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「ククク、どうしたどうした。逃げ回っているだけでは私を倒すことはできんぞ。それどころかせっかく与えたダメージも回復されて無駄になってしまうぞ」

「ぐ……」


 笑みを浮かべながら魔法を連発してくるオウガ。

 オウガの猛攻を凌ぎながら、攻めるチャンスをうかがう。

 相手の挑発に乗り、無理に攻めては一巻の終わりだ。


 なんとか攻めを捌いて攻撃することができてもすぐさま回復されてしまう。

 これではいつまで経ってもオウガを倒すことはできない。




 それでも俺は諦めない――。

 例え1%でも勝てる可能性があるのならば諦めるわけにはいかないのだ。


 オウガは勝ちを確信して油断している。

 それに加えて、オウガの攻撃パターンも大体把握できた。

 無駄を省き、最小限の動きで俺の攻撃に合わせて最適な攻撃を返してくるのだ。

 その研ぎ澄まされたスキルの使い方は見事だ。


 だが――。

 そのワンパターンな攻撃方法が付け入ることができる唯一の隙でもある。


「フハハ、どうした、もう終わりか?」

「いや、俺の攻撃はまだまだこれからさッ! 必殺『円月虎水剣』ッ!」


 例え相手が優れた回復能力を持っていようとも、回復される前に倒しきれば良いのだ。

 俺の攻撃に合せるように、近接スキルで応戦するオウガ。


「フフ、その攻撃を待っていたんだ」


 オウガの近接スキル。

 その中でも一番厄介なのが旋風龍陣剣。

 身体を一回転させながら懐に入ってきた相手を切り刻むスキルだ。


 だが、これさえかわすことができたなら――。


「隙だらけだぜ、オウガ」


 オウガは、俺の円月虎水剣に合わせて必ず使ってくるのが旋風龍陣剣。

 そう、そのお決まりパターンを逆手に取った。

 円月虎水剣をあえてオウガの懐ではなく空振りする位置で使うことで旋風龍陣剣を誘発したのだ。


 旋風龍陣剣は、威力と範囲は非常に優秀なスキルだ。

 だが、そのスキルの撃ち終わりは一瞬だが完全に無防備となる。


 この一瞬に、俺の全スキルを叩き込むッ!


「ぐ、ぐはぁッ!」


 




 ……。

 な、何が起こった?


 今、オウガが無防備になったところを攻撃したはずなのに――何故?

 どうして俺が倒れているんだ――?


「ククク、なかなか良い作戦だった。君が私の攻撃パターンを把握できたように、私も君の攻撃パターンを把握することもできるというわけだ。ククク、君がわざと円月虎水剣を外したのもすぐに気付いたよ。だから、『幻像』スキルを使ってさもその場所で旋風龍陣剣を使ったように見せかけたというわけだ」

「あれが『幻像』スキル……だと……? い、今まで一度もそんなスキルを使っていなかったのは……」

「フフフ、奥の手というのは、最後の最後まで使わないから奥の手というのだよ」


 やられた――。


 オウガは油断してたわけじゃない。

 虎視眈々と俺が攻めるのを待っていたんだ。


 これだけの強さを誇りながら、隙が全くなかったというわけだ。




 勝てない――。

 俺がいくらレベルを上げようとも。

 仮にオウガが回復スキルが無かったとしても。

 俺はオウガに勝つことはできない。


 全ての面で俺よりも一枚も二枚も上手だった。

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