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第一話 そして誰も居なくなった

二次創作が一部再開されたので投稿しました

「香霖、邪魔するぜ」


 よく晴れた幻想卿の朝、森の中にあるこの幻想卿で唯一外の世界の商品を取り扱っている古道具屋「香霖堂」に金髪碧眼の魔法使いの少女、霧雨魔理沙(きりさめまりさ)は足を運んでいた。服装はいつもの白と黒の服を着て、両手でひっくり返した帽子を持っている。

 理由は昨日森で取りすぎた茸をこの店の店主に分け、あわよくばここでその茸を調理し、美味い酒でも出してもらおうという考えからである。


「魔理沙か、今日は何の用だ?」


 店の奥から眼鏡をかけ青い服を着た二十代くらいの優男が現れる、”未知のアイテムの名称と用途が判る程度能力”しかし使い方は判らないという中途半端な能力を持つ男、森近霖之助だ。彼は左手に本をもっていて、いかにも読書を中断されて不機嫌そうな顔をしている。


「差し入れだぜ」


 魔理沙は茸の詰まった帽子を霖之助に差し出した。帽子から独特な香りが広がりすぐに店内に充満する。


「ありがとう、台所の方へ持ってきてくれるか」


 よし、言質はとれた。


「上がらせてもらうぜ」


 魔理沙は自分の家のようにスタスタと台所まで行き、大き目の網籠(あみかご)に茸を入れた。その際に棚に置かれている調味料や酒瓶のチェックをしておく。


(ちっ、香霖の奴、酒の隠し場所変えやがったな。偶然見つけた振りしていただく予定だったのに)


「魔理沙、お茶くらい飲んでいくだろ?」


 そんな魔理沙の胸中を見透かしたように霖之助が棚から見るからに安そうな茶葉の入った缶を取り出し、お湯を沸かす。


「あぁ、いただいてくぜ」


 魔理沙は酒を諦めて店内に置かれた品々を物色する、この店の物は半分くらいは非売品で入れ替わりは鈍いが、たまに掘り出し物が混じっているのだ。気に入った物はしょっちゅう”拝借”している。


「何か新商品は入荷していないのか?この前のエアコンってやつは外れだったな、まるで涼しくならなかった、持ち帰って損したぜ」


 以前香霖堂に来たときに新しく入荷されていた長方形の箱のようなものに一目ぼれし、無理やり持ち帰って、家で試行錯誤したのだが、霖之助の言うとおりの効果は無かった。仕方が無いから妖怪の山の河童に今は預けて調べてもらっている。


「勝手に持って行ったくせに文句言わないで欲しいんだが、そういう台詞は…」


「お代を払ってから言え、だろ?聞き飽きたぜ」


 霖之助は呆れたように、いや諦めたように肩をすくめて片方の湯飲みを魔理沙に渡す。サンキュと言って魔理沙は受け取り、店の片隅の壷に腰掛けた。魔理沙のこの店の定位置である。


「まったく……新商品はまだ入荷してないよ、強いて今読んでるこの本くらいだ」


 霖之助はカウンターの上に置いた一冊の本を指差す。それは黒いグリモア(魔導書)だった。


「面白い本なのか?」


 珍しい本には目が無い魔理沙はその本に釘付けになった。当初の目的は完璧に忘れている。


「それがな、何かのマニュアルみたいなんだが……僕には読めなくてね」


 とさっきの言葉とは矛盾することを霖之助は言う。


「まどろっこしいな、とりあえず貸してくれ」


 魔理沙は湯飲みの中身を一息で飲み干すと、カウンターに置いて、その黒いグリモアを手に取った。


「………………どうだい、魔理沙?」


 数分間ほど黙ってページをめくる魔理沙にゆっくりとお茶を飲んでいた霖之助が尋ねる。


「駄目だ、チンプンカンプンだぜ…」


 黒いグリモアを霖之助に渡して魔理沙はまた商品を物色し始めた。どうやら早々に興味が失せたらしい。


「新しいものは無いって…おい、魔理沙…その剣がどうかしたのか?」


 魔理沙は店内の壁に飾ってある、以前ミニ八卦炉を改造した時に交換条件として受け取った鉄くずのなかに紛れ込んでいて、今は壁に飾ってある剣を手に取っていた。


「これって確か……香霖が霧雨の剣って名付けてたよな?」


(そういえばこの剣の事はまだ魔理沙にはバレていないんだよな)


