第5章~ヘラクレスの童戦祭・中編~
最強の男ヘラクレスが開催した「童戦祭」二日目!
この闘いでついにヘラクレスこと本郷黄鉄に挑む者たちが決まる!
それぞれの意地と因縁を抱え、猛者たちは闘いを続ける。
ヘラクレスに挑む権利を手にするのは誰か!?
その権利を得るために立ちふさがる《三人将》との闘いは!?
怒涛の戦闘オンパレードの第5章・中編開幕!
「僕は…。こんな力をもらっていいのかな?」
「あぁ、孝明。けれどその力は本当に守るべき時に使うんだね。わかったかい?」
「うん…。ありがとう兄さん」
「何、兄らしいことをしたかっただけだよ。使い道はお前に任せる。
俺なんかが説明するよりも、自分で考えたほうがお前は使いこなすことができる」
ビルの一つの部屋。
そこで話すのは《聖十字騎士団》のリーダー《エクスカリバー》聖正純と黒金寧々の右腕RBこと聖孝明。
そんなとき、今日の戦闘カードが更新される。
毎回4つの対戦表が公開され、その全てを終えると新たな四戦を表示する。
そしてその中に自分の名前があって、RBは驚愕としてしまった。
「これはこれは…孝明には荷が重い相手になっちゃったね」
「そうだね。兄さん、でも…頑張るよ」
そういってRBは兄、聖正純の元から去る。
「僕も…貴方に挑戦する時がきたんですね…」
彼はただ一人そんな言葉を残して、戦闘場に入場する。
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「…驚いたよ。まさか君と当たるとはな」
「そうだね、寧々ちゃん」
僕は目の前の自分よりも小さな少女。《黒金寧々》を見ながら言う。
このビルで最強と謳われる少女だ。
《ピクシー》の二つ名を持ち、能力はあらゆる物を自在に動かす《サイコキネシス》。
僕や晴嵐先輩の師匠でもあるお方だ。
『さあさあ☆昨日に続きまたも師弟対決!
このビル最強と謳われる一人、先日を破った《ピクシー》!
対するは、その《ピクシー》の一番弟子!RB!』
ジャックランタンが盛り上げるために僕らの紹介をしてくれる。
「行くよ…寧々ちゃん!!」
「あぁ…こい!!」
僕は自分の背中に大量の魔法陣を描く。
そこから浮かび上がる数人の騎士達……《ロイヤルナイツ》だ。
さらに僕は自身の手に《カリバーン》を召喚する。
「……《ワイルドハント》!」
さらに僕は自分の前にまた大量の魔法陣を描く。
そこから現れるのは……数匹の凶暴そうな猟犬達。
「…初めて見る召喚だな。RB?」
「うん、この闘いに備えて用意した僕の奴隷だ」
そういって僕は指をパチン!と鳴らす。
数匹の猟犬達はみな、寧々ちゃんに襲いかかる。
「ふっ、所詮は犬。バリアで止めれる」
寧々ちゃんはサイコキネシスでバリアを形成して僕の猟犬の小手調べをしようとする。けれど無駄だ。
「な、何ッ!?」
「…《ワイルドハント》はただの犬じゃない。
神話にも出てくる目にしたものは死を免れない化物集団だ。寧々ちゃんのバリアじゃあ阻止出来ないよ」
寧々ちゃんはバリアを突破されて、自らの本体に攻撃してくる猟犬達を能力で弾き飛ばし
空中へ逃げる。
「…《八咫烏》!」
僕が叫ぶと、僕の背後に巨大で真っ黒な烏が姿を現す。
鳥は僕の身体に密着すると姿を変え、その真っ黒な羽だけとなり、僕の羽へと変化する。
「ほぉ…空中戦もばっちりか」
「はぁ!」
僕は感心する寧々ちゃんに向かって攻撃を仕掛ける。
いくら近距離戦闘もできる寧々ちゃんでも、カリバーンの補助がある僕との剣戟では勝負にならないはず!
寧々ちゃんが腕に装着している岩の刀と僕のカリバーンがぶつかり合う。
下に降りれば猟犬達の狩りにあう。寧々ちゃんはいやがおうにも降りることは出来ないだろう。
「八咫烏!!」
僕がそう叫ぶと、背中に生えた羽から黒い液体が垂れる。
そのたれた液体が、下にいたロイヤルナイツ達に降り注ぎ、彼らに黒い羽を纏わせる。
「…白い騎士団に黒い羽か。なかなかカッコイイことをするではないか。RB」
「でしょ?僕の趣味にぴったりだ」
「王よ。あの淑女と戦えばよろしいので?」
「あぁ、やってくれランスロット。舐めたらダメだよ。彼女は本当に…化物なんだから」
「御意!」
【我らも行くぞ小僧。】
「あぁ、行くよ寧々ちゃん!」
僕は13人の騎士団を引き連れて寧々ちゃんに勝負を仕掛ける。
寧々ちゃんに勝つ唯一の方法は寧々ちゃん以上の力押しか…数だ。
数で押し切って、寧々ちゃんの対処出来ないようにしてやればいい!
空中で来る四方八方からの剣戟、いくら寧々ちゃんでもずっとバリアを貼り続けることは出来ないし
僕を入れて14人を対処することは出来ないはずだ!!
「くっ…!!完全に私を知り尽くした戦闘法だな!RB!!」
「今の貴方を一番知っているのは僕ですからね!」
僕の攻撃を、先輩の剣が受け止める。聖騎士の攻撃を先輩がもう片方でバリアを作って耐える。
このまま押し切れば、寧々ちゃんのバリアは潰されて…聖騎士が寧々ちゃんを切り裂く!!
「…ふっ、まだまだ甘いなRB。大量召喚はいい手だが、それゆえ疲労が大きい」
「ッ!?」
突然僕のカリバーンが寧々ちゃんに押し切れられる。
さらに、彼女のバリアが衝撃波へと姿を変えて聖騎士を吹き飛ばす。
【大丈夫か小僧!?】
「あ…うん。ごめんカリバーン」
確かに寧々ちゃんの言う通りだ。
《ワイルドハント》《ロイヤルナイツ》《八咫烏》《カリバーン》と既に四種類もの召喚をしている。
精神的に来る疲労は半端なものではない…。でも、やるしかないんだ!!
《サイコキネシス》が疲れてきているのは寧々ちゃんも一緒のはず!!
「……《ハンゾー》《サスケ》!」
「ッ!?」
その直後、先輩が縄に縛られる。
《伊賀甲賀》で呼んだ忍2人にやってもらった。
僕はカリバーンを振りかざし、寧々ちゃんに襲いかかる。
「くそ…ッ!《ゴーレム》!」
そう叫ぶ彼女の足元から、岩の巨人が姿を現し、そのまま寧々ちゃんを連れ去ってしまう。
僕の攻撃はゴーレムの固い岩を削るだけで終わってしまう。
ゴーレムが仰々しく腕を振り回す。空中を飛んでいた聖騎士が次々とやられる。
そして、僕のところにもゴーレムの腕が!
「王よ!!」
「ガーウィン!?」
ガーウィンが僕の盾となり吹き飛ばされる。
【小僧!ここは一度引いて態勢を立て直すぞ!】
カリバーンの言葉、僕は黙って従うしかなかった。
聖騎士の数も少ない…。一度消去するしかないな。
バックしてゴーレムと距離を取ると、今度はゴーレムが足を振り回した。
足元にいた猟犬達が無残に吹き飛ばされる。
「乗れ!」
僕の言葉を合図に猟犬はゴーレムの身体を走り、寧々ちゃんの元までその牙を向ける。
「壊れろゴーレム!」
その直後、ゴーレムが爆発するかのように分解される。
足場を無くした猟犬達は重力に従いそのまま地面に落下する。…終わった。全滅だ。
ただゴーレムを出しただけなのに僕の《ロイヤルナイツ》と《ワイルドハント》が全滅だ。
ゴーレムは再び集まり合体する。
「…あれぐらいなら、今でもできるかな」
僕は兄さんとの話を思い出す。
これは、僕が自分で闘うと決めた決意の現れ。
召喚したものに戦わせるんじゃなくて、自分が闘うと決めた日に《召喚》しろと言われた物。
兄さんには…止められていたけれど、やはり僕は物分りがいい子じゃない。不良みたいだ。
「…行くよカリバーン。」
【ッ!?あれはダメだと彼奴が言っておったぞ!?】
「カリバーン…in」
「ッ!?」
僕の呟いた言葉に先輩は思わず驚いた。
と、同時に、ゴーレムの大きな身体が真っ二つに割れた。大きくなった僕の剣で。
僕はカリバーンを元のサイズに戻ると、今度は横に振りながら、それを巨大化させる。
ゴーレムの胴体から真横にすっぱりと切れていく。綺麗に四等分だ。
ゴーレムはそのままバラバラと落下していく。もうゴーレムを出しても無駄だとわかったのだろう。
「…RB、貴様…」
「寧々ちゃん。これが僕の新しい力だ。後で兄さんに怒られるや」
寧々ちゃんと僕の戦闘は続く。
僕が秘密の必殺を使っても、寧々ちゃんは対処してきた。
僕のスタミナが切れていく。それに乗じて寧々ちゃんの攻撃がエスカレートしていく。
対処しようとしても対処出来ない攻撃。やはりカリバーン強化はまだ早かったんだ。
寧々ちゃんの攻撃をまるでサンドバックのように受ける僕。
僕は必死になって剣を振るう。
僕の攻撃を避ける寧々ちゃん。
また地面から彼女の手元へと岩が集まってくる。
その小さな小石達はミサイルのように僕に襲いかかる。
僕はこれを防ぐことができずにマシンガンを打たれたかのように全身に痛みが走る。
吹っ飛ばされた僕はそのままビルの壁に衝突する。
「悪いなRB。君は本当によく頑張った。召喚系が耐えられる痛みではないだろう?」
「寧々ちゃんは意地悪だ。途中まで僕が優勢に見せておいて、まずくなったら本気だす」
「そうだ。私は意地悪なんだ。意地悪で、悪戯好きな…悪い妖精なんだよ」
ビルの壁にへばりついている僕。あがこうにも動けない。寧々ちゃんがサイコキネシスで作った
岩の螺が服の至る場所に突き刺さっていて、出れない。羽にも刺さってる。動けそうにない。
「私も、まだ…弟子に勝ちを譲る気分じゃないんだよ。君にも…晴嵐くんにもね」
寧々ちゃんは僕を殴る体制に入る。僕を殴るであろう右腕にどんどん岩が集まっていく。
それはまるで巨大な腕の姿を現して、それを寧々ちゃんは自分の腕のごとく開いたり閉じたりしている。
「では、RB…とても最高の勝負だった」
「寧々ちゃん。僕が持ってた剣を忘れてないかい?」
「ッ!?」
僕は頑張って握りしめていた剣を伸ばした。
「ッ!?!?」
彼女は咄嗟にその巨大な拳で僕ごとビルを破壊した。
拳を振るった寧々ちゃんの胴体には、僕が伸ばした剣の先端が刺さっていた。
やりましたよ。先輩…。最後の最後に、僕は…寧々ちゃんに一撃当てることができましたよ。
先輩が初めてヘラクレスと闘ったときみたいに、僕も踏ん張って一撃当てましたよ。
ビルが崩壊し、僕はその場所に一緒に落下していく。
あぁーこの高さから落下して、あの瓦礫が落ちてきたらさぞ痛いだろうなぁ…。
そんなとき、ふぁさぁ…。と誰かが僕の身体を受け止めてくれたのがわかった。寧々ちゃんだ。
朦朧とする目で彼女の姿を見る。綺麗だ。本当に…綺麗だ。
「…お疲れ様。」
「はぁ…寧々ちゃんは本当に…狡いや」
「はは、狩羅ほどではないがよく言われる」
そう笑う彼女の顔を見ながら、僕は消滅する。
そして、私とRBの対決は終わった。
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「…ん?」
「起きた?」
僕が医務室から起きると、千恵ちゃんだけが僕の手を握ってこちらを見つめていた。
「あぁ、ごめんね千恵ちゃん。千恵ちゃんの仇取るためにも負けられなかったのに」
僕がそういうと、千恵ちゃんは握っている僕の手をより強く握ってくれた。
「ううん。孝明くん頑張ってたよ。カッコよかった。」
「そ、そうかな……////」
そう言われると少し照れる。
なんだか妙な沈黙が流れる。
千恵ちゃんはずっと僕を見てくる。
僕も、それに乗せられ彼女をずっと見つめる…。
「「……」」
「あ、なんか邪魔だったか?」
「「ッ!?」」
僕らは決してやましいことをしていないのに突然聞こえた声に驚いてビクッ!となる。
「りゅ、隆太さん」
「よっ!会長も来てるぜ」
「孝明、ご苦労様」
労わってくれてるけど、顔が怒ってる。
いきなり渡した技を試したのを怒っているんだろう。
「はぁ…。ま、君なら使うと思ってたよ。相手が彼女だとわかった時からね」
と、思ったらため息を吐いて兄さんが呆れたように言う。
「でもあれはむやみに使うな。あれは僕らにもデミリットがあるんだからね?」
「は、はい…」
僕は兄さんに対して反省を込めて一礼する。
「よし。それと…」
すると兄さんはなぜか千恵ちゃんをチラチラと見る。
「…。兄として言っておくけれど、お付き合いは健全に!」
「ぶふっ!!」
兄さんの言葉に、後ろにいた隆太さんが思わず失笑する。
僕は唖然として、千恵ちゃんは少し恥ずかしそうに俯いていた。
「それと…この写メ。涼子さんに送るからな。孝明」
最後に隆太さんがそういって僕と千恵ちゃんが見つめ合っている写メを見せてきて去ろうとした。
「そ、それだけはやめてください!」
僕の言葉も虚しく、隆太さんは兄さんを引っ張って去っていく。
あんなことがあったのに、まだ千恵ちゃんは僕の手を握って、顔を真っ赤にして俯いている。
そんな時、携帯がなる。…涼子ねぇからだ。
『ちょっとどういうことぉ!?私のような巨乳女子大生ふっといて!孝明のバカ!』と来ている。
僕は思わずため息を吐く。
負けちゃったけれど…こういうのも、楽しくていいな。と僕は感慨深く思った。
☆
「晴嵐」
「ん?なんだよ」
「いや、偶然見つけたからさ」
二日目。
みんなが散り散りに辺りを散策していると俺は刹那に声をかけられた。
「千恵ちゃんは?」
「RBんところにいるよ」
「ぐぬぬ…。あの野郎完全に千恵ちゃんとできやがって…」
「頼むから姉であるあたしの前で妹関係の嫉妬はしないでくれる…?」
いつものように俺の言動に呆れたような態度を取る刹那。
こうは言ってもこいつは俺から離れることはないと信頼できる。
いつも俺のブレーキ役になってくれる心の休まる相手だ。
「車田は?」
「今頃アンとイチャイチャしてるんじゃないの?」
「ぐぬぬ…あの野郎、パツキン美人とイチャイチャしやがって…」
「いや、だから女子の前でそんな醜い嫉妬をしないでよ…」
「そうだ先輩はどこに!」
「寧々もRBとの闘いで疲れて休んでるわよ。
さっき太陽さんがお見舞いに行くのを見たけど?」
「ぐぬぬ…太陽さんに先を越された…」
「ねぇ、その『ぐぬぬ』ってあんたのマイブームなの?」
「あっ!瞳ちゃんはどこだ!彼女に会いに行こう!」
「…瞳ちゃんに関しては敵でしょ…」
俺のもはやギャグとしか言えない言葉にも丁寧に返してくれる刹那は本当にいいやつだ。
「…っていうかあんたさっきから必要以上に他の人のとこ行きたがるけど…あたしと一緒にいたくないわけ…?」
「んなわけないだろ。むしろ逆だよ」
突然刹那がワナワナと震えながらよくわからないことを言ったので
俺は思っていたことを素直に口にする。するとなぜか顔を真っ赤にしている。ん?
