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成せば成る 3

026


 となりのてん杉は少し実を食われたが、本体は無事のようだ。絡み付いていたツタははがれ落ちている。


 倒れたてん杉の根元の切り口を見る。筒型の焼き菓子の中に白いクリームが詰め込まれたように見える。よくみると、クリームではなく白いつぶつぶだ。指でなぞって、なめてみる。味はしない。

 ちぇ、砂糖じゃなかった。サトウキビの切り口にも見えたのに。


 まあ、枝はまだいろいろと使えるだろうから、ばらして回収しよう。さっきよりも短くした「カマイタチ」で、ばっさばっさと枝を落としていく。根っこも一本ずつ切り離して保管しておこう。後は、幹だが。


 表皮近くの薄茶色のところは裂いた枝の質感に似ている。あれらと同じように、使えるだろう。残る白い部分は〜。


 表皮に、一定の間隔で切り込みを入れる。ドラゴン形態に変身してから、根元の切り口に手をかけて、べりべりとはがしていく。長い材木にも何か使い道があるかもしれない。ヘビの洞窟の中に運び込むことにしよう。表皮をはがした後、何かふわふわした物が内側に浮き出していた。よーくみてみると、細く長い繊維が、表皮と芯の部分をつないでいる。糸?


 人型に戻って、指でつまんでみる。とても細い。ミシン糸よりも細いだろう。

 引っ張ってみる。おお、ちぎれないぞ。どれくらい長いかな。二、三本つまんで、ゆっくり引きはがしてみる。長い長い。結局、根元から樹幹近くまで切れずに採れた。


 これは、使える!


 小洞窟に飛び込み、蟻板から糸巻きを大量に作っていく。余分に作ってあった竹籠に糸巻きを放り込み、切り倒したてん杉のところに戻った。


 ここで、気がつく。そろそろスコールの時間だ。さすがに、雨に濡らした糸は、使えなくなる可能性がある。どうするか。


 弾での実験ではやらなかった、「空間」を使う。


 「雨避け」


 いやぁ。ほんとに便利。


 雨に濡らしたくない部分を指定して、雨粒が入れない空間として設定した。そこそこの規模の魔法の方が、自分には使いやすいのだろう。


 それはさておき。


 準備万端。


 糸紡ぎ開始!




 手で繰るのではまにあわなくて、さらに「空気」と「空間」の魔力でスピードアップさせた。「空気」で糸一本を浮かせ、「空間」で糸巻きにたぐり寄せ、巻き取る。途中から、糸三本、そして五本を撚った糸巻きも作った。


 巻き取りが終わった糸巻きは、大洞窟に運び込み、撚った糸の本数別に分類して、毛皮の上に積み上げた。糸巻きは最初に作った本数では間に合わず、何回も作り足した。


 雷雨の中、倒れた木の上で、ガンガン糸巻きを振り回し、右往左往している姿も、人様には見られたくないな。黒魔術の儀式のようだ。アヤシすぎる。



 どういう集中力が働いたのか、雨がやみ、日が暮れた頃、糸を巻き終えた。


 ・・・しばらくは見たくないかも。


 残った表皮部分は、最初のひと剥ぎ分と同じくらいの幅に割って、ヘビの洞窟に持っていった。暗視能力、万歳。



 最後に、根のついた若木のような物が樹幹部分から落ちていたので、親木のいた場所に植えておいた。根付くといいな。



 さて、今日は、山頂で寝ることにする。


 ・・・だから、大洞窟の中身を、今は見たくないんだってば。

主人公よ、どこまで行くんだ・・・

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