二章~ロキの三兄弟編・前~
蛇道狩羅との戦闘を終えて数日。
しばらく療養のため休んでいた明知晴嵐は
親友の優と共にバスケをしているとき、一人の少女。葵刹那と意気投合する。
楽しい日々を送りながらも、RBから賞金稼ぎの話を聞くこととなる。
『その名も…ロキの三兄弟。寧々ちゃんも狙われるかもしれない』
そして同じ時期、蛇道狩羅にもある人物が接触する!?
果たして《ロキの三兄弟》とは!?そして彼らの実力派!?
夜の東京で繰り広げられる闘技場能力バトルアクション!!
第二章!ここに開幕!!
「パス!へいパスッ!!」
体育館。
俺たちは、蛇道狩羅の闘いで身体を痛めてから、少しの間スカイスクレイパーへの出入りを禁止された。
誰にかって?そんなの決まってる。黒金寧々先輩だ。内緒にしてたのも怒られた。
そして俺は禁止にされちゃったため、俺は本来の職であるバスケ部員として努力に励むのだった。
「なあ晴嵐。お前最近動きよくねぇか?」
「あぁ?そうか??」
休憩中。
汗を拭いている俺に、優が話しかけてきた。
「おう、なんか「動きなれてる」っつうか。最近学校も休んでただろ?大丈夫なのか??」
「あ、あぁ…大丈夫だって。学校休んだ間も、こっそり自主トレしてたんだよ」
俺はなんとか誤魔化す。
スカイスクレイパーのことを優にも教えてもいいだろうけれど
そこは先輩に聞いてみたいといけない。それに、適当に誘って俺みたいなことになったら大変だ。
それに、自主トレに関しては事実だ。
身体を痛めて休んでいた日も、それなりの筋トレはしてたし……。
「うっし、再開すっか!」
「おう!!」
そして俺と優は、バスケットシューズの音を鳴らした。
「なあ、晴嵐。久々に行かないか?」
突然言われた優の一言。
普通ならわからないが、俺と「行く」と言えばあそこしかないと、俺はすぐに理解した。
「OK、久々に……やるか!」
その一言に満面の笑みを浮かべた優と俺は、そのままその場に向かって走った。
「おらっ!取ってみろ!!」
「にゃろー!」
場所は、近所のストリートバスケ場。
これって正式名称あるのか?悪いけど俺は知らない。
中学の頃から、優と暇だったり部活の終わりにはここに来て1on1を決め込んでいた。
高校になってから部活が忙しかったり、互いのスケジュールが合わなかったりで自然としなくなったが
久々にこいつとガチの1on1は楽しい!!
「貰い!」
「あっ!」
優が隙を見て高くジャンプしてボールを放つ。こいつは遠距離からのシュートが得意だ。
「くっそぉー!!!」
俺はゴールまで全力疾走してそのままジャンプ。
なんとか入る前にボールを…!!!!!
パァン!!と音が響き、俺はボールを叩き落としたのを確認する。
そのボールを取りに行こうとした優がボールを取ろうとした直後、人影が現れてボールを取っていった。
驚いていた俺たちの脇をすり抜け、その人影はシュートを決める。驚いてなくても抜けられそうな素早い動き。
そのままシュートされたボールは軌道を描くように、ゴールにすぽん…と入る。
「「あ……」」
その人影はふぅ~と光悦の笑みを浮かべていた。
そしてその後ぽかーんとした俺たちに気付いたのか、少し恥ずかしそうに俯きだす。
あ、この人知ってる……。
「えーっと…葵先輩っすよね?」
俺はとりあえずシュートを決めた女性にそう話しかける。
「う、うん。そうよ…ごめんね?なんか流れでボール取っちゃって…」
彼女は少し申し訳なさそうに頬を掻きながら言った。
葵先輩は、女子バスケ部でキャプテン候補に上がってるぐらいの先輩だ。
小柄(まあ先輩よりは大きいけど)な体格からなのか、素早い動きに実力がある。
俺もたまに女子バスケの練習を見ていたとき、すげぇーって思った一人だ。バスケ部員として尊敬してる。
「っていうか。あんた達前からここ使ってるの?」
「い、いえ…。中学の時はいつも使ってたんですけど最近は全然…」
優が葵先輩の問いに答えた。その言葉を聞いて先輩は気にしないような素振りを見せる。
「ふーん。だからか、あたし最近ここ使ってるんだけど、会わないからさ」
「葵先輩もここ使ってるんですか?」
「……あぁー先輩つけなくていい。二人とも葵でいいよ。自分よりでかい相手に敬意払われるの慣れてないの」
「そうっすか。んじゃー葵もする?1on1on1?」
俺はニヤリと笑いながら葵に言った。
すると葵もニヤリと笑い、無言の返事をしてくれた。
「じゃあ始めるぞ!優!!」
「OK!晴嵐!!」
「あ、ちょっと!1on1on1なのにあんた達で組んでない!?」
その後俺たちは、本当に真っ暗になるまで三人でバスケを楽しんだ。
葵せんぱ……いや、葵は本当に気さくで、すっげぇバスケが上手くて俺と優にとって最高の友達になった。
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「ふぅー疲れたぁー。まあ明日は休みだし、ゆっくりやす………」
「あぁ、邪魔してるぞ?」
「なんで先輩がいんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
俺が部屋に入って電気をつけると、机の前に黒金先輩と、RBがいた。
「うん。そろそろかなぁーとか思って電気消して待っていたら30分も真っ暗だったよ…」
RBが密かに自分達の苦悩を口に漏らした。二人ともそんなことをしてたのか……。
俺はとりあえず鞄を置いて自分も机の前に座る。
「んで?皆さんいつからいたんですか?」
「……2時間前よ」
「ッ!?」
そ、そんな時間から……ってかどうやって部屋空けた!?