「え……?/////ぎゃ、逆…?」
「ん?なんか変なこと言った俺?」
「い、いや…。別に……」
なんだろう。急にしおらしくなっちゃって、ちょっと可愛いな。
「ん?どうしたの?」
そんなことを思ってると、少し上目遣いで聞いてくる。
「そ、そういえば!対戦表ってまだ更新されてないのかなッ!!」
何かから話を逸らすように俺がそういう。
もう新しいバトル表が来ててもおかしくないはずだ。
「ちょ、ちょっと俺見てくるわ!刹那はそこで待ってろ」
「あ、ちょっと晴嵐!!」
俺は逃げるように対戦表モニターのある場所に向かって走る。
「あいつ…本当にあたしのこと嫌いなんじゃないかな…」
一人ため息吐きながらあたしは走り去る晴嵐を見る。
すると、突然誰かに肩を叩かれる。振り返るとそこにいたんはアンさんだった。
「アンさん」
「…多分だけど、刹那は大丈夫。晴嵐多分刹那のこと嫌いじゃない。見てたけど多分照れ隠し」
「……なんでわかるんですか?」
私は一応歳上のアンさんに敬語で話す。確か18じゃなかったかな?
「…あたしもついさっき清五郎に逃げられた。でも、清五郎は私のこと大好き」
「…そうですか」
この人も何無表情でのろけちゃってるんだろう…。
でも、本当にそうだったら…晴嵐。あたしに照れてたのかな?
…ないな。あのバカの頭は寧々一色だもんね。
「…負けないで」
なんかわかんないけど励まされた。
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「「あったあった!モニター!」」
「「あ…」」
俺と車田がハモって同じ言葉を呟く。
そして互いに顔を見て何かを悟る。
「車田…お前アンさんから逃げてきただろう」
「そういうお前こそ顔がちょっと変だぞ?戸惑うようなことあったのか?」
「な、べ、別になんにもねぇよ!!」
「……あったんだな」
そう言われてもう俺は黙るしかなかった。
とにかく、俺と車田は2人してモニターを見つめる。
そろそろ今表示されている四戦が終わって新しい四戦が更新されるはずだからだ。
そして、画面が変更される。
「「あ…」」
俺たち2人の名前が、載っている。
「おいおい…マジかよ」
「こりゃ2人とも大物引いちまったな。晴嵐」
車田と2人で画面に映る俺たちの感想を述べた。
「お前…勝てるのかよ?こんな相手…」
俺は車田の相手を見て震えながら問いかける。
「ああ…。正直無理だな。でも…勝つぜ。アンがもう負けちまってんだからな」
「…流石彼女持ち。持ってる自信が違うね」
「彼女いるいない関係ないよ。それに、いつか超えなければいけない壁だ。てめぇの方も苦労するぜ?」
「あぁ…でも、ある意味飛来や先輩よりも闘いたかった相手だ。俺はすげぇ嬉しいよ」
俺たちが見つめる画面。
そこに表示されているバトル表はこうだった。
【明知晴嵐VS葵刹那】
【車田清五郎VS北風太陽】
「ま、お互いに頑張ろうぜ。てめぇの言う『メルへニクス男子同盟』のRBがやられてんだ。
俺たちは勝ち残ってやんねえとな」
「あぁ…。絶対に勝とうぜ」
そういって俺たちは拳を当てながら互いに逆方向に歩く。
刹那…あいつには今だに一度も勝ったことがない。
俺の親友にして、恐らく俺の一番近い壁になる相手だ。
刹那との決着をつけないまま、黄鉄さんへの挑戦はやっぱりダメだったんだな。
俺は望んでいた対戦表なだけあって、思わずにやけてしまう。
そうだよ。やっぱり俺と刹那は………親友であり《ライバル》でなくちゃいけねぇ!!
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「…大丈夫ですか?太陽さん?」
「ん?何が?」
「…その、車田と闘うことですよ。貴方は優しい。弟子と本気で闘えるような人では」
私は、見舞いに来てくれた太陽さんにそんな言葉を述べる。
「ふふっ、大丈夫だよ。寧々ちゃん。僕が君と離れた一年以上の歳月。何も変わってないと思うかい?」
そう言いながら、太陽さんは座っていた椅子から立ち上がり、私に背を見せる。
「優しいだけじゃダメなんだ。彼は、僕がとことん潰すことにする。手加減したら彼に怒られるしね」
立ち上がって中腰の太陽さんの背中を見た私は思わず怖気づいた。
あの優しい太陽さんからとは思えない殺気と、恐怖…。今にも一帯を全て吹き飛ばしてしまいそうな圧力。
「僕の昔の二つ名はね…《ディザイヤー》って言ったんだ。《イソップ》になる前はね」
そう言って太陽さんは去っていく。
ディザイヤー…日本語の意味は災害。
全てを凍らせ、全てを熱で溶かし、台風をも起こせる太陽さんにピッタリの名かもしれない。
思えばあの敵に対しては残虐無慈悲だった《メルへニクス》で認められた実力者なんだ。
車田…この試合、お前が勝てたとしても…ただじゃあ済まないぞ……。
私は去った太陽さんの圧力に今だ身震いしながら
これからそんな彼の敵意を一心に受ける男のことを思った。
そういえば、晴嵐くんと刹那も戦うんだったな。
そっちに関してはどっちが勝つか本当にわからない。私も楽しみだ。
「だが…私は晴嵐くんを応援してしまうよ」
私はただ一言、医務室で呟いた。
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「さあ!ついにきたな!刹那!」
「そうね…」
俺は目の前の刹那に対して話しかける。
しかし刹那はそっけない返事しかしてくれない。
本気なんだ。もう戦闘モードに入っている。やっぱり俺よりもキャリアがあって
《賞金稼ぎ》として獲物を捕らえ続けてきただけのことはある。目が既に俺を《獲物》と捕らえている。
今回はもうはじめから日本刀を持たない。こいつとは拳で十分だ。
「行くわよ。晴嵐!」
その瞬間、刹那が姿を消す。
その瞬間に、鳩尾に衝撃。下を見ると刹那が懐に入って拳を放っていた。
俺はすかさず叩き落とそうと攻撃するも刹那はこれを軽々と避けて俺の背中に回り込み
俺の足を払う。宙に浮く俺の背中に強い膝蹴り、そして俺の顔めがけて回し蹴り。
見事なコンボに俺は成す術もなく吹き飛ばされる。流石刹那と言ったところか。
「だけど…これで俺も力を出せる!」
俺は殴られ、吹き飛ばされた時に出来た傷から炎を放出する。
刹那は何も言わずにまた姿を消す。目ではどうやっても終えないんだ。
「ッ!?」
刹那が驚く。
何かに引っかかって動けないからだ。
刹那が俺に攻撃をしようとしたところ、炎で出来た網が絡まって止められている。
「へッ!狩羅先生直伝の炎応用術だ!!」
網で動きを封じられている刹那に向けて俺は思いっきりパンチで吹き飛ばす。
吹っ飛ばされた先で受身を取って起き上がった刹那はまた姿を消す。
その直後、俺の背中に向けてタックル。吹っ飛ぶ俺を先回り俺を蹴り上げる。
宙を待った俺を先回りした刹那が踵落としの体制に入っている。俺は羽を出して勢いを殺し
刹那の足を掴む。そしてそのまま勢いよく地面に叩きつける!!
「はぁ…はぁ…」
地面に叩きつけられた痛みで息が荒くなる刹那。
俺は羽を消してまた地面に降りる。こっちも攻撃出来てるが、やっぱり刹那のやつ強い。
「すぅー…ふぅー…」
すると刹那は大きく深呼吸をする。
そしてまた姿を消す。くそッ!本当にはやい!!
俺は直感で腕を構える。するとそこに刹那の蹴りが。
また姿を消す刹那。腕を直感で向けるとそこで刹那の攻撃を防ぐ。
直感で掴んできていう!刹那の気配を!!
しかし、それでも三発の攻撃に対して一撃防げるぐらい。小刻みに来ているおかげで一発一発の
威力は低いが、それでも、俺の身体がさらに傷つく。
俺は刹那が来たと直感した瞬間に炎を噴出させる。
その衝撃で刹那が姿を現し一瞬怯んだ。俺はチャンスと思い、刹那の腕を掴み、殴る!
腕を掴んじまえば瞬間移動される心配もない。そして吹き飛びもせずパンチを連発できる!
俺は刹那の腕を引っ張って再度パンチを試みる。しかしその直後刹那の足払い。
俺は刹那の腕を掴んだまま転んでしまう。その勢いで刹那の全体重が俺の鳩尾に伸し掛る。
軽い。刹那自体は軽いが、不意打ちの無防備な状態で全身が伸し掛るのはすごい痛みになった。
さらに刹那は掴まれていないほうの手で彼女の手を握っている俺の腕に手刀を浴びせる。
あまりの痛さに痺れて握力を失った俺の手を刹那は振りほどき、倒れる俺を蹴り飛ばす。
「はぁ…はぁ……」
俺は痛みを力にするため炎を噴出する。
「ほら、晴嵐…。今はあたしのリードだね」
手首をグリグリと動かしながら、俺に話しかけてくる刹那。
「あれ…?気のせいかな…。お前……目、『蒼く』なってね?」
俺は思わず問いかける。
今見た刹那の目は、普通じゃない。
綺麗な海のように清らかで透明で美しい……『蒼色』
「すぅー…ふぅー……」
彼女は俺の言葉に何も答えず、ただ深く深呼吸をした。
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「…ほっほっほ。フェンリルは頑張っておるかの?」
「…オーディン様。トールは?」
「あやつならヨルムンガルドに会いに行ったよ。
いやはやしかし…面白い逸材じゃな。《ロキの三兄弟》は。会う度に強くなってる」
「…そうですね。オーディン様から聞いていましたが、実物を見たのは初めてです。《蒼くなる目》なんて」
「そうじゃのぉ…。ヴァルキリーちゃん。覚えておるかの、初代を」
「はい。よく覚えていますよ。《フェンリル》の名も既に4代にまで続きましたが
彼ほど《フェンリル》と言う名を体で現した男はいませんでしたからね…。」
フェンリルの闘いを見守りながら、オーディンさまと話す私。《ヴァルキリー》早乙女桐華。
今の彼女の姿はまさに初代の姿と同じものだ。確実にスピード系最強の能力へと変化しつつある。
「…《蒼狼牙》。初代フェンリルの異名だったな。懐かしい」
「そうですね」
「今…彼女がそれに目覚めようとしてる。
この勝負。勝っても負けても、彼女の得るものは大きいでしょう」
そういいながら、私とオーディン様は頑張ってる刹那を心の中で応援した。
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くそッ!どうなってやがる!!
刹那の目が蒼くなってから、あいつおかしいぐらい強くなりやがった。
今まで攻撃力に欠けていた拳が、本当に痛い。しかもスピードがさっきよりも上がってる!
「どうしたの?晴嵐。動きが鈍いわよ?」
俺はとにかく拳を天へ放つ。当たった刹那がガードをするも
その威力で後方に移動する。
俺から刹那に向かって攻撃を放つ。
彼女はそれを避けて攻撃に転じてくる。
彼女の見えない攻撃が、かまいたちのように俺の身体を切り刻む。
俺は炎を放って彼女を後退させる。
身体中に炎が纏われている。くそッ…体力がきつい。
でも…これだけ炎があれば、だいぶ力になる。
「なぁ刹那」
「な、なによ」
「お前すげぇわ。その蒼い目。カッコイイし、強い」
「だから俺も!この日のために新しい力を見せてやるよ!!」
「ッ!?」
俺の言葉に驚く刹那。
そして俺は身体中の炎に神経を集中させる。
狩羅先生との修行で俺なりに編み出した必殺奥義!
「この力で…俺はお前を倒してやるよ。刹那」
そう刹那に宣戦布告して、俺は新たなる力を発動させた。
☆
「晴嵐」
「ん?なんだよ」
「いや、偶然見つけたからさ」
二日目。
みんなが散り散りに辺りを散策していると俺は刹那に声をかけられた。
「千恵ちゃんは?」
「RBんところにいるよ」
「ぐぬぬ…。あの野郎完全に千恵ちゃんとできやがって…」
「頼むから姉であるあたしの前で妹関係の嫉妬はしないでくれる…?」
いつものように俺の言動に呆れたような態度を取る刹那。
こうは言ってもこいつは俺から離れることはないと信頼できる。
いつも俺のブレーキ役になってくれる心の休まる相手だ。
「車田は?」
「今頃アンとイチャイチャしてるんじゃないの?」
「ぐぬぬ…あの野郎、パツキン美人とイチャイチャしやがって…」
「いや、だから女子の前でそんな醜い嫉妬をしないでよ…」
「そうだ先輩はどこに!」
「寧々もRBとの闘いで疲れて休んでるわよ。
さっき太陽さんがお見舞いに行くのを見たけど?」
「ぐぬぬ…太陽さんに先を越された…」
「ねぇ、その『ぐぬぬ』ってあんたのマイブームなの?」
「あっ!瞳ちゃんはどこだ!彼女に会いに行こう!」
「…瞳ちゃんに関しては敵でしょ…」
俺のもはやギャグとしか言えない言葉にも丁寧に返してくれる刹那は本当にいいやつだ。
「…っていうかあんたさっきから必要以上に他の人のとこ行きたがるけど…あたしと一緒にいたくないわけ…?」
「んなわけないだろ。むしろ逆だよ」
突然刹那がワナワナと震えながらよくわからないことを言ったので
俺は思っていたことを素直に口にする。するとなぜか顔を真っ赤にしている。ん?
