第7章~童話「奈落の月」編 第6部
今回は少し少なめです。
メルヘニクスに何が起こったのか
「メルヘニクスVSタルタロス」の戦争の真実とは!?
彼ら最強の組織がなぜ解散したのか。
詩朗を主人公に語る彼らの過去をぜひご覧ください
「いってきまぁーっす」
「こら、寧々!お弁当!」
「あっ、ご、ごめんなさい」
そういいながら少女は慌てて降りてきた母親からお弁当箱を受け取り
それを鞄の中に入れると、玄関の鏡でその『茶色の髪』が整っているか確認する。
「よしっ!じゃあお母さん!行ってきます」
茶色の短い髪を揺らして、彼女は眩しい太陽の光に飲み込まれていった。
「奈々ちゃん?奈々ちゃーん」
「あっ、はいはーい、今行きますよぉー。まったく五月蠅い人だな、『喰っちゃいたい』なぁ」
少女は里親である人物に呼ばれてそちらに向かう。
『黒』くてどこか大人びた長い髪を揺らしながら。
彼女がいた場所には、食い散らかしたようにカエルの死体があった。
「はぁーあ。こういう時にあの五月蠅い人の相手してくれる《もう1人》がいればいいのになぁ」
「世の中には、『不思議な人間』って言うのがいるんだよ。黄鉄」
「……あぁ?急に何を言い出したんだ?お前??」
「いや、本当に。これは変な性格とか、そういうことじゃねぇぞ?
俺から言わしてみれば、お前こそ、その『不思議な人間』の代表例なんだが……」
「てめぇ……あんま舐めてると殺すぞ?」
「いや、待て、冷静に話を聞いてくれ。お前……喧嘩に明け暮れただろ?」
「お、おう……」
「だから、そんな力持ちなんだろ?」
「あ、あぁ……」
「だけど、おかしくないか?」
「はぁ?何が?」
二人でベンチで弁当を食いながらの会話。
男、神倉詩郎は目を細めてじっと本郷黄鉄の身体を舐めるように見つめる。
「お、おい……」
「………………」
「やだ、あそこ……」
「ガタイのいい男2人でベンチ座って……やぁねぇ」
「こ、これは!これは!ほ、ほ、ほ!筋肉たちの乱舞!!」
二人を見ていた公園の人達がヒソヒソと会話を始めだす。
「お、おいっ!何がいいてぇのかわかんねぇがあんまジロジロ見てんじゃねぇ!」
「おっ、済まない。本当に不思議でな」
「だから何がだ!」
「お前……細すぎないか?」
「はぁ?」
「いや、お前の怪力に比べたら筋肉の厚さとかに違和感を感じるんだよ。
ただでさえお前の怪力は化け物じみている。『スカイスクレイパー』以外の『ここ』でもだ」
「…………」
「その結果、お前はどうなった。言ってみろ」
「はぁ?俺にも……わかんねぇよ」
「こんな真昼間に俺なんかと一緒に弁当を食っているお前はどうなったんだ。……『孤独』だ」
「何真面目に語ってんだよ。お前……」
「お前は俺に出会わなければ『孤独』だったはずだ。
きっとこの世の中にいる『不思議な奴』ってのは、みんな孤独なはずなんだ」
「んで、だからなんだよ」
「そういう奴らの……『拠り所』になれねぇかな」
「なんでおめぇがそんなことする必要あるんだよ」
「だって……面白そうだろ?」
神倉詩郎はそう言いながら微笑んだ。
少年のような笑顔だった。この笑顔なら、何か大きなことを成し遂げそうな気がしてくる。
本郷黄鉄はそう感じ取っていた。
「ねぇ、あそこ2人……今度は見つめ合ったわよ」
「ふぅー!ふぅー!こ、これは!ペンが進むペンが進むぅー!筋肉マッソー!」
「……詩朗。なんかあたりが五月蠅い」
「ん?そうか?」
「とりあえず、おめぇがそう思うならやれよ」
「あぁ、そうする!」
そういって奴はベンチから立ち上がり、自分が持っていた空の弁当箱をごみ箱を捨てる。
仁王立ちで昼の太陽を見上げている。本郷黄鉄は座りながら彼を見上げる。
日の光を浴びて神々しく、神倉詩朗が映った。
「い、痛い……おかあさん……お父さん……」
とある路上。
そこに倒れている茶髪の少女が一人。
痛みで立てない。どうしていいかわからない。
お腹の所から赤い液体がドクドクと流れ出てくる。
視界が揺れてよく見えなくなってきている。
「はっ!ははっ!や、やった!こ、これは、報復だ。
こここここここ、この俺を無視し、しがやる世界への、報復だ!」
微かに聞こえる声。
そうだ……私はこの男に……ナイフで刺されたんだ。
男は私の懐を漁る。
「こ、これは俺の軍事し、資金に、さささ、させてもらうぜ。へへへ」
震える手で私の懐から財布を取り出してそれを自分の懐へしまう男。
微かに聞こえる足音で男が逃げているのがわかる……けど、途中で足音が聞こえなくなった。
「おぉーい。生きてるー?」
「………………?」
「腹刺されてるけど、声でるー?」
「……ふぇ?」
「よし、生きてるねぇ」
血がドクドクと流れる。
不思議なもので、自分がもう何をしても死ぬと悟っていた。