「管理人さんに、寧々ちゃんと女装した僕が鍵を貸してと言ったらにやけた顔で貸してくれたよ?」
「RBぃ!?何てめぇはさりげなく衝撃発言してんだ!?女装!?」
「うん。見る?自分で言うのもあれだけど……わかんないよ?」
そういって写メを俺に見せてくるRB。そこに映っていたのは俺の好みドストライクの女の子だった。
「おい…RB。この妹さん俺に紹介しろ!」
「…僕です。明知さん。」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は涙を流しながら立ち上がり叫んだ。
俺のドストライクが男なわけがない!!って小説書きたくなるぐらい悲しい!
「まあ、とにかく落ち着け。晴嵐くん、今回私達は少し話しがあってきたんだから」
「…話って……」
「あぁ、『蛇』の騒動や私の遠征中だったから説明を怠っていたことを君に言おうと思ったな」
その言葉の瞬間。さすがに俺も真面目にならないといけないな…。と思って、再び座る。
「まず、『派生』についてだ。RB、詳しく話してあげて」
「うん。明知さん。この前も話しましたよね?派生が出来ているって」
「あぁ…。」
「例えば僕らのビルにはつい最近壊滅した『蛇』と、僕らの組織がある。
けれど僕たちの組織も、本来の大きさを壊し今や僕と君だけになってしまっているのが現状だ」
「そ、そうか…」
俺は適当な相槌を打ってしまう。
「それでね?寧々ちゃんが行った所。つまり別のビルにも派生組織は存在する。
例えば寧々ちゃんが行っていた所は僕たちみたいな遠征組にも心の広い『オーディエンス』。
そして『蛇』。後は『聖騎士十字団』って言うのもいるみたいだね。僕は外に行ったことがあんまりないから
僕のデータベースはあくまで僕らのビル内だけなんだけどね……。」
自分の不甲斐無さに少し悔しさを抱いているのか、下唇をかみ締めるRB。
「安心しろRB。君の実力ならすぐにでも「外出許可証」が降りるだろう」
「なんです?「外出許可証」って??」
俺は、先輩の行った言葉に疑問を抱いてそれを聞いた。
「あぁ、ある程度の実力と功績を立てれば他のビルへの移動も可能になるんだ。
自分のいるビルでも上位の実力にならないといけない。勝率的に言えばRBもいい所だろう」
「ち、ちなみに俺は…」
俺は恐る恐る聞いてみる。い、一応あの狩羅を倒したんだ。それなりの功績は…。
「まだまだだな。」
そう即答されて俺は軽くへこんだ。あんな頑張ったのに…
「決して君の功績がないわけではない。単に経験歴と、勝率がまだ安定していないからだ。
勝率などを換算して、君の順位はまだ90~100位くらいだろう」
俺……そんな低いんすか。
ちょっとへこむなぁ…。
「まあ君ならドンドン順位を挙げて、その許可証も手に入れるだろう。私はそう思っている」
そういって励ましてくれる先輩。やっべぇ……超嬉しい。
「あ、それときになったんだが…晴嵐くん『羽』を生やしたそうだな?」
先輩が突然思い出したように行った。
『羽』と言うのは、狩羅との闘いで現れたあの羽だろう。
実はどうやって出してるかいまいちわかっていない俺がいる。
「え、えぇ…一応は……」
「一応…か。とりあえず早く自由に使えるようになれ。
『飛行』能力を持ってるというのはそれだけで相手に大きな アドバンテージを与えることになる」
そういって俺が出した紅茶を啜る先輩。
うん。俺にとっては小さいカップも、先輩と合わせたらちょうどいい。
「あ、ついでに聞きたいんすけど、俺らの組織名って何なんですか?」
「んっ…言ってなかったか。
私達が名乗る派生組織名は『メルへニクス』だ。まあそれも昔の話だけどな…」
そんなことを言った後先輩は、俺の能力の向上案について語りはじめた
その後俺たち三人は、仕様もないような談笑を行って、時間を過ごした。
「それにしても、もうこんな時間か」
先輩が自分の腕時計を見てぼそりと呟く。俺も時計を見ると、もう夜の9時。確かに遅い時刻だ。
「…今から帰るの大丈夫ですか?先輩??」
「あ、あぁ…だ、ダイジョウブだ。う、うん…」
どうしてだろう。先輩の様子が変だ。
「寧々ちゃん。無理しないほうがいいよ。暗いの怖いくせに」
「ッ!?」
俺はRBの言葉を聞いて思わず先輩をがん見してしまった!!
く、暗いところが怖い!?な、なんて可愛いんだ先輩!!
おうおう!今もちょっとビビッてる!?本当に怖いんだ!やっべぇ超可愛い!!
「……寧々ちゃん。今日は泊まって行かない?大丈夫ですよね?明知さん??」
RBは思わぬ提案をしてくる。俺は即答でOKを出した。
「ほ、ほんとぉ?な、なら……その言葉に甘えるとしよう。うん」
「あ、でも風呂とかどうしましょうか?」
俺がさりげなく言った一言に、先輩は顔を真っ赤にさせた。
「…ど、どうしたものか」
「とりあえず、まず僕と先輩を縄縛りにして動けなくしてから風呂に入ったら?」
またRBはとんでもない提案をしてきた!?なんてこと言うんだ!