「え……?/////ぎゃ、逆…?」
「ん?なんか変なこと言った俺?」
「い、いや…。別に……」
なんだろう。急にしおらしくなっちゃって、ちょっと可愛いな。
「ん?どうしたの?」
そんなことを思ってると、少し上目遣いで聞いてくる。
「そ、そういえば!対戦表ってまだ更新されてないのかなッ!!」
何かから話を逸らすように俺がそういう。
もう新しいバトル表が来ててもおかしくないはずだ。
「ちょ、ちょっと俺見てくるわ!刹那はそこで待ってろ」
「あ、ちょっと晴嵐!!」
俺は逃げるように対戦表モニターのある場所に向かって走る。
「あいつ…本当にあたしのこと嫌いなんじゃないかな…」
一人ため息吐きながらあたしは走り去る晴嵐を見る。
すると、突然誰かに肩を叩かれる。振り返るとそこにいたんはアンさんだった。
「アンさん」
「…多分だけど、刹那は大丈夫。晴嵐多分刹那のこと嫌いじゃない。見てたけど多分照れ隠し」
「……なんでわかるんですか?」
私は一応歳上のアンさんに敬語で話す。確か18じゃなかったかな?
「…あたしもついさっき清五郎に逃げられた。でも、清五郎は私のこと大好き」
「…そうですか」
この人も何無表情でのろけちゃってるんだろう…。
でも、本当にそうだったら…晴嵐。あたしに照れてたのかな?
…ないな。あのバカの頭は寧々一色だもんね。
「…負けないで」
なんかわかんないけど励まされた。
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「「あったあった!モニター!」」
「「あ…」」
俺と車田がハモって同じ言葉を呟く。
そして互いに顔を見て何かを悟る。
「車田…お前アンさんから逃げてきただろう」
「そういうお前こそ顔がちょっと変だぞ?戸惑うようなことあったのか?」
「な、べ、別になんにもねぇよ!!」
「……あったんだな」
そう言われてもう俺は黙るしかなかった。
とにかく、俺と車田は2人してモニターを見つめる。
そろそろ今表示されている四戦が終わって新しい四戦が更新されるはずだからだ。
そして、画面が変更される。
「「あ…」」
俺たち2人の名前が、載っている。
「おいおい…マジかよ」
「こりゃ2人とも大物引いちまったな。晴嵐」
車田と2人で画面に映る俺たちの感想を述べた。
「お前…勝てるのかよ?こんな相手…」
俺は車田の相手を見て震えながら問いかける。
「ああ…。正直無理だな。でも…勝つぜ。アンがもう負けちまってんだからな」
「…流石彼女持ち。持ってる自信が違うね」
「彼女いるいない関係ないよ。それに、いつか超えなければいけない壁だ。てめぇの方も苦労するぜ?」
「あぁ…でも、ある意味飛来や先輩よりも闘いたかった相手だ。俺はすげぇ嬉しいよ」
俺たちが見つめる画面。
そこに表示されているバトル表はこうだった。
【明知晴嵐VS葵刹那】
【車田清五郎VS北風太陽】
「ま、お互いに頑張ろうぜ。てめぇの言う『メルへニクス男子同盟』のRBがやられてんだ。
俺たちは勝ち残ってやんねえとな」
「あぁ…。絶対に勝とうぜ」
そういって俺たちは拳を当てながら互いに逆方向に歩く。
刹那…あいつには今だに一度も勝ったことがない。
俺の親友にして、恐らく俺の一番近い壁になる相手だ。
刹那との決着をつけないまま、黄鉄さんへの挑戦はやっぱりダメだったんだな。
俺は望んでいた対戦表なだけあって、思わずにやけてしまう。
そうだよ。やっぱり俺と刹那は………親友であり《ライバル》でなくちゃいけねぇ!!
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「…大丈夫ですか?太陽さん?」
「ん?何が?」
「…その、車田と闘うことですよ。貴方は優しい。弟子と本気で闘えるような人では」
私は、見舞いに来てくれた太陽さんにそんな言葉を述べる。
「ふふっ、大丈夫だよ。寧々ちゃん。僕が君と離れた一年以上の歳月。何も変わってないと思うかい?」
そう言いながら、太陽さんは座っていた椅子から立ち上がり、私に背を見せる。
「優しいだけじゃダメなんだ。彼は、僕がとことん潰すことにする。手加減したら彼に怒られるしね」
立ち上がって中腰の太陽さんの背中を見た私は思わず怖気づいた。
あの優しい太陽さんからとは思えない殺気と、恐怖…。今にも一帯を全て吹き飛ばしてしまいそうな圧力。
「僕の昔の二つ名はね…《ディザイヤー》って言ったんだ。《イソップ》になる前はね」
そう言って太陽さんは去っていく。
ディザイヤー…日本語の意味は災害。
全てを凍らせ、全てを熱で溶かし、台風をも起こせる太陽さんにピッタリの名かもしれない。
思えばあの敵に対しては残虐無慈悲だった《メルへニクス》で認められた実力者なんだ。
車田…この試合、お前が勝てたとしても…ただじゃあ済まないぞ……。
私は去った太陽さんの圧力に今だ身震いしながら
これからそんな彼の敵意を一心に受ける男のことを思った。
そういえば、晴嵐くんと刹那も戦うんだったな。
そっちに関してはどっちが勝つか本当にわからない。私も楽しみだ。
「だが…私は晴嵐くんを応援してしまうよ」
私はただ一言、医務室で呟いた。
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「さあ!ついにきたな!刹那!」
「そうね…」
俺は目の前の刹那に対して話しかける。
しかし刹那はそっけない返事しかしてくれない。
本気なんだ。もう戦闘モードに入っている。やっぱり俺よりもキャリアがあって
《賞金稼ぎ》として獲物を捕らえ続けてきただけのことはある。目が既に俺を《獲物》と捕らえている。
今回はもうはじめから日本刀を持たない。こいつとは拳で十分だ。
「行くわよ。晴嵐!」
その瞬間、刹那が姿を消す。
その瞬間に、鳩尾に衝撃。下を見ると刹那が懐に入って拳を放っていた。
俺はすかさず叩き落とそうと攻撃するも刹那はこれを軽々と避けて俺の背中に回り込み
俺の足を払う。宙に浮く俺の背中に強い膝蹴り、そして俺の顔めがけて回し蹴り。
見事なコンボに俺は成す術もなく吹き飛ばされる。流石刹那と言ったところか。
「だけど…これで俺も力を出せる!」
俺は殴られ、吹き飛ばされた時に出来た傷から炎を放出する。
刹那は何も言わずにまた姿を消す。目ではどうやっても終えないんだ。
「ッ!?」
刹那が驚く。
何かに引っかかって動けないからだ。
刹那が俺に攻撃をしようとしたところ、炎で出来た網が絡まって止められている。
「へッ!狩羅先生直伝の炎応用術だ!!」
網で動きを封じられている刹那に向けて俺は思いっきりパンチで吹き飛ばす。
吹っ飛ばされた先で受身を取って起き上がった刹那はまた姿を消す。
その直後、俺の背中に向けてタックル。吹っ飛ぶ俺を先回り俺を蹴り上げる。
宙を待った俺を先回りした刹那が踵落としの体制に入っている。俺は羽を出して勢いを殺し
刹那の足を掴む。そしてそのまま勢いよく地面に叩きつける!!
「はぁ…はぁ…」
地面に叩きつけられた痛みで息が荒くなる刹那。
俺は羽を消してまた地面に降りる。こっちも攻撃出来てるが、やっぱり刹那のやつ強い。
「すぅー…ふぅー…」
すると刹那は大きく深呼吸をする。
そしてまた姿を消す。くそッ!本当にはやい!!
俺は直感で腕を構える。するとそこに刹那の蹴りが。
また姿を消す刹那。腕を直感で向けるとそこで刹那の攻撃を防ぐ。
直感で掴んできていう!刹那の気配を!!
しかし、それでも三発の攻撃に対して一撃防げるぐらい。小刻みに来ているおかげで一発一発の
威力は低いが、それでも、俺の身体がさらに傷つく。
俺は刹那が来たと直感した瞬間に炎を噴出させる。
その衝撃で刹那が姿を現し一瞬怯んだ。俺はチャンスと思い、刹那の腕を掴み、殴る!
腕を掴んじまえば瞬間移動される心配もない。そして吹き飛びもせずパンチを連発できる!
俺は刹那の腕を引っ張って再度パンチを試みる。しかしその直後刹那の足払い。
俺は刹那の腕を掴んだまま転んでしまう。その勢いで刹那の全体重が俺の鳩尾に伸し掛る。
軽い。刹那自体は軽いが、不意打ちの無防備な状態で全身が伸し掛るのはすごい痛みになった。
さらに刹那は掴まれていないほうの手で彼女の手を握っている俺の腕に手刀を浴びせる。
あまりの痛さに痺れて握力を失った俺の手を刹那は振りほどき、倒れる俺を蹴り飛ばす。
「はぁ…はぁ……」
俺は痛みを力にするため炎を噴出する。
「ほら、晴嵐…。今はあたしのリードだね」
手首をグリグリと動かしながら、俺に話しかけてくる刹那。
「あれ…?気のせいかな…。お前……目、『蒼く』なってね?」
俺は思わず問いかける。
今見た刹那の目は、普通じゃない。
綺麗な海のように清らかで透明で美しい……『蒼色』
「すぅー…ふぅー……」
彼女は俺の言葉に何も答えず、ただ深く深呼吸をした。
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「…ほっほっほ。フェンリルは頑張っておるかの?」
「…オーディン様。トールは?」
「あやつならヨルムンガルドに会いに行ったよ。
いやはやしかし…面白い逸材じゃな。《ロキの三兄弟》は。会う度に強くなってる」
「…そうですね。オーディン様から聞いていましたが、実物を見たのは初めてです。《蒼くなる目》なんて」
「そうじゃのぉ…。ヴァルキリーちゃん。覚えておるかの、初代を」
「はい。よく覚えていますよ。《フェンリル》の名も既に4代にまで続きましたが
彼ほど《フェンリル》と言う名を体で現した男はいませんでしたからね…。」
フェンリルの闘いを見守りながら、オーディンさまと話す私。《ヴァルキリー》早乙女桐華。
今の彼女の姿はまさに初代の姿と同じものだ。確実にスピード系最強の能力へと変化しつつある。
「…《蒼狼牙》。初代フェンリルの異名だったな。懐かしい」
「そうですね」
「今…彼女がそれに目覚めようとしてる。
この勝負。勝っても負けても、彼女の得るものは大きいでしょう」
そういいながら、私とオーディン様は頑張ってる刹那を心の中で応援した。
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くそッ!どうなってやがる!!
刹那の目が蒼くなってから、あいつおかしいぐらい強くなりやがった。
今まで攻撃力に欠けていた拳が、本当に痛い。しかもスピードがさっきよりも上がってる!
「どうしたの?晴嵐。動きが鈍いわよ?」
俺はとにかく拳を天へ放つ。当たった刹那がガードをするも
その威力で後方に移動する。
俺から刹那に向かって攻撃を放つ。
彼女はそれを避けて攻撃に転じてくる。
彼女の見えない攻撃が、かまいたちのように俺の身体を切り刻む。
俺は炎を放って彼女を後退させる。
身体中に炎が纏われている。くそッ…体力がきつい。
でも…これだけ炎があれば、だいぶ力になる。
「なぁ刹那」
「な、なによ」
「お前すげぇわ。その蒼い目。カッコイイし、強い」
「だから俺も!この日のために新しい力を見せてやるよ!!」
「ッ!?」
俺の言葉に驚く刹那。
そして俺は身体中の炎に神経を集中させる。
狩羅先生との修行で俺なりに編み出した必殺奥義!
「この力で…俺はお前を倒してやるよ。刹那」
そう刹那に宣戦布告して、俺は新たなる力を発動させた。
☆
「あいつ…使うのか……」
「どうしたんですか?狩羅さん?」
モニターを見ていた俺、蛇道狩羅は晴嵐のセリフを聞いてピンと来た。
あいつに修行をつけている時に言った言葉だ。
「よっしゃ!出来たぜ狩羅ぁ!!」
「…あぁ?"さん”だろ?」
「……狩羅さん…」
闇夜のサーカス団との闘いの後も、あいつは俺に修行を乞おてきた。
理由は、同じ《血使い》を相手にしたときの自分の弱さを痛感した。だそうだ。
多分闇夜のサーカス団の赤井のことだろう。自身がチート的能力のおかげで強いだけで
それが通用しない相手だとからっきしだったと痛感したんだ。勝てたには勝てたらしいが
普通に闘っていたら絶対に負けてたとかあいつ自身が口にしていた。
そして力バカな自分がいい加減嫌になったとも言ってたな。ワイヤーとか基礎はできるけれど
まだまだ力を手に入れたい…とか。それで俺のところで炎の扱いを修行を続けていた。
このときに、炎の網を完成させたときだろうか。
「まあ、それだけ出来りゃあ十分だろ。
赤井の時も使えたんだろ?炎の糸??」
「あぁ…だけど、冷静さを失ったらいっつも忘れちまうんだよ。
優にバスケしてるときにも怒られたことがあって、どうやら俺は熱が入ると頭で考えれないらしい」
晴嵐が少し恥ずかしそうに言う。
まあ、そうだろうな。でも…頭を使っていないからこその直感がこいつの優れている場所で
頭を使ってない根性だけの攻撃だからこそ、どんな奴らにも通るんだと俺は思っている。
「ま、いいじゃねぇか能力に応用力を付けたんだ。これでてめぇの実力はさらに向上しただろうよ…」
俺の言葉を聞いても、イマイチピンと来ていない様子の晴嵐。
多分、脳内にうっすら見えているんだろう。自分の能力の最終形態。自分が最も使いやすい能力の応用。
「……ま、後は、てめぇの《個性》にあったスタイルを身につければいい。
それは俺には教えれねえ…自分で見つけるしかないもんだ。俺は基礎を叩きつけた。後はてめぇで頑張れ」
「は、はい!!俺頑張ります!!」
そういうと晴嵐は本当に感謝しているように俺に頭を下げてきた。
龍二のときも、まだ若かった古田んときもそうだが…どうも俺は頭を下げられるのに弱いらしい。
「…狩羅さんは、人に何かを教えるのが好きなんですね。
行き場をなくした人たちを引き入れたり、仲間でもない人の修行つけたり…」
「そんなんじゃねぇよ。ただ、勿体無いことしてるやつらが嫌いなだけだ」
「ふふっ、そういうところ…。私は本当に大好きです」
「はいはい…」
「むぅ…またそうやって受け流すデスか。いいですよもぉ」
メアリーのいつもの告白を受け流し、俺は今も晴嵐の戦闘を見守る。
さぁ…見せてみろ。俺が言った《個性》を身に付けたスタイル。てめぇなりの…炎の使い方を。
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晴嵐…凄い炎…。
あいつの炎が身体中に炎の息吹が吹き続ける。
常に放出している。と言ったほうがいいのか……。
この蒼い目のときは本当に、相手の姿もはっきり見える。
そして晴嵐は足を曲げて何かのポーズを取る…。
あれは…………バスケのフォームだ。
「モード!レッグフォーム!!!」
そう叫んだ瞬間に晴嵐の纏っていた炎が全て足に集まっていった。
まるで彼の足に猛々しい炎の翼が付属されたかのような出で立ち。
「いくぜぇ…!刹那!!」
その瞬間。晴嵐の姿が消える。
微かに見える。でも…変則的な移動過ぎて処理が追いつか―――。
「ッ!?」
驚いて行動に起こせなかったあたしはそのまま晴嵐の拳を喰らう。
あたしはそのまま勢いよく遠くへ飛ばされる。
「やっぱこの姿勢からがスタートダッシュはできるな!」
にひッ!と少年らしい笑みを浮かべながら晴嵐は起き上がるあたしを見る。
今のドリブル……あの時、あたしがいつもやってるドリブル法だ。
こいつ…人のやり方を確実に吸ってきているんだ。
蛇道狩羅の知恵と能力応用を得て、本郷黄鉄の力技を覚え、あたしの移動術を覚えて…。
あたしが感嘆としていると、晴嵐はさながら仮面ライダーのようなポーズを撮り始める。
「へへッ!説明しよう!レッグフォームとは全身に纏った炎を足に充填的に移動させることにより
俺に足りなかった要素を得る力なのだ!!」
……本当、男子ってバカだわ。
「行くぜ!!」
新能力発表に勢いづいた晴嵐があたしに攻撃してくる。
確かにあたしに対処できるだけのスピードは得たらしいけど
「攻撃力が下がってるわよ。晴嵐」
あたしは晴嵐の拳を腕で受け止める。
そして膝で彼の顎に攻撃。打ち上がった晴嵐の鳩尾めがけて拳を放つ。
それを晴嵐が慌てて受け止める。そのまま私に回し蹴り、それをあたしは避ける。
早い…でもギリギリ今のあたしの視界なら……視える!!