だからこそ、耳だけで聞こえる彼女の言葉に神経をとがらせる。
「助けてほしいかい?僕なら……助けられるよ、信じられないかもしれないけれど、僕は化け物だから」
「……?」
私には理解が出来なかった。
彼女の言っていることの意味がわからなかった。
「まぁ、君の許可なく、君を僕は『喰らう』んだけどね♪」
街灯に照らされる人の通りのない場所。
そこには倒れた小さな茶髪の少女と、頭が砕けて電柱近くで死んでいる男。
そして倒れている茶髪の少女の元で座り込んでいる一人の黒髪の少女。
彼女の背中から影が茶髪の少女を飲み込むように覆いかぶさる。
その陰は、まるで大きな化け物がこれから少女を喰わんばかりに映っていた。
「ふぅー。ご馳走様♪
えーっと、この子の名前は……『神崎寧々』か。よっと」
「……え?ど、どうして……私の身体が……目の前に――――――――――」
「こっからはちょ~っと忘れててねぇ~♪」
そして、《自分の死体》を見た少女は絶叫を上げる間もなくそのまま気を失って倒れた。
その後、彼は行動の通りに仲間を集めていった。
初めて出会ったのは、バイクで暴れまくって多くの人間を病院送りにしてしまう男。
どんなに乱暴な運転をしても、倒れない。彼には……『風の音』が聞き取れるかららしい。
二人目に出会ったのは動物と会話を交わすことのできる幼い少女だった。
それゆえに彼女は孤独だった。人々からは魔女と忌み嫌われていた。
三人目出会った奴は全身傷だらけだった。
口なんて見せられないほどだと言うので常に隠していた。
目からは俺達とは違う世界に生きているとはっきりわからせるような殺気を感じた。
身体からは洗っても洗っても取れない血生臭さがあった。
四人目はスカイスクレイパーで暴れてた奴だった。
どうやら元『オーディエンス』にいた奴だったようだ。
理由はわからないが、その組織を抜けて放浪としていた所を神倉詩朗が誘ったそうだ。
五人目は細い身体の男だった。
常に大事そうに人形を抱えていた。その人形は古びていて気味悪かったけれど
その男はそれを放すことはしなかった。彼の回りには人形がたくさんあった。
そしていつも、人形に対してぶつぶつ話していたそうだ。
まだ子どもだった彼を見つけた神倉がスカイスクレイパーに誘った。
そこからさらに、大手企業の御曹司と言う男が神倉に会いにきた。
彼は巷での神倉の行動に興味を持ち、神倉と共に行動を共にするようになった。
次に出会ったのは陽気な少女だった。
さらに小さな頃から公園に暮らす2人の男女。
目のほとんどが真っ黒な少年。
砂に依存し、迫害を受けてしまった少年。
部屋から一歩も出ずに寝続け、近づく者に悪夢を見せた魔女と呼ばれた少女。
そして
「彼女が、黒金寧々だ。これからみんなの仲間になる」
「よ、よろしく……お願いする」
「ふぅーん。アンデルセン?この子はどういう子なの?」
「ん?いや、なんとなく「小さいなぁ」って思って誘った」
「なっ!?そんな理由だったのですか!?」
「ははははは!確かにちいせぇ!」
「……ぷふっ!」
「いいじゃない♪私は可愛くていいと思うわよ?
女に限っては小さい事は利点だもの」
「…………………」
犬養誠司・黒沼遊太・明知氷雨・逆鬼桃李の4人は黒金寧々と言う少女を見てそれぞれ反応を示す。
残りの者たちもみな笑ったり、じっと睨んだりしていた。
「と、とにかく!み、皆さん!こ、これから『メルヘニクス』として頑張りますので、よろしくお願いします!!」
緊張しながらも頭を下げた黒金寧々を見て、皆が皆、微笑んだ。
この子も、自分たちと同じ。ここに『居場所』を求める一人だと、確信出来たから。
「ここは、孤独だったものたちの溜まり場だ。
心のどこかに闇を抱えていようが関係ねぇ。お前達の居場所は、俺達メルヘニクスだ!」
神倉詩朗の言葉で、その場にいた全員がまた微笑む。
幸せだったんだ。
神倉詩朗を中心に不幸しか知らなかったものたちは、『楽しい』を得たんだ。
彼らはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いでスカイスクレイパーを駆け回った。
さまざまな強敵を倒し続けた。楽しかった。14人で戦うことが。
さらにもう1人『赤野瞳』を加えて15人。
彼らは常に上を目指していた。上に上に、さらなる強者に向かって闘いを挑み続けた。
「よしっ!出来た!!」
「ん?どしたの?アンデルセン?」
「おう、ピエロ。こいつを見てくれよ!」
「……手錠?」
「あぁ、これはなぁ『果たし錠』っつってなぁー」
「うわぁーネーミングが親父ギャグ臭い」
「べ、別にいいだろ!?これは相手と正々堂々1対1で戦うことが出来るアイテムなんだ」
「ふぅーん。まぁ、俺にゃ必要ねぇな。こゆの誠司や桃李に上げたら喜ぶんじゃね?