そんなことしたら先輩の風呂をのぞk……やめようこれ以上は、冷静に冷静に。
「そうっすね。俺もRBも覗く気なんてさらさらないけど用心のためにそうしたほうが…」
「いや、二人を信頼してる。済まないが君の家の風呂を貸してもらおう」
そういって先輩はそのままとてとてと風呂場に駆け込んでいた。本当に俺達縛らなくてよかったのかなぁ?
「……覗きます?明知さん??」
「…バカやろう。あそこまで信用されてちゃ、覗けるもんも覗けねぇよ…」
俺はRBの甘い誘惑を断ち切り、気を紛らわせるために飯を食うことにした。
「あ、明知さん。1つ言い忘れてたことがありました」
「ん?なんだよ??」
俺がチャーハン(簡単調理できる奴)を食っていると、RBがパソコンの画面を見ながら呟いた。
「最近。『賞金稼ぎ』が暴れてるらしいです」
「賞金稼ぎ?」
「はい。その名も……『ロキの三兄弟』!!」
「ロキの…三兄弟?」
「寧々ちゃんも狙われるかも知れない。僕らで彼女を護らないと…」
RBの真剣な言葉に俺はある疑問が浮かんだ。
「なぁRB?」
「なんです。明知さん」
「お前ってさ…先輩のこと好きなの?」
「うん。そうだよ」
「え…」
あまりに即答だったので俺は呆然としてしまい、持っていたスプーンを落とした。
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「…『蛇の毒』とまで呼ばれてた古田が、この程度ねぇ…。
『蛇』がいないからあんたを狙ったんだけど…拍子抜けね」
「……お、お前ら…。狩羅さんがいない間に…!!」
「あぁ?勘違いすんじゃねぇぞ??その狩羅っつう奴も俺が!ぶっ潰してやる!!」
「やめなさい、龍二。あたし達の目的は達したんだから」
「けどよぉ姉貴!俺としては強い奴ぶっ倒して天下とりてぇわけよ!」
「……戦国時代とかに生まれればよかったね」
「あぁ!?今姉貴軽く流しただろ!?」
「二人共…五月蝿い」
スカイスクレイパー。
対戦内容は『松竹梅』
狩羅のいない古田が作ったチームと、とある三人。
結果は三勝零敗。古田のチームが負けた。
「さてっと…次のターゲットはどうしよか♪♪」
「やっぱ『ヘラクレス』だろ!あいつ倒したら俺こそ最強!」
「あんた一人じゃ勝てないわよ。あたし達三人でも勝てるかわからないのに」
「……『ピクシー』。」
「うん、千恵の言う通りね。ここにはいい『賞金首』が多いわ。手当たり次第に潰しましょ」
そうして三人『ロキの三兄弟』は、ピクシーたちがいるビルに侵攻を開始する。
☆
東京の夜。表の夜。
ここを闊歩するのも存外久しぶりかも知れない。
と、男はビルの谷間から流れる風を身に受けながら鬱陶しいぐらい賑わう人の中を掻き分ける。
彼の服の中から「シュー!」と何かの泣き声のようなものが聞こえるが
彼とすれ違う人々はそんなことを気にしない。気にするつもりもない。
彼は常にビジネスと言う戦場を戦い抜いているのだ。男ごときの変わった音などを気にしている暇はないのだ。
「いやぁ…古田の奴に任せたが、大丈夫だろうなぁ?」
男は思わず一人事を漏らしてしまった。
少し気が向いたというか、本音を言えば先日負けたのがまだ心残りなのだ。
自分を倒した男。明知晴嵐は現在「療養中」とのことだ。自分は、彼が戻ってくるまで「スカイスクレイパー」には
戻らないと決めたのだ。いい意味では奴との再戦の確立をあげるため。
悪い意味は、今俺がのうのうと暴れても「惨め」に映ってしまうだろうという恐怖があるからである。
だから自分の唯一の友「古田」にビルを任せておいた。
現在俺も、そして『ピクシー』もいないあのビルは少々脆いからな。何かなければいいが……。
「な、なんですカ?アナタたちは!!」
「へぇ~君外国人?日本語上手だね??お兄さん達と遊ばない?」
「イ、イヤです!NOです!!」
「あららぁ~断っちゃうの?お兄さん達すっげぇ優しくて面白いよぉ~??」
「自分で優しい言う人。信用ナリマセン!」
「あららぁー警戒深いなぁーどうする??」
「せっかくの美人ハーフだしなぁ…」
なにやら、女性が絡まれているようだった。相手はチンピラか?