互いに大きく後ろへジャンプ。
そして地面に着地と同時に互いに互いの方向へ突撃。
殴打する拳。拳。拳。
しなるように放たれる脚。脚。脚。
互いに防ぎ、受け、放つ。スピードを得た晴嵐はとにかくあたしがいるだろう方向に攻撃を放つ。
でも……。
「あんたとあたしの差は、《動体視力》よ」
あたしの腕が何かを貫く。晴嵐の腹部だ。
「……ッ!!!!」
これには激痛が回ってきたのか、晴嵐の顔が歪む。
あたしはそれを引き抜く。腹から大量の晴嵐の炎。
「はぁ…はぁ……」
流石に晴嵐が疲れてきている。
あたしも晴嵐の攻撃を受けて身体中ボロボロだ。
次で決める!!
あたしは姿を消す。
「モード!!アーマーフォーォォォォォム!!!!」
そう叫ぶ晴嵐。
その直後、私の攻撃がはじかれる。手が腫れるように痛い。
「へへっ…。アーマーフォーム。防御力に特化させた炎の形状…。
正直もう刹那の攻撃を避けたり防いだりは出来ねえ……だったら、真正面から受けてやる!」
そういう晴嵐。けれどあたしが打った場所は確実に傷になっている。血がまた炎として放出している。
それに息が荒い。完全に疲れているんだ。数えられないほどの炎の放出。あたしのスピードへの追いつき
もうあいつに……攻撃するほどの元気は残っていないんだろう。
「いいわよ…やってあげる。あんたがバテるまで、あんたが不死じゃなくなるまで何度でも、殺してあげる!」
あたしはものすごいスピードで晴嵐に向かう。
鎧を貫通して身体を突き刺す。鎧と言う形なので炎に触れただけで痛い。
けれどあたしは攻撃を続ける。炎を噴出すれば体力が大きく消耗する。
あたしの攻撃での痛みであたしが果てるか。体力尽きて炎出せなくなった晴嵐が果てるか!!
あたしの一方的な攻撃。
これじゃあまるでいじめだ。けれど……形勢は五分五分。
『これはとんでもない根性勝負だぁー!!
攻撃している神殺しの狼が勝つか!それとも不死鳥が不死を貫き通すかぁ!!!!』
ジャックランタンの実況を他所にあたしはとにかく殴る!蹴る!!
晴嵐は吹き飛ばされることなく脚に力を入れてその場に踏みとどまる。
「はぁ…はぁ…はぁ……」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
あたしが痛さのあまり晴嵐への攻撃をやめてしまう。
それを知った晴嵐は膝を付き、俯いていた。もはや話す元気もないみたいだ。
炎の鎧も潰れてしまった。纏ってはいるが、ただの炎…後一撃……やればあたしの…勝ちだ……。
あたしは晴嵐の方へ歩く。一歩。また一歩。
(あれ……さっきまで視界良好だったのに、なんか朦朧としてる……)
そんなのは関係ない。晴嵐に勝たないと……。
(あぁ…晴嵐の姿がぼやける。これじゃ…どこか……わからな…)
あたしはそのまま倒れてしまっていた。
あぁ…ダメだ。あたし…立てない……。
「はぁ…はぁ…ッッッしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
あたしが倒れる中、晴嵐の雄叫びが響き渡った。
『Winner!不死鳥!やはり不死鳥は不死!!根性勝負!明知晴嵐の勝利だぁー!!!!』
ジャックランタンの言葉と共に、歓声が響き渡っていた。
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あぁ…。
俺、勝ったんだっけ…。
俺は目を覚まして起き上がろうとすると…何かが邪魔した。
「ん?…」
何か、柔らかい物が…俺の顔にあたってる。
あれ、おかしいな…。視界の半分が真っ黒なのにもう半分には刹那の顔があるぞ。
「ははっ、こりゃ…参ったな」
「こんのバカッ!」
「べふッ!」
俺は突然放たれた刹那様のビンタでまた倒れる。
倒れた先に、また何か柔らかいもの……。あ、そうか。
「あんた、目覚めてそうそうなにやってんのよ…」
恥ずかしいような顔をしながら呆れている刹那。
彼女の顔が、真上に見える。じゃあこの下にある柔らかい感触は…膝か?
「な、なぁ…俺なんかされるの?」
「はぁ?なんでそんなこと言ってんの??」
「い、いや…目が覚めたら刹那に膝枕されてるから…」
「あぁ、医務室がついに満タンになったのよ。今メアリー様が必死に治療しているわ。
あんたは特に酷かったから目が覚める程度に能力を使って、布団が用意出来ないって言われて
その……せめて枕だけでもちゃんとしたのを…って……思ってもなくて…///////」
今更になって恥ずかしくなってきたのか、話している途中でだんだんと口ごもり出す刹那。
「と、とにかく!これはあたしに勝ったご褒美!わかった!?後輩!黙って先輩の膝で寝てなさい!!」
何かもっともらしい言い訳を突きつけられた気がするけど
この時、なぜかとても落ち着いた。包容力と言うか…。刹那ってやっぱり俺よりも年上のお姉さんなんだ。
って今更ながら感じた。ここは彼女の言い訳に従おう。ご褒美ご褒美…。あぁ…やわらけぇ……。
「それで?あたしの胸に顔を埋めた謝罪はないの?」
「……ごめんなさい」
やばい!殴られる!次はビンタじゃなくてグーだ!!
「…よし、許す」
そういうと彼女の手が俺の前髪を軽く撫でる。なんだかすげぇ照れくさかった。
俺はまだ疲れていたのか、そのまま刹那の膝の腕で眠ってしまった。
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「どうしたんだい?清五郎。もっと本気で来なよ」
「はぁ…はぁ…はぁ…」
冷たい。空気が冷たい。なのに身体が火傷したように熱い。
これが…本気の師匠なのか!?
「さぁ…清五郎。もうちょっと頑張らないと…僕には勝てないよ?」
ボロボロの俺、まだ無傷な師匠…。
無表情な師匠のその言葉が、俺の意思を殺すほどの威圧感を感じた。
☆
――――昔、『北風のカナリア』と言う走り屋がいた。
俺はそのときまだ中坊で、バイクに憧れながらも乗れない歯痒さを経験しながら
とにかく『走り屋』の世界を調べて、ただただ憧れを抱くことしか出来なかった。
そのときに聞いたのが…『北風のカナリア』だった。
この街の北部に位置する海に面した道路を中心に出現してた走り屋で
とにかく声がよく、女性の走り屋などにも人気があったらしい。
しかし、その全容はまさしく『厄災』。北風なんで生ぬるい危険な走行スタイルを持っていた。
彼と闘った者は怪我をする。何度バイクを破壊された者がいるかわからない。
これが…俺が中学の頃に憧れた存在…『北風のカナリア』こと『北風太陽』の噂だった。
あるビルで出会った彼は、優しくて…。最初は俺の憧れだとは気づかなかった
後に話を聞いて、あれは所詮噂なんだと勘違いしていた。
噂は盛られるものだ。実際はただ実力のある走り屋だったのかもと思っていた。
しかし……『厄災』は、やはり事実だった。
「どうしたの?清五郎。立ちなよ」
膝を付く俺に、太陽さんは声をかける。
とても冷たい声。辺りが身震いするほど寒いのに、身体中焼けるように痛い。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
俺は立ち上がり、再び太陽さんに挑む。
走ったその勢いを利用して、爆弾を放りなげる。
爆弾は見事に太陽さんに直撃する。煙が辺りに散らばる。
俺は移動しながらどんどん地雷を取り付けていく。
「…清五郎。僕に『炎系』は無駄だよ?」
煙事腕にあるブレスレットが吸収していく。もちろん太陽さんの身体には傷がない。
そのまま俺のいる場所めがけて腕をめがけて、炎を勢いよく放出する。
「ぐぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺はそれが直撃する。
炎を消すために転がり回る。
地面が氷になってるから、アッツい火の後に冷たい氷で身体中低温火傷を起こす。
ダメだ。どうしても勝てる気がしねぇ……。
さっきからこの繰り返しだ。試合が始まってから
俺は必死に太陽さんに挑んだ。しかし、相性が最悪過ぎる。
俺の地雷を踏んでも、その爆発を力にして無効にする太陽さん。
俺は結局彼に力を与えてしまっているだけなんだ。本当に……不毛な戦いだ。
「これでわかっただろう?清五郎。君は僕には勝てない」
太陽さんがきつく言ってくる。
彼の優しさが含まれているんだろう。どうせ勝てないんだから諦めろ。傷つけたくない。
言葉に裏にそんな意味が含まれている。本当に優しい人だ。
「それでも…諦めるわけにゃあいかねぇんだよ…!!」
俺は爆弾を取り出し、軽く後ろに投げる。
後ろで爆発した爆弾の爆風が、俺を前へと突き飛ばす。
「ッ!?」
「おぅら!!」
爆風の勢いが加算され、物凄いスピードで向かってくる俺に対処出来なかった太陽さんの顔を俺が殴る。
遠くへ吹き飛ばされる太陽さん。しかし、ブレスレットから少量の炎を噴出し、軽く宙を浮く。
そういうこともできるのか…あの能力……。
「いくぜぇー!!」
俺は再び爆弾を投げ、爆発。
爆発した熱を吸収してくる太陽さん。
俺はすかさず一つの爆弾を投げる。
「だから、爆弾は無意味だと……」
「…そいつはどうかな。」
「ッ!?」
太陽さんは何かに気づいたかのように慌てて能力を発動する。
「……圧力爆弾!」
その直後、空気が弾け飛ぶ。
俺の能力は自由に火薬を生成し、それを包む爆弾を作ることができる。
だったら火薬生成をすっ飛ばして、ここにある空気を圧迫して包み込んだらできるかと思ったが…成功だ。
吸収出来ない空気の爆発。これなら……太陽さんの身体にダメージを与えれるはず!!
「……危ない危ない。流石清五郎だ、能力の応用が上手い」
「ッ!?」
そこにいたのは…服こそボロボロになっていたものの、傷が少ない太陽さんの姿だった。
「焦ったよ。慌てて『相殺』させてもらったよ」
そういうと、彼のブレスレットから微かに竜巻のようなものが見える。
…そうか!風による圧力の相殺。
空気が圧迫されて発生する圧力を、風で吹き飛ばす。可能ではある現象だ。
「いくよ!清五郎!!」
炎を放出して、物凄いスピードで俺の元へ来る太陽さんは
そのまま俺の鳩尾に拳を放ち、よろける俺の顔を蹴り飛ばす。
流石は元メルへニクス…あのピクシーよりも強い人ってわけだ…。
「…どうすっかなぁー……」
俺は起き上がりながら、思わずニヤリと笑っちまう。
俺…今思ったら憧れの存在と闘ってんだ。
それにこの状況。前のアンとの闘いでは、俺の能力の方が有利だったけど、今はまさしく逆だ。
アンだったら…この最悪の状況、どうするだろうか。あいつは俺に相殺されるのがわかっていながらも
ずっと風で攻撃してきた。そのとき俺はどう思った?あいつも俺の能力を無効化出来たが
あのときはどうした?
「……そうだ。」
俺はただただ立ち上がる。
胸の前で仁王立ちして、目の前で余裕綽綽と構える太陽さんをにらみ付ける。
「太陽さん。弟子が師匠を超えるとき……それは今なんすね!俺らであんたを超える!!」
俺は太陽さんにそう、宣戦布告をしてやった。
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本当に、根性だけはすごい男だ。
出会ったときはなにげなく、本当に何気なく鍛えてやったけど、今は違う。
こいつはやっぱり伸びる。僕はそう確信していた。
仁王立ちで僕に宣戦布告をしてくる彼。
何かいい作戦を思いついたのだろう。僕はそれを打ち砕くためだ。
本郷黄鉄が握っている情報。それは……『アンデルセン』の居場所。
僕らに取って、それは最大の価値を持つものなんだ。彼からみんなに言って聞かせれば…
彼から本当の事実を教えてもらえたら寧々ちゃんは…。
「まだ、君が僕を超えるときではないよ!!」
僕は炎を放出する。
清五郎はそれを急いで逃げた。
ビルの隙間と隙間を掻い潜り、逃げ回る清五郎。
彼が攻撃をしてこない限り、僕も熱量のストックを温存したい。
この辺り一面はもう真っ白な冷気の渦だ。熱がほとんどない。
たまにどこからか爆弾が飛んでくる。僕はそれが爆発すると同時に熱を吸収する。
無駄な事を…攪乱しているつもりなのか?
僕は熱エネルギーをブレスレットに溜めて、清五郎のいるであろう場所めがけて放つ。
「ちッ!!危なかった!!」
清五郎はそういって、姿を見せるもまた逃げる。
ビルを壊してしまったせいで土煙が起こって、清五郎の場所がつかめない。
「隙有りですよ!」
「ッ!?いつの間に!!」
気がついたら背後にいた清五郎に掌打を受けてしまう。
僕はなんとか右腕で受け止めるが、やばい!!流石に直接は!!
