43 漆黒の魔王城
「ちぃッ、いきなり大歓迎じゃねーか」
魔王城に着いた途端いきなりモンスターに取り囲まれる俺たち。
敵のレベルも70前後とかなり高い。
ワープしたばかりで陣形もかなりバラバラだ。
このまま後衛が総攻撃を受ければ一瞬でやられてしまうだろう。
パーティーメンバーに緊張が走る。
その時だった。
「へへっ、大丈夫っすよ師匠。僕がみんなを守って見せるっす!」
そう言ってはにかむニック。
そして、群がるモンスターを挑発スキルを使って集め始めた。
「んふふ、さあ、派手に暴れちゃいましょうか!」
そのモンスター目掛けて範囲魔法をぶちかますルティ。
さすがは長いことずっと一緒にパーティー組んできただけのことはある。
息もぴったりだ。
「へえ、やるじゃない? タクティス、うちらも良いところ見せてやろうじゃないさ!」
「ふんっ、言われなくてもそうしようと思ってたところだ」
セイラとタクティスがニックたちに張り合うように次から次へとモンスターを倒していく。
驚いてポカンと眺めている俺の傍にマーシャが近寄ってきた。
「さ、私たちも前に進もう?」
立ち止まる俺の背中をポンと押すマーシャ。
「ああ、そうだな」
マーシャが収集スキルと捕縛スキルで敵を綺麗にまとめて動けなくさせる。
すかさず俺が攻撃して一網打尽にする。
攻撃範囲の狭い俺でも、使い方次第ではモンスターを一度に大量に倒すことができるのだ。
「うー、みんな強すぎるんだゾ。オイラたち必要なさそうなんだゾ」
「そうですわね……勢いでついてきちゃったけど場違いだったかしらん」
「でもほら、労せずレベルが上がるんだからお得でござるよ?」
そんなことを言いながら、ホワイトムーンの三人がビクビクと周りを警戒しながらついてくる。
一応、三人の警護役にトライさんがいるから心配ないだろう。
むしろ三人よりもトライさんのほうが心配だ。
さっきから、何だか浮かない顔をしている。
「やあ、トライ君だったかな? 随分とレベルが高いんだねえ」
「……」
そんなトライさんにオウガが話しかける。
しかし、トライさんは聞こえていないのか黙々とモンスターを倒している。
「おい、スルーとはいい度胸だなあ? ケヘヘ」
「よさないかキット」
トライに掴みかかるキットを制止するオウガ。
「まあいい。今はのんびりお話する時ではないからね。フフフ……」
不気味に笑いながらオウガはトライから離れた。
「なーにあれ、気持ち悪いー。絶対何か企んでるわよ。レイトもそう思うでしょう?」
「え? あー、どうだろうな」
オウガのほうを見ながら頬をぷくーっと膨らませて怒りを露わにするマーシャ。
どうやらマーシャは未だにオウガのことを嫌っているらしい。
いや、むしろトライのことを気にかけているのかもしれない。
マーシャがトライを見るときはいつも優しくて穏やかな顔をするのだ。
もしかして、マーシャはトライのことを……?
って何を考えているんだろう俺は。
……これがヤキモチってやつなのか?
「ありゃ、ちょっとレイトー、何をぼーっとしてんのよ。せっかく私が纏めた敵がばらけちゃったじゃない!」
「え、あ、ごめんごめん、もう一回頼む」
いかんいかん、今はそんなことを考えている場合じゃないんだ。
ここはラストダンジョン『漆黒の魔王城』。
いつ何時、どんな罠が待ち構えているかもわからないんだから気は抜けないぞ――。
俺の心配を他所に、何事もなくすんなりと突き進んでいく。
「ラストダンジョンにしては随分と生ぬるいわね!」
「そうっすねえ、作動しない罠ばっかりでなんだか拍子抜けしちゃうっすね」
魔王城には数多くの罠が仕掛けられていた。
しかし、その罠の多くがすでに作動しない状態になっている。
まるで俺たちの前に誰かがここにやってきたかのように――。
「すでに魔王城に誰かがいるかもしれない? えー、そんなわけないでしょう。『神秘の祭壇』にアイテムを捧げなければここに来れないんだから」
「そうだけど、さっきから罠も解かれているしボス部屋っぽい場所にもボスがいなかったじゃないか」
「それはほら、まだ実装予定じゃないマップだから開発が間に合わなかったのよ」
そういえば、レスティア以降の町は本来ならばまだ未実装マップなんだよなぁ。
その割には、最終ダンジョンはもちろんモンスターまできっちりと作られている。
最後の最後で、罠を設置し忘れたなんてことはあり得るのだろうか?
そもそもなぜ俺は、NPCなのにプレイヤーに混じってゲームに参加させられているのだろう?
これも開発者であり魔王であるサラの陰謀なのだろうか。
それとも――。
「師匠ー、みんなー、ちょっとこっちに来てくださーい」
何やら隠し部屋のような場所からニックが叫んだ。
俺たちがその声にするほうへと向かうとそこには――。