っつか……さっきから思ってたんだけど、アイテムって?」
ピエロ……『黒沼遊太』は話をしている途中で
机に散乱していたものを適当に一つ取って神倉詩朗に問いかける。
彼の能力は『想像したものを具現化する能力』である。だからと言っても
この机の上にあるごみのようなものの山は流石の黒沼遊太も気にせざるを得なかった。
「これか?これはな。俺がいなくなってもアイテムが消えないように
いろいろ相違工夫をしながら使えそうな物を作っているんだ。
今回の『果たし錠』が第一作品として、これからいっぱい作っていくぞ!」
「んで……どうすんだ?」
「これを、近隣のビルのリーダーに渡す。
そうすることで近隣ビルとの関係をよくして、このビルのさらなる強者に挑むためのバックアップにする!」
「ふぅーん。なんか、すごいんだね。アンデルセンは、そりゃあいつらが慕うわけだ」
「おめぇは俺を慕ってくれてねぇのか?」
「そんなことはないよ。
けれど、俺はみんなと違って孤独とか不幸じゃなくて単純にあんたが『面白い』と思ったから入ったからな」
「本当に……お前はみんなと違うか?」
「ん?」
「俺からしてみりゃ、おめぇもみんなと一緒だよ。遊太」
「…………。そうかいそうかい。じゃ、アイテム発明頑張ってください」
「おう」
そこから、彼はどんどんとアイテムを生み出した。
『天界の指輪』『果たし錠』『12の伝説』『2丁拳銃・アングル』『記憶の狭間』『聖剣・天叢雲』『パンドラの箱』
の7つを生み出し、それを各組織に明け渡した。
しかし、それが…………奈落から『悪魔』を呼び起こすきっかけになるとは、その時誰も思ってはいなかった。
「た、大変です!神倉さん!!ひ、氷雨が!集中砲火を喰らってます!」
「っ!?あ、相手は!?」
「た、タルタロス!《7人の悪魔》とその軍勢です!」
「くそっ!まだ奴らと闘うような暇はないぞ!」
「……やるしかねぇだろ。詩朗」
「そうだな……。桃李。お前に『天叢雲』を預ける。使えるな?」
「あぁ、任せとけ」
「よし、仲間がやられてんだ。こっちも黙っちゃいねぇよ。戦争だ」
そして、スカイスクレイパー内で伝説となった《メルヘニクス》と《タルタロス》の戦争が始まる。
☆
その闘いは、その当時からこの世界にいた人間にとっては有名な話だった。
神倉詩朗率いるイロモノ集団
対するは、この世界に住まう闇。人外とも噂されている《タルタロス》
タルタロスはたった6体。
対するメルヘニクスは赤野瞳の不在、明知氷雨がやられたことによって13人。
総勢19名の闘いだったはずが、闘いは波乱を呼び、周辺ビルを巻き込んだ戦争となった。
メルヘニクスには、タルタロスを全員敗れるかも知れないと、希望を持った奴らが、加勢したのだ。
一方で、《魔王》とも呼ばれるタルタロスに助力することで恩恵を受けようとした者達もいた。
タルタロス側は大軍隊となった。対してメルヘニクスは加勢があってもほんのわずか。
これまで神倉詩朗が築いてきた絆で集まった者たちである。
その者達も巻き込んだ闘いは凌ぎを削った。
「くっ!こんの……っ!糞……野郎ッ!」
「……《桃太郎》か。良くぞ我の元までたどり着いたな。
だが、なぜ《天叢雲》がない?我はあれをご所望だ」
《桃太郎》こと、逆鬼桃李は血だらけで立つことすらままならない。
己が持つ大剣を支えになんとか立ち上がり、目の前の男を睨みつける。
仰々しく伸びた長い髪が、風で揺れ動く。
筋肉質の身体。日本人離れした鋭い目つき。
「てめぇを倒せば全てが終わる!ルシファーァァァァァァァァァァァァァ!!」
地面に刺さっていた大剣を引き抜き、
それを持ったまま目の前の男タルタロスのボス《ルシファー》に向けて地面を蹴る。
「……愚かだな。童話の中の住人よ」
逆鬼の大剣が、ルシファーの胴体を切り裂く。
「そんなことをしても無駄だ……。我にはな」
逆鬼の目に映る……漆黒の《炎》。
胴体を切られてなお平然と表情を変えないルシファーの姿。
「どう……なっていやがる……!」
目の前の光景に呆然としてしまう逆鬼。
確かに、斬ったのだ。何の構えにも入らないルシファーをこの大剣ではっきりと。
なのに……ルシファーは無傷で、その身に《炎》を纏っていた。恐怖を具現化したような、漆黒の炎。
呆然としている逆鬼に、ルシファーの手が伸びる。
「桃李くん!!」
「っ!?」
誰かの声に反応して意識が戻る。
その直後、逆鬼の腕に手錠がかけられていた。
そして、逆鬼の視界から、ルシファーの姿が消える。
「……姿を消す《宝》なのか?それともそういう能力なのか?
