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オーバーキル ふたたび

025


 今度の修行は、前よりも時間がかかった。ほんのちょっとの加減を損なうたび、ことごとく木片が砕けていくのだ。我ながら、「きゃー、うそー、やめてーっ」ってな感じで。


 森に入れない間は、もちろんお肉もお預け。わずかに蓄えてあった薫製肉は、あっという間になくなった。まあ、まーてんの魔力を食っていることには変わりなく、体調はすこぶる良好だったが。



 とにかく、「無駄な殺生はしない」を貫くために、本当にがんばった。



 当然、訓練中は、てん杉の実にお世話になりっぱなし。草原に点在するてん杉から、プチプチ収穫してくる。

 最近、薫製用は、一番大きい実しか取らないようにしている。薫製果肉を食べなれてくると、小さい実だと手間ばかりかかり、食べるときには物足らないのだ。それでも、小さい果実はカラフルで見た目は楽しいので、たま〜に生食している。



 そんなこんなで、今日も収穫中。


 てん杉のうちの一本の様子が変わっているのに、気がついた。


 実の数が減っている。

 しばらく、離れずに観察する。蟻が来て食べた、ということもなさそうだ。そうだったら、実は一個もついていないはずだし。見ていると、小さい実が一つ、木から落ちた。落果なんてはじめて見た。実はすぐに溶けて消えた。


 訓練用の木片を用意して、練習しながら観察を続ける。雨が降り始めた。ついでとばかり、雨の中で木片相手に練習を続ける。


 雨がやんだ。さっきの落下は偶然だったかと思い、木片を片付け始めたそのとき、また、一つ落ちた。


 残った木の実の数を数えて、洞窟へ帰ることにした。



 翌日。


 昨日のてん杉を見に行く。さらに実の数が減っている。変わっているのは実の数だけで、幹や葉に病変のような異常は見当たらない。食用果木は、木の寿命が来ると、結実する実の数が減っていくという。てん杉の場合、落果の減り具合が比較にならないが。


 数日後には、すべての実がなくなった。


 これを見て、ちょっと悩んでしまった。木の本数が減ると、収穫できる実の数も減る。りんごなどは、古い木を伐採して植え直すものだが。


 てん杉の若木って、どこにあるんだろう。


 多分、今生えている間隔が、最適なのだろう。若木があったとしても、密植するのはやめておいた方が良さそうだ。それはともかく、実を付けない古木を放置しておくのは、土地がもったいない。


 が、てん杉のことだ。しらばっくれて、また、ワッサリ実を付けるかもしれない。


 もうしばらく観察だ。




 さらに、数日がたった。


 実の数は回復しない。それよりも枝の数が増えている。成長期なのかな?



 もっとたったある日。



 変身しやがりました。


 

 様子を見に行ったとき、なんと、根っこを引きずり出し始めていたのだ。動く木だったのか!


 樹の先端を左右に大きく揺らしながら、二本目の根も抜き始めている。あああ、どうしよう。どう対処しよう。


 ほったらかしてもいい物だろうか。


 おや、大きく伸びていた枝の一本が、となりのてん杉に当たった。と、その枝から、ものすごい勢いでツタが伸びていき、絡み始めた。隣のてん杉は動くことなく、絡み付かれたツタに実を吸われていく。・・・同族喰いか! これまたたちが悪いな。



 これ以上、実を減らされたくない。生存競争 その3だ。



 成敗!


 ただ、もとが木だから、いろいろと使えるかもしれないので、火は却下。


 隣に絡み付くツタを片っ端から切り落とし、動くための根っこを切り離せば、息の根が止まる、もとい、おとなしくなるかもしれない。


 種弾に「カマイタチ」を乗せて、枝の付け根を狙う。切った! すぐにつながった! うわぉ。切り口の双方からツタが伸び、絡まったと思ったらくっついた。根っこも同じ。こりゃ、弱点をたたかないとらちがあかない。


 動物なら、たいてい首根っこをたたけば終わる。植物なら、根元、でどうだろう。


 では、再度「カマイタチ」! わずかに切り込みが入った。ツタやら枝やらを振り回し、パニクッている。あ、こっちにツタが飛んできた!


 弾での「カマイタチ」サイズの調整はまだ不十分で、あの幹を一発で切り倒すのは難しい。またも、一発勝負だが、腕に「カマイタチ」を乗せて、振り切ったらどうだろう。外に出すのではなく、「纏う」ので、サイズのコントロールもしやすいはず。


 右腕に「カマイタチ」を作る。というよりも、空気の刃だね。長さは幹の太さよりやや大きめで。絡み付かれた方の木をいっしょに切り倒さないように、一気に接近し、根元を振り抜く!


 わずかに、枝や根が痙攣したように動いたが、すぐにうなだれた。うまく、止められたようだ。


 と、安心する間もなく。


 たーおれーるぞー!



 あわてて飛び退る。


 ゆっくりと傾いてゆき、そして。


 どぉおおぉん


 ついに、倒れた。

謎植物、大変身の回でした。

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