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46 四天王サミエル

「はーい、魔王四天王が一人、サミエルでーす。よろしくねー」


 メイド服を着た少女が明るく無邪気に微笑んだ。

 暗い魔王城のイメージとかけ離れすぎだろうが。

 四天王ってことは他にも似たようなのがいるのだろうか。


「悪いがお遊戯に付き合ってる暇はない、そこをどいてもらおうか」


 タクティスがサミエルに先制攻撃を仕掛ける。

 それとほぼ同時にセイラが遠距離から魔法を放った。

 

「あらあら、せっかちな方なのですねー。うふっ」


 笑顔で素早く身をひるがえし攻撃をかわすと、タクティスを投げ飛ばし地面に叩きつけた。

 それと同時にセイラを衝撃波のようなもので弾き飛ばす。


「このアタシに挑もうだなんて百兆年早いのでーす。キャハッ」


 タクティスの顔を足で踏みながらサミエルが言った。


「げげ、見た目に反して意外と強そうだぞ。ニック、俺たちも加勢するぞ……! ニック? おい、どうしたニック、大丈夫か!?」

「……う、うぅ」


 頭を抱えながらガクガクと震えだすニック。

 あのタクティスとセイラの連携攻撃を軽くいなすような相手だ。

 恐怖を感じるのも無理はない。


 だが、ここで退くわけにもいかないんだ――ッ!

 なんとかニックを励まそうとすると思いもよらない言葉が返ってきた。


「やばいっす。あの子めっちゃタイプっす。僕はどうしたらいいんでしょう!?」


 ダメだこいつ、重症だ。主に精神のほうが。

 誰か早く救急車を!


 ってそんなことを言ってる場合じゃねえ。


「マーシャ、ルティ。俺たちでなんとかするぞ」

「ええ、分かったわ」

「人型のモンスターですか、小さい分魔法は当てにくそうですね」


 サミエルがこちらに気付き微笑む。


「モンスター? このアタシが? うふっ、アハハ、アハハハハ!」

「な、何がおかしい!」

「あんな知性もないようなただの捨て駒と一緒にしないでほしいでーす」


 次の瞬間、ルティが前のめりに倒れた。


「え……?」

「キャハッ。防御力のない後衛は倒しやすくて楽なのでーす」


 攻撃が見えなかっただと!?


「……モンスターじゃないとしたら、お前は一体何者なんだ。その強さは、ここらのレベルのモンスターの比じゃない。ボスだとしても桁が違いすぎる」

「良い質問ね。冥土の土産に教えてあげるのでーす。メイドだけにね。キャハッ」


 う、うぜえ。

 でも、教えてくれるなら素直に聞いておこう。


「アタシは、魔王様によってつくられた超高性能人工知能を搭載したNPCなのでーす。ただのモンスターと一緒だと思ったら怪我しますよー? キャハハッ」


 NPCだと……?

 まさか俺と同じプレイヤー型のNPCなのだろうか。


「……魔王サラは、この世界を消すつもりなんだろう? なぜそんなやつにNPCであるお前が協力しているんだ!?」

「良い質問ね。でも、サービスはお終いよーん。魔王様のところへは行かせないのでーす。覚悟してくださいねー。うふふ」


 サミエルが瞬時に俺の正面へと突っ込んできた。

 そして鈍い金属音が響いた。


「……ニック!」

「いくら可愛くっても、許さないっすよ……。ルティを傷つけるやつは、僕が許さない!!」


 ニックが俺をかばい立ち塞がる。


「さあ、どっからでもかかってくるっす。僕が君の全てを受け止めてやるっす!」

「キャハハハ! 今の攻撃を止めたくらいで、このアタシに敵うと思ってるのですか? 甘い、甘すぎなのでーす」


 サミエルの目の色が変わる。


「後悔しても遅いのでーす。このアタシの必殺技を受けるのでーす!」


 目にもとまらぬ速さでニックを攻撃しつづけるサミエル。

 ニックは微動だにせず攻撃を浴び続ける。


「大変だわ、このままだといくら固いニックでもやられちゃうわ!」

「いや、待てマーシャ」

「何よ、ニックを見捨てるっていうの?!」

「いや、そうじゃない。良く見てみろ」

「え、ニックのHPゲージに変化がない!? どういうこと? ルティたちが一撃でやられるほどの攻撃をあんなに浴びてるのに!」


 そりゃそうだ。

 今、ニックが使ってるスキルは――。


「おや、もう攻撃は終わりっすか?」

「キーッ! 『反射』スキルなんて誰も取らないようなスキルを使うなんて反則なのでーす!」


 超高性能人工知能の割にアホなんだな。

 自分の攻撃でダメージを受けたサミエルは膝をつき倒れ込んでいる。

 ニックに気を取られてる今がチャンスだ。


 俺がサミエルの背後から必殺技を放とうと近付く。

 すると――。


「師匠、すみませんがこの子は倒さないであげてもらえませんかね」

「……えっ!? な、何を言ってんだニック。こいつは……」

「敵だってことは分かってるっす。でも、僕にはやっぱりこんなカワイイ子を倒したくないっす」

「……ぷ、アハハ、キャハハハ! やっぱり、甘い! 甘すぎるなのでーす!」


 ガバッと起き上がり、背後にいた俺目掛けてサミエルが攻撃をしてきた。


「ぐ、ぐはっ……なぜ…………なので……す………」

「倒したくなかったのに、残念っす」


 俺を攻撃したはずのサミエルが何故かその場に倒れた。


「ちょっと、何がどうなってるの?」

「えへへ、僕のスキル『かばう』で師匠のダメージを肩代わりしたんすよ。それを『反射』で跳ね返したので完全な自滅っすね」


 防御スキルしか取ってないくせに、強敵にあっさりと倒してしまうなんて。

 ネタスキルも使い方次第なんだな……。

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