まぁよい。いくらでも挑んでくるが良い。魔王とは、勇者をじっと待つ存在だ」
「……太陽か」
「あぁ、危なかったね。桃李くん」
真っ白な空間。
そこで、座り込んでいる逆鬼桃李と、彼を見下げている北風太陽。
「アンデルセンには助けられたよ。《果たし錠》を僕が預かっていてよかった」
太陽はそういい、この空間を見渡す。
メルヘニクスのボス、神倉詩朗は、想像し、創造する能力を持っている。
それを利用し、自分が闘っている時でないときも作動する武器を作り出した。
人々はそれらを《アンデルセンの宝》と呼んだ。
彼は近隣のビルに友情の証としてその宝を配るつもりだった。
だが……《奈落》がその宝に興味を持ってしまった。
《タルタロス》――このスカイスクレイパー内で、最強と謡われている魔王たちを纏めた総称。
彼らがメルヘニクスに対して攻撃を仕掛けてきた。
彼らの力と武力は異常としかいいようのないものだった。
「……今さっき優希と勇樹も2人してやられたそうだ。
完全にこれは僕らの劣性みたいだね。タルタロスも表舞台に出ているのは
《サタン》と《アスモデウス》の2人。
残り3人は姿を見せず、最強と言われている《ルシファー》はさっきの通り自分の城でふんぞり返っている」
「この闘い……俺達が負けるのか?」
「……諦めちゃあだめだよ。
聞いてくれ、僕と、遊太と姫子ちゃんの3人で《レヴィアタン》を倒せたんだ。
と言っても、最後の最後にやっぱり詩朗の助けがないとダメだったけどね。遊太も姫子ちゃんも
今必死にもがいているよ。だから―――――――」
「僕ら2人で、ちゃんとこいつを倒そう」
「……ほぉ、ボロボロの《桃太郎》とこちらもボロボロの《謡い手イソップ》か。
2人とも実力は申し分ない。なんだったら亡くなった《レヴィアタン》の後釜にしてやってもいいぞ?」
「「断る!」」
「……なんともつまらんもの達だ。まぁ良い。2人して……地獄の業火で消し炭にしてやる」
「くっ……。みんな……!」
こんなはずじゃなかった。
目の前の争いを唖然と見下ろす。
俺が求めていたのはこれなのだろうか?
なぁ、黄鉄。俺が夢に語ったことの答えはこれなのか?
出る杭は打たれる。そんなことはあるが、これは打たれてるだけなんだろうか?
俺はただ、この世界をもっと楽しい場所にしたかっただけなんだ。
交友的で、互いに切磋琢磨し合う。俺と黄鉄のような、そんな世界にしたかったんだ。
そしてこの世界で新しい事をしたかった。それがこの道具作りだ。
けれど……それが、こんな事になってしまうなんて。
「こんなはずじゃない。とか言いたいの?」
「っ!?」
神倉は慌てて振り返る。
そこには、きょとんとした顔の黒金寧々の姿だった。
「ん?どうしたんですか?詩朗さん?」
「いや……。なんでもない。どうしたんだ?寧々」
「いえ、私もこの通り傷だらけ。
詩朗さんの様子を少し見に来たんです」
「……そうか」
神倉は黒金寧々のほうを見ようともしない。
その目には、今も闘っている戦場を見ている。
この戦争はリーダーが倒れれば終わりのゲーム。
俺が負けた瞬間に終わる。だから、俺はこうして自分陣地で待機している。
「でも……もう。我慢出来ない!!」
俺は手元にグングニルを出現される。
「それはいけないなぁ、お兄さん♪」
その瞬間だった。
痛みが走る。体内から喉元まで血が上ってきて、思わず吐き出してしまう。
地面に吐き出した血と共に、目の前にあるのは、自分の腹を貫いた。細い、細い。少女の腕。
俺は慌ててグングニルを後ろに向けて放つ。俺の腹に刺さっていた腕は引っこ抜かれ、俺から距離を取る。
「……どうして!」
「どうして?面白い顔するねぇ、お兄さん。
自己紹介が遅れたね。僕の名前は『黒金奈々』君たちが今闘っている《タルタロス》の一人だよ」
目の前にいるのは、間違いない。黒金寧々だ。
俺が彼女と出会ったのは孤児院での話だ。
大人しい少女だと言う。両親を亡くして心を閉ざしていたと。
俺は偶然彼女に出会い、彼女に接触していった。彼女の心を開ければと思った。
黒金寧々と言う少女と対話を続けて、心を開くことが出来た。だから、今度は彼女に『仲間』を与えようと、
このスカイスクレイパーの世界に連れてきた。そして我らが『メルヘニクス』の一員となった。
人見知りをする。大人しくて、小さくて、可愛らしい女の子だったはずだ。
こんな恐怖を覚える笑みを浮かべる少女では、断じて違ったはずだ
「お前は……誰だ!」
「だから、言ったじゃん。僕は黒金奈々だって」
「黒金寧々は!俺達の仲間!『ピクシー』黒金寧々はどこへやった!」
「……もしかして、僕が姿を変える変身系の能力者で
黒金寧々と潰した後、君に近づくためにこの姿になってる。とか、思い込んでる?