通行人のビジネスマンは何事もないかのように無視して素通りする。
本来のこの街の光景、そのようなことに首を突っ込んではならない。突っ込まない。
ビジネスマン達は、自分の戦場で戦うのに必死なのだ。ここで首を突っ込んで自らを傷つけてはならない。
それが社会人。それが大人。
それを決して間違ってるとは思わないし、むしろ正しいと思う。俺も出来るなら首を突っ込みたくは無い。
だけど……。
「行け。蛇ども……」
相変わらず、自分は変なところ大人ではないらしい。そして俺はもとより「不良」だ。正しくなくていい。
俺の足元から二、三匹の蛇が姿を現して地面を這う。
『透明蜥蜴』を使えれば、もっと市民にバレにくく出来るんだがなぁ…。仕方ない。
表でも裏でも、ここを縄張りにしてるのは俺、蛇道狩羅だ。有象無象の輩に好き勝手させる夜はない。
「ねぇ~ほんのちょっとでいいから俺達と遊ぼうぜ?なぁ??」
「何度言ったらわかるんですカ!NOでス!!」
「なぁ…もうめんどくさいし…攫わね??」
「お、もうそうすっかー。」
「は、離してくださイ!」
もう少しだ。
蛇が通行人たちに気付かれないように静かに地面を這う。
「…りょ、亮さん!!」
「あぁ?どうしたんだ??てめぇ??」
「へ、蛇です!!」
「な、なんでこんなとこに蛇が!!!」
「やっべ!咬まれた!!痛ぇ!!」
俺が放った蛇が、チンピラの一人の足首を咬みつく。
その出来事にパニックになるチンピラ共
「お、おい!こんなことできるのって!!蛇道狩羅ぐらいだぞ!?」
「あ、あの野郎!どこにいる!!」
「ってか蛇まだ咬むんスけど!!!!」
「と、とにかく!逃げたほうがいいな!!チッ!!」
そう捨て文句を言いながら、チンピラ共は蛇を恐れて逃げていった。
残された白髪の少女は
自分を見ていた俺と視線が合うのを確認すると、人ごみを分けてとてとてと向かってきた。
「へ、HELPしていただきありがとうでス!」
白髪少女は丁寧にお辞儀をした。
日本語も上手く話しているが、ところどころ拙い。
「…なんで俺だってわかるんだ?」
「だ、だって!蛇さんたちアナタに向かってHOMEするですネ!!」
「…なるほどな。んじゃあな」
「ま、待ってください!Wait!!」
去ろうとした俺の服を掴んで、彼女は叫んだ。
「…なんだよ?」
「あ、アナタ…もしかして「狩羅」さんデスか?」
「……あぁ?」
こいつは何を言い出したのか…。もしかして俺のことを知っているのか?
もしかしたらこいつは「影」の人間なのかもな。ヤクザには外国の女を娶ってハーフを作ることが多いらしい。
俺の祖父も俗に言う「影」の人間だったからな。そこらへんで知ってるのかもしれねぇ……。
と、俺は踏んでいたんだが…どうやら、的は外れたみたいだ。
「……『蛇』が解体されたって…本当ですか??」
彼女の言葉で、彼女は「裏」の人間であることがわかってしまった。
そう、俺が『蛇』として暴れ、そして敗北した…「裏」の世界「スカイスクレイパー」
「…てめぇ、名前は?」
俺は、興味本位でこいつの名を聞くことにした。
こいつも俺になにやら用があるみたいだしな……。
「メ、メアリー・メディシアでス!あ、アナタの舎弟になりに来ましタ!!」
「……はぁ?」
これが、
俺とメアリーの出会いの始まりと…今度は巻き込まれる側で俺は戦闘の波に飲まれることとなる。
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「……寝れねぇ…」
俺、明知晴嵐は正直言うとドキドキしていた。
俺が敷いた布団には、先輩が可愛い寝顔をしながら眠っている。
《布団二枚しかないけど…なんか二人が布団で寝てるのに俺がベッドだと悪いな…》
と、俺が言ったらRBが《あ、僕これがあるんで、先輩がもう一枚の布団で寝てください》
となぜか寝袋を持ってきていて、今も寝袋に包まれながら壁にもたれ掛かっている。
本当に……虫みたいって言うか。
よくあんな姿勢で寝れるなって言うか。色々ギャグ用意しすぎだろあいつ。
そして……
(ち、近い…/////)
二枚の布団を隣に敷いているので、俺は今近い距離で先輩の寝顔を見ていた。
スゥースゥーとなんの警戒心もないまま寝顔の先輩は超可愛いんだけど……。
な、なんか…襲ってはいけない!!
これが先輩以外の女子で俺が好きな女子ならいっそのこと!とか思うんだけど…。
先輩からは…そんな気すら失せてしまうほど、純粋で……可愛い!!
「後……」
俺は布団から顔を覗かせて、ある一点を見る。
そこにあるのは壁にもたれ掛かるRB。あいつのメガネが月の光に反射して光ってるから
すげぇ睨まれてるみたいだ…。あいつも先輩のこと好きだとか言ってたし……。
「あ、RBさーん?」
「………」
返事はないみたいだ。
これは本気で寝たな。
い、いくら先輩が襲ってはいけないと思わせるほどの可愛さだからって
こういう場面で何もしないのはあれだ。「据え膳食わぬは男の恥」だ。
こんないいイベントがあるというのに具体的な利益となったようなことは1つもないのだから
パジャマ姿を見れたら最高なのだけれど、
そんなものは持ってきていないと先輩は結局服のまま寝てるし。
しいて言うなら風呂上りの濡れた髪がちょっと色っぽかったってぐらいか…。
(よしッ!男晴嵐!!ここは一丁頑張ってみるか!)
