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メイドさん、参上!

103


  ロックアントの群は、重装備の騎士団員がそろっていても、重傷者が出ることを覚悟しなくてはならないほどの難易度となる、んだそうだ。

 昆虫系の魔獣は魔術も効きにくく、魔術師の支援があってもあまり効果がない。現に妄想男の【氷槍】は、ロックアントを刺激はしても、ぜんぜんダメージを与えていない。


 さぁて、困った。


 たぶん、鎧男は自分の身は守れるだろう。が、子供と、アブナい妄想男がいる。彼一人で残る二人を守りきれるか? 無理だろうな。さっきの状況から見ても、妄想男がさらに足を引っ張る可能性がある。


 ならば。


 「さあ、勇者さま、このあわれな下僕にそのお力をぉぉぶ」


 水晶弾を腹に叩き込んだ。気絶していてもらおうか。

 さて、次。


 「そこのお兄さん、二人の保護、よろしく〜」


 もともと、一緒に来たようだし。まかせるのが筋ってもんでしょ。念のため、結界用の種弾を打ち込んで、三人の周りに『防陣』を張っておく。それでは、自分は蟻退治を、って!


 「遅参いたしました」


 ・・・今度は、メイドさんでした。TPOに無理がある! 場違いすぎるわ〜。


 黒のシンプルドレスにエプロンとヘッドドレスつけたお姉さんが、細剣を抜き放ち、ロックアントに果敢に立ち向かう!


 ・・・あっけなく、弾き飛ばされた。


 そうでしょうとも。


 大の大人が頑丈な剣やらメイスやらでめった打ちにしても、なっかなかつぶせないのがロックアントだ、って言うし。そんな、細っこい剣と腕でどうにかできるとは思えないよ。まあ、自分は、ほら、アレだから。


 「・・・まだまだ!」


 あ、復活した。正面からじゃなく、脇から関節を狙い始めた。狙いはいいんだけど・・・。


 「ロージー! やめろ! 下手に攻撃すると、群全体が興奮して手がつけられなくなるぞ!」


 鎧のお兄さんの言う通り。他の蟻が、ぎちぎち顎を鳴らし始めた。

 あ〜、メイドさん、今度は大顎で打ち据えられちゃったよ。これは、しばらく起てないな。気絶した。もう、無理はすんな。

 あわてて鎧兄さんが寄ろうとするが、『防陣』結界に阻まれて動けない。


 メイドさん個人に種弾の結界を張るには、ロックアントが近すぎる。なので、メイドさんに食らいつこうとしていたロックアントの目の前に、手にしていた黒棒を投げつけた。大顎の間に突き刺さる。黒棒に阻まれてロックアントは噛み付けない。素早く背中に飛び移り、指弾で仕留める。


 残るロックアントも、「いつも通り」ちゃっちゃと片付ける。


 そして、(蟻は)誰も動かなくなった。なんちゃって。


 おや? お兄さんも、固まって居る。

 さて、結界を解除しておこう。種弾は役目を終えて消滅する。


 「動けます? お兄さん?」


 見た目、大怪我しているようには見えないけど?


 「・・・助かった。感謝する」


 剣を鞘に戻しながら、お礼を言ってくれた。大丈夫そうだ。


 「怪我はないようですね。お連れさんは、それなりみたいですけど」


 「そうだ、ヒスピダは?」


 「死んでませんて。腹に一撃当てて、気絶させただけ。あのままじゃ、もっとヤバそうなこともやりかねなかったでしょ?」


 「・・・そうだな。気を使わせた。すまない」


 なんか、沈痛そうな顔をしているな。とにかく、今出来ることは〜。


 「素材、回収している間に、怪我の手当をしてあげてくださ・・・、なんなんですか? その目は」


 「重ね重ねすまないが、薬があれば分けてもらえないか? あと、食べ物も・・・」


 あきれて物も言えない。が、言わせてもらおう!


 「よく! 今まで無事でしたよね?!」


 「・・・」


 自分がお家に帰りたい・・・。

 すみません。今回は、本文短めでした。


 #######


 魔術

 主人公は、魔力の構成素子そのもの(無系統ではない、原子と素粒子ぐらい関係)を操作するので、厳密には魔術師とは言えない。また、独特の術式を使うので人には真似もできない。

 こちらの世界に来てすぐの頃のときの思い込みがあって、【火】に類似した術が苦手(007話)。そのため、補助術具として『漢字』を刻んだ種弾を開発、利用している(021話、ほか)。主に「火種」と「結界」に使うが、ほかにもいろいろな術弾がある。今後披露されるかどうかは、話の進行次第。


 系統魔術は【 】、主人公の魔術は『 』と表記。


 #######


 『防陣』

 内外の物理的攻撃を通さない。副次効果で、結界内外の行き来ができなくなる。

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