表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/63

56 敵に回しくない二人

「戦うしかなさそうだな」


 キャシーが通った扉は閉ざされている。

 ニックとルティを倒すしかないようだ。

 コピーとはいえ、できれば仲間との戦闘は避けたかったのだが。


 どうせ倒すならば、一撃で仕留めよう。

 長引けば長引くほど、心が揺らいでしまうことになる。


「よし、行くぞッ! 必殺、円月……あっ!」

「急に止まってどうした? 仲間を傷つけたくない気持ちはわかるが……」

「違うんだ。ニックが反射スキルを使っている、今攻撃したらダメージがそっくりそのまま自分に返ってきてしまうッ!」


 ニックの身体がうっすらと赤く光っている。

 つまり反射スキルを使用していることになる。

 これでは迂闊にニックを攻撃できない。


「よし、じゃあ、まずは遠距離範囲魔法が厄介なルティから倒すか」

「待って、それもダメだッ!」

「どうしてだ?」

「ニックはダメージを肩代わりするスキルもあるんだよ。反射スキルと併用されたら、結局同じことになる。四天王のサミエルもそうやって倒していた」

「なんだって? じゃあどうしろっていうんだ」


 困った。

 味方にいると頼もしい二人だが、いざ敵に回すとかなり厄介な相手だ。

 そう言ってる間にも、ルティが次々に範囲魔法を俺たちに向かって撃ってくる。


「くそう、このまま回避し続けるのも至難の業だぜ? 範囲が広すぎるッ!」

「そうだな、でもルティ本人よりも命中率は悪い。おそらく、プレイヤーの位置を把握して、その場所に魔法を撃っているだけのようだ。だから俺たちが常に動き回っていれば当たることはない」

「なるほど、さすがに即席のNPCには超高性能人工知能は備え付けられなかったみたいだな」


 いくら外見やスキルをコピーしたところで、使用者が単純なプログラムならばいくらでも穴がある。

 

「このまま攻撃を回避し続けてルティのMPが枯渇するのを待つか?」

「いや、そんなことをしなくても片方を楽に倒す方法を思いついた」

「本当か? どうすればいいんだ?」

「簡単だよ、ルティは俺たち目掛けて魔法を撃ってくる。つまり――」


 作戦はこうだ。

 ニックに反射スキルを使わせる。

 そして、ルティの範囲魔法にニックを巻き込ませる。

 そうすれば、ダメージが反射してルティを倒すことができる。

 仮にニックが反射スキルを使うのをやめたとしても、ニックを倒すことができるというわけだ。


「そんなに上手くいくか?」

「失敗しても、俺たちが魔法をくらわなければ問題ない。やってみる価値はあるよ。大丈夫、ニックは攻撃スキルがないから近寄っても怖くないさ。触らぬニックに祟りなしってね」


 ニックの傍に近寄り、ルティが魔法を放つのを待つ。


「よし、今だッ!」


 ルティが魔法を撃ったのを確認し、素早く移動しようとする。

 しかし――。


「トライさん、早くそこから離れないと……」


 良くみると、トライさんがニックに足首を掴まれている。

 しまった、ルティのほうばかりに気を取られてニックの動きを軽視していた。


 攻撃スキルがなくても、相手の動きを封じることは可能なのだ。

 ロンやゴンゾウが四天王ラインを止めたときのように――。


 直後、ルティの強力な範囲魔法が二人を襲う。

 





 土煙が舞い上がる。

 トライさんの名を叫ぶも返事はない。


 範囲魔法に巻き込まれてしまったのか?


 なんてことだ。

 俺がこんな作戦を考えたばかりに――。


 俺のせいだ。


「おう、良い作戦だったぜ、レイト」

「と、トライさん! 無事なら早く返事してくださいよ」

「ハハ、悪い悪い。ルティのほうも同時に片付けてからさ」

「え?」


 良く見ると、ニックだけではなくルティも倒れていた。


「なぜか魔法が当たる瞬間に、ニックは反射スキルをやめてしまったようでな。それで、残ったルティのほうへとテレポートをして倒してきたってわけだ」

「あの一瞬で、そんなことを?」

「ハハハ、オレは元々はゲーム廃人だからね。これくらい大したことないさ」

「そ、そうですか」


 自慢げに笑うトライさん。

 それを見てなんだか複雑な気分になった。


 俺と似ている――。

 そう感じた。


 俺がトライさんのコピーだということをイヤでも実感した瞬間だった――。


「どうした?」

「いや、なんでもない」


 ふー、こんなんじゃまたマーシャにどつかれてしまうな。

 何を暗い顔してんのよ、って。


 思い悩むのは全てが終わった後だ。

 誰かのコピーだとしても、俺は俺なのだから――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