それだったら残念無念的外れすぎて笑えてくるよ。寧々ちゃんが君の事好きだったっぽいから
特別に話してあげるよ。僕と寧々ちゃんは同一人物だよ。よく言うだろ?《二重人格》って奴♪」
少女は悪意に満ちた笑みを浮かべながら言う。
俺の脳内は、パニックだった。今までの黒金寧々との思い出
そして今自分に攻撃を仕掛けてきた黒金奈々と言う名をした《タルタロス》の一人。
奴が語る言葉が頭の中でぐるぐると回り続ける。
「お兄さんさ?よく語ってたよね。『世の中には不思議な人間がいる』
そいつらを集めて、仲良くしたかったみたいだけど、残念だね。
世の中には『不思議な人間ではない化け物』って言うのがいるんだよ。
それが《タルタロス》。僕たちは人間の形をした。人間じゃない……本物の《魔王》なんだよ」
「何をわけのわからんことを……!」
「まぁ、わかってもらえなくて結構。
このスカイスクレイパーと言う空間もそうだけど、人間そこにいても《そこ》の真実なんて
一生知ることなんて不可能なんだから。あんたなんかにわかられなくたっていいよ。
僕は君の能力が欲しいんだ。あらゆるものを想像し、創造する!最高じゃないか!ねぇ……『喰わせて』よ」
彼女の後ろからは、いくつかの岩の塊が宙を浮いている。
あれは間違いない。黒金寧々の能力だ。そしてその後ろだ。まるで本物の悪魔のように目の前の少女の影が、姿を変えて牙が映る。
「っ!?」
「さぁ!岩の的に待ってもらおうか!」
突然。身体が動かなくなる。
なぜだ!?黒金寧々の能力は無機物を動かすことだけのはず!
俺の身体をサイコキネシスで動けなくすることなんて!
「飛んでけぇ!」
岩の塊が一斉にこちらに飛んでくる。
受ける構えにも入れない俺の身体に重い岩が身体に衝突を繰り返す。
微かに骨の砕ける音がする。痛みに俺の表情が歪む。
俺は能力で盾を作り、自分の前に落下させる。飛んでくる岩たちがそれに防がれて砕ける。
「……最強の盾あらゆるものから俺を守る」
「ふぅーん。まぁ、そう簡単にはやられないよね!」
そういうと、マンモンは地面に向かってパンチを繰り出す。
するとそこからみるみる皹が入って地面が砕ける。
「……聖なる翼よ!我を天に導け!」
俺は能力で自分に羽を作り、空へと逃げる。
「いいなぁー。やっぱりその能力。便利すぎるよぉー」
目の前には、拗ねたように言うマンモンの姿。
奴も翼を生やして俺の前を飛んでいた。
俺はグングニルを強く握りしめる。いつでも攻撃を始めれるように。
「マンモン……だったな。
お前はどうしてそんなに色々な能力が使える。
それに、俺の能力が《欲しい》とも言った。普通、能力は一人一つのはずだ。欲しがっても手に入らないだろ?」
「ん?僕も一つだよ。
いや、正式には寧々ちゃんも入れて二つか。
君が寧々ちゃんをこちらの世界に引っ張ってきちゃったからね。
《物体を動かすサイコキネシス》と僕は《他人の能力を奪う》能力がある」
「っ!?」
「だから、君のが能力を作って増やす能力なら。僕のは能力を奪い取って増やす能力だね」
「そんな……能力もあるのか」
俺は思わず息を飲んだ。
自分の能力も大分恵まれている。と正直自負していた。
けれど、こいつのは恵まれているとか言うレベルではない。
能力を喰らう。喰らわれた人間の事を考えれば嫌でもその苦痛がわかる。
この世界を、人生の糧としている者もいるだろう。《メルヘニクス》なんてそういう奴らの集まりだ。
そんなこの世界で戦うための能力を奪う。考えただけで絶望してしまう。
「ふぅー。……さっきお前は『人間じゃない』って言ったな?
