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生きるために 2 VS

004


 そうだな、洞窟がいいな。


 思ったよりもこの手は器用に使える。

 となると、もっといろいろ工夫したくなる。保存食とか、道具とか、布団もいい。となると、保管庫や工房として使える場所が必要となる。

 木で作る手もあるが、この体、どこまで大きくなるか予想がつかない。ログハウス程度じゃ、気候的にいつまで保つかわからないし、丈夫でバカでっかい木造建築の技術の持ち合わせもない。それくらいなら、最初から大きめの洞窟とかを確保する方が、建設的というもの。つくらないけど、建設的。


 何よりも、ドラゴンには洞窟でしょ!!


 ぽてぽてと歩いていく。

 周回飛行中、南東側と北西側にいくつかの岩の裂け目を見つけていた。まず、北西側のに行ってみよう。縦に大きく口を広げている。幅は狭く、奥行きがありそうだ。今まで、岩山間近に動物が近寄ってこなかったことから、洞窟内にもいないと判断して、ずかずかと突き進む。緩く湾曲していて、すぐに空は見えなくなった。


 さらに奥に進む。中は真っ暗だけど、ハイスペックな視力が大活躍。暗視能力も完璧とは、すごいね。ふと見上げると、天井は床よりも幅が広くなっていて、左右の岩壁とは質感が違う。ダイヤ柄っていうのかな? 多分堆積していた地層の1層だけが浸食されて洞窟になり、残った部分の断面があんな模様に見えるのだろう。

 ・・・六角柱なら玄武岩、しかも火山岩だから堆積岩中に見えることはないはず。でっかいダイヤ柄が連なる堆積岩なんてあったかな? それとも、地球とは違う組成だから有りなのか?


 なんか、森の中でみたダイヤ柄の[あいつ]を思い出した。でも、[あいつ]よりもさらに大柄よ? 本来、[あいつ]らは、ほぼ無音、無臭で獲物に忍び寄り、獲物を確保する。・・・ここで、ハイスペックな耳が、なにかが這っている音をとらえた。壁に反響しつつ、徐々に大きくなっていく。右、壁。左、壁。天井、高すぎ。洞窟の奥、逃げ場がないのでもっと無理。

 出口に向かって、そぉっと後ずさりし始めたとたんに、天井から落ちてきた! はい、回れ右。全速力!



 天井に張り付いているヘビって有りですか?!


 かろうじて、ボディアタックを回避。洞窟の床の方が狭く、[あいつ]の曲がっていた胴体部分が引っかかって隙間ができたため。ラ〜ッキ〜! つばさを背中に張り付けた状態で、前屈突進。自分の後ろには、ヘビの頭が急接近中。そうね、曲がってなければ隙間は通れるよね。ううう、しっぽの先に、ヘビの舌が当たっている。急げ急げ急げ、丸呑み「される」のは嫌だー


 出た!


 洞窟から飛び出した勢いで、空中に退避する。巨大ヘビも洞窟から出て来た。まだ、全体が出てこない。それでも迷うことなく、自分をターゲットにして顔を向けている。鎌首アタック! もっと上空に逃げる。こんどは絶壁を登りだしましたよ。洞窟の天井も余裕なわけだ。あきらめるようす全くはない。


 うん、自分の方が侵入者の新参者だった。

 今から安全確保できそうな場所をほかに探し出せるとは限らない。山頂と洞窟で棲み分けできればよかったが、完全に敵認定されてしまった。体調その他諸々の条件からも、自分はここに住み続けたい。とにかく、気に入ったんだもん。


 両者ともに譲らず、となると


 すなわち、[縄張り争い]


 ・・・特撮映画は好きだったが、リアル怪獣大戦争をやるはめになるとは。

 彼我の体格差は数十倍、うっかりボディプレスを受けたら、ぷちっと伸されること間違いなし。噛み付いたり引っ掻いたりしても、あの鱗相手では効果もなさそう。う〜ん、勝つ手はなしか?


 巨大ヘビは完全に山頂に這い上がった。森の中で見かけた[あいつ]とは比較にならないほどの大きさ。飛び回る自分に向けて、大口を開けて向かってくるだけでなく、牙の先から液をまき散らしている。猛毒かな、強酸かな、消化酵素かな、全部かもしれない。落ちたところから、白煙が立ち上ったし。太い尾は、ハエタタキのように振り回す。全身凶器だね。


 ところで、今更だが、巨大ヘビの放つ「気配」と、毎朝、山頂で目が覚めるときに体に受け止めていた「もの」、岩山からはなれるほど薄まっていく「何か」、杉もどきの実の「におい」、そして、雷から受け取った「ぬくもり」、すべて自分には「同じ」に感じられる。

 ある種のエネルギー、例えば「魔力」のようなものではないだろうか、と、この体の本能がそういっている。自分の中にもある、感じられる。ならば、「力」をうまく使えば戦うことができるかもしれない。


 ただ、同じ質の「力」をぶつけるだけでは、倒せない。逆に喰われるだけだろう。相手に「ごちそう」与えて元気づけてどうする!? ってことだ。ならば、食べられないものに「加工」して、さらに食べきれないほどの「量」を叩き込めばいい。体の中からのダメージならば、うまくすれば、一発でけりがつく。


 というより、ほかに方法が思いつかない。



 前世で使用した「相殺」と「対消滅」は、この世界の「力」をある程度「理解」する必要がある。今、「理解」している時間はない。なにより、彼はこの世界の生き物なのだ。この世界から「滅する」のではなく、世界に「還る」べき生き物。前世の手法は論外、ということだ。




 ヘビの攻撃を躱しながら、両手に「力」を集めていく。自分の体内からだけでなく、つばさがつかみ取る「何か」もかき集めていく。ややスピードは落ちたが、まだ直撃は受けていない。気配から推測したヘビの「力」の二倍の量を、両手の間でヘビの口に収まるくらいの大きさに凝縮していく。ついでに、雷チックな「質」に変換した。


 「これ」、狙いを外したら周辺の被害がすごいことになりそうだ。まだ2、3発は撃てそうだけど、とにかく外しちゃいけない。貫通したときのことも考えて、ヘビの横から撃つ。万が一は考えない。できると信じて、やる。


 「弾」を凝縮させつつ、ヘビの体の向きを誘導する。山頂東側からヘビに「弾」を放つ! ぼんやりと光る「弾」は、大きく開けられたヘビの口に飛び込んだ。すぐさま、口が閉じられる。


 その瞬間、ヘビの頭から尾に向けて小さく雷光が走った。

それなりに、環境に適応しています。

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