39 神秘の祭壇
「へぇ? わざわざ君の方から会いに来てくれるとは思わなかったよ、レイト君?」
レスティアの町にあるギルド『ブラックサン』の屋敷。
そこで不敵な笑みを浮かべながらオウガが言う。
「俺のことを探してるようだったからな、俺はもう逃げも隠れもしない。自分が信じる道を行くと決めた」
「信じる道ねえ? ちょっと詳しく聞きたいところだけど……」
パチンと指を鳴らすオウガ。
すると、大勢のプレイヤーに囲まれる。
「また仲間を呼んだか」
「ふふ、念には念を入れないとね。それで、君の信じる道とやらはなんだい?」
「言っても理解できないだろう、そんなことよりも、俺を探していた理由を教えてもらおうか」
「ククク……、質問には答えない割に随分と強気な態度だねえ。君がそういうつもりなら、君の仲間を今ここで始末してやってもいいんだよ?」
「なに!?」
オウガの仲間がマーシャたちに剣を突き立てる。
「いつの間に……!」
「フフフ、君は何か勘違いしているようだね。私の判断で君の大切な仲間の命さえも奪うことができるということを……」
「きさまッ!」
俺が武器を構え、オウガに斬りかかろうとすると、屈強な男のタクティスが立ち塞がった。
「おっと、オウガには指一本触れさせねえぜ?」
「くそッ……」
「フフ、まあ落ち着きたまえ。今のは軽いジョークさ。君の仲間に危害を加える気はないよ、今のところはね」
「……」
オウガめ、俺の心をわざと揺さぶって遊んでやがるのか……?
「まあそう怒らないでくれないかな。君にとっても有益な情報を入手したんだ、それを教えてあげようと思ってね」
「俺にとって……有益な情報だと!?」
なんだ?
まさかこいつ、俺がNPCであることを知ってるとかじゃないだろうな?
「ずばり『漆黒の魔王城』への行き方さ」
「何ッ!?」
「このゲームの世界のラストダンジョン、魔王の住む城だよ。まあ、細かい説明は抜きだ。一緒に来てもらいたい場所がある」
そう言ってオウガは立ち上がった。
「ここって『神秘の泉』よね?」
「ああ、懐かしいな」
「ぐぬぬ、ここに来ると『ブラックサン』に狩場を奪われたことを思い出しちゃうっすね」
オウガに連れてこられた場所。
それは、レスティアに着いた頃にレベル上げをしたことがある『神秘の泉』だった。
「こんなところに何があるんだ……?」
「フフ、こっちだよ」
オウガは数人の仲間と共に俺たちを泉の奥へと案内する。
「あれ、こんな場所あったかな?」
「驚くのも無理はないさ。ここは、レベル60以上じゃないと入れないエリアだからね」
レベル60以上だと!?
俺たちはともかく、オウガもオウガの仲間たちもそんな高レベルだというのか!?
オウガたちは迷いの森を抜けた先のダンジョンに来ていない。
ここらで一番レベルの高いマップは蒼き洞窟ぐらいしかないはずだ。
そんな場所でずっと狩り続けてもそんな高レベルになれるとは思えないのだが……。
「そしてここが、『神秘の泉』に隠された秘密のエリア『神秘の祭壇』さ」
「もしかして、ここから『漆黒の魔王城』へ行けるのか?」
「ああ、おそらくな」
「おそらく?」
「この祭壇には特定のアイテムを捧げなければならない。例えば、この『ブルーボーン』とかね。これは『蒼き洞窟』のボス『ブルースケルトン』のレアドロップアイテムさ。この他に、『レッドファング』、『イエローストーン』、『ホワイトウィング』、『ブロンズソード』、『グリーンハープ』の計6つのアイテムが必要なんだよ」
祭壇には6つの台座があり、台座に捧げるべきアイテムが明記してある。
オウガが言ってることは本当らしい。
「そのアイテムを揃えれば良いってことだな?」
「ああ、そうだ。『レッドファング』はおそらく『紅の森』のボス『レッドスネーク』から入手できるだろう。今も私の部下が『紅の森』で狩りをしているところさ。だが、問題は他の4つのアイテムだ。入手場所がさっぱり分からない。それで君なら何か知ってるんじゃないかと思ってね」
「それで俺を探してたというわけか」
他の4つのアイテム……。
イエローストーンとホワイトウィングは名前から察するにイエローゴーレムとホワイトコンドルのドロップアイテムだろう。
だが他の二つが分からないな。
「ふふ、何か心当たりはあるようだね」
「ああ、全部ではないけどな」
「ククク、なら話は早い。分かるアイテムを優先して取りに行こうじゃないか」
「分かった」
俺たちは手分けして神秘の祭壇へ捧げるアイテムを探すこととなった。