それはどういうことなんだ?教えてくれないか?」
俺は一旦息を吐き、自分を落ち着かせた後、確信を突いた質問をしてみる。
こいつの性格なら、話すかもしれない。
「ん?んー、いいのかなぁ。ルシファーの爺に怒られはしないだろうか」
人差し指を顎に当て、少女らしい仕草で悩んでいるマンモン。
見た目は小さい少女なのだが、そこにもやはり恐怖を感じる。
「ん!まあいいだろう。どうやらレヴィもやられているようだしな。
まず結論から言うとルシファーが消えぬ限り我らは消えぬ。この世界追放もない。
レヴィはこの闘いで消えたようだが、まぁ、後一年や二年すれば新しいレヴィが生まれるだろう」
「……生まれる?」
「そうだぞ?心の中に《奈落》を持つ者が《タルタロス》に選ばれる。
その瞬間。我々は《人外》と成す。我も人ではない。もちろん《黒金寧々》もな」
「そうか。わかった。やっぱり世界は不思議で包まれているんだね」
「ん?どうした?自分の仲間が人外だったから怯えておるのか?(笑)」
くすくすと笑いながらマンモンは俺に問いかける。
「いや、違うよ。裏切りを受けたとは思わないさ。
それよりも……少しワクワクしているね。《世界の真理》ってのに近づいてる気がしてさ!」
「やっぱり変わった男だね。君は、寧々ちゃんが気に入るわけだよ」
そういうとマンモンは手の関節をゴキゴキと鳴らす。
俺がもう動けないのを悟っている。
腹部を貫通させられ、身体中岩をぶつけられて骨が砕けている。
相手はダメージを何一つ受けていない。彼女はこの勝負に勝利を確信したのだろう。
「さぁ……喰わせてもらうよ!!」
マンモンが俺に向かって襲い掛かってくる。
「……ちっ!喰らえ!」
俺は持っていたグングニルを奴に向けて放つ。
奴はそれを軽々と避けてさらに俺との距離を詰める。
奴の広げられた手が俺の頭部を狙っていた。俺はそれをかろうじて交わす。
掴もうとしていた奴の手は俺の右肩を捕らえた。
「ちっ!まぁ……どこをふれれても喰らえるんだけどねぇ!」
「がぁぁぁぁっ!!!」
ミシミシと右肩が掴まれる痛みに耐えきれず声が出る。
俺は捕まれていない左の腕で懐に入っている物を取り出す。
ただただ掴まれているだけのはずなのに、まるで生気を吸い取られているかのように衰弱とする。
これが能力を奪っていると言うことなのか?
「……だけど!この勝負!俺もただじゃあ終わらねぇぞ!開け!《パンドラの箱》!」
「っ!?なんだそれは!?」
「マンモン……おめぇを!寧々から引き離す!」
俺が出したパンドラの箱は開かれ、光に包まれる。
その光は辺りの視界を無くさせるほど眩しいものだった。
そして、《アンデルセン》神倉詩朗と《マンモン》黒金奈々が闘った戦場では
ただ、一人、小さな少女がそこで身体を小さく丸めて気を失っていただけだった。
「そ、そんな……!」
「お前達はよくやったが、やはり届かなかったな……。哀れな童話の住人よ」
倒れ気を失っている北風太陽。
その場で勝敗の決まった知らせを聞いて絶望し膝を付いてしまった逆鬼桃李。
様々な戦場で、敗北を知らされたメルヘニクスの面々は絶望した。
自分のボスが、負けた。自分たちの依代であった神倉詩朗が負けた。
ただ―――その事実だけがのしかかり、彼らの関係は、壊れ始める。
☆
「……ん?」
少女は目を開ける。
そこには一つの広い個室。
そこにいたものたちはみな、傷つき、ただただ俯いていた。
少女が目を開けたのを確認すると、全員がこちらを見る。
悲哀の目をしているものがほとんどだが、ただ一人。少女に怒りを抱いて睨んでいるものが一人。
「おい。黒金」
「っ!な、なんですか……。逆鬼さん」
「てめぇ、この戦争が終わる時……。アンデルセンの近くにいたらしいな?……何があった」
「わ、わかりません」
「あぁっ!?」
見下すように少女を睨みつける逆鬼。
思わず睨まれた少女は怯え縮こまる。
「わからねぇってこたぁねぇだろ?おめぇは消滅してなくてアンデルセンは消滅してんだ。
てめぇはあの現場にいたんだろ?何か知ってるだろ!?なんとか言ってみろ!!」
「…………っ!!!」
「てめぇ!」
「お、落ち着きなよ桃李くん!」
怯えて話すことのない少女に向けて拳を放とうとする。
その拳を止めに入った北風太陽によって制止される。
「……ちっ!」
太陽に諭され、さらに怒りがこみあげてきた桃李は
そのまま踵を返し、扉を開けて、強く閉めて去ってしまった。
「あぁーあ。桃李くん怒って行っちゃったぁー。
んでさ?実際にどうなの?黒金寧々ちゃん♪」
ソファーに仰々しく座るピエロ。黒沼遊太は流し目で黒金寧々を見つめる。
その目は無邪気そうに見えて、黒く澱んだ深い沼のような瞳をしている。
その瞳に睨まれ、恐縮して。黒金寧々は何も言うことが出来ない。
「……黙秘か。んー、つまらないなぁ。
早く本性見せなよ。そしたら僕ら全員を倒せるのかい?」
「いや……私は!」
「あの場には、君しかいなかった。
アンデルセンが単体の人間に簡単に負けるとは思えない。
一人でアンデルセンを倒せるほどの奴がいるなら、そいつが近づく段階で僕らは警戒してるはずだし」
「…………」
「ピエロ。言いすぎだぞ」
「はぁーい。すみませんねっと」
そういうとピエロはソファーから立ち上がり、桃李と同様に扉を開けて去っていく。
「アンデルセンがいないこの組織になんの面白味も感じないや。俺2ぬーけた♪」
「桃太郎も、ピエロも抜けた。なら……俺も抜けるかね」
「誠司くん!」
「なんだ?イソップ?文句あんのか?」
「どうして、そんなに簡単にこの場所を捨てることが出来るんだい!」
「……そりゃおめぇ。元々俺達は群れるべき人種じゃねぇだろ?」
「っ!?」
「おめぇはだいぶ変わったが、俺たちは元々『異質』なんだぞ?
