勉強中…です」



おじさんは、カタンとペンを置くと、はぁ~って大げさなため息をもらす。



「悪いけどこっちは忙しいんだ。遊びに付き合ってる暇はないんだよ。ほらっもういい。帰った帰った」



あたしたちの目の前で手をヒラヒラさせながら、横にあった段ボールの箱へ書類をポイっと投げ入れた。



「えっ?ちょっと待ってください。それって、融資…してもらえないってことですか?」



せっかくここまで来たっていうのに、あまりにも早い結末。



「君たちに金を貸す信用度は…」



そこまで言って、ゆっくりと首を横に振った。



「なんだよそれ!!何も遊ぶ金を貸してくれって言ってるわけじゃないだろ?」



ガタンと立ち上がって、

突然身を乗り出したヒナタが、

胸ぐらまで掴んで訴えるもんだから、



おじさんは壁にあった、

呼び出しベルか、防犯ベルのような赤いボタンに手を当てた。



やばっ…。


興奮してるヒナタをなだめながら椅子に座らせて



「あの…どうしてもダメなんですか?流白村の子供たちを助けてあげたいんです…」



あたしがそう言うと、おじさんは、呆れたような目であたしたちを流し見る。



「君たちに金を返すあてなんてないだろ?無理だ。帰ってくれ…」



確かに…今は返すあてはないけど。



だけど、これから働いて返していきたいのに…。



やっぱり考えが甘すぎたんだろうか。



「二人とも…もういいよ。帰ろう…」



耳元で囁くような弱々しいモアの声が聞こえて、ヒナタはギュッと唇をかみしめていた。



流白村には、今にも死にそうな子供たちがたくさんいるのに。



自分の肉を食べろといい、自らの命まで絶つ悲痛なおばあさんだっているのに。



どうすることできないなんて。



今さら自分たちの無力さを痛感して、モアの顔をまともに見れない。



「ほらっ!!もうさっさと帰ってくれ!!」



面倒事をあしらうかのようにそう言われて、


あたしたちは、やるせない気持ちの中、仕方無しにゆっくりと椅子から立ち上がった。



…――と、その時。




「どうしたんじゃ?」



おじさんが赤いボタンを押したからなのか、


それともあたしたちの声が大きすぎたのか…。



突然、80歳くらいのヨボヨボなお爺さんが、後ろのドアの隙間から顔をのぞかせてくる。



その姿にびっくりした表情で、ガタっと席を立ったおじさんは、お爺さんに向かって深く一礼する。



「アギ様…騒々しくて申し訳ございません」



「いやいや…いいんだよ…一体なんの騒ぎかね?」



「いえ…この子たちが融資を希望してまして…」




肩まで伸びてるストレートの白髪しらがと、大きな鷲鼻のお爺さんは、とても偉そうなオーラをかもし出してる。



もしかしたら、この銀行のトップなのかもしれない。



そして



「ふむ…なら、貸してやったらいい」



と、いとも簡単にそう言い切る。



あたしたちは思いもよらなかったお爺さんのその言葉を聞いて、お互い顔を見合わせた。



「で、ですがアギ様…。このもの達は、返すあてがないのでございます」



「……」




あたしたちの方へ、ギョロッとした、ほりの深い目を向けたお爺さんは、眉間にシワを寄せて難しそうな表情を見せる。



「流白村を助けたいらしいのですが…」



「流白?あぁ…今、大変だと聞いたことがあるが」



「あの…お願いします…。子供たちに食料を買ってあげたいんです」



今度はアギ様と呼ばれているそのお爺さんにすがるつもりであたしが口を開くと、

横からおじさんが身を乗り出して妨げてくる。



「まだ言うのか!!だったらいつまで助けるんだ?一生か?やってもせいぜい1週間やそこらだろ?そんな捨て犬にエサやるみたいに中途半端にする優しさなら、村にとっては余計な迷惑なんだよ」



「……」



何も、言い返す言葉がなかった。



あたしたちが、村のためと言ってやっていることは、親切でも世話でもなんでもなく…、余計な…迷惑…。



改めて言われたその言葉をかみしめると、このおじさんの言ってることが正しいようにも思えてきて。



「あんたさ…流白村を…見たことある?」



ヒナタは、もう力のない

小さな声でおじさんに向かってそう呟いた。



「いや、ないね。だけど村の連中だってそこから出たけりゃ出ればいいんだ。

好きでいるんだから知ったこっちゃない」



「好きでいる?ふんっ。こんな貴族の組織なんかでぬくぬく働いてるもんだから、なんにも知らないだね。流白出身というだけで職にはつけない。金も借りれない。わかる?その村に生まれたら一生その身分なんだよ。国が悪いんだ…今の日本がそういう風にしたんだよ!」



