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07 レベル上げ

「ヒマー、つまんなーい。もっと高レベルのダンジョンに行きたーい」

「お前、さっきからそればっかりだな。少しは面白い話でもして場を盛り上げてくれよ」


 俺たちは今、水の都『レスティア』の北西部にある『神秘の泉』に来ている。


「大体、レベル上げなら『紅の森』のほうが良いんじゃないの? あそこはレベル30くらいのモンスターだったし、レイトの攻撃でも一撃だったじゃない」

「ああ、それはだな」


 ここは、紅の森よりもレベルの低い26前後のモンスターが出現する場所だ。

 だが、それでも神秘の泉ほうがレベル上げの効率がいいと判断した。

 その理由は――。


「ひぃぃ、もうこれ以上は無理だから、早くやっちゃって!」 


 俺たちの、すぐそばで大量のモンスターと追いかけっこをしているニック。

 もちろん遊んでいるわけではない。

 たくさんのモンスターに挑発スキルを使って、集めているのだ。

 なぜそんなことをしているのかって?


「んもう、焦らさないでくださいな。狙いを見誤るとそれこそ大惨事なんですよ?」


 そういいながらも、強力な範囲魔法でニックが集めたモンスターを一網打尽にするルティ。

 そう、集めてまとめてドカンするだけの簡単なお仕事ってわけだ。


「はー、またこれかー。なんだか私、野球部のボール拾いをさせられてる気分だわ」


 そして、倒した敵のドロップアイテムをマーシャが素早く回収していく。

 もうかれこれ数時間、ずっとこの調子でレベル上げをしているのだ。


 ん? 俺は何をしているのかって?


「うわあああ、師匠ー、カッパ! カッパがでましたー!」

「おう、今いく」


 1時間に1回くらい湧く、神秘の泉のレアモンスター『カッパ』を倒すのが俺の仕事だ。

 カッパのレベルは35。レッドスネークに比べて攻撃は当てやすい。

 単体火力に特化した俺の攻撃ならば、すぐに倒すことができるのである。


「もー、まだ何も盗んでないのに倒さないでよー」

「おう、悪い悪い。でも、あのカッパ、意外と攻撃力があるから早く倒さないとニックに負担がかかるんだよ」


 とまあ、ずっとこんな感じだ。


「ハァハァ、ねえ師匠。これ、僕が一番大変じゃないすか? さっきから休まずにずっと走り回ってるんすけど……」

「お前に花を持たせてやってるんだよ。頑張ったらマーシャがご褒美をくれるってさ」

「もっともっとたくさん敵を集めてくるっすー!」


 そういって元気に飛び出していくニック。


「ちょっと、何勝手なこといってんのよ」

「別にいいじゃないか、ああいえばニックのやる気がでるんだからさ」

「あんた、意外と腹黒いわね……」

「ふふ、この前の仕返しも兼ねてるんだよ。やられたら倍返しだ!」


 回復アイテムを使って、ニックのレベル上げをさせられた仕返しなのだ。






「いやー、疲れた疲れた。結局夜までずっと狩りっぱなしだったな」

「あんたはあまり働いてないじゃないの」

「僕なんて一回、ルティが範囲魔法を外して死にかけたりもしたっていうのに……」

「あ、あれは、外したんじゃないですわ! ニック様が調子に乗ってモンスターを集めすぎるからいけないんですのよ?」


 再びレスティアの宿屋に戻ってきた俺たち。


「それにしても、たった一日でレベルが10もあがるなんて思わなかったわ!」

「ふふ、経験値を稼ぐなら俺の右にでるものはいないのだよ」

「さすが師匠、パネェっす!」


 俺のレベルも34から36に。

 ニックのレベルは22から29に。

 マーシャのレベルは16から26になった。


「しかし、師匠は随分慎重っすねえ。僕らならもっと上の狩場でも通用すると思うっすよ?」

「あー、今は死んだら復活できない恐れがあるからな。それに――」

「何か?」

「いや、なんでもない」


 まさかルティが回復魔法を使えないとは思わなかった。

 魔力全振りの範囲火力バカだったなんて……。

 まぁ、楽してレベルが上がったけど。


「それよりも、マーシャさん、頑張った僕にご褒美を! あ、なんなら今日一晩一緒に寝るとかでも全然かまわないっすよ!?」

「あ、あー、そ、そうね……はい、じゃあこれをあげるわ」

「なんすかこれ」

「カッパから奪い取ったレア防具よ。べ、別にあんたのために盗んだわけじゃないんだからねっ!」

「……! あ、ありがとうっす! すごい嬉しいっす。家宝にして、ずっと部屋に飾っておくっすね!」

「いや、レア防具なんだからちゃんと着ろよ……」


 子どものようにはしゃぐニック。もらった防具を片手に喜びのダンスを始めた。

 レア防具らしいが、ものすごくダサい。カッパスーツって感じ。

 ま、本人が喜んでるなら別に良いか。


「う、うぅ、売れば数万ゴールドは稼げたのに、惜しいことをしたわ……」

「おい、それはニックには言うなよ? 絶対だぞ?」


 ニックにレア防具をあげたことを早くも後悔しているマーシャなのであった。

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