13 洞窟での出会い
「ねぇ、どうして蒼き洞窟なわけ?」
「ここが一番、経験値が稼げるからだッ!」
翌朝、早めに起きて蒼き洞窟へとやってきた俺たち。
「しかも、ブルースケルトンがでる最深部じゃないなんて正気なの? 私はレアアイテムが欲しいの! レアドロップがなければ死んじゃうの! こんな場所じゃ私の『盗む』も活かせないじゃない!」
「ま、まあまあ、落ち着けって。ボス部屋は大人気だから、常に人がいるんだよ。誰もいないこの場所が一番効率よく経験値を稼ぐことができ……」
「あー、もう、口を開けば経験値、経験値って、あんたは経験値のことしか頭にないわけ!?」
レアアイテムのことしか頭にないマーシャに言われたくないわい。
「うーん、でも本当に大丈夫なのでしょうか? あたし、またMPがなくなってしまうかもしれませんよ?」
「そのことなら大丈夫だ。この洞窟のくぼみを利用して、ルティが安全な場所から範囲魔法を撃つ。そうすれば、無駄に魔法をぶっ放さなくて済むだろ」
モンスターをニックがかき集め、ルティが範囲魔法で一掃する。
神秘の泉のときと同じ要領だ。
泉よりもモンスターの湧きが早いからニックが全部拾いきるのは困難だけどな。
そこであぶれたモンスターを倒していくのが俺の仕事だ。
「ねぇ、私は? 私は何をすればいいの?」
「あー、お前は潜伏スキルで身を隠しながらドロップアイテムでも拾ってくれ」
「そ、そんなぁ、私はアイテムを拾うペットじゃないのよ?」
マーシャは相変わらずの雑用だ。
少し不満げな顔をしてるが、気にしない。
「ここの狩場は、オイラたちが占拠しちゃんだゾ!」
「大人しくわたくしたちに狩場を譲りなさいな、オーッホッホ!」
「……」
俺たちがしばらく狩りをしていると、他のプレイヤーがやってくる。
戦士の男二人と、魔法使いの女が一人だ。
「またブラックサンのやつらみたいね、今日こそきっちり追い払って……」
「ちょい待った」
「あうッ!? ちょっと、髪の毛引っ張らないでよ! ぶち転がされたいの!?」
「まあ、調度いい機会だ。あいつらにここを譲ってやろうぜ。おーい、ニック。少し休憩だー、お前もこっちにこーい」
モンスターを集めていたニックを呼び寄せる。
そして、洞窟のくぼみで休憩することにした。
「もう、どうしてレイトはいつもそうなのよ! あっさりと場所を譲り過ぎよ。朝早く起きた意味がないじゃない!」
「ふふ、大丈夫さ。少ししたら、あいつらもいなくなるって」
「……? どういうことよ」
「洞窟での狩りは甘くないてことだよ」
「ひ、ひぎゃああ、誰か、助けてくれえええ」
「ちょっと、こっちに来ないでくださいですの!」
「お、落ち着くでござる。動き回ったら余計にモンスターが集まってくるでござるよ!」
ほらな。
ここは、この洞窟内でも一番モンスターの湧きが激しい場所なのだ。
そんな場所で、俺らよりもレベルが低そうな三人じゃこうなるのは火を見るより明らかなのだ。
「なんだか、凄いことになってるわね。まさしく地獄絵図」
「師匠、助けなくていいんすか? 少なくともあの魔法使いの子だけは助けてあげたいんすけど」
モンスターに追われて、逃げ惑う三人。
このままだと、間違いなくあの三人は全滅だろう。
しかし、それも自業自得だ。
自分の実力も理解せずに、強引に狩場を奪うからこういうことになる。
「……ま、助けてやるか。ニック、挑発スキルでモンスターを釣ってやれ。ルティ、範囲魔法の準備だ」
「了解っす!」
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「ハァハァ、た、助かりましたわ……」
「ふ、ふん。ちょ、ちょっと油断しただけなんだゾ。本当だゾ!」
「かたじけないでござる」
なんとか三人とも無事だったようだ。
「フフ、お礼は一人10万ゴールドで良いのよ? デスペナルティに比べたら安いも……いったーい、何すんのよバカレイト!」
「バカはお前だ。何を恐喝紛いのことしてんだ」
「いえいえ、本当になんてお礼を申し上げていいのやら……。あなた方は命の恩人ですわ!」
「命の恩人だなんて大袈裟だなあ」
深々と頭を下げる魔法使いの女。
「……ッ! ちょっと急用ができましたわ! このお礼は、後日改めてということで」
そして、そう言って足早に去って行った。
「あーッ!」
マーシャが突然、大声で叫んだ。
「なんだ、どうした!?」
「10万ゴールドもらい損ねた……」
「……本気でもらうつもりだったのかよ!」
そんなことでいちいち叫ぶな、驚くだろうが。
「あーッ!!」
今度は、ニックが叫ぶ。
「今度はなんだよ」
「名前聞くのを忘れてたっす……せっかくの出会いが……」
「……お前ら、いい加減にしておけ」
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――その日の夜。
「すごい、すごいわ! 私のレベルもう40よ? もしかして、レイトを追い抜いちゃったんじゃないかしら!」
「同じパーティーで狩りをしてるのに追い抜くわけないだろ……」