「なんだと?そんなに“国が…国が”というならうちじゃなくて、青龍の皇帝陛下にでも頼みに行きな」



「…っ!!このくそじじぃ…」



「ちょっとヒナタやめて!!」




またぎゃぁぎゃぁと声を張り上げて騒ぎ出してしまったあたしたち。



それを止めるかのように、ゴホンっと大きな咳払いをしたアギ様は



「わかった。君たちの思いはよくわかった。ちょっと待っていなさい。お伺いを立ててみよう」



それだけ言って、ヨロヨロと杖をつきながらどこかへ向かっていく。



えっ?本当に?


もしかして、上の人にでも頼んでくれるってこと?



ちょっと騒いでみるのも悪くはないな。


話しが少しは進んだわけだし。




「もしかしたら融資が下りるかもね♪」



アギ様の後ろ姿を見送って、思わず三人でハイタッチ。



「お前たちも運のいいやつだな…」



担当のおじさんはブスっとしかめっ面をみせながら、どこかへ消えていく。




あれ?でも…待てよ…。



あんなにお偉いオーラを出してるアギ様が、お伺いを立てるっ…て…。



なら…アギ様はここの頭じゃないってことなんだ。



何にしても、今日は少しでも融資してもらって、食糧が手に入るのであればそれでいい。



言われた通り、おとなしく椅子に座ってアギ様が帰ってくるのを待っていると、


それから15分ほどたったころ、




「話だけでも聞いてくださるそうだ。ついてきなさい」



「あ、ありがとうございます!!」




銀行の奥へと通され、

忙しそうに働く職員の人たちにペコペコと頭を下げながら、前をゆっくりと歩くアギ様のあとについて行った。



一番奥の大きな扉が開かれて、



「こっちだ」



促されるままに扉から外へ出てみると、


右を見ても左を見ても果てしなく広がる細長い廊下。



ところどころに設けてある廊下の窓ガラスからは中庭が見えて、


それを挟んで対面側にも屋敷が見える。



銀行の奥がこんなに広かったなんて…。





「茶でも飲んでくつろいでいればいい」



応接間らしきところに通されたあたしたちは、


緊張のあまり、ここまで一言も言葉がないまま、とりあえず、大円形のテーブルを囲うように並べてある椅子に腰を下ろした。



「ここまで来るのは遠かっただろう…」



「はい…歩いて5時間ほどかかりました」



主を待つ間、アギ様とあたしたちは、

たわいのない話で時間を過ごした。




「流白村は我々も関わりがあってな…」



「そう…なんですか?」



「まぁ、事を話せば長くなるが…とにかく無縁ではない」



銀行と…流白村…。


一体どんな関係なんだろう。



アギ様からその話をもっと詳しく聞きたいと思っていたところに、


コンコンっとドアをノックする音が部屋に響いた。



ドアが開いてそこに立っていた男性はこちらに向かって深く一礼する。




「お見えになられました」




その言葉と同時にスーッと立ち上がったアギ様。



そして、杖に体重をかけながら斜め45度に頭を下げている。



こんな高位高官のような

アギ様が頭を下げるなんて…。



一体どんな人なんだろう。



最高の緊張の中、


左右に大きく開いた両扉をじっと見つめていたあたし。



いつも強気のヒナタも、

緊張のあまりかあたしの腕に絡みつく。



ゴクリとツバを一度飲んで徐々に見えてきたその影を凝視していたら




「騒いでいるのはお前たちか」



聞こえた声と、



全てが見えたその顔に



一瞬呼吸が止まった。



うそ…でしょ?


な、な、なんでよ…。


どうしてあいつが


ここに…くるの?




「あれ?あんたは昨日の!?カンナを殺そうとした奴じゃない!!カンナ…そうだよね?」



ヒナタは両手を軽く合わせると、ぶわっと小さく炎を出していた。



この光景に口もきけないほど茫然と立ち尽くしてしまったあたし。



そんなあたしを彼は鋭い視線で睨みつけてくる。



一瞬の強い風を巻き起こしバンっと音を立てて閉められたドア。


その風でヒナタの手の中の火も消されて、あたしたち三人は寄り添いながら身を縮めた。



こいつが…


あのキス男が…


ここの人間?



なにがなんだかわからなくて頭が混乱する。



“お伺いをたててみよう”



さっきそう言ってたアギ様。



ならこいつは、アギ様にお伺いを立てられるほどの立場ってこと?