俺は先輩の方に歩み寄り、布団に入ろうとする。
「……どうした?」
「………//////」
布団に入ろうとした食後、目をパチりと先輩が目を覚ました。
俺は恥ずかしくなって顔を真っ赤にさせて布団に戻った。
「な、なんでも…ないっす!!」
「…そう、わかった」
そういって先輩も僕に背中を向けて寝息を立てた。
やっべぇ…今のは心臓に悪い…。
ドキドキして寝れないかも……と思ってはいたけれど、案外すぐに俺は眠りに入ってしまった。
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「…とりあえず、『蛇の毒』古田良介を狩ったわよ。満足?」
「……まあ、奴も『リスト』には入れているからな。他の奴らは??」
「『ピクシー』も『蛇』もいないんですよ。最近こちらに来ていないらしく…
来るまであのビルを拠点にしようと思います」
「そうか…まあ頑張ってくれ。お前らが俺の定めた賞金首を倒すことで、お前ら家族は助かるんだからな」
「……はい」
少女は、椅子に座っていた男に向かって頭を下げて返事をする。
そして彼に背を向けて、彼女は部屋を去った。
「どうだったよ…姉ちゃん?」
「えぇ…。やはり古田だけでは満足ではないようよ。」
「ってぇことはやっぱり『ピクシー』とか狩らないといけねぇなぁ」
「でも……いない…」
「そう、彼女達は偶然「休暇期間」なんでしょ。でもまだ狙いどころはあるわ」
「……どゆことだよ姉ちゃん?」
「車田清五郎。あいつもリストに登録されていたわ。そして……」
「……どうしたんだよ姉ちゃん」
「いえ、もう一人リストUPされた男がいるのよ。名は「明知晴嵐」よ」
「明知?知らねぇな」
「あんた…一応同じ学校よ?」
「マジかッ!?」
「はぁ…あんたよくサボるからそうなるのよ…。
最近この世界に来たばかりなのに『蛇』を倒したらしいわ」
「マジかッ!?」
「あんた同じ反応しかしてないわよ?」
「……おにいちゃんバカみたい。」
「ちょ。千恵ぇ!!その言い方酷くねぇか?」
「……酷くない。」
「だってバカだもんね?」
「……うん。」
「くそぉ!てめぇら覚えとけよ!!この兄弟最強はこの俺だってことを証明してやらぁ!!!」
自分の弟がなにやら元気に騒いでるのをほっといて
自分はもう一度そのリストに書いてある名前を見る。『明知晴嵐』…。
「ほんと……あたしはとことん不幸の星に生まれたみたいね…」
「……どうしたの?お姉ちゃん??」
「ううん、なんでもないよ。千恵」
「???」
あたしは妹の頭を撫でながらごまかした。
彼女は、今騒がれている「賞金稼ぎ」のリーダーである。
三人組の男女。「ロキの三兄弟」。
そのコンビネーションとパワーが定評のある三人。
そしてそのリーダーは最も強いとも言われていた。
短髪で、スポーティな格好をした少女。
名を『葵刹那』と言った――――――――。
☆
「くそっ!くそっ!!」
「ほらほらどうした?捕れないの??」
夕方ごろ。
またいつものストリートバスケ場にいた。
あの日、葵に会ってから毎日行っている。スカイスクレイパーにいけずに暇だし
それに、俺達よりも1つ年上の葵はやっぱり俺たちよりも上手い。
1on1で交代で俺VS葵、優VS葵でやっているが、ボールを捕ることが出来ない。
とにかく動きが速い。一回俺達が先にボール持ってる!!って言って挑戦してみたんだが
簡単にボールを捕られてしまった。それほど葵はバスケが上手い。
「はーい!5分経過ーまた晴嵐の負けー!!」
「くっそぉー!!全然捕れねぇー!!!」
俺はその場に大の字に倒れこむ。
すると俺の視界に水の入ったペットボトルが映る。
「ほら、お疲れ」
「あ、ありがとうございます」
視界に入った葵の姿は本当に頼りになる先輩!って感じだった。
俺はそれを受け取りガバガバと口の中に含む。
「あ、もうこんな時間か。ごめんね、あたし帰るわ」
「「はい!ありがとうございましたぁー!!」」
「なんで礼なのよ…」
「い、いや…なんかすげえ練習の相手になってもらったし」
「あたしとあんた達はただバスケして遊んだだけでしょ?んじゃ、また明日」
そういって葵は鞄を肩に下げ、そのまま外出していった。
「さてっと、優。俺も今日はこの辺で帰るわ」
「ん?どうしたの??普段ならもうちょっといるのに」
「あぁー…。今日からちょーっち用事があってな」
俺は思わずにやけた笑みを浮かべて優に言った。
優は特に怪しまず、
そのまま「そっか。僕も用事あるし、今日はこれで終わりだね」と言って去っていった。
俺もそのまま自分の家に向かった。
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「……ログインっと」
俺は家の中で携帯を取り出し、ポチっと押す。
「くぅあー!!久しぶりだぁー!!!!」
俺はビルに転送された直後、思わず叫んでしまった。
久々のスカイスクレイパーだ。ビル内の空気がピリピリとして気持ちいい。
「おう、晴嵐じゃねぇか…」
俺の叫び声に反応したのか、覚えのある顔が現れる。
「よう!車田じゃねぇか!!」
俺と車田は再会を喜びお互いの腕をクロスさせて互いに笑みを浮かべた。
「どうだ?俺がいない間になんかあった??」
俺は何気なく問うた質問に、車田は少し苦い顔をした。
「あぁ……何かとありすぎたぞ…」
そういって彼は、俺に対して語り始めてくれた。
「…『ロキの三兄弟』か…」
「あぁ、実は俺も一度そこの『ヨルムンガルド』と対決してな、
みっともないが正直に言う。惨敗だった」
「お前がっ!?」
「あぁ…やはり俺は『井の中の蛙大海を知らず』だな。世界はまだまだ広い」
車田は悔しそうに歯軋りを鳴らした。
『ヨルムンガルド』……一体どんな奴なんだろう。俺は車田に聞いてみた。
「あぁ……ぶっちゃけて言ってやる。あいつは『バカ』だ」
「……はぁ?」
俺は車田の回答に思わず絶句してしまった。
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「どうでぇ姉貴!俺一人でも車田清五郎を討ち取ってやったぜぇ!」
「はいはい。ご苦労さま」
「なっ!?また流しやがったな!!」
「……五月蝿い」
「それで?
