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助手の話

――――――カリカリカリカリカリカリカリ


静かな部屋にペンを走らせる音だけが響く。部屋の中はそこらかしこに日用品の残骸が転がっており、洗濯物が山のように詰まれていたり、食べた後の食器がそのまま流しに置かれていたりと、そこの住民の性格の粗雑さを見事に現している。

生活観丸出しの部屋の中、二人の人間が机越しに向かい合って必死でペンを走らせる。


――――――――カリカリカリカリカリカリカリカリ


ペンを走らせる合間にたまにため息が漏れる。そしてまたペンを握りなおす。


―――――――――――カリカリカリカリカリカリ……


「あ、先生、ここ間違ってます」


髪を短く切りそろえた端正な顔の女性がペンを止め、手に持っていた原稿を相手に見せる。

相手は身を乗り出してこちらを覗きこんだ。後ろで束ねられた長い髪がゆっくりと揺れる。


「あちゃ〜、誤字か……悪いけど直しといてくれる」

口ではそういっているが、全く悪びれた様子がない。まるで、いつもの事、といった感じだ。助手は軽くため息をついて愚痴をこぼす。


「まったく、これで何度目ですか?」


「13回目」


あっさりと答えた声にも全く反省の色は見えない。こうして話しているときも、二人はカリカリとペンを走らせる。


「少しは反省してくださいよ」


「ハイハイ、五児には気をつけますよ」


「解ってないじゃないですか、何ですか五児って……」


「もう最近、五時が多くなっちゃってさ〜」


「五時は増えません,っていうか真面目にやってください」


ハハハ、と笑いながら手だけで誤ってくる。もとい謝ってくる。

この人は、どうも助手をからかって楽しんでいるふしがあるようだ。相手をしなければいい話なのだが、それだと拗ねてしまう。どこまでも子供っぽい人だ。それくらい遊び心があるくらいがマンガ家には丁度いい、とこの人は言う。

そのとき、来客を告げるブザーが鳴り、助手は散乱したゴミを避けながら、玄関まで歩く。

帰ってきたその手には、一枚の便箋が握られていた。


「ほら、ファンレター来てますよ」


先生はひったくるようにそれを奪うと、すぐに読み出した。売れていない彼女らにとって月に一度来るこのファンレターが原動力のようなものだ。

書いてある内容はそのときどきで、前回はなんと出版したマンガのダメ出しまでされてしまった。

しかも書かれていた内容は的を射ているため、先生は一晩ショックで寝込んでしまった。

だが次の日には、心機一転、別人のように書きまくった。今回はどんな事を言われるか内心ドキドキしながら見ているはずだ。


助手はそっと後ろから覗き見る。そこにはなんとも可愛らしい字こんなことが書かれていた。


以前は生意気な事を言ってすいませんでした。やっぱりあなたは私が見込んだとおりの人でした。これからも応援しています。がんばって下さい。


手紙を握り締め、それを何度も読み返す。

先生は突然フッフッフ、と笑い出し、ついで大笑いする。椅子から立ち上がり、どうだとばかり胸を逸らせる。


「どうだ!これが俺の実力よ!」


「ハイハイ。調子乗らないでください」


テンションのやたらと高い先生を落ち着かせ、イスに押し戻す。


「フッフッフ、今に人気が出て婦女子達にキャーキャー言われて見せるからな!」


自慢の長い髪を揺らしながら、先生は熱弁する。


「そんなことより書いてください。〆切りは明日ですよ」


その日は徹夜で原稿を書き上げた。先生は一晩中熱血していた。助手はそれを見て冷めた目で眺めていた。そしてこっそり笑みをこぼした。




















鼻歌を歌いながら、少女はマンガを読んでいた。ページをめくってはクスクスと笑みをもらす。漆黒の髪をした青年が、笑っている少女を見て、不思議そうに口を開いた


「何を読んでいるんだ?」


少女は本を持ち上げ、青年に本をながら答えた。


「マンガですよ。結構面白いんです」


「聞いたことのない作者だな?」


青年が背表紙に書かれた作者名を見て、そう言うと、金色の瞳の少女は楽しそうに笑った。


「これからに期待ですよ」


久しぶりの投稿の涼です。

今、私生活が少し立て込んでいるので、連載が不定期になってしまうかもしれません。

もし、よければこれからも応援宜しくお願いします

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