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47 四天王ライン

「ニックのおかげで助かったわ、ありがとう」

「いやー、マーシャさんに褒められるなんて嬉しいなあ、でへへへ」


 四天王のサミエルを倒したニックが上機嫌でにやけている。


 と、その時だった。

 突然、ニックの身体に大剣が突き刺さる。


「ニック、どうしたの? 嘘でしょ? ねえ、ねえってば!」

「……マーシャ、危ない!」


 マーシャを抱きかかえ、とっさに攻撃を避ける。


「プププ。ここは泣く子も黙る『漆黒の魔王城』なんだぜぃ? サミエルを倒したくらいで調子に乗ってもらっちゃ困るよ、困るなあ、困っちゃうよぉ」


 カエルの帽子をかぶった少年が頬を赤らめながら言った。


「プププ。何をぼーっとしてやがるんだぜぃ? 四天王の特攻隊長ライン様の登場だーい! ウィーハハハ! 頭が高い、ひれ伏しやがれぃ!」

 

 ケラケラと笑いながら、大剣をぶんぶんと振り回すライン。


「な、なんということでしょう。一難去ってまた一難ですわ! ロン、ゴンゾウ、わたくしたちはどこか安全な場所に避難しましょう!」

「う、うむ。そうするでござる」

「うひゃあ、やっぱり魔王城は魔境なんだゾ。早く帰りたいんゾ」


 倒れているルティを抱きかかえ物陰に避難するセフィーヌたち。


「ウィーハハハ! 良いね良いね! ボクの強さに恐れをなして逃げ惑うプレイヤーたち。プププ。快感なんだぜぃ! いやー、最高の気分だね、最高だなぁ、最高だよぉ」


 満面の笑みを浮かべるライン。


「なにあれ、超キモいんですけど」

「しかし、防具を取り揃えたニックが一撃でやられるほどの相手だ。気をつけろ」


 戦えるのは、俺とマーシャとオウガの三人だけか。


「よし、オウガ。ここはみんなで力を合わせ……ってあれ? オウガは?」

「逃げたんじゃないの? 全く『ブラックサン』のギルドマスターが聞いてあきれるわね。良いでしょう。私たちだけでやってやろうじゃないの!」


 ……冗談だろ?

 二人だけでコイツを倒せって言うのかよ。


「ウィーハハハ! なんだなんだ、残ったのは君たち二人だけかー。残念だね、残念だなぁ、残念だよぉ。もっともっと楽しみたかったのになー。せっかく二年も待ったんだからさ?」

「く……『影縛り』ッ! 『影縫い』ッ!」

「おやおやー、行動束縛系のスキルですかぁー。このボクにも効くってことはかなりスキルレベルも上げてるみたいだねぇ、いやー感心感心」


 よし、マーシャのスキルが入った!

 これでやつはしばらくの間、移動も攻撃もできない――ッ!


 俺は、その隙をついてラインに斬りかかる。

 すると、ラインが目を見開き顔を上げてニヤリと笑った。


「でも、残念だったねぇ? そんなせこい手でこのボクを倒せると思ったら大間違いだよー」

「ガハッ……」

「レイト! しっかりして!」


 不敵な笑みを浮かべながら、大剣をぐるぐると回して決めポーズをとるレイン。


「ウィーハハハ! いやー、爽快爽快。圧倒的な力で相手をねじ伏せるのは気持ちイイなぁ、ムプププ」

「よくも……よくもレイトを! 許さないわ!」

「おやおやー、まだボクの力を理解していないのかなぁ? せっかく逃げるチャンスをあげたっていうのに、おバカさんだなぁ」


 ラインがマーシャに大剣を振り下ろす。

 なんとか立ち上がり、その大剣を弾き返す俺。


「ぐ、ハァハァ、まだだ、まだ俺は倒れるわけにはいかねえんだよ!」

「……へぇ? ボクの攻撃を受けて立ち上がったのは君が初めてだよ。おっかしいなあ? 防御力無視の貫通攻撃なんだけどねぇ? なんかイラっとするなぁ、イラっとするねぇ、イライラさんだよぉ。大人しく地面に這いつくばってくれてればよかったのにさぁ?」


 立ち上がったものの正直もう為すすべがない。

 ラストダンジョンを甘く見過ぎていたか?


 いや、そうじゃない。


 こいつらの次元が違いすぎるんだ。

 ゲームバランスを無視するようなステータス。

 まともに戦っていたら勝てるはずがない。


 一体、どうすれば……?


「うおっしゃああ!」

「うおりゃあああ!」


 物陰からロンとゴンゾウが飛び出してきた。

 そして、二人がかりでラインを取り押さえる。


「な、ボクの大剣が! くそ、邪魔だ、放しやがれぃ!」

「放さないゾ、絶対に!」

「ルティ殿、今でござる!」


 遠くのほうで魔力を溜めているルティ。


「何をしているの、このままじゃ二人も巻き添えになるわ」

「構わないでござる! 状態異常を回復するコイツを止めるには他に方法がないでござる!」

「そうなんだゾ! オイラたちだって役に立てるんだゾ!」

「は、ハハハ、冗談だろう? おい、離れろ、離れろっていってんだよ、おい、ま、待て! ちょ、うわああああ」


 ルティの強力な魔法攻撃がラインを直撃した。






「しっかりして、ルティ!」

「あたしの体力と魔力全てを引き換えにした超魔法、いかがでしたか? ゲホゲホッ」

「どうして、そんな魔法を……ッ! これじゃあルティも……!」

「んふふ、あたしの大事なニック様を傷つけるような人はなんとしてでも倒したかった、それだけですよ。マーシャ、泣かないでくださいな。どうせMPがなくなったらあたしは役に立てないのですから、ね?」


 その横で、セフィーヌが俺に回復魔法を使う。


「レイトさん、大丈夫ですか?」

「俺は大丈夫だ。それよりもロンやゴンゾウが……」


 俺がそういうとセフィーヌは首を横に振る。


「彼らはもう――。でも後悔はしていませんわ。ここで全滅するわけにはいきませんもの、そうでしょう?」


 そう言いながらも、セフィーヌの手はブルブルと震えていたのだった。

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