あんたが『残りの賞金首は全員俺がやってやらぁ!』って言うから何もせずにいるんだけど…。
どれだけ倒していないの?」
「あーっと、俺姉貴みたいに強制バトルカードを持ってねぇんだよ。
だから偶然会ったやつとの運しかねぇ。
それで倒せてねぇのはもちろん『ピクシー』
そして『異能召還系』を持っているメガネのRBとか言うやつ。
後はまたまた異能系らしい『飛来拓海』って男と、噂に名高い『明知晴嵐』……だな。」
「そう、その四人だけ?」
「あぁ…後、『蛇』!!あいつにも会えてないな」
「そう…。明日からはあたしも出るわ。あんただけじゃあ手間が掛かるわ」
「けっ!まだ時間があれば全員俺が倒すことも出来るって!」
「……『ロキ』に急かされてるのよ。仕事を終えてから挑戦すればいいでしょう」
「はぁ…そうだな。仕方ねぇ。姉貴が来たとなっちゃあこのビルの賞金首は全員オジャンだな」
そういって『ロキの三兄弟』の一角。『ヨルムンガルド』はビルの画面を見ていた。
そこに映ったのは、自分のターゲット同士の対戦カードだったのだ。
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「へっ、なんの因果かしらねぇが、復帰記念対決だ。思いっきりやってこいよ」
車田は、対戦カードを見て俺の肩に手を置いてそう言った。
俺も驚いていた。
今自分の対戦カードに映っているのは「明知晴嵐」の姿と「飛来拓海」の姿が映っていたのだから。
「じゃあ、行って来るわ」
「言っておくぞ晴嵐。あいつは強くなってる。初めて闘ったときの雑魚と一緒にするなよ?」
「それはこの前の黄鉄さんの対決でよくわかってるよ」
俺はそういい捨てて車田と別れて、戦闘の舞台に移動した。
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「…今日はビル外か」
俺は転送先でそう呟く。
見上げても天辺が見えないほど高いビルばかり並ぶコンクリートジャングルが舞台。
俺は見上げていた視点を下げると、真っ黒な服に、ジーンズパンツと言ったシンプルな格好の男。
身長も俺も俺と同じようなものだが、腰には既に四本のナイフを携えていた。
「よぉ…久々だな。元気にしてたか?」
飛来が俺に対して話しかけてくる。
「あぁ…元気にしてたぜ。あんたとの再戦が楽しみだ」
俺は早速取り出した血を刀に塗る。刀から勢いよく炎を噴出される。
「いくぜぇ!」
俺は刀を構えながら飛来に向かって思いっきり走る。
奴の能力からして、俺は止まってはいけないのだ。奴の能力的にはな。
俺が走り去った後には、既にナイフが地面に刺さっている。本当に止まってたらOUTだな…。
俺が距離を詰め、奴を攻撃可能範囲に入れて、刀を振るう。
その直後、俺の刀を止めたのは、何個にも折り重なって1つの壁になっていたナイフだった。
俺は驚いて攻撃を止められた反動で動けなくなっている間に
飛来は腰に携えていたナイフを二本取り出し俺に対して投げつけてくる。
俺の肺と腹部にナイフが刺さる。くっそぉー!やっぱり慣れないぐらい痛い!!
バックステップで飛来との距離を取る俺は、その後刺さったナイフを抜く。
傷口が燃え盛り修復される。
その炎を俺は刀に集め、刀に更なる炎を纏わせる。
俺の攻撃を全て止める飛来。あの壁のように現れるナイフが厄介だ。
奴は距離を取って自身が出したナイフを投げつける。俺はそれを叩き落すも
俺の頭上から突如落ちてくるナイフに気付けず、対処したときには時が遅く、足を刺された。
俺は飛来から襲い掛かるナイフに気をつけて、確実に距離を詰める。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
俺は叫んで刀を振るう。
飛来はまたナイフで出来た壁を出す。もう構うもんか!その壁事ぶっ壊してやる!!