「BUMB!!」
そう叫んですぐに彼はできる限り離れて地面に向かって飛びしゃがみこむ。
爆発する右腕。僕は慌てて左のブレスレットで熱を吸収するも…ダメだ。右腕が完全に消し飛んだ。
僕は咄嗟に消し飛んだ部分を凍らして、出血を阻止する。体内の熱があればこれぐらいはできる。
「へへッ、一矢報いてやったぜ…」
清五郎はそう笑いながら僕を見る。
いったいどうしてあんな速度で……と思っていたら、そこに転がり落ちているバイクを見つけた。
そういえば今回の闘いで使っていなかったな。あの土煙の間に乗ってきたのか。
もうフラフラの清五郎。僕は腕がもげたとしてもまだ動ける。
本当はあの一撃で決めるつもりだったんだろう。体力の限界と言った様子だ。
「もう動けないんだろう?清五郎。脚が震えている。
この寒さと僕の炎による火傷…。本来動くのも億劫なはずだ」
「…あぁ、そうですね…。だけど、負けれねえんすよ」
苦しそうに震える清五郎。
さっきの爆発も逃げきれずにところどころ爆発の軽傷が残っている。
ボロボロだ。よくもこんな状態で立てるものだと僕は見ながら感嘆とする
でも、これ以上は出来ない。確かに僕に一矢報いることが出来たけど、ただ…それだけだ。
「アンに!あいつに!!カッコイイとこ見せなくちゃなんねぇんだ!!!」
上がらない頭を必死に上げて僕をにらみつける清五郎。
なんだ、こんな危機的状況なのに、なんでそんな目ができるんだ。
最悪の相性の敵、一面凍った最悪のフィールド、そして本来からある実力の差。
凍った場所での寒さは敵の体力を奪う。
この状況でなんでそんな目ができる…まだ策があるのか!?
「気づいても遅いっすよ。太陽さん。策ってのは、準備が出来たら…もう逃れられないんすよ」
ニヤリと笑った清五郎はなぜか上空に吹っ飛んでいく。
地雷!!地面深くに入れて地面事自分を吹き飛ばした!!
「………か、風?」
その瞬間。
僕に向けて四方八方からの突風が襲いかかってくる。
風の中なんとか目を開けると、ビルの方から物凄い勢いでこちらに風が向かっている。
……弱い爆弾で爆風を呼んでビルのすきま風を利用したのか!!
圧倒的な風で僕の視界が奪われる。なんとか開いて辺りを見ると
「……ッ!?」
突風に乗って、こちらに向かってくる大量の爆弾。
四方八方から来る爆弾。なんて数だ!!これを…逃げている間に!!?
「……さあ!どでかい花火を打ち上げようか!!」
上空を飛んでる清五郎がそういって勢いよく合掌する。
その瞬間。四方八方に散らばり、僕に向かってくる爆弾は…爆発した。
僕は爆発した炎の中で、吸収能力を使う
「だから無駄だって言ってるじゃないか!!」
僕は爆発して発生した炎を次々と吸収する。
「まだまだ行くぜぇ!!」
さらに清五郎は上空から爆弾を落としてくる。
それも爆発するも、僕はとにかく炎を吸収する。
爆発したときに発生する熱風も吸収しているんだ。爆弾攻撃は僕には効かない!!
「……なぁ、太陽さん。バイクにガソリンを入れ続けたら、どうなると思う?」
清五郎が何かを呟く。
けれど僕には聞こえない。
返事する余裕すらない。
「ガソリンがいっぱいになって、バイクは…潰れちまうんだよ。許容オーバーでな」
「ッ!?」
そのとき、僕のブレスレットに皸が入る。
きゅ、吸収限度を超えた!?
まだ、地面から爆弾が落ちてくるってのに!?
僕は、なにも対処出来ないまんま……爆発に巻き込まれた。
『Winner!車田清五郎!!』
ジャックランタンの解説が聞こえる。
そうか、僕は…負けたのか。
「あぶねぇあぶねぇ…もうちょっと遅かったら、俺の負けだったぜ…師匠」
俺、車田清五郎はそのまま重力に従い、地面へと落下していく。
地面に落ちた衝撃で、死んだかのような痛みのまま、気を失った。
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「…ははっ。まんまとやられたよ。清五郎」
「結構ギリギリだったんですけどね…。貴方の限度次第では死んでたのは俺です」
医務室。
さきほど闘っていた僕たちは2人仲良く隣通しのベッドで寝ていた。
僕が消えてすぐに清五郎も物凄い高さから落下したから死んだように寝ていたらしい。
僕ら2人ともメアリーがいなかったら本当に目覚めなかったかも……。
「清五郎。太陽さん」
そんなとき、医務室にアンが訪れた。
「…大丈夫ですか?」
「うん。メアリーのおかげでなんとかね」
「そうですか。清五郎…カッコよかったです」
「お、おう…」
「あ、アン聞いてよ。清五郎。君にカッコ悪いところは見せれないって頑張ってたんだよ?」
「……////」
表情には出さないが、モジモジとして顔を赤くしているアン。
清五郎が言うのもわかるな。ちょっと可愛い。
「あぁーでも、まさか本当に負けるとは思わなかったよ」
清五郎の作戦は完璧だったんだ。
逃げてビルの近くに爆風を起こす爆弾を多数配置
ビルが密集している摩天楼だからこそ起こる巨大な隙間風
そして無理してでも僕の右腕を爆発させて、吸収許容を激減させた。
完璧な戦略と、危険でもそれを行う彼の自信と根性が見える。
彼は思った以上に才能のある男だ。
『さあさあ!残る人数もかなり減ってきました!!
次の対戦表にはなんと!!三人将が全員載っているぞぉー!果たして彼らを倒せるものは現れるのか!?』
ジャックランタンの解説が聞こえる。
二日目もそろそろ終盤か…。
「清五郎」
「はい」
「アンだけじゃない。僕の分も、必死に頑張ってくれ」
「…はい」
そのまま僕は瞼を閉じ、眠りに入った。
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「千恵…見とけよ。兄ちゃんが仇取ってやっからな」
「頑張ってねぇー龍ちゃん♪」
「が、頑張ってください!ボロボロになっても私が治しますカラ!!」
「…絶対に勝て。いいな」
「押忍ッ!!」
俺は皆の激励を聞いて、会場へ、向かう
俺、葵龍二はこれから《三人将》…宿木福籠との闘いを始める。
☆
「さあさあ!俺の相手はてめぇだな脳筋野郎!!」
「誰が脳筋だ誰がぁ!!」
対戦場に立つ2人。
《ヨルムンガルド》葵龍二と《ギャンブラー》宿木福籠。
『さあさあ!!二日目、ついに三人将を倒せるか!?
《ロキの三兄弟》!そして蛇道狩羅率いる《蛇》に所属する男!
オーディエンスで大暴れしたドラゴンの正体!!その実力は未知数!!
対する宿木福籠も《運》を武器にする未知数の実力者!先日この葵龍二の妹葵千恵と対戦し
その圧倒的実力を見せつけたが葵龍二は妹も仇を討てるのでしょうかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
「…龍二さん。大丈夫でしょうか…」
「大丈夫っすよメアリーちゃん。あいつは頼りになる後輩だ」
「…あぁ、あいつも才能はある。開花すりゃ俺なんかよりも強ぇ」
「あの…」
対戦場を眺める狩羅たちに声をかけてきたのは…エンジェルだった。
「あぁ!エンジェルさん!!来てくれたんですね!」
「あっ、だ、だからその名やめてってば。あたしには天野美鳥って名前が…」
「じゃあ美鳥ちゃんです!」
「それならまぁ…」
あたし、エンジェルこと、天野美鳥はメアリーさんの雰囲気についていけない…。
「へぇー…。君がエンジェルねぇー。俺古田ってのよろしく」
か、顔が近い…///
「あ、し、知ってます。《蛇の毒》と言えば有名だし。
さっきの試合も凄かったです。正直驚きました…」
「おっ、マジで?いやぁ~君みたいな可愛い子に知られると嬉しいなぁ~」
「か、かわっ///」
「古田さん!あんまりむやみやたらに女の子に可愛いって言っちゃダメですよ!」
「えぇ?なんでさぁ?」
「なんでもデス!ねぇ美鳥ちゃん!!」
「え、あっ…はい。そうですね」
あたしはついていけずに思わず返事をする。
そ、そうか…この人は誰にでも可愛いって言う人なのか。何照れちゃってんだろあたし…。
「てめぇら。もう試合始めてんぞ龍二の奴」
「あっ!Sorryデス狩羅さん!!」
蛇道狩羅…あたしのボスになる人の言葉でみんなが対戦場を見る。
もうヨルムンガルドとあの宿木福籠の闘いが始まっていた。
一応この組織のあたしの先輩になるんだ。しっかり応援しよう。
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「まずは先手必勝!!」
俺、葵龍二は思いっきりジャンプして身体を捻る。
すると身体全体が龍の姿へと変化し、そのまま宿木めがけて突進する!!
「おーっと、足が滑ったぁー」
棒読みな言葉を言って、本当に足を滑らす宿木
滑った勢いで随分と高くまで飛んだ。空中にいる間に俺の突進が奴のいた場所を通過する。
「さぁーって…。じゃあまずは後手必勝!《ガントレット・スロット》!!」
空中で構えた宿木の手袋のスロットがズガガガガ!と音を響かせ回る。
「トリプルハンマー!!ビンゴ!!喰らってもらうぜ!!!」
ハンマーの絵面が揃った拳を下に突き刺す。するとまるで重い石を持っているかのような
スピードで長くなっている龍の動体に向けて落下してくる。
「やべぇ!!」
俺は急いで龍の姿を解く。
俺の姿が消えて空振りになった拳は地面に当たり、小さいが深く沈んだクレーターが発生する。
「ちっ!外れたか。次行くぜ!!」
すると、次はコインを出す宿木。
「させるか!!」
「ぶっ!!」
俺は急いで腕を竜頭へ変化させて突撃させる。
コインを飛ばしていて防御が間に合わなかった宿木はそのまま勢いよく飛ばされる。
そしてビルの壁に激突する。
「ただ…コインは投げられたぜ…?表!!」
ビルに激突して、痛みを我慢している宿木が言葉を漏らす。
確かに、今、宙から落下しているコインがある。あれを…落ちる前に拾えば――――。
チリーン。と地面に落ちるコイン………表。
「な、なんだ!?」
急に起こる地震。
「ははっ!ビンゴだ!!」
地震が起こる中、今だに寝転んでいる宿木。
するとどこかからモノが崩れる音がした。
「お、おいおいマジかよ!!!」
俺の上が影で覆われる。
見上げると、二つのビルが崩れて俺に向かって転倒してくる。
俺は上に向かって身体をひねらせる。
龍の姿に変化し、上空に向かって飛ぶ。転倒してくるビルごと粉砕してやる!!
「ははっ、お前すげぇな。さっきから」
立ち上がる宿木。余裕ぶった表情で俺に問いかける。
「その余裕!ぶっ潰してやるぜ!!」
俺は再び身体全体を龍にして空中から宿木向けて突進する。
「お前の一撃は喰らえば致命傷だが、単純過ぎる。こんなの運を使わなくてもよけれるよ」
宿木がそういって俺の突進を軽々と避ける。
しかし、突進している途中で龍の姿が消える。
「…そいつはどうかな?」
「っ!?しまった!?」
龍の姿が消えて何かを悟った宿木は慌てて後ろを見る。
そこにはもう回し蹴りの体制に入っていた俺の姿。俺は奴の動体に思いっきりつま先をぶつける。
そのまま蹴り飛ばす。
そしてぶっ飛んでいる宿木を逃がさまいと腕を竜頭にして、そのまま奴の身体に突進させる。
追い討ちをかけられてさらに勢いよく飛ぶ宿木。
すぐにビルとかの壁にあたって欲しいのに勢いが弱くなってから地面を転がるだけなのが奴の運の良さ故か…。
「くっそォ…。まさかヨルムンガルドがここまでやるとは思わなかったぜ…」
そういうと宿木は開けるほどめいいっぱいに両手を広げる。
「《ルーレット・ガーディアン》!!!」
そしてそれを勢いよく合掌する。
すると俺と宿木の間に巨大なルーレットが出現。
「さあ!!BETしな!!!」
そういって指を鳴らす宿木。
巨大なパチンコ玉が現れてルーレットの回りを回る。
「じゃ、じゃあ赤色!!」
俺は慌てて答える。
「俺は……白だ」
ルーレットの溝に球がハマる。答えは……白。
そしてその白の中にある絵面は…雷。
「落ちろォー!!!」
その瞬間だった。
凄まじい落雷。
どこから来たのかまったくわからない落雷。
俺は身体中が焦げてそのまま地面に倒れる。
あれ…?なんか受けた覚えがあるぞ…この……雷…。
「雷なんて、喰らったら一発アウトだぜ。たとえどんな奴でもな…」
宿木が自慢げに言う。
本当にめちゃくちゃだ。ビルは落ちてくるわ落雷してくるわ。
「でも…負けらんねえんだよ」
「う、嘘だろ…!?」
「なんか…覚えてねぇけど、俺はこれよりも強い雷を受けたことがある」
俺はフラフラになりながら立ち上がる。
口から血反吐を吐く。そのまま宿木を睨む。
「《ギャンブラー・コイン》!!表!!」
コインを飛ばす。
それを俺は手の上で受け止める。
「なっ……!?」
「どうした?なんかあったのかァ??」
答えは……裏。
「どうやらハズレだったらしいなァ!!」
俺は勢いよくダッシュして、奴の腹部めがけて拳を放つ。
「く、くそっ!!《ガントレット・スロット》!……っ!?」
どうやら…何かあった見たいだな。
俺は今が気だと思って龍の姿になって突進する。
決まった!!完璧に決まった!!撥ねられて上空に飛ぶ宿木。
「もういっちょ!!」
俺は空中にめがけて龍の姿で飛んでいき、さらに上空で奴を捕らえる。
さらに飛ぶ宿木の前方で人間姿に戻って大きく息を吸う。
「…ポイズン・ハウリング!!」
俺の口から紫色の霧が噴出されて宿木の身体を包み込む。
そのまま俺は地面に着地、宿木は落下する。
しばらく動かない宿木…。やったか?
「……ははッ。やべぇ…俺大ピンチじゃんかよ…笑うしかねぇな……」
そういいながら立ち上がる宿木。あの攻撃を受けてまだ立つか…。
流石はあのヘラクレスが認めるだけはあるってわけか……。
「ならこれで止めにしてやるよぉ!」
俺は腕を竜頭の姿にして奴に向けて突進する。
「…《ガントレット・スレット》!!」
ニヤリと笑いながらまだガダダダダと音を響かせる腕。
そこに揃ったのは……
「777!揃ったぜ!ラッキィィィィィィセブゥゥゥゥゥゥンンンン!!!!」
腕が謎の光に包まれている。
狂ったような笑みを浮かべて奴は避けることもなくただ立ち続ける。
まさか俺の竜頭の突進を真っ向から受ける気か!?
