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54 救出作戦

「良いか、俺たちがオウガとキャシーの注意を引きつける。その間に、アキを救い出すんだ」

「ええ、分かったわ。くれぐれも無茶はしないよいうにね」


 黄昏の洞窟にある秘密の地下室でレベルを上げた俺たち。

 キャシーとオウガがいるレスティアへとやってきた。


 真っ向から勝負を挑んでも返り討ちにされる可能性も高い。

 何よりも優先すべきは、アキの救出だ。


 開発者でもあり、NPCを作り出したアキを助け出すことができればキャシーやオウガの暴走を止めることができるかもしれない。

 もし止められなかった場合でも、プレイヤーをログアウトさせれば良い。

 マーシャには、潜伏スキルを使い俺たちとは別行動をさせることにした。






「うにゃー。屋敷の中にはキャシーの召喚したモンスターがうようよいますねー。アタシたちを生きていることに気付いたのでしょうかねー?」

「どうだろうな。とにかく、まずアキがどこにいるかを探らないと……」

「そんなこともあろうと、魔王様の使っていた機械を持ってきてますよー。ニャフフ、これで魔王様の居場所もすぐにわかりますー」

「おおっ、そいつは便利だな!」


 フォルンがそう言いながら、機械をカタカタと操作し始める。

 すると――。


「ん、なんだ? 警報? お、おいおい、これ、まずいんじゃないか?」

「ニャハハハ、困りましたねー。どうやら検索しようとすると逆にアタシたちの居場所が特定される罠が仕掛けられていたようですー」

「なんだそれ、まずいじゃねえか! どうすんだよ、おい」

「落ち着け。最初からオレたちにできることは限られている。見つかってしまったのなら、正々堂々、正面から乗り込むしかあるまい」


 不正排除用ロボットに似たロボットが現れ、屋敷を取り囲み始める。

 あの時のロボットも、キャシーが召喚していたということなのだろうか。


「立ち止まってる暇はない、行くぞ!」

「お、おう」


 記憶を取り戻したトライさんは頼りになるなあ。

 派手な爆裂魔法で一気に屋敷内のモンスターの大半を蹴散らし、一気に突き進んでいく。


「しかし、すごいモンスターの量だな。キャシーの召喚できるモンスターに制限はないのかよ」

「にゃふー、キャシーは超高性能人工知能NPCとして、この世界のモンスター配置を任されていましたからねー。ほぼ全てのモンスターを瞬時に召喚することができるんですよー」


 それなら、キャシー自体をどうにかするしかないわけだな。

 アキがどこにいるかは分からない以上、まずはそこから潰すしかない。


「モンスターはあそこの部屋から現れているようだ。おそらく、この先にキャシーがいるに違いない」


 俺たちは、モンスターが向かってくる部屋へと突き進む。

 しかし、次から次へと出現するモンスターを前に、なかなか前へと進むことができない。


「くそ、このままじゃ、モンスターが増える一方だ」

「マズイな、持久戦になるとこちらが不利だ」

「うーむ、確かにそうですねー。では、その部屋までの道を切り開きましょう。『ブラックロード』ッ!」


 フォルンが叫ぶと一筋の黒い光が湧き出てくるモンスターを一掃し、黒い道をつくる。


「さあ、今のうちに移動してくださいなー。黒い道は数秒経つと消えてしまいますので!」


 モンスターが出現していた部屋の前へと急いで移動する。


「凄いじゃないかフォルン、こんな魔法が使えるなら最初から……あれ?」


 気が付くとフォルンの姿ない。

 振り返ると、フォルンが魔法を使った場所から動いていなかった。


「おい、フォルン、お前も早くこっちに!」

「ハァハァ、ニャハハ、少し力を使いすぎちゃいました……」


 黒い道の端っこで、今にも倒れそうなフォルン。


「くそ、今助けるから待ってろ」

「いえ、大丈夫です、これでも魔王四天王の一人ですからー。アタシに構わず先へ進んでくださいな。そして、なんとしても魔王様を助けだしてください」


 フォルンが、その場でニコっと微笑んだ。

 次の瞬間、屋敷に残っていたモンスターがフォルンを取り囲み、やがてその姿は見えなくなってしまう。


 助けに戻ろうとする俺の腕を掴み、無言で前を指すトライ。

 今あの場所に戻ってしまったら、せっかくフォルンが力を使って道を切り開いてくれた意味がなくなってしまう――。


「ああ、分かってる。先に進もう――」

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