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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
リーンテアの森編
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Lv.003『良い面と悪い面は背中合わせなんだね』


 そんなこんなで魔術と体術の訓練を受ける事になりました。


 といっても、体術は基礎の基礎だけ。体作りって感じかな。まだ三歳だし、普通の妖精は勉強なんだって。でも、レソトやユーランが教えられる事は少ない。数百年森から出てないしね。昔のレソトのように旅をしている妖精か精霊が通りかかったら教えてもらう事にした。


 聖域の中心部って安全なんだけど、その周りには強い魔物――――ゲームで言うところのモンスターがうじゃうじゃいるらしい。なのである程度戦えるようになるまで出られない。実戦経験をつむにはもってこいだけどね。


 つまり、ここに来るとしたらかなり強い人になる。聖域は妖精や精霊にとって安らぎの場所だから、それなりに出入りはあるらしいし、今から楽しみだ。






 ◆◇