「おぉぉぉぉぉらァァァァ!!!」
奴の光る拳が龍の額にヒットする。
その瞬間だった。まるで、毛糸がバラバラになるように、龍の姿が消え、その瞬間。
俺の身体全体から血が吹き出す。俺はまた地面に倒れる。やべぇ…なんだ今の……。
「全ての攻撃を無効化させて、絶対的なダメージを与える最強の絵柄だ。これで終わりだろ…」
とにかく笑い続けている宿木。
やべぇ…ガチで立てねえ…。どうする?千恵の仇…取らなきゃいけねぇんだ。
古田さんの思いも背負ってんだ。そしてなにより……。
「喧嘩に負けたら……悪じゃねぇ…!!!!!」
そう考えると、腕から異様な力を感じた。なんだ…これ…腕から…鱗?
とにかく、俺はその異様な力を信じ、地面に手を付ける。
「おいおい、マジかよ。あの黄鉄さんでも777を喰らった時は瀕死だったんだぞ!?」
奴が驚いているのを他所に、俺はただ……立ち上がる。
「ははっ。はははっ。はははははははははっ!!!!!」
思わず笑いがこみ上げてくる。
やべぇ!!自分でもわかんねぇ力が働いててよくわかんねぇ!!!
なんで立ててるのかもまったくわかんねぇ!!!!
やべぇ…やべぇぞ。何者だこいつ!
「てめぇ…。本当、なんで立ってられる。落雷喰らって、777喰らったら普通即OUTだぞ?」
俺、宿木福籠は思わず問いてみる。
当たり前だ。まだ不死身能力を持ってる明知晴嵐ならわかる。
そうでもない人間が、あれだけの攻撃喰らったら死ぬだろ!?
出血量を考えてもおかしいだろ!?奴の足元もう血の池だぞ!?
いくらこの世界が能力のために俺たちに防御力が上がってるとしても無茶なダメージだ。
「…わかんねぇよ。姉ちゃんによく言われるけど…俺、バカだから」
そういうと目の前の男はニヤリと笑う。バカの笑い方だ。
なにも考えてない…バカ野郎の笑い方。
ギャンブルで絶対に失敗する…直感だけの奴の笑い方。
なのに……なんでだ。奴の後ろから漂うただならぬオーラは。まるで蛇に睨まれてるみたいだ。
「うっ…!!」
その直後、吐きそうな感覚に襲われる。
「無理…すんなよ。てめぇも俺の毒でボロボロのはずだぜ?」
確かに、俺もフラフラする。さっきの霧か…。
俺は一つのコインを出す。
「また…ギャンブルか?」
葵龍二がそう言う。
俺もこれ以上攻撃出来ない。
恐らくあいつも立ち上がっただけで攻撃出来る元気はないはずだ。
なら…このコイントス。当たれば俺に幸福を、そして奴に不幸を…
「…《ギャンブラー・コイン》!…裏!!」
「なら俺は…表だな」
コインを飛ばす。
綺麗な回転をして、空を飛んでいくコイン。もう拾う元気もない。床に落ちたのを見よう。
毒でボロボロな俺に対して、向こうは相変わらずバカ丸出しの笑みを浮かべている。
コインが地面に落下する。
一度バウンドして、もう一度落下…しかし、コインがくるくると回っていく。
当たれ!当たれ!!当たれ!!!
「…なァ、宿木」
そんなとき、葵龍二が話しかけてくる。
なんだっ!俺はこの命のかかったコインを見ないといけないのに!!
「お前……言ってたよなァ?『笑う角に福来たる』…そんな必死な顔じゃあ、福はこねぇんじゃねぇか?」
「ッ!?」
奴の挑発に、俺は憤怒の感情を抱き、顔を強ばらせる。
そんなことをしている間に、コインの回転が止まろうとしていた。
そして、コインは静かに地面に着地する。答えは………表。
「ッ!?!?!?!?」
俺が……運勝負で負けたのか!?
「この大博打、どうやら俺の勝ちみてぇだな」
その奴の笑みを見ていると、毒が全身に回ってきたみたいだ。
もし…当たってたら身体から毒が抜けただろうに…くそッ……。
俺は、そのまま気を失って、倒れてしまう。
『この勝負!!葵龍二の勝利!!
そして特別ルールにより、葵龍二はこのまま本戦出場!!
誰が予想したでしょうか!?初めにこの予選を通過した者は!!《ヨルムンガルド》葵龍二だァァァ!!』
俺、葵龍二は勝利を宣言されて、思わず両手を上げる。そして…そのまま倒れた。
人々は喜び、泣き、そして驚愕した。
誰も予想していなかった結果を引き起こした男の勇姿を。
予選突破…葵龍二。誰よりも先に、ヘラクレスへの挑戦権を獲得した男の闘いは終わった。
☆
「うぅ…姉御、負けやしたぁ…」
「もぉ!福籠のバカ!!そこに座って反省してなさい!!」
「へーい」
三人将の控え室。
そこで瞳にそう言われた福籠は藁を敷かれた絨毯の上で正座して反省している。
「そんなことさせておいていいのか?瞳??」
「ん?なんで?」
「お前の次の相手的に、お前も座らないといけなくなるかもしれないんだぞ?」
そう、こいつの次の相手はあの《ピクシー》なのだ。
このビルで恐らくヘラクレスさんを除くと最強の女。
元メルへニクスなのは目の前の瞳も同じなのだが、やはり不安である。
「何心配してんのさ拓海!大丈夫!!あたしも頑張って勝つからさ!行ってくる!!」
そういうと瞳はお気に入りの赤色パーカーのフードを被ってポケットに手を入れて歩く。
あれは……本気の時の態度だ。あんな可愛らしい態度がむしろ嘘。あっちが彼女の本性。
「まあ、飛来さん。姉御なら大丈夫ですぜ♪」
「…そうだな」
そして、モニターを見続けると、戦闘場に瞳とピクシーが姿を現し、戦闘を開始させた。
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「久しぶりだな。瞳」
「そうだねぇー♪寧々ちゃん♪♪……相変わらずだね」
「……ッ!!!」
一瞬で目つきが変わる瞳。
ジャラジャラとした短い鎖を腰につけ、黒く、胸元に血のような赤いハートマークのあるシャツ。
それの上に赤いパーカーを来ている。小学生とは思えないロックな服装となっている。
「ま、あたしも人のことは言えないんだけどねぇー。
メルへニクスは『いいやつら』の集まりって黄鉄さんは言ってたけど、あたしは違うと思うなぁー♪」
「……何が言いたい?瞳??」
「んー、あのメンバーを一番客観的に見れるあたしとしては全員……悪人で、クズなんだよね」
「ッ!?!?!?!?!?」
「あはっ☆本気出してくれたね」
一瞬で移動した私が放った拳を瞳はニコっと笑って受け止める。
サイコキネシスで強化された私の拳を……。
彼女が拳を放ってきそうだったので私は慌てて後ろへ逃げる。
本気の拳だったのか、空を打った彼女の拳から、風が吹き抜ける。なんて威力だ。
「訂正しろ!瞳!!」
「えぇーなんでさぁー。現にピエロさんとか下衆だったじゃん♪
今いるあのアンってお姉さん。元はピエロに奴隷扱いされてたんでしょ?
太陽さんだって、過去に何人の人の骨を砕いてきたか…。そしてあたしも、寧々ちゃんも」
「それ以上を言うなッ!!!」
私は再び彼女に攻撃を仕掛ける。
もちろん彼女はそれを受け止める。
「ねぇ?どうして今回はゴーレムを使わないの?」
「君に使っても無意味なのを知ってるからだ!」
私は蹴りを放つ。これを避けた瞳はそのまま私の足を掴む。
「しまッ!!」
「あたしって…すっごく力が強いんだぁー☆」
ぐじゅと音がなると同時に私の右足が血を吹き出して破裂する。
私はサイコキネシスで生み出す衝撃波で瞳をぶっ飛ばす。彼女はビルの壁に激突する。
くっ…右足はもう使えないか。
「やっと本気で来てくれるね。本当に…どう?あたしを恨んだ?」
そういって立ち上がってくる瞳。こいつ…何を考えている。
「いっくよぉー!!」
今度は彼女の攻撃。私の攻撃を彼女は受け止めることが出来るが、私は無理だ。
必死に逃げ回らないと!!私はそう思って能力を使って空を飛ぶ。
「それも無駄だよ!!」
そういうと瞳はなんと、ビルの壁に足をめり込ませながら壁を走ってきた。
そしてジャンプ。私と同じ高さまでたどり着いた彼女は私にめがけて拳を放つ。
「くっ!!」
私はそのまま瞳に叩き落とされる。だけど私は能力でビルをへし折って
彼女を巻き込むようにビルが倒れこむように仕掛ける。
「嘘っ!?」
私は能力でその場から逃げたが、完全に当たったはずだ。
「もぉー!小学生にビル落とすとか信じらんない!!」
「…やはり化物だな。君は」
服が汚れているが、ほとんど無傷だ。身体の丈夫さもヘラクレス譲りか…。
「もぉー怒ったよ!」
突然ダッシュしてくる瞳!やばい!防ぎきれな―――――
「どーん☆!」
私の腹部に瞳の拳が放たれる。
能力を使って表面を強化したが……それでも…
「ガハッ!」
「さ~らぁ~にッ!!」
腹部を殴った拳を引いて、回し蹴りをする瞳。
避けることも出来ず、私はただただぶっ飛ばされる。
「……《シューティング・メテオ》!!」
私は立ち上がり、その辺にある石ころを有象無象に宙に浮かせる。
それを全て、瞳に向けて放つ。アン・ヴィクトリアにも使った技だ。
「私は…それを砕く!!」
瞳は、中でも大きくて当たると致命傷になりそうな石を瞬時に判断してそれだけを殴り潰している。
これじゃあ大きなダメージは与えることができない!
私は能力で腕に岩を密着させる。その拳で瞳を殴る。
それを瞳は腕で受け止める。そして彼女は受け止めた方とは反対の拳で私に攻撃してくる。
私もう片方でなんとかガードする。そして互いに殴打し続けるだけの闘い。
こっちは岩を装着して強化しているとはいえ、素手と素手の殴り合いなんていつぶりだろうか。
「油断大敵ッ!」
「しまった!!」
突然足を掬われる。
倒れる私を攻撃しようとしている瞳。
私は自身の身体を能力で硬直させた後、浮いたまま彼女にカウンターで
腹部めがけて蹴りを放つ。これは避けることが出来なかった瞳は直撃し。顔を歪ませる。
私は彼女がよろけている間に一旦距離を取ることにする。
「はぁ…はぁ…寧々ちゃん肉弾戦も強くなったね」
「あぁ、君みたいなのを相手にするときに必要だからな」
私は口に付いた血を手で拭う。
「今度は正真正銘本気でいく!!」
私はそういうと能力を使って二本のビルをぶち抜く。
宙に浮いた私はそれをまるで剣のように腕で持つように宙に浮かせる。
そして片方のビルで瞳を叩きつけようとするも、彼女の拳が見事にビルを粉々にする。
「しかし!二個目は対処できまい!」
「ッ!?」
私は二本目のビルを振るい、瞳にぶつける。
彼女はこれをガードして受け止めるも、その圧倒的威力にぶっ飛ばされてしまう。
私は急いで彼女の方に飛んでいく。
そして瞳に攻撃。彼女を地面に叩きつける。
「……やったか?」
土煙の中をじっと見る私。
その私の視界に、一瞬何かが映った。と同時にこちらに迫ってくる!
「しまった!」
突然過ぎて対処出来なかった私はジャンプしてきた瞳の攻撃をモロに喰らって叩きつけられる。
本当に……油断ならない。化物だな。
けれど、瞳はもうボロボロだ。
「瞳…。やはり私にはまだ勝てないな」
私は彼女に向かって投げかけた。
単純に後輩に抜かれるのは癪だったからこの状態は助かる。
まあ、私もご覧のとおりボロボロなのだが…。
「………もん。」
「ん?」
「……負けないもん」
俯いたまま立ち上がる瞳。
「絶対に!負けないもん!!もう……負けられないんだもん!!!」
その目には、涙を浮かべていた。
そんなに…私に負けるのが嫌なのか?…いや、違う。
「…あたしは負けない!!」
そういって鬼の形相で挑んでくる瞳。
私はなんとか彼女の攻撃を牽制する。
彼女……ヘラクレスにやめてほしくないんだ。
ヘラクレスがボスをやめれない状況なら、引退は不可能。
「もう……失うのは嫌だもん!!」
「ッ!?」
それが、彼女の本音だった。
負けた。それが理由で…何かを失いたくない。
私は瞳の腕を受け止める。弱っているからか、ギリギリ出来た。手が破裂しそうなぐらい痛い。
「そうだな。私も…失いたくなかった。だが瞳。決まったことは認めろ。
そして私は……お前に負けてやるつもりはない」
もしここで私が彼女に勝ちを譲れば、今のメンバーで瞳に勝てるものはいないだろう。
晴嵐くんはまずこの子に非常になれない。
車田もまだボロボロのままだ。応急手当は受けたとしても、瞳と闘うほど回復はしていない。
狩羅なら…いや、奴は瞳の攻撃を喰らったら即敗北だ。ほかにも彼女に勝てるものはいないだろう。
「私も……負けれない理由がある」
そういって彼女を能力で生み出した衝撃波で吹き飛ばす。
そうだ。私も負けられない。
晴嵐くん達にヘラクレスへの挑戦権を与えなければならない。
せっかく刹那の弟の龍二も頑張ったんだ。その努力を無駄にしてはいけない。
ここで、夢を追う自分の弟子達に繋げてあげないといけない。
「…《牙龍翔誕》!!」
私は二本の指を突き立てる。
すると地面から盛り上がるように現れる巨大な龍の大群。
それは円を描くように瞳に近づき、一斉に襲いかかってくる。
「…すまないな。瞳…本当に成長していた。だが…まだ私には勝てない」
「……うっ!うぅっ!」
痛みで動けなくなっている瞳が年相応に泣いていた。
それは悔しさからなのか、悲しさからなのかは私にはわからない。
「…なぜ、あんな酷いことを言った」
「…寧々ちゃんを本気にさせるため。
でも、思っているのは本当…寧々ちゃんもわかってるんでしょ?」
「……そうだな。だが、それでも私達は《メルへニクス》なんだよ」
「……うん。」
私の言葉を聞いて、なぜか彼女は安心しきったような笑みを浮かべて、そのまま光に包まれて消えた。
『世紀の《メルへニクス戦》を勝ち抜いたのは!我らが妖精!《ピクシー》だぁぁ!!』
ジャックランタンの実況が、勝利を確信させるものに聞こえた。
『そして!これで本郷黄鉄への挑戦権を獲得!
これで残った三人称はリーダー《ジャック・ザ・リッパー》こと飛来拓海のみ!