でも、仮にもしそういうことなら、一つだけ納得できることがあった。



あのうどんのお金…。



店の人やヒナタの反応からしてきっと大金だったはず。



でも、ここのトップだとしたら十分納得がいく。




「若様…このものたちは、500ウェンほどの借入を希望しております」



そう言いながら、アギ様が大きな椅子を引くと、


彼はスーッとそこへ腰を下ろした。



「金の使い道はなんだ」



相変わらず冷淡な物言いであたしを凝視してくる彼。



その瞳を、あたしも負けじと視線を離すことなく、にらみつけていた。



やっとここまで来たっていうのに。


この部屋に入ったときは、もう融資が下りるものかと半分期待していたのに。



まさか最後の頼みの綱が、こいつだなんて…


あぁ…。


あたしはなんて運がないんだろう。



だけど…もし、仮に百歩ゆずってこいつのことをひいき目に見たとしたら…


この人は初めてあの森に行ったとき、危険な目にあいそうだったあたしを助けてくれた人。



キスされてむかついたけど、事実上はあの兵士たちから守ってくれた。



お団子も買ってくれたし、


うどんもごちそうになった。



でも昨日は…

ちょっとだけ殺されそうになった。



でも、でも、でも!!


実際は、そんな悪い人では…ない…はず…。



そう、無理やり自分に言い聞かせてみると、


もしかしたら、この人なら話を聞いてくれるかもしれない。


なぜだかそんな期待まで持ってしまう。



だから、望みがあることを信じてあたしは話を切り出すことにした。




「村の人たちの食料が必要なんです。だからお金を貸してください」



椅子から立ち上がり、誠意を込めて深く頭を下げたあたし。



だけどそれをあざ笑うかのように、ふって鼻にかけた笑いが頭上から聞こえくる。



「今まで散々生意気な口を叩いておいて、今日はまた随分と低姿勢だな」



「……」



た、確かに…


多々暴言、吐いちゃったし、


昨日まではタメ口だったけど、でも今日はあたしの方が完全に立場が下…。



「お願い…します」




それでも怯むことなく下てに出たあたしに



「村のために金を貸すことはできない」



彼はきっぱりと、そう言い切った。



「お金なら時間がかかっても返せるけど、死んでしまった人の命は元に戻せないでしょ?」



「素性のしれない者にむやみに金を貸すほど世の中、甘くは無い」



「絶対に返しますから…お願いします」



「金があれば、村が再生できると思うか?」



穏やかな口調で、だけど、あたしの言葉をさえぎるように威圧してくる。



そりゃあたしたちだって、ほんの少しのお金で村が復興できるとは思ってない。



「お金が必要なんじゃない。今すぐ食料が必要なの。


このままだったら、あの村はいずれ滅んじゃう。


でも、もしあなたに助けられる力があるなら、その力を貸してください。


その力でいくつもの尊い命が救えるんです」



「……」



結局、貸してくれ、貸せないで、話は先に進まない。



やっぱり、どうすることもできないの?



ほかの方法を考えるしかないのかな。



もう白旗を上げる気持ちでぎゅっと瞳を閉じると



“カンナあきらめないで”



えっ?



突然、あたしの耳のずっと奥で聞こえてきた声。



誰…?



こだまするその声にじっと耳をすませてみる。



あっ…!!もしかして…


お母…さん…なの?



赤ちゃんの頃の記憶なんてあるわけないのに、


なぜかその声がお母さんだと感じる。



あたしはふいに自分の指につけていた真珠の指輪に視線を落とした。



そうだよね…お母さん。


あきらめたら、そこで終わりだもんね。



「なら…この指輪を…」



「なんだそれは…真珠か?」



「これなら結構なお金と交換できるんじゃない?」



「見たところお前は高貴な者には見えないが、なぜ真珠なんかを持ってる」



あっちの世界で真珠なんてめずらしいものでもないのに。



でもあたしにとっては、

とてもとても、物凄く大切なもの。



「これは…お母さんの形見なの」



手から指輪を抜き取ると、それをじっと凝視していた彼。



「これを預けるから、お金を貸してください。だけどお金を返せるようになったら、その時は指輪も返して」



「返せないときはどうする」



「その時は…」



指輪は返してもらえないよね…。



でも仕方ない。



あんながりがりの赤ちゃんを見たら、指輪とは比べられないよ。


そう決心して、彼の目の前に指輪を差し出すと、彼は無言のまま首を横に振った。



「それは必要ない。母の

大事な形見なら、お前が持っていろ」



「えっ?…でも…お金が…」



「もちろん金を貸すことはできない。だがその代わり条件をだしてやろう」



条…件…?



彼はスーッと椅子から腰を上げると、冷めた眼差しであたしを見降ろしてくる。




「条件って…それは、なんですか?」








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