俺は渾身いっぱいの力を込め、今まで受けてきたダメージの炎を全て刀に集中させ、放つ。
「っ!?」
俺はナイフの壁を貫き、飛来の肩から腹部にかけて切り裂いた。
かなりの痛みに必死の形相をする飛来だが、その後、まるで強がるかのように笑みを浮かべた。
「…バカか。振り切ったときが一番動きが鈍くなるんだよ…」
そう言い切った飛来の言葉を聞いた後、俺の身体全体を、突然恐ろしいほどの痛みが襲う。
首から背中、足まで……。全てのいたるところにナイフが刺さってしまっているのだ。
俺はその驚きで、精神が逝かれ、身体が動かなくなる。
あぁ……俺そういう精神的な修行まだだったわ…。
そんな言葉を心で呟いた俺は、そのまま地面に倒れこんだ。
「……Win!!」
放送が流れる。あぁ…負けたのか。
「借りは返したぜ。次はお前が返しにこい」
最後にそういって飛来はそのまま会場を去った。やっべぇー超カッコイイじゃん……。
俺はそのまま気を失った。
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「…ここが『ロキ』のアジトでス!」
「……なんで俺こんなことに首突っ込んでんだぁ?」
「舎弟のProblemを背負うのもボスの務めデス!」
「……はぁ…」
「さあ!GO Toでス!!」
俺、蛇道狩羅は、少女…メアリー・メディシアに連れられて別のビルに来ていた。
そう、『オーディエンス』が取り仕切るビルに――――――。
☆
「……ってなわけですヨ!狩羅さん」
「なんの「ってなわけ」だよっ!」
俺はメアリーの言葉に思わず突っ込んでしまう。
場所は某ファーストフード店。
明らかに不良の風貌の俺と明らかにハーフのほわほわ系のメアリー。
いる店の客がちらちらとこっちを見ているのはわかる。だが俺は気にしない。
メアリーの方も気にしてはいないようで、普通にマッ○バーガーを喰っている。
「…んで、ここはマンガじゃねェんだ。
いきなり「ってなわけ」って言われても話を理解できるわけねェんだよ」
「す、すいません。じゃあきちっと説明いたしましょうカ♪」
そういってバーガーの包み紙を丸めて、次はジュースに手が伸びる。
そして飲み終えたメアリーは、口をシートで拭いた。
「さてっと、申し訳ございません♪怒るかも知れないですが本当にあの『蛇道狩羅』ですよね?」
「…舐めてるのか?」
「ひゃああああああ!!怖いです!この目で睨まれると怖いですぅ!すいません!!」
俺が睨みを聞かせた言葉に恐れたメアリー。
周りの目が少し痛い。
「だからぁ!俺は正真正銘『蛇道狩羅』だっつうの!!」
「…そ、それでわかってますよ!た、ただちょっと確認したかっただけで……」
「なら確認は終わっただろ?ちゃっちゃと用件言えやボケェ!」
「ひぃっ!そんな怒らないでください~今言いますからぁ~」
そういってメアリーは息を整える。俺ってそんな怖いかぁ?
「はい。ではいいます。
私メアリー・メディシアはアナタも予想済みの「スカイスクレイパー」の人間です。
名を「豊穣の神フレイヤ」と申しますデス。
属しているのは『オーディエンス』です。わかりますよね??」
「あぁ…わかるぜ?俺たちのビルとは隣のビルだからな。たまに遠征に行くやつもいる」
「はい。私はそこに属しているんです。
そしてアナタに用があるのはアナタが「極道」の人間だからなのです!」
「………はぁ?」
「ここでは話し難いですネ。ビル内に移動しながら話しましょう」
そういって席を立つメアリー。俺もつられて席を立ち、人目がなくなったところで携帯を取り出し
Bookmarkに入ったURLをクリックする。
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「ふぅーこの地域だとやっぱりこっちに出ましたね♪」
「てめェ…どういうことだ?」
「ここのビルはアナタがいたビルではなくて、私たちのビルなのです」
「ってぇことはつまり…」
「はい!『オーディエンス』の領地です♪♪」
俺は思わず驚愕してしまう。
別のビルに属している者同士が同じ場所で転送される場合。
現実の距離が近いビルに転送されるらしい…。
あのファーストフード店の場所はこのビルの圏内ってことか。
「さてっと♪狩羅さん。このビルを歩くのは初めてですよね」
「あ、あぁ…俺は遠征にはあまり興味なかったからな」
「ここに入る場合、「オーディン様」の許可を得ないと敵扱いされます。
このビルはもはや「オーディン様」の国となっています。
でも、オーディン様はとても気心の知れた人でス!」
「……ちなみに俺はどうなんだよ。」
「…………不法入国です」
「はぁ!?」
俺の声で再びメアリーを驚かす結果となる。
「あ、あまり目立つことをしないでください!バレたら私が怒られるのですから!」
「て、てめぇなぁ……!」
「オーディン様にも隠し事をしてまでしないといけないことなんですぅ!」
「あぁ?」
「つ、つきましたぁー!!」
そういってメアリーは壁に肩を隠し、まるでその先にいる者から隠れるような体勢を取る。
俺も仕方なくその体勢を取って、向こうにいる男の姿を見る。
メガネをかけた、賢そうな男だ。一丁前にソファーで偉そうに座ってやがる。
「あの人を……見たことないですか?」
「あぁ??」
「あの人……『狡知の神ロキ』の2つ名を持つお人なのですが、
どうやらアナタと同じ生い立ちのようで…」
「つまり…「極道」もんってことか?」
「はい。それを利用して何やら悪事を働いていると……。私はその被害者を知っています。
しかし、私が彼らを助けたと彼ら本人。
もしくはロキにバレようものなら危険です。一番バレてはいけないのはオーディン様ですケド……」
「なんでなんだよ…」
「俺は何気ない興味本位で聞いてみる。
すると口にするのも恐ろしいのか、身体をブルブル震わせながらいう。
「え、えーっとですね。ロ、ロキは私の直属の部下…でして、
か、彼の悪行を今まで気付かずほったらかしていたのをバレたら…
オーディン様に………あぁ、口にするのも恐ろしいですぅ~~!!!!」
「…つまりてめぇは、親玉に言えないミスしたから、バレないように解決したい。
だからロキと同じ「極道もん」である俺に白羽の矢を立てたっつうことか??」
「はい!」
「……くだらねぇ」
「あー!帰ろうとしないでくださーいぃぃぃぃぃ!」
服を掴まれて出ていこうにも出て行けない俺。
どうやらこいつを引き離すことは出来そうにない。
「……わーったよ。手伝えばいいんだろ?」
「さすがです!私はアナタの舎弟でHAPPYでーっす!」
「その舎弟っつうのも今回の件のための口実だろ?」
「ほぇ?違いますよ?舎弟は本当デス!」
「……はぁ?」
「狩羅さんの闘い方!私遠征で見たときからのファンです!
