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04 ステータスとスキル

「べ、別に助けてと言った覚えはないんですけど?」

「こ、こいつ……」


 マーシャの後を追い、『紅の森』へとやってきた俺とニック。

 俺たちはモンスターに襲われてるマーシャを救出した。

 しかし、悪びれる様子もなく悪態をつくマーシャ。


「大体、私、モンスターと戦ってわけじゃないしー」

「ああ!? じゃあ、何やってたんだよ!」

「これよこれ! ほらみて凄いでしょう?」


 そう言って、大量のアイテムを見せびらかすマーシャ。

 今までに見たことのない満面の笑みだ。

 なんだかすごい幸せそう。


「ふふ、私のスキル『盗む』でモンスターから奪い取ったのよ! 私の『潜伏』と『煙幕』のスキルを駆使すればざっとこんなもんよ。盗んで逃げるだけの簡単なお仕事なんだから」


 マーシャが金策重視のスキル振りをしていたのは聞いていたが、まさかここまで徹底してるとは。

 ほとんどの人が手を出さないネタスキルばっかりじゃねえか。


「うわー、凄いっすねマーシャさん! なんだか忍者みたいっすよー」

「え、そ、そうかな? ふふ、ステータスだって素早さ重視で敏捷に全振りしてるんだから!」


 敏捷は、命中率や回避率、素早さを上げることができるステータスだ。

 しかし、ほとんどの人は敏捷に振ることはない。

 命中率は必中のスキルを使えば関係ないし、素早さも敏捷値を上げるよりも装備で補うほうが楽だからだ。


「お前、MMOなめてるだろ」

「な、どうしてよ! 素早いほうが盗みやすいのよ?」

「甘い、甘いんだよ! 大体逃げるなんて愚の骨頂! 大事な大事な経験値がもらえないじゃないか!」

「じゃあ、あんたはどういうステータスだっていうの?」

「ふふ、決まってるだろ! 俺は力全振りだ!! ちなみにスキルも全て攻撃スキルにつぎ込んでいる!」


 力は、物理攻撃力を上げることができるステータスだ。

 攻撃こそ最大の防御だからな。

 レベルを最速で上げるには攻撃力を最大限まで引き上げるのが一番効率がいいのだ。


「バッカじゃないの、力全振りとかただの脳筋じゃない! 頭悪いとしか思えないわ!」

「さすが師匠、パネェっす! とても真似できないっす」

「そういうニックは、何に振ってるんだよ」

「もちろん、体力オンリーっすよ! 女の子を守る盾となるのが僕の役目なのだあ! スキルだって、全部、防御系のスキルっすよー。どうっすか惚れ直したっすか!?」


 うわー、アホだ、こいつ絶対アホだ。

 体力とか、防御力とHPしか上がらないネタステータスじゃん。

 しかも、防御系のスキルしかとってないって、一人じゃレベルも上げられないじゃん。


「ああっ! だからお前、俺にレベルを上げさせてたのか!」

「今頃気付いたんすか? 師匠、なかなか天然っすねー」

「つーか、盾スキルとか取ってんなら、早く言えよ! 俺が回復アイテムがぶ飲みでレベル上げしてたの知ってるだろ!?」

「あー、僕が守るのは女の子限定っすからねー。レベル上げとかかったるいし? 師匠みたいな心優しい廃人を利用するのが一番手っ取り早いんすよー」


 こ、こいつ、ぶち転がすぞ。

 回復アイテム結構高いっていうのに……。

 そのために、初心者キラーのようなレアモンスターを狩ってお金を稼がないといけなくなるし。

 もし、盾がいるならレアモンスターを狩る必要もなくなってレベル上げ放題じゃねーか。


「あれ、ちょ、ちょっと待って!」

「師匠、どうしたんすか?」

「魔法を使えるやつはいないのか?」

「んー、いないっすね」


 ……。

 俺がほぼ一撃でモンスターを倒してるから全然気づかなかった!


「それは困る!」

「いきなりどうしたんすか?」

「それはつまり、回復魔法を使えるやつがいないってことだろ?」

「んー、そうっすね。それがどうかしたんすか?」

「さっき、水の都『レスティア』で、回復アイテムが買えなかったんだよ。それはつまり、回復手段がなくなるってことだ」

「宿屋で寝れば良いじゃないっすかー。一晩寝ればリフレッシュ。心も身体も元気いっぱいっすよー」


 それだと時間がかかりすぎるだろうが!

 それにいちいち宿屋に戻るなんて効率悪すぎるし。


「あああ、俺のレベル上げが遅くなってしまうぅう」

「さっきから何をバカなこと言ってるのよ! ログアウトもできない非常事態だっていうのに、未だにレベル上げとか、超笑えるんですけどー」

「ひたすら盗むと逃げるを繰り返してたやつに言われたくねえよ!」

「まあまあ、落ち着いてくださいよー。魔法を使えるフレンドならいるんで声かけてみるっす」


 そう言って、何やらメールを打ちはじめるニック。

 フレンドに登録した相手には、メールが送れるらしい。

 らしい、というのは俺にフレンドがいないから試したことがないためである。


 ニックのフレンドだから、女なんだろうな。

 俺のことを師匠と呼ぶくせに、男はダメとか言ってフレンドには入れてくれなかったし。


「ふー、送信完了ー」

「ログアウトはできないのに、メールは送れるのか」

「とりあえず、町に戻りましょうよー。僕、もう疲れちゃったっすよー」

「お前は、ほとんど何もしてなかっただろ」


 敵を倒すのはほとんど俺だったし。


「いやいや、一応、モンスターに挑発スキルを使って攻撃しやすい位置に誘導してたんすよ? はー、地味に活躍してたのに気付いてもらえないなんて僕悲しいなー」


 そんなことを言って、大袈裟に落ち込んだ素振りを見せるニック。

 め、めんどくせー。


「あー、もうわかったよ。宿屋に帰るぞ。寝て起きたら不具合も直ってるだろ」

「マーシャさんがいないみたいっすけど」


 辺りを見渡してみると、マーシャの姿がない。

 あのバカ、また単独行動を……。


「キャアアアーッ!」


 突如響き渡る、マーシャの叫び声。

 急いで、向かう俺たち。


 そこにいたのは……。

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