さぁ…誰が彼を倒すのかぁぁ!?』
これで、私と瞳の闘いは終わった。
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「……ついに、俺の出番か」
「お、目がマジっすね飛来さん」
「当たり前だ。これは…決着をつけないといけない闘いなんだからな」
「どっちが勝つか、俺が勘で言ってみましょうか?」
「やめろ。お前の勘はもはや予言だ、聞きたくない」
「えぇーそうっすかぁ?」
「あぁ…あいつとは因縁がある。
ソファーに座っていた俺は、そのまま立ち上がった。
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「うぅ…負けちゃった…」
あたしは凹みながら歩いていた。
応急処置を受けたら、寝る必要はないとこうして歩いているのだが、気乗りしない。
「よっ!…瞳」
そんなとき、声をかけられる。…黄鉄さんだ。
今、一番会いたくなかったな。
「…負けてしまいました」
「そうか!ただすんげぇ頑張ってたな!」
そういって彼は私の頭を無神経にくしゃくしゃとなでてきた。
この、全てを包み込むような大きな手。撫でられてて安心する。
あたしは思いっきり黄鉄さんに抱きつく。
「おっ?なんだぁ?まだ甘えたい年頃か?」
そんなこといいながらヘラヘラと私の抱きつきを許す黄鉄さん。
私は彼の衣服で涙を拭くように泣いた。
「……その悔しさ、絶対に忘れるなよ」
「…う、うん!!」
あたしはただただその場で泣いた。
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「寧々ちゃん。お疲れ様」
「あぁ…本当に強かった」
「本当にお疲れ様です。ピクシー」
「あぁ、貴方に勝った私は勝ち続ける義務がありますから」
「寧々、本当に凄かったわね…。瞳ちゃん大丈夫だった?」
「あぁ、彼女は丈夫だ。あれだけではへこたれない」
「そう…あたしちょっと話しかけてくるわね」
「お姉ちゃん…私も行く」
そういって刹那と千恵は去っていく。
「ん?そういえば晴嵐くんは?」
本来なら真っ先に『先輩!超カッコよかったっす!!』とでも言いながら来ると思ったんだが…。
「明知先輩なら…あそこに」
モニターを眺めている晴嵐くんをRBに教えてもらい見つめる。
彼の方に歩み寄ろうとしたのだが……途中でやめた。
彼の背中から感じる闘気。本気の目とオーラをしている。
今声をかけると、保っている集中力が切れるかわからないな。
それに、モニターを見たとき、晴嵐くんがそんな表情をしている理由がわかった。
次の対戦………《明知晴嵐VS.飛来拓海》となっているのだから。
「あっ!せ、先輩!勝利おめでとうございます!」
後ろに私がいることに気づいた晴嵐くんは慌てて祝ってくれる。
「あぁ、それより…次は因縁の闘いだな」
「はい…。あいつには…絶対に負けられないです」
「私は応援している。龍二くんと共に、君を待とう。だから頑張れ」
「はい!!では…行ってきます!」
そして、晴嵐くんは私達に背を向けて戦場へと向けていった。
☆
『さあさあ!!二日目もいよいよクライマックスに差し掛かってきました!
三人将《宿木福籠》《赤野瞳》が敗れ、残った三人将はただ一人!!《飛来拓海》のみ!!
今回の闘いで、彼を打ち破ることが出来るのか!?あるいは、彼に敗北し、生き残った者が新たに
彼への挑戦権を得るのか!?飛来拓海に挑戦する者!!《不死鳥》!!!明知晴嵐!!!』
ジャックランタンの実況が人々を奮起させ、喝采を響かせる。
あいつはやはりこういうことが得意なのだろう。聞いていて盛り上がっているのがわかる。
だが、俺が見ている先はただ一点だった。目の前の少年…明知晴嵐。
彼も、俺のことを宿敵と言わんばかりににらみつけてくる。本当に……いい目だ。
始めて出会ったときの俺は、わけがわかんなくて…自棄になって、ただただ襲いかかった。
愚かなクズ野郎だった。冷静さの欠片もなく、ただナイフを振り回すだけの愚か者。
だから、明知晴嵐に負けた。あいつは始めてなのになぜか冷静に刀を握れていた。
あとから聞けば、あいつは部活でレギュラーらしい。ことバトルって言う戦場を闘ってきたからだろうな。
俺みたいに、なにもせず…なにも感じず。
ただ生を貪っているだけの生活をしているやつには持つことがない緊張感と度胸。
それを持ってたか持ってなかったか……が、俺と奴の力の差だった。
狩羅さんの元で鍛えられた俺は、能力の使い方を知り
そして…俺は戦ったんだ。俺の後に、あの明知晴嵐を圧倒したと言う。…本郷黄鉄と。
あいつが当てられなかった攻撃を俺は簡単に当てれた!しかし……完敗だった。
「お前……俺のところにこねぇか?」
あのとき、聞いた言葉を俺は今でも鮮明に覚えている。
俺は…強くなりたい。この人のその言葉を聞いて、純粋にそう思った。
強くなるために努力をするやつらを。小馬鹿にしてた俺が、何かを頑張ってることを小馬鹿にしてた俺が
その人の言葉で、蛇道狩羅さんの指導で、明知晴嵐への敗北で変わったんだ。
そこからはもうあの人の弟子として、常に努力をした。
基礎体力から付けるために彼の職場に就職して、彼と同じく現場で仕事をこなしてきた。
能力を強くするために、黄鉄さんの命令でいろんなビルで鍛えてきた。
そこで出会った赤野瞳。宿木福籠……今は俺の大事な仲間で弟妹分だ。
そこで手に入れた力は…俺にはもったいなさすぎる最高の代物だ。
ただ無気力に生きてきた俺に…仲間ができて、力を手に入れ、そして最高のライバルが出来たのは
全て…黄鉄さんのおかげだ。だが…俺は明知晴嵐よりも勝ちたい相手がいる。黄鉄さん。貴方ですよ。
俺は貴方を超えるために頑張ってきたんだ。あの人を一度でいいから倒したかったから…。
俺は、貴方に挑戦するために……明知晴嵐。そして残った参加者を倒さないといけない!
「なぁ…飛来」
そんな時、突然明知晴嵐が俺に話しかけてくる。
互いに殺気は放ち続けている。話はしているが、油断をすればいつ攻撃されてもおかしくない。
「俺…強くなったと思うか?」
「…俺に聞くな」
「まあそう言うなよ。俺にとってお前は…ライバルだ。
あの日、始めて勝ったお前に俺が惨敗した日。あの時…俺は他のやつらに負けたときよりも悔しさがあった。
あれから、刹那達に負けて。車田にも負けて、バスケでもいろんなやつらに負けてきたけど…。
あのとき、お前に負けたことが一番…悔しかった。負けってこんなに苦しいもんだと思い知らされた」
そして明知晴嵐が一度静かに息を吸う。
「俺は!てめぇに負けた日からずっとずっとずっと!勝ちたいと思ってた!!」
雄叫びのように叫ぶ明知晴嵐。
その瞳はまっすぐ俺を見つめている。俺のことをライバル。超えるべき壁だとして見ている。
俺も息を吸う。
「俺……お前にリベンジした日から、今度こそはお前には負けられないと思っていた」
俺も静かな声色で明知晴嵐に叩きつける。
「行くぜっ!!」
血を刀に塗って炎を纏った剣で俺に襲いかかってくる明知晴嵐。
「こい。炎双剣」
俺は何もないところから真っ赤な刃の双剣を出現させる。
そして明知晴嵐の刀を受け止める。
「貴様……剣術の修行を受けていないだろう?それでは俺には勝てない!!」
俺は奴の腹部を切り裂く。そこから炎が噴出するので俺は少し逃げる。
そして能力でやつの頭上にナイフを落とす。明知晴嵐も慌てて逃げる。
俺は炎双剣を消して、ほんの小さなナイフを取り出す投げ出す。
「くっ!」
それが肩に突き刺さる。俺はそこで怯んでる間にダッシュ。相手に飛び蹴りを食らわす。
無残に飛んでいく明知晴嵐。
奴の方向にナイフをふらせていく。
「くっそっ!!」
身体中にナイフが突き刺さる。
「これで止めだ!!」
俺は最後に超巨大なナイフを生み出す。
そしてそれを、叩きつけるように倒れる晴嵐に喰らわせる。
地面からずどーんと大きな音を立てて土煙が起こる。
今のコンボ…普通のやつなら、真っ二つなんだが……。
「……へへっ。やっぱすげぇわ…飛来…!!!」
けれど、あいつは立ち上がってしまう。
物凄い炎を纏って、立ち上がってしまう。
圧倒的パワーを手に入れて立ち上がってしまう。
「……はっ、化物め」
俺は皮肉を込めて、明知晴嵐にそう言い放った。
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すげぇ…!!やっぱすげぇよ!!飛来!!!
完璧なコンボ、何も抵抗することが出来なかった。
俺がこの能力じゃなかったら確実にやられていた!
「じゃ!次は俺だぜぇー!!!」
俺は炎を噴出させてダッシュ。飛来に向けて飛ぶ。
俺の拳を飛来は出現させたナイフを盾に身を守る。
けれど俺はそのナイフやつをぶっ飛ばす。
やつは巨大な双剣を出現させてそれを地面に突き刺してブレーキ、ビルにぶつかることを阻止。
「……《百花刃葬》!!」
そう叫んだ飛来。
その直後、上空から百を超えるナイフが降ってくる。
闇夜のサーカス団領に向かったときに使った技だ!!!
「くっそー!!!!《ガードフォーム》!!」
俺はそのまま動けずに炎を鎧型に変形させ、ただただナイフが降り注ぐ場所で痛みに耐える。
「…どうだ?まだか??」
「あぁ…まだまだだぜ!!」
俺は炎をさらに噴出させる。
そして腕をぐっと引っ張る。
「ッ!?」
驚く飛来。
奴の足には、炎で出来たワイヤーが絡まっているのだから
「ふられている間につけさせてもらったぜ!!」
俺はそのワイヤーを持って背負投のように身体をひねらせる。
ワイヤーが飛来の身体を引っ張り、やつは宙を綺麗な円を描きながら飛ばされていく。
「おぅら!!」
そして俺はやつを地面に叩きつける。
土煙の中、俺は手応えを感じるも、やつをじっと見る。
すると飛んでくる一本のナイフ。俺は慌てて避けるも、頬を掠る。
その瞬間に俺の元に現れる飛来は、俺の横っ腹にそのつま先をぶつける。
あまりの痛みに悶えている俺に、やつはナイフで追撃を試みる。俺はそれを腕で受け止める。
グサっと刺さって血が流れる。俺はそれで奴の動きを止めて、もう片方の拳でやつをぶん殴る!
俺に刺さっていたナイフが引き抜かれ、そのまま遥か遠くへ飛んでいく飛来。
今度こそビルに直撃した!!!!
「はぁ……はぁ…」
ボロボロの身体ビルの瓦礫から現れる飛来。
頭から血が流れてるんじゃないのか?だけどその目はさらに恐ろしさを上げる。
俺は思わず生唾を飲む。俺の方が不死身能力を持ってて、優勢なはずなのに……怖い!!
「……いくぞ」
その瞬間。やつが手をかざす。
俺は逃げないといけない思って逃げようとしたが、足が動かない。
「ッ!?」
足に、まるで杭のように刺さっているナイフ。引き裂いてでも逃げようと思ったが時間がなかった。
「…刀剣咆哮」
その瞬間飛来の腕から何千本ものナイフが波を作りながら俺に向かって放たれる。
そのナイフ一本一本が集まり、一つの巨大な衝撃波のようだ。
おいおいマジか!?あれを俺に受けろっていうのか!?
俺は炎を盾にするも、無駄に終わり身体の至るところにナイフが刺さり、身体の肉という肉を剥がれていく。
消えた肉をすぐに炎に変換。
次々と剥がれていく肉という肉。
「これも耐えるか……明知晴嵐」
息が荒くなっている飛来。今の技…相当体力の疲労があるんだろう。
「もぉ……耐えれてる意味ないけどな…」
もうほとんど炎だ。ギリギリ視覚があるだけかもしれない。
「……いくぜ!!」
「こい!!」
俺が走って飛来に挑む。
飛来は自分の持つ一つの剣で俺の攻撃を受け止める。
俺の拳を切り刻む。剣。
俺はワイヤーで自分の日本刀を拾う。
そして飛来の攻撃を剣で受け止める。
しかし、やはり剣術じゃあ奴の方が上か!くそッ!!
「おぅら!!」
俺は刀で相手の剣を叩き切る
けれどやつはまた新しい剣を取り出して俺の刀をへし折る。
「こうなったら!!」
俺の炎で俺の刀が再生する。
永遠に続く剣戟。
飛来が一度離れてナイフを飛ばしてくる。
それを俺は叩き落す。
互いにもう動けないはずなのに、身体が勝手に動く。不思議だ。
飛来も俺の拳を食らってるのになんで動けるんだよ!何がお前を動かしてる!!
「飛来ぃ!!!」
「晴嵐!!!!」
二人の剣が重なり合う。その瞬間に怒号を響かせながら突風が起こる。
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「なぁ…《ピクシー》」
「なんだ?ヘラクレス」
「お前から見て、あの二人はどう見える?」
「ん?…まあ、良きライバルだろう。私にはあそこまで互角に闘えるライバルはいなかった。羨ましいよ」
「そうか。俺には……《太陽と月》に見えるけどな」
「…中々詩的なことをいうんだな。お前は」
「そして、俺とあいつも《太陽と月》だったはずだ」
「………」
私、黒金寧々は黄鉄さんの言葉を聞いて思わず黙り込んでしまった。
「月の光は綺麗だ。太陽の光は豪快だ。太陽の光は多くのものを簡単に惹きつける。
そして月の光は……限られた者を信仰してしまうほど惹きつける。お前は…月の光に魅入られた。だろ?」
「………」
「ま、つまり性格というか全てが違うんだよ。
白と黒。朝と夜。太陽と月。光と影。金と銀。あいつら二人はそれを体現している」
「…そうですか」
私はそうとしか返せなかった。
「でも……だからこそ磁石のように惹きつけ合うんだよ」
ヘラクレスが言った言葉を私は息を飲んで聞くことしか出来なかった。
晴嵐くんと飛来が互いに死にそうになっている闘いに目を離すことが出来なかったから。
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やはり、強い。
こいつはここまで強くなった。本当に凄い。
思わず見入ってしまうようだ。まるで黄鉄さんのように…。
「はぁ…はぁ……」
「…うッ…はぁ…」
二人して膝をついて倒れる。互いに汗と血が凄い。
奴も炎を噴出する元気がもうないのか、炎に紛れて血が見られる。
「…くそがぁ!!」
晴嵐が立ち上がる。足場もフラフラだ。
俺も負けじと立ち上がる。足がボロボロだ。
俺は一本のナイフを取り出す。
「俺は……負けれねえんだ!!」
つきさそうとするナイフを晴嵐はなぜか避ける。
自分でも驚いているようだった。反射的に避けたのか!?
