洞窟探検
006
昨日は、あれからそのまま眠ってしまった。ずぶ濡れのままで一晩過ごして風邪も引かないとは。やっぱり、人間じゃないな。
日課の体長測定をしてから、あの爆発でも山頂に傷一つついていないことに気がついた。岩の頑丈さをほめるべきか、それをものともせずに落書きしている自分の爪を誇るべきか。そして、あれだけいろいろやったにも関わらず、今日もきっちり身長は延びていた。
うん、まーてん、ありがとう。あなたのおかげで、今日も元気です。
気を取り直して。
今日は、まーてん南東側の洞窟を調べることにした。
南東側にあるものの一つは、最初に水を飲んだ湧き水の近くにある。入り口は、身長の1.5倍、幅は両手を広げたほど、少し奥に入ると右に曲がっている。そこは、かなり広い空間になっていた。さらにその奥には、より小さい洞がいくつかあり、中には巨大な水晶がゴロゴロしているところもあった。きれいだねぇ。しばらくうっとりと眺めてしまった。光り物、好きだもん。
部屋が1つだけの洞窟は3つほどあった。入り口は先のと同じぐらいで、洞窟自体もほどよい高さがある。作業部屋によさそう。
ちなみに、すべての洞窟で、蛇どころか虫一匹見つからなかった。ということで、お世話になることに決定。大きくなったら・・・、そのときはそのとき。
ジャングルの中にあるせいか、入り口が狭いせいなのか、さほど、床の土ホコリはつもっていない。が、軽く掃除することにした。新居に入るときの儀式みたいなものだ。
近いところに生えている杉もどきから枝をもぎ取って来た。
・・・普通の人は、素手で生木を折り取らない。自分は、かるーくへし折ってしまった。案外力持ちなのか?
握りしめても手のひらは溶けないし、実と違って(体を溶かすような)危険物にはならないようだ。箒代わりに使える。
ほのかに針葉樹っぽいにおいもする。葉の部分は、敷布団代わりにできないかな?
ふん、ふん、ふふ〜ん。鼻歌を歌いながら、洞窟の床を掃いていく。柔らかく、音が響く。歌と、箒の奏でる音。
よく見ると、天井に細い隙間があって、そこから空気が流れているようだ。おお、換気も十分。
小洞窟も、同じように掃除した。
一段落した頃、今日のスコールが降り始めた。小洞窟の中から、雨の降る様を眺めている。山頂からみるのとは異なる風景。いつか、見慣れていくのだろうか。
崖下の周辺は、杉もどき以外は芝のような草がみっしり生えている。庭芝よりも、細く長い葉をしている。おかげで、雨が降っても泥だらけにならない。日が当たると、これまたいいにおいがする。これも、干し草にして寝床にしたい。
今日は、これでおしまい。
朝だ、日課だ、山頂だ!
・・・ちが〜う
洞窟内で寝てたにも関わらず、いつも通り日の出直前に目が覚めた。体をほぐした後、山頂に登って体長記録を付ける。伸び幅は今までと同じ。あまり大きくならないところで止まってほしいな。
洞窟を手放すのは惜しい!
今日は、リスもどきの齧ってた実と、麓近くに生えている杉もどきの実にどう違いがあるのか、実験してみようと思う。ちなみに、それぞれの木を、森杉、てん杉と呼ぶことにする。
まずは、森杉と、てん杉の森側と洞窟に近い方から、それぞれ森杉と同じ大きさの実を採取した。色は、ばらばら。てん杉の実は、小さくても極彩色なんだもん。実を、いつものように半分に割る。種と果実を分けると、小洞窟のひとつに持ち込んで並べた。果肉の色は皆同じで、てん杉の方がにおいが強い。
もう一つ取って来て、種を取り除き口にする。てん杉の方が味がちょっと濃いか? 口の中は平気なようで、一安心。ちなみに、実を割らないまま洞窟の床に置いたところ、しなびてつぶれて完全に消えてなくなった。皮も種も残らないとは、相変わらず謎な実だな。
食べ物を地面に直置きするのは抵抗がある。食べる前に洗えばいいんだけどね。果物の下に敷いて、土に触れさせず、なおかつ通気性のあるものはないかな?
最善はザル。すぐに作れないので却下。ゴザ。これも今作れないものとして却下。金網。どこにあるんだそんなもん。却下!
てん杉の葉。使えなくはなかったが、安定しない。すぐに転げ落ちる。意味がない。
外の草。ちぎって来て洞窟の床に敷いたら、消えた。謎植物、お前もか!
むう、木板ならどうだ? 実を並べるときに間隔を大きく取れば通気性を確保できる。先ほどの道具に比べれば、入手もしやすい。木を割ればいいだけだし、何せ腕力には自信がある。レッツ、トラ〜イ!
実付きの悪い枝を選んで、ぽきぽき折り取る。実際には自分の腕の太さぐらいはあるんだが、片手でいけちゃう。もう片方の腕で抱え込み、洞窟へ運ぶ。表皮は滑らかで、ささくれはない。折口も強引に折り取ったにしては、ギザギザが少ない気がする。葉はいらないから削ぎ落としちゃえ。処理した枝を、適当な長さにそろえる。パキポキ。
さて、ここからが問題。・・・どうやって板にすればいいかな?
一本を手に取る。
枝の折口に両手をかけて、引き裂いてみた。裂ける○ーズのようにペリペリと開いていく。少々のでこぼこはあるが、ほぼ平らになっている。もっとも、しばらく放置して、腐ったりしなびたり溶けたりしないのを確認してから使おう。残りの枝も、同様に割った。
それにしても、生木を素手でもぎ取ったり裂いたり・・・、全くもって日々これ驚きの連続だ。
残ったてん杉の葉も、しばらく置いといて、ヘンなことにならないか確認しよう。ほんと、布団の代わりにできると良いな。
いよいよ、主人公の創意工夫が活かされるか?




