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11 謎のNPC

「んー……、やっぱり今日は狩りするのやめよう」

「う、ウソでしょ? 経験値のことしか考えてないレイトが狩りをやめるだなんて……。どうしたの、頭でも打った? さっきの変なやつに呪いでもかけられた?」


 俺の提案に必要以上に驚くマーシャ。

 おいおい、まるで俺が経験値中毒みたいじゃねーか。


「周りをよく見渡してみろ」

「うーん?」


 きょろきょろと周りを見るマーシャ。


「えー、何? もったいぶらずに教えなさいよね!」

「なるほど、そういうことっすか!」

「ニックは、気付いたようだな」


 ここ水の都『レスティア』がかつての初心者の町と同じくらい賑わってきている。

 他のプレイヤーが増えてきているのだ。

 ログイン機能が直ったのかと思ったが、相変わらずログアウトはできないままだ。

 どうやら、初心者の町のワープからこちらへ流れてきているらしい。


「可愛い女の子がいっぱいっす! つまり、今日は狩りを休んでナンパをしようってことっすね!」

「ちげえよ、バカ!」


 なんだよ、ニックも気付いてないのかよ。


「えー、じゃあ何? 人が多いってことは……、そうかなるほど! 他のプレイヤーからレアアイテムを盗もうってことね!」

「なぜそうなる!」


 こいつは、ブラックサンよりもマナー悪いんじゃないかな。

 盗みダメ、絶対。


「んふふふ、つまり人が多すぎて狩りにならない、ということですわね?」

「えっ!? ああ、そうだ。こんだけ多くの人がいたら狩場は満員電車のようにごった返すってわけだ」


 あー、びっくりした。

 ルティが急に会話に参加したから驚いちまったよ。

 普段のルティは、ニック以外とあまり会話しないのに。

 

「狩りをしにいくなら、もっと早い時間に場所を取らないとなぁ」

「大丈夫よ! 取られたら取り返す。倍返しよ!」


 倍返し言いたいだけちゃうの?


「そんなんじゃ某ギルドと同類になっちゃうって言ってんだよ。それにほら、毎日狩りだけっていうのも飽きるだろう? 休みの日を設定するのもありなんじゃないかな」

「わ、わかったわよ」


 マーシャは渋々、俺の提案を了承する。

 念のため、一人でダンジョンに行って危ない真似はしないようにと釘を刺しておいた。


「というわけで、今日は各自、自由行動な」

「了解っす! ちょっとカワイイ子をナンパしてくるっす」


 こういうときのニックの行動は、やたら早い。

 すぐさま、人ゴミの中へと消えていった。


「ああ、ニック様、待ってくださいましー」


 そして、ルティもそのすぐ後を追いかけていった。

 ニック以外は眼中にないのだろうか。




 さてと、俺は少し情報収集でもしておくかな。


「ん……?」


 俺の後ろを無言でついてくるマーシャ。


「どうかしたのか?」

「えっ?」


 俺が振り返って声をかけると、驚いた表情をするマーシャ。


「今日は、自由行動って言っただろ?」

「そ、そうね……」





 しばらく町の中を歩き回る。

 他のプレイヤーの話を盗み聞きするためだ。

 情報収集にはこれが一番手っ取り早い。

 ぼっち時代に築き上げた俺の数少ない能力だ。


 話を聞く限り、やはり初心者の町からワープしてきてるらしい。

 初心者の町がモンスターに襲われたときに、近くにある海辺の村に避難してた人が大勢いたらしい。


 と、そこですぐ後ろにマーシャがいることに気付く。

 まだついてきていたのか。

 何か言いたそうな顔をしているな。

 なんだろうか、思い当たることは何もない。

 よし、聞いてみよう。


「あ、あのさ……」

「ん、なぁに?」

「なんでついてくるの?」

「……べ、別にそんなんじゃないんだから! レイトのバカ!」


 そう言って、どこかへ走り去るマーシャ。

 意味が分からない。

 何なんだ一体。





「あ、あのぉ、ちょっと良いですか?」


 適当に町を歩いていると、後ろから声をかけられた。

 俺が振り返ると……。


「えっ? あれっ? えっ? ど、どういうことだ?」


 そこにいたのは、NPCのキャシー。

 下を向きながらもじもじとしている。

 おかしい、NPCが向こうから話しかけてくるなんて。


 これは一体……?


「あ、あの、レイトさんに大事な話があるんです……。ちょっと、一緒に来てもらって良いですか?」


 ぎゃ、逆ナン!?

 しかも、NPCに!?


 いやいや、あり得ないだろ普通。

 そうか、これは何かのイベントだな?


 町の路地裏から用水路のような場所へと入っていく。


「おーい、キャシー、どこまでいくんだよー、大事な話って一体……」

「すみません、少しテストをさせていただきますね?」

「なっ!?」


 用水路から液状のモンスター『ブルースライム』が現れた。


「えっ? ま、町の中にモンスターッ!?」

「さあ、レイトさん。このモンスターを倒してください」


 倒してくださいって言われても……。


「うわっとっと」


 俺が身構える前に、攻撃してくるブルースライム。

 間一髪、その攻撃をかわすことに成功する。


「よっと」


 そして、そのままスライムに反撃。

 一撃で仕留めることができた。


「なるほど、さすがですね。これなら、博士も喜ぶことでしょう」

「博士……? さっきから何を言って……」


 そして、用水路に不自然に建てられた小屋のような場所へと連れ込まれる。

 秘密基地か何かか?

 レスティアにこんなところがあったなんて知らなかったな。


「さあ、こちらです」


 案内されたその先には、ベッドに横たわる一人の老人。


「彼が、このゲームの開発者のテクノ博士です」

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