「くそッ!くそッ!くそッ!!」
俺が振り回す。けれど、晴嵐はそれを剣で受け止める。
そんなとき、何かが刺さった感触がした。
俺のナイフが……明知晴嵐の腹部に刺さったのだ。
しかし、その直後に、また肉が刺さる音がした。奴の日本刀が俺の腹部を刺したのだ。
「……ははッ、流石に、これ以上は無理だな」
「……奇遇だな飛来。…俺も」
その直後、ほぼ同時に互いの肩に寄り添うように倒れる。
満身創痍。俺もあいつも身体が動かない。
意識が朦朧とする。そして俺は……気を失った。
『こ、これは!?りょ、両者引き分けぇぇぇぇ!?
両者共に気を失っちゃった!!こ、この場合どういうジャッジを取ればいいんでしょうかぁぁぁ!?
……今、情報が。先に気を失ったのは飛来拓海!よって、ギリギリ勝者は!明知晴嵐だぁぁぁぁぁぁ!!!』
観客が拍手喝采を送る。
けれど俺と晴嵐は互いに気を失って何も聞こえない。
『これにより!!三人将は全滅!!
現在生き残っている者達が明日!最終日にヘラクレスへの挑戦権を得るぞぉぉぉぉぉ!!!』
こうして、長い因縁の渡ったライバルとしての闘いは、不死鳥の勝利で…幕を下ろした。
☆
「いちち…。本当にメアリーちゃんの治療が終わってもまだいてぇよ」
「一回肉体消えるほどの攻撃受けてるんだから当然でしょ?」
「本当に、悪いな家まで来て貰って…」
「あ、あんたがあんな中途半端な治療で大丈夫かって思っただけよ」
俺の家。
俺が飛来を倒したことによって、二日目の童戦祭は終了。
家に戻った俺の家に、刹那がやってきた。痛みで苦しんでいる俺の看病に来てくれた。
「あんたの事だから、『先輩に来て欲しかったなぁー』とか思ってるだろうけど
あの子だって、あのヘラクレスと闘うために真剣なのよ。我慢なさい」
「べ、別にそんなこと言ってないだろ?」
素直に来てくれて、刹那が飯作ってくれてるのは凄い嬉しいんだけどさ
「あ、もう来ると思うけど優にも声かけたわよ。…ほら、噂をすれば」
そういうと、インターホンの音が鳴り響く。
俺は入れと一言いうと、優は何やら入っているコンビニの袋を持って来た。
「一応飲み物と、話のツマミになりそうなお菓子買ってきたんだ」
そういってその袋を地面に置いて俺の正面に座る優。
「見てたよ。君と刹那の闘い。本当に凄かった」
「お、おう…」
改めて言われると少し照れるところがある。
そうか…俺、刹那を倒してヘラクレスとの挑戦権を得たんだ。
今俺のために飯作ってくれてるこいつは…今日、俺が倒したんだよな。
「どうしたの?晴嵐??刹那さんのことじっと見て?」
「えッ!?な、なんもねぇよ!?」
「……ふぅーん。まあ、見惚れるのはわかるけどね。刹那さん普段と違って、料理してるとき印象変わるし」
「優。聞こえてるわよ!それじゃああたしが料理しなさそうな人みたいじゃない」
「そこまで言ってないですよ。僕も楽しみですよ刹那さんの美味しい料理」
「ハードル上げないでくれる?本当に簡単なんしか作ってないんだから…」
こいつって本当、自然にこういうことやってくるよな。天然Sというかなんというか。
「とにかく、おめでとう晴嵐。君はもうあのビルが誇る強者だ」
「やめろって、お前だって…強くなってんだろ?」
「よくわかったね。次闘ったら、わからないよ?」
「おう。そんときは楽しみだぜ!!」
俺と優はそんな言葉を交わしながらジュースを酌み交わす。
その後は二人してがっはっはと笑いながら、まるで酔ったようにジュースを流し込む。
「あんたらのその男子のノリってなんなの?」
すると、熱そうに手袋をはめながら鍋ごと持ってきた刹那は、それを真ん中に置いた。
「…カレー?」
「うん。正式にはカレー鍋。みんなで喋りながら食べるならこれが一番よ」
「でも、なんか普通のカレーと匂いが違う気が…」
「まっ!食べてみなさいよ!!」
そういって、俺たちによそってくれる刹那。
手馴れてるな。千恵ちゃんや龍二にも普段からしてるんだろうな。
受け取った俺はそれを一口。
「んっ!なんだこれ!?超うめぇ!!」
「本当だ。鍋だけど香ばしいっていうか…なんだろう?」
「一回中の肉も玉ねぎも炒めるのよ。にんにく風味で
あとは食べやすいようにジャガイモを一回レンジで蒸したりしてね。
うちにも龍二がいるから、ニンニクの香ばしさが欲しくなってくるのよ。あんたらも一緒でしょ?」
「あぁ!やべぇ!!マジうめぇ!!」
「うん。いくらでも入っちゃうよ」
俺と優は言葉を言いながらも、休むことなく口に鍋の具をかき込む。
「刹那!ごはんおかわり!」
「自分で入れなさいよ…もぉ…」
そういいながら受け取ってくれる刹那。
「あ、僕のもお願いしていいですか?」
「はいはい」
俺と優のごはんをよそった刹那。
俺たちはそれを受け取ってまたごはんをかき込む。
「いやぁー本当に美味いな刹那」
「そう?喜んでくれたら嬉しいわ」
「うんうん。これはいいお嫁さんになりそうですよ」
「お、お嫁さん…///」
「確かになぁー♪これなら毎日食いたいわ…あれ?二人ともどうしたの??」
俺が言葉を放った瞬間二人して、「え?」みたいな目で見てくる。あれ?俺なんかまずいこと言った?
「…ま、とにかく!明日ね。晴嵐」
「そうだね。どうなの?晴嵐。勝機は??」
二人が話を戻すようにそう言ってくる。
俺も思わず真剣な顔立ちになって二人を見る。
「正直。勝ち目ないって思ってる。
だけど、俺は刹那と飛来の思いも背負って、あの人に挑戦するんだ。勝てる気しねぇけど、負けちゃいけねぇ」
「なんか安心した」
「え?」
「うんうん。やっぱり晴嵐は晴嵐よねぇ」
「え、えぇ?」
なんか優と刹那が二人して俺のことで意気投合してる。
「僕たちは、君が新しいボスになることを祈ってるんだよ晴嵐。ヘラクレスに変わるね」
「そうね。あたし達はあんたを応援してる」
「二人共…」
やっべ、なんか泣きそうになってきた。
「おう!そうとなったら体力付けるぞぉー!」
俺がガツガツと食っているのを、二人は穏やかな目で見てくれた。
明日…頑張らねえとな。
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「寧々ちゃん。お疲れ様」
「…RBか。千恵とは上手くいっているみたいじゃないか」
「そういう言い方はやめてよ。ついにだね…」
「あぁ、私もヘラクレスに挑んだことはないからな。偶然当たったこともなかったな。
だからこそ超えてみたい相手ではある」
「…寧々ちゃんは勝って、あのビルの長になりたいのかい?」
「どうだろうな?私は特別ボスには興味ない」
「そうなの?」
「あぁ、だが君やアンや瞳に勝ってしまったんだ。ヘラクレスには本気で挑むさ」
私はそう言って、拳をぎゅっと握り締める。
見ていてください。アンデルセン。私は明日。貴方のライバルと闘います。
どこかで、私のことを見守っていてください。
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「…清五郎?どうしたんですか??」
「あ、嫌…なんか眠れなくてな」
「なぜですか?」
「…お前がひっついてくるせいで落ち着かねえからだ」
「…そうですか」
「おいっ!それでなんでさらにくっついてくるんだ!?」
「…くっつきたいからですが?」
「おいおい…」
「清五郎も私のほうを見てください。いつも背中では拗ねます」
「……ッ///」
俺は顔を歪ませながら、それでも背中に感じるアンの温もりを噛み締めていた。
彼女が抱きつくように俺の腹部に手を絡ませる。
「大丈夫です。清五郎なら…。大丈夫です。私は知ってます。太陽さんも、他のみんなも」
俺の耳元で囁いてくるアン。
「ですから、怖がらなくて大丈夫です。本当は不安なのも知っています。
貴方はあの太陽さんを倒したのです。それに…私が付いています…」
さらに強く抱きしめてくるアン。
「ですから、前を向いてください清五郎。
そして私を抱きしめてください。きっと…落ち着きますよ」
「……ッ////」
俺は仕方なく身体を振り返らせる。
そこには、俺の胸部に顔を埋めるアンの姿。アンの綺麗な金髪からいい匂いがする。
「清五郎…」
アンが見上げるように俺を見つめる。
俺はとりあえずアンに言われた通りぎゅっと抱きしめてみる。
「…嬉しいです。清五郎」
そういって彼女は俺の胸部に顔を埋める。
不思議だ…。さっきまで、隠していた不安も興奮していた思いも、全て彼女を抱きしめたら消えた気がした。
「お休みなさい。清五郎」
その一言を聞いた後、俺はそのまま眠りについた。
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「狩羅さんと龍二の本戦出場を祝してかんぱーい!!」
「ありがとうございます!古田さん!」
「こんな祝うことでもねぇだろう…」
「ナニ言ってるんですカ!狩羅さん!
狩羅さんは最強のヘラクレスに挑めるんですよ!?」
「…だからなんだってんだよ。ったく」
「まあまあそう言わずに。俺に勝ったんすから俺の分も頑張ってくださいよ狩羅さん♪」
「ほら、美鳥ちゃんが作った料理もありますよ!」
「おぉ!マジで!?美鳥ちゃん料理できるんだぁー」
「あっ///はい…。一人暮らし…なんで」
「あーん。んっ!美味しいよ!!」
「あ、ありがとうございます…」
「…なるほどぉ」
「どうしたメアリー?気持ち悪い顔して」
「きっ…!?狩羅さん!女の子に気持ち悪いなんて言ったらメッ!ですよ!!」
「はいはい。んで?どうしたんだよ??」
「…別に何もありませんよぉー♪」
恍けるメアリー。
まあいいか。俺は飯を頬張っている龍二の元に行く。
「おいっ。龍二」
「なんすか?狩羅さん?」
「…俺はあいつに勝つ気はねぇ」
「な、何言ってるんですか狩羅さん!?」
「最後まで聞け。俺の性質上。あいつには勝てねえ。だから…お前が勝つんだ」
「……え?」
「お前には、勝てる可能性がある。俺はお前のお膳立てをする。だから勝て」
「……ッ!はいッ!!」
純粋な少年みたいな目で返事をする龍二。
「二人ともぉー!ヴァルキリーちゃんがケーキ作ってきてくれましたよぉー!」
「あ、はい姉さん今行きます!行きましょう!!狩羅さん!」
そして俺は龍二に引っ張られてみんなの元へ行く。
一度失っちまった仲間だけど…また、増えちまったな。
俺は少し感慨深い思いになりながら、俺を慕ってくれる奴らと共に宴会を楽しんだ。
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『さあさあ!いよいよ最終日!!今日!ヘラクレスを超えるものは現れるのかぁ!?
みんな!!今日はとにかく楽しんでこぉー!!☆』
観客の喝采が響き渡る。
俺たち参加者はそれぞれ個室で待たさている。
最後まで誰が生き残ったか曖昧だからだ。正直俺と龍二と先輩以外は誰が生き残ったかわかんねぇ。
『ではでは!メンバーを紹介しよう!!
まず初めにこの予選を突破した蒼き蛇龍!!その圧倒的パワーはヘラクレスに通用するのか!!
《ヨルムンガルド》!葵龍二ー!!』
そういうと、観客が騒ぐ。
どうやら舞台に龍二が入場したんだな。
『続いて!二番目に突破!!
その名を知らぬ者このビルになし!!その小さな身体に漲る力は何よりも大きい!《ピクシー》黒金寧々!!』
次は先輩か。
ってか凄い男の歓声だな
やっぱり先輩可愛いから男子人気あるのか?
『まだまだ行くよぉー!最後に飛来拓海を倒した期待のルーキー!!
その不死の炎はヘラクレスの猛攻にも屈せずに燃え盛ることができるのか!?《不死鳥》!明知晴嵐!!』
俺の扉が開かれて、入場する。
やべぇ…すげぇ緊張する。観客席を見ると刹那たちの姿。とりあえず手を振っとく。
「緊張しているようだな。晴嵐くん」
「えぇ、バスケの試合とかで慣れてるはずなんすけどね……」
『さあ続いて生き残った者達の紹介だ!!
見た者を殺すという小さき王様!その毒は神の子厄災を蝕むことができるか!?《バジリスク》蛇道狩羅!』
気だるそうに入ってくる狩羅。
でもその目はどうやら本気みたいだ。
『どんどん行くよぉー!あの最強の《メルへニクス》北風太陽を破った男!!
ヘラクレスの身を爆破出来るか!?《歩く爆撃機》車田清五郎』
車田が入場する。
その直後男子観客からの酷いブーイング!?あれぇ!?あいつ人気ない!?
…なるほど、嫉妬か。
「ヘラクレスにボコボコにされろぉ!」
「なんでお前までいうんだよ晴嵐!」
「いや、便乗したくて……死ね。リア充」
「お前…俺ら仲間だよな?男子同盟だよな?」
「……」
「黙んなよッ!」
『ありゃりゃ、思った以上にブーイングが発生してるね♪
なんか清五郎ちゃんヘタレでまだ手出してないらしいからアンちゃんファンは安心してね♪』
それをいうとまたブーイングが起こる。
ジャックランタンが焼け石に水なことしちゃったよ…。
「あぁー!うっせぇ!!てめぇら!奪えるもんなら奪ってみやがれ!!」
車田も切れて客席に向けてキレてるし…。
「清五郎…。素敵です…」
あぁ、観客席のアンさんが惚れ直してるよ。こりゃ他の男子共の脈ないな。
『なんか、凄いことになっちゃったけど!次で最後だよぉー!
誰が予想しただろうか!?メンバー内のダークホース!三浦秀人!!』
あれ?聞き覚えのない名前だな…。
俺は入場門から入ってくる奴を見ておく。
「ッ!?ジャージ!?」
俺は見て驚いてしまう。
あのジャージが六人目として立っていた。
「まあ、有名どころに当たらなかった運がいいだけだけどな…」
ジャージがそういう。
『さあ!そして最後に!!我らがビルのTOP!!神の子!厄災!!
その拳は大地を裂き、風を起こし全てを壊す!!《ヘラクレス》!本郷黄鉄ー!!!』
そして入場する。圧倒的存在感。
巨躯な身体を進ませて、俺たち六人の前に立ちはだかる。
「さぁ……楽しい喧嘩。はじめようぜ」
俺たち六人と、たった一人の化物の闘いが始まった。
ってなわけで、二日目が終わりました。
三日目。つまり後編はこの6人VS本郷黄鉄一人の対決になります。
生き残った6人それぞれの思いと、圧倒的強さを誇る本郷黄鉄が次回の見所になると思います!!
本当、皆さんどうかご期待ください!!><
感想などなどもお待ちしてまぁーっすw




