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突入

初投稿です。

001



 全部、成し遂げた。

 もう、十分だ。


 故郷に還ることも、懐かしい人々に会うことも、もう二度とできないけれど、あの子たちは、決して巻き込まれることはない。

 それで、いい。それだけで、いい。


 心残りなく、生を終わらせることができる。

 ふふっ、死に様を自分でプロデュースし尽くすなんて、最高の贅沢じゃないか。




 周りの連中が、何か騒いでいるようだが、もう遅い。


 偶然とはいえ「地球」とのつながりを得て、ろくでもないことを始めようとしていた者たちがいた。


 だが、


 私が潰した。


 世界のつながりを断絶するプログラムをつくり、自らの体を記録媒体及び演算装置として設定した。デバックを重ねて完成させ、先ほど実行し、完璧に処理され、完了したのだ。

 無理を重ねたわたしの体は、ズタボロに壊れてしまった。だが、まだ終わりじゃない。


 続いて、予約していた「消滅」プログラムが起動。残った体の全てが、一切の情報を含まない光の粒子となって、ほどけてゆく。この世界には、遺伝子一つ、ひとかけらの「力」さえも残してやらない。これで、彼らは、どんな手段を使っても、二度と「地球」も「わたし」も手に入れることはできない。これ以上、あんたたちの玩具にされてたまるか。

 すべてが薄れていく中、最後に「魂」がつぶやいた。


 ・・・ああ、満足だ。








 と、私は確実に「死んだ」。はずなんですが?


 何故に、現在進行中で、高高度自由落下中?




 ・・・ぎゃあぁ〜〜〜〜〜おっちるぅ〜〜〜〜〜〜


 直前までの、どシリアスから急転直下なこの事態は何事! それとも、これが天国というものなのでしょうかぁ〜


 大気圏との境目が360度展開。ああ、宇宙が近い。ワタクシ、このままお星様になれそうな気分。なぜなら、目の前が、薄ぼんやりと赤く光っているのですよ、空気摩擦のおかげで。

 熱を感じないのがいっそ不思議。


 そして眼下には。


 白を通りこして銀色に光っちゃっている入道雲さんが団体さんで構えていらっしゃいましてイイ感じにひらめく雷光がその勇姿を余すところなくひきたてておりますデスでもって発達中の積乱雲のてっぺんを一面に見ることができるということは大圏コースを飛ぶ大型旅客機の飛行高度よりもやや高いですよここは、っていっているうちにめのまえ〜〜〜〜〜


 コース変更は無理。このちびっちゃい「翼」では空気抵抗でもぎ取られるのが落ち。・・・ん? つばさ? そんなもんは普通の「ひと」にはありえない。


 と、現実逃避している間もなく、


 ボスッ


 突入!


 太っい光の柱が縦横無尽に走り回る。まるで、地獄のような情景。直撃すれば、こんがり丸焼きを通り越して芯まで黒焦げコースなハイパワー感がびしばし。って、当たった! 

 ああ、さようなら、短い人生・・・


 ・・・あれ?


 少ーし痺れを感じたものの、無事よ? 飛行機の避雷針と同じで、うまく流れたのかな? それよりも、氷のつぶてが痛い痛い痛いってば! 雷光は当たるたびに、体の中から暖まる感じがする。それはそれ、これはこれだから、自分の頭と同じくらいの氷が、痛い! 気絶しないのが奇跡のような、うぉっ、まだくる! 雷&氷塊コンボのフルボッコ状態、いっそ気絶してもいいですか〜? でも、激しく痛いだけで気絶できない。痛みの強さも徐々に弱くなっている気がする。なぜ? これも後で考えよう。そして、涙は雲の中に捨てていこう・・・、イタイよ〜ぅ




 半ば悟りの心を獲得できそうな時間を経て、眼下がやや明るく見えてきた。入道雲の中のスリリングな体験ももうじき終わりか〜 ・・・って、今度こそ地表面に激突するじゃないか! 確か、積乱雲の雲底は地表200メートルから500メートルぐらいのはず。重力加速度まんま減速なしで直滑降なこの状態では、雲から出たら、地表あるいは水面まで、数十秒しか余裕はない。何の余裕かって、ナニですよ。


 『天然プレス機 無料体験ツアー1名様 まもなくご案内〜』


 断固、キャンセル!!


 体内に蓄えていた雷の「なにか」をつかって、体躯下の空気の固まりを「握り」、二等辺三角形に「形」を整えて配置、やや仰角を付けて滑空体勢に。どうしてこんなことができるのか、考えるのは後! まずは、無事に地表におりること!


 入道雲から突出。うまく雲の進行方向とは逆方向に出られたらしく、豪雨域からもすぐに離脱。


 ・・・そして、現在、ジャングル上空、約300メートルぐらいを滑空中。高度はほぼ維持、微減速。雨上がりの密林は鮮やかな緑色に輝き、後方に、くっきりはっきり大きな虹が見える。

 とってもきれい。生ジャングル、感動〜。


 さて、こんな面積の熱帯雨林は、アマゾン川流域、メコンデルタ、熱帯アフリカぐらい、ですよねぇ、地球ならば。・・・ところが、上空を飛び回っているものが、なんか違う、どう見ても違う。腐海を飛び回っていた馬鹿でっかい蟲に似た何かとか、神話によく登場する羽付馬とか、鳥頭の獅子とか・・・。


 と、とにかく、樹幹への激突も避けたい。あの、数々のUMAとの直接対決も回避したい!

 どこか開けたところは〜、ぁあったぁ! 岩の固まりがいくつかジャングルから頭を出している! ・・・うん、動いてないし亀甲模様もなし。大柄の縞模様が美しく、堆積岩かな、たぶん。見える範囲で一番大きそうな岩塊に向けてコース変更。空気で作った滑空翼をやや大きくし、さらに仰角を上げて、減速開始。滑空翼の大きさと仰角を微調整し、体を左右に傾けつつ、岩塊に接近。


 ・・・ランディングダウン、つんのめることもなく、きれいに停止。着地、成功! まだ水に濡れている岩の上で、五体倒置。大きく深呼吸。ああ、地面だ、生きてるってスバラシイ。感謝のキモチは忘れずに。



 ・・・さぁて、ここはどこ?


 そして、私は「何」?

わざと、詳しい説明を省いているところがあります。今後、明らかになる、かもしれません。

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