だけど狩羅さんの周りに恐ろしい人達がいっぱいいて怖かったのですぅ……」
「…俺は大丈夫なのかよ」
「はいっ!!」
「……どういう理屈だよ」
そんな会話を続けながら俺とメアリーはそのビルを出た。
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「…古田か?今どうしてる??」
『……大怪我中っす』
「あぁ!?」
『いやぁーちょっとやられちゃいましてぇ…』
「どいつにだ!?晴嵐かぁ?それとも『ピクシー』か!?」
『えーっと……「バカ」です』
「ふざけるんじゃねぇぞコラ!」
『すいませんすいません!えーっと、ロキの三兄弟っつってましたっす!』
「ッ!?ちょ、ちょっとすいません!」
「なっ!てめぇなにすんだ!!」
俺が持っていた携帯をいきなりメアリーに奪われる。
俺のことを無視して、古田に話しかけ始める。
「すいません!今、『ロキの三兄弟』って言いました!?」
『えっ、言ったけど…何君?狩羅さんの彼女??あの人意外に純情だったのに急に作り出したねぇー』
「……ま、しょ、将来的には…」
「てめぇら何関係ない話してんだ」
なんか話の論点がずれそうなので修正しておく。ってかなんだ将来的にはって。
「あ、すいません。そのロキの三兄弟は今どうしているんですか?」
『え、わっかんねぇーけど…なんか「賞金首を取る」とかなんとか言ってたような…』
「そうですか。あ、古田さん…ですよね?ビル内に入っておいて医務室に行っておいてください」
『あれ?なんでなの?』
「と、とにかくです!」
『ま、狩羅さんの女だから信用しますわー』
そういって古田が勝手に電話を切ったっぽい。
メアリーは満足げに俺の携帯を俺に返してした。
「んで?なんで古田に医務室行くように言った?」
「まあ、私のお任せください!」
そういって再び彼女とともに、今度は俺達のなじみのあるビルへと向かった。
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「えーっと、アナタが古田さんですか?」
「ちーっす。あんたが狩羅さんの女か」
「ちげぇよボケ!」
「まあ、GirlFriendではないですけど、狩羅さんのファンです!」
「ほぉ~狩羅さんにもこんなハーフで可愛いファンいるとはねえ~」
医務室で寝転んでいた古田はニヤニヤとしながら俺を見る。
最近こいつ、俺と同等の立場になったと思ってるのかたまに調子に乗ってる気がする…。
「では、治しますね」
「「……え?」」
メアリーの言った言葉に、俺と古田は驚く。
古田の腹部に手を当てたメアリー。彼女の手から青色の清らかな光が現れる。
「よかった…このビルでも能力が使える…!!!!」
「おっ、おぉ~すげぇ!!!」
寝そべっている古田が驚いているので、何が起きているのか、何気なく悟る。
「てめぇ……その能力は!?」
「はい。私、メアリー・メディシアの能力は『回復』です」
だから『豊穣』の神ってわけか……納得だぜ。
「さてっと、では狩羅さん。頼みますね♪」
「え、狩羅さんなんか頼まれたんすか?」
「あぁ……ちょっとな…。またしばらくこのビルには出ねぇ。てめぇはどうする?」
「せっかく治った身体だし、またロキの三兄弟と挑みたいからビルを徘徊しますかね」
「そうか…。まあ頑張れや」
「ういーっす」
俺と古田とメアリーはそこで解散する。
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「では、お願いしますね♪」
「あぁ…。
とりあえずジジィにこの辺周辺の同属事情聞いて、調べてみてやるよ。古田の件もあるしな」
「はい!お願いします!!」
そして俺は、夜の「表」の東京を歩く。
「…なんでついてくるんだ」
「……ダメですか?」
「ダメだ」
「I do not listen to what you say!! 」
「じゃあついてこい」
「は、はい!!」
「俺の言うこと聞かないんじゃなかったのか?」
「うっ…わ、わかりましたぁ…」
そのままメアリーはとぼとぼと帰っていった。
ジジィの家にあいつが着いていったら何が起こるかわかんねぇからな。
そして俺は東京の夜に姿を散らした。
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「さてっと…最近『ピクシー』たちが現れたそうね」
「あぁ!ついに出来るぜぇー!!わくわくしてきたぁー!!!」
「お兄ちゃん五月蝿い……」
「とにかく………」
「徹底的に狩るわよ。」
皮の手袋を手にはめた少女。葵刹那が小さく呟いた。
ついに、『ロキの三兄弟』との闘いが始まる。
ってなわけで前半はロキの三兄弟の一角、葵刹那との出会いと
一章のボス。蛇道狩羅をAnother主人公として置いた作品となっております。
後編では、ロキの三兄弟との闘いが繰り広げられますので
どうか楽しみにしておいてください♪