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第二話 初戦VSルーミア

「香霖、走れ!全力でどっかに隠れてろ!!」


 年下の女の子を置いて全力で逃げる男というものは客観的に見て相当格好悪いのだろうが僕の知ったことではない。なんたって弾幕ごっこなんてしたことが無いんだ。下手をすれば死にはしないだろうが魔理沙の邪魔になるだろうし、役に立つ気がしない。だから逃げるのは仕方がない、仕方がないんだ。


「逃げるのかー」


 とはいえ相手は闇を操る妖怪である、簡単に逃げれるわけが無い。

 霖之助の目の前に真っ暗な闇が生まれた。


「くそっこれでどうだ!!」


 魔理沙は懐から手のひらサイズの懐中電灯を取り出した。相手のやる気を削ぐ光線”マスタースパークのような懐中電灯”を周辺に向け、フルパワーで放つ。



「うわぁあああああああああああああああああああああ!!」



 闇を操る妖怪には効果覿面らしく、ルーミアは顔を両手で押さえてその場に倒れこむ。


「香霖!こっちだ」


 魔理沙は霖之助の腕を掴むと懐中電灯をルーミアに向けながら竹林のより多く生えている方へ走った。



 ~スキマ空間~



「どうやら撒けたみたいだな」


 十分ほど走った場所で霖之助と魔理沙は座り込んだ。普段からあちこちに飛び回っている魔理沙はともかく、腰の重い霖之助は疲れきってしまい、さっきからゼーハーゼーハーと呼吸が乱れている。


「…ごほっ……ごほっ……何なんだよ、いきなり弾を撃ってくるなんて……」


 幻想卿で出会い頭に弾幕戦になるのは珍しいことではないのだが、霖之助が知っているはずも無い。

 そして二人が息を整えていると後方に何か動く気配を感じた。



 ガサガサ



 もしかしてルーミアが追いついてきたのかもしれない。

 魔理沙一人なら数分もかけずにルーミアを撃退することが出来るのだが、今は霖之助という弾幕戦ではまるで役に立たない男が一緒にいる。彼を守りながら戦うのはかなり分が悪い。

 二人は息を殺して音のした方向を見る、すると……


 そこには白い兎がいた。波打つ短髪に首にはニンジンのネックレス、赤い目に尻から白い尻尾を生やしている。

 恐らく永遠亭の兎だろう、その兎は辺りをきょろきょろと見渡すとどこかへ走り去っていった。どうやら二人には気づかなかったみたいである。

 


「永遠亭の兎がいるってことはやっぱりここは幻想卿なのか?」


 霖之助は兎の姿が見えなくなったことを確認するとそう呟いた。その呟きに対し魔理沙は


「幻想卿じゃなかったら、何処だと思ってたんだよ」


 と呆れたように言った。


「いやなんでもないよ、ところで何で魔理沙は霧雨の剣を持ってるんだ?」


 霖之助が魔理沙の右手を指差すと一振りの剣が握られていた。


「いや、スキマに飲まれたときに持ったままだったからな、にしてもこれを持って走るのは腕が疲れたぜ」


 そう言いつつ魔理沙は霖之助に霧雨の剣を渡した。うん、確かにこれを持って走るのは辛い、なのに手ぶらで走っていた霖之助のほうが疲れているのは…きっと若さだろう。


「ありがとう魔理沙、これは大事なものなんだ」


 霖之助は受け取った霧雨の剣を腰に差した。簡単に落ちないように硬めに紐を縛る。

 それを黙って見ていた魔理沙は黒いエプロンドレスのポケットをまさぐっていた。


「駄目だ……ミニ八卦炉が無い…家に忘れてきたぜ」


 元々香霖堂で酒でも呑もうとしていた魔理沙は異変の時ならいつでも持っているマジックアイテム「ミニ八卦炉」を家に置いてきてしまっていた。

 これでは強力なスペルカードを使うことが出来ない。特にマスタースパークなんて撃ったら制御しきれずに暴発してしまうだろう。

 いくらルーミア相手とはいえ、こんな状態では苦戦は確実だった。

 ついでに言えば箒も無い。これは香霖堂の壁に立て掛けて置いたからだ。


「それは、無いとマズいのか?」


 以前魔理沙がこれの無い生活は考えられないと言っていたのは覚えているが、どれほど活用していたかは霖之助は知らなかった。効果なら知り尽くしているが。


「まぁな、でも霊夢とかが相手じゃなければ何とかなるさ」


 魔理沙がそう答えると同時だった。



「みぃつけたぁ」



 二本のレーザーが二人の間に走った。


 月符”ムーンライトレイ”


 レーザーは広がるように分かれて二人を完全に分断する。


「追いつかれたか…」


 魔理沙はポケットから一枚のカードを取り出した。


 光符”ミステリアスビーム”



魔理沙は両手を左右に広げて二本の光線を放ちながら回転する、しかしルーミアの姿は見当たらない。


「魔理沙、上だ!」


霖之介が叫んだ瞬間、上空から交互左右に翼状の弾幕が二人目掛けて降り注いだ。


「”ナイトバード”かよ!!」


 避けるのは容易い、下手に動きまわらずに一発一発を見切っていけば被弾することは無い。



「香霖、落ち着いて見りゃ当たらないぜ!!目を絶対閉じるなよ!」


 霖之助は危なげだが、かすりつつも直撃は避けていた。顔面を汗びっしょりにさせて…これ以上は霖之助が苦しそうなので魔理沙は反撃するため、弾幕をよけながら懐からビンを二本取り出す。


「これでもくらいな…”マジックミサイル”」


 ビンは魔理沙の手から離れた瞬間に勢いよくルーミア目掛けて高速で飛んでいく。しかしルーミアは自分の放った大量の弾幕でその光弾に気付いていない。


「そらそら~……っえ?」




 ピチュ――――――――ン




「っしゃあ!命中!!」


 魔理沙の放った光弾はルーミアに直撃して爆発を起こし、その小さな身体を霧散させた。


「…ふぅ…終わったのか…?」


 汗びっしょりで肩で息をしている霖之助だった。いやよく被弾しなかったもんだ。初見でナイトバードを、しかも初めての弾幕を避け切った霖之助はそこそこ弾幕ごっこのセンスがあるかもしれない。


「終わったぜ、香り…」




「痛いな~」




「…ん………?」


 この声は……


「そんなヒドいことする魔理沙にはこれ”ディマ……」


 振り返ると何故か無傷のルーミアがいて


「香霖、逃げ……」


 笑顔で一枚のスペルカードを持っていた。


「……ケーション”」



 ルーミアが言い切ると同時に幾重にも交錯する弾幕が二人を襲った。そして油断しきっていた二人は避ける術が無かった。

 なのだが


「魔理沙!!」


 霖之助が普段からは考えられない俊敏な動きで魔理沙の前に立って交差する弾幕の餌食になる、そして魔理沙は…




「イリュージョンレーザー!!!」




 とっさに機転を利かし、霖之助の脇に出て一筋のレーザーをルーミアに放った。


 霖之助で魔理沙が見えなかったルーミアはまたしても直撃して再度ルーミアの胸を貫いた。








 ピチュ――――――――ンッッパァン!!







 そして先程とは比べられないほどの光を放ち、ルーミアは姿を消した。

 しかし、魔理沙はもうルーミアが消えるのを最後まで見ていなかった。





   「香霖!!!!!」





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