異質で、みんな孤独で、そうやって生きてきた奴らだぞ?まぁ、俺やピエロは例外だがな。
アンデルセンが消えていなくなった。ここの奴らはアンデルセン以外にはまだ完璧に心を開いてねぇだろ?」
「「「「「…………」」」」」
犬養誠司の言葉に、その場の全員が俯く。
彼らの今心の中の不安と言う淀みが、心の中に浸食していく。
アンデルセンに出会う前、自分の心の中を充満していた真っ黒な淀みが。
「んじゃぁ、そういうこった。俺は抜けさせてもらうぜ」
そう言い放ち、犬養誠司もその場で姿を消した。
彼の言葉を聞いた者達は次々と立ち上がり、扉を開いて去っていく。
「ちょ、ちょっとみんな!!」
「太陽。君の事を尊重したいとも思うよ。けど……詩朗のいない場所に僕は興味はない」
「そもそも僕は優希と一緒にいれたらそれでよかった。
アンデルセンがいるからここにいたんだ。そのアンデルセンがいないなら……必要ないよ」
「み、みんな!……みんな……」
そしてみんながいた部屋には、既に北風太陽と黒金寧々以外はいなかった。
そうして、この二人のみとなった空間に、北風太陽も耐えきれなくなり、その場から離れてしまった。
「どうして……どうしてこんなことに……!!」
ただ一人、取り残された黒金寧々はその場で座ってただ泣き続けるしかなかった。
ほとんどの者は、スカイスクレイパーにも出現せずに、ただただ自分の殻に引きこもった。
ピエロは、自分の奴隷とも呼べる者に新たな暇潰しへの矛先にし
狼男は、自分の元部下を集めて少人数の組織を作った。
イソップは、何をしていいかわからず、ただただ戦場を謡った。
そして―――――――――――。
「足りねぇ……足りねぇ!!こんなのじゃあ足りねぇ!!」
戦場。
そこで暴れ回る一人の修羅。逆鬼桃李。
巻き込まれたもの、鬼に挑み向かったもの。
その全てが彼によって切り捨てられていく。
その目はまさに鬼の如く恐怖を植え付ける瞳孔をしている。
頬には返り血、服も剣も真っ赤に染めあがる。
それでも彼はただただ、どこに向けたものでもない叫びを続ける。
自分の居場所を失った悲しみと、それを奪ったものにぶつけることが出来ない怒りを振るいながら。
理由はない。ただただ、やはり自分も狂っていたということを再認識しているだけである。
戦場で生きてきた自分の、狂った価値感。何をすればいいかわからぬから人を斬る。
そのイカれた感情に支配された男は、ただただ暴れ続けるだけだった。
「…………ふぅ」
「どうしたの?桃李くん。溜息なんて吐いて」
「溜息じゃねぇよ。気合の現れだ」
「気合……ねぇ。まっ、相手はあのアンデルセンを倒した《マンモン》だもんねぇ」
「ねぇ、付いたんだけどさ……」
「ん?どうしたの?奏詞くん」
乗り物の前を見ていた《ピノキオ》木野奏詞の言葉に《ピエロ》黒沼遊太が答える。
「前に、五人。ビルの前に五人、立ちふさがってるよ」
「あぁ?どいつだぁ??……。こいつぁ面白い」
ピノキオが見ていた画面をのぞき込んだ狼男、犬養誠司がそのまま乗り物から飛び出した。
「僕らも行くか。桃李くん」
そういって、四人全員が乗り物から出ていき目の前の五人を睨みつける。
「そこを退け……小僧」
「それは出来ない相談ですね。晴嵐のためにも、僕のためにも、貴方を通すわけにはいかない!」
そう声を発しながらデュランデルを召喚する少年―――徳川優。
「お前……。そうか、あの時の小僧か」
「僕は、決して聖人じゃないでね。大事な人を傷つけられて、復讐したいとずっとずっと思っていました!」
「……面白い奴だな。利口な青年みてぇな面してるくせに、今の目……修羅の目になってんぞ?」
「修羅の目……ですか。どんな目なんでしょうかね」
「俺みてぇな目だ。てめえは今、恨んでいる俺と同じ目をしてんだよ」
「そうですか……。それでもいいですよ。僕は貴方を倒す!晴嵐のためにも、僕のためにも!」
そして二人は互いに剣を構える。
「…………あんた」
「ちょいとぶりだなぁ。お嬢ちゃん。
そこに『アンクル』があるってことは、速人の野郎がお前に渡したのか」
「あんた……やっぱり父さんを」
「あぁ、危なかったぜぇ。見ろよこの胸のあたりの傷!