「そうだけど、よく覚えているな」


「いや、あたしの名前に対してこんなぼろい剣じゃ名前勝ちしてるなって」


(どっちかと言えば名前負けなんだけどな、その剣の正体と比較すると)


「僕はとても気に入っているよ」


 本当のことを魔理沙には言えないので適当に話を合わせておく。


「気に入ってる…か。でも思えばこいつらを手放したから異変の度にミニ八卦炉を持ってこなくてよくなったんだよな、感謝してるぜ」


 そう言いながら魔理沙が壁に霧雨の剣を戻そうとした。




 そして異変は起こった。




「魔理沙!!」


 霖之助の目の前で魔理沙が紫色のスキマに飲み込まれたのである。そして数秒後、霖之助も同じくスキマに飲み込まれた。





 ~スキマ空間~


「あらいやだ、霖之助さんまで巻き込んでしまったわ、どうしましょう」


 幻想卿のどこかにあるマヨヒガの一室でスキマ妖怪は傍らに立つ九尾の式に話しかけた。


「白々しいですよ、紫様。今回の異変は博霊の巫女や普通の魔法使いのような人間を含む全ての妖怪や幽霊、妖精等の人外を一度幻想卿から追い出す必要があるんですよね?なら半人半妖の森近霖之助も例外ではないでしょう」


「全て…そうね、なら貴方も」


「へ?」


 次の瞬間、九尾の式の足元にスキマが現れ一秒もたたない間に姿を消した。


「全ては幻想卿のため……さてわたくしも参りましょうか、それでは幻想卿を頼みますわ、貴方に……」


 隣の部屋で待っていた少女が襖を開けて現れる。


「任せてくれ、あたしが絶対に何とかするから」


 スキマ妖怪は優雅に笑うと傘を差してマヨヒガから一歩踏み出す、そして一人の少女を残して姿を消した。


 ~スキマ空間~




「…きろ……りん!…こうりん!!この寒さで寝続けたら殺すぜ!」


(この声は…魔理沙、か?)


 霖之助が目を開けると綺麗な黄色い満月が夜空に輝いていて、視線を横に向けると魔理沙が落ち着かない表情で僕を何度も揺さぶっていた。


 寝転んだ体勢から上体を起こして辺りを見回すと竹が鬱蒼(うっそう)と茂る竹林だった。だが何か違和感がある、まるでここは…幻想卿ではないような……


「魔理沙、ここは?」


 起きていた魔理沙なら何か掴んでいるんじゃないかと微かな希望を込めて聞いてみる。


「そんなのこっちが知りたいぜ」


 とにべにも無い解答が帰ってきただけだったが。


「そうか、あの八雲紫の仕業なのは間違いないよな…僕も魔理沙もあのスキマに飲まれたわけだし」


「だな、見つけたら黒焦げにしてやる」



「誰を黒焦げにするの?」



「誰ってもちろんあのスキマ妖怪だよ…ってあれ?香霖声高くないか?」


「いや、今のは僕じゃないが…」


「じゃあ、一体誰だ……香霖、伏せろ!」


 魔理沙が叫んだ瞬間、僕は本能的に地面にしゃがみこんだ。そして頭上を一発の光弾が通り過ぎる。


「あれ、外れたのかー?」


 振り向くとそこには両手をまっすぐ広げ、楽しげに笑っている妖怪、ルーミアが立っていた。


連載は不定期です…すいません。

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