奴は強かった。だが……まだ満足できねぇ!嬢ちゃんが満足させてくれんだろうなぁ!!」
「させないわよ。あんたが満足する前に、あたしがあんたを捻り潰すんだから」
「ほぉ、この前はあんだけボロボロにされたのに、そんな減らず口が叩けるねぇ」
にやりとその牙のような歯を見せて笑う。
その男の笑みをじっと睨みつける少女―――葵刹那と、その背中から犬養誠司を睨みつける葵千恵。
「おっ、そのチビは何もんだ?……いや、なんとなくその目と髪でわかった。……妹か?」
「そうよ。だったら何?」
「ほぉ、速人の子供がまだいたのか。こいつは楽しみが増えてきたぜ!!
てめぇら!本気で俺を満足させろよ!」
「だから、させないって言ってるでしょ!千恵、わかってるわね」
「うん……。大丈夫。私も、がんばる」
「あらぁ?あのときの爆弾少年じゃーん」
「……おう」
「ここにアンがいないってことは……死んだ?」
からかうような黒沼遊太の言葉に、車田清五郎は眉を歪める。
「いやぁ~ってことは、野ばらちゃんが倒してくれたのかな♪
本当によかったよ♪推薦した僕の目に狂いはなかったね!!」
「…………あぁ?」
「ん?だから、野ばらちゃんに『最初に狙う奴はアン・ヴィクトリアがいい』って吹き込んだの僕だから
彼女の過去は、おそらく君たちの中でもっとも過酷で、エグくて、人には見せられないものばかりだからねぇ」
「……てめえ!」
「怒るなよぉ~♪アンは僕を裏切った時点で僕の敵なんだから
その敵に、情けをかける必要は……ないでしょ?だからぶっ潰したくなったんだよねぇー♪
本当は僕の手で止めを刺したかったなぁ~。野ばらちゃんによって精神崩壊したアンをボッコボコに
蹴り飛ばしてボロボロになった彼女にさらにトラウマを植え付けるんだ。きっと楽しかっただろうなぁ~~♪」
「…………っ!!」
嬉々として語る黒沼遊太に対して、それを聞いてる車田清五郎は脈が浮き出るほど怒りを露わにする。
「ほんっと!ゲスでクズだわてめぇ……!」
「ん?」
「前からずっと思ってたんだ!
あの時から……晴嵐達とてめぇをブッ飛ばした時から!
ずっとずっと、てめぇをこの俺一人でぶっ殺したいと思っていた!」
「ははっ♪いい威勢だねぇ~」
「その人を喰ったような態度、へし折ってやる!!」
「……なんか、向こうで盛り上がってるね」
「そうだな」
「えーっと、僕の事しってる?」
「黄鉄さんから貰った写真で知っている。木野奏詞。『ピノキオ』……だろ?」
「うん。そうなんだけど……。ごめんね、僕はあの三人と違って感情的じゃないんだ」
「なら俺もだ、安心しろ」
「まぁでも、ここは通してもらわないといけないからね。君を……倒させてもらうよ」
「安心しろ、てめぇなんかにやられる俺じゃねぇよ」
「……へぇー、なら『誰になら』……負けるんだろうねぇ」
マンモンの潜むビルの前。9人の戦士たちが、互いに睨みを利かせてくる。
一瞬の沈黙。そして、互いに走りだした徳川優と逆鬼桃李の剣がぶつかりあい、金属音を立てる。
その直後に、他の者達も相手に襲い掛かる。最終決戦へのゴングが、鳴り響いた。
過去編終了です。
次回からは彼ら残ったメルヘニクスVSリムバレッド勢になります。
一応今のところ半分くらいは書き終わってますので
続きはもうちょっとだけお待ちください。
さあ!作品は着々とエンディングに向かってます!!
今まで読んでくださっている方ありがとうございます♪
これからもご愛読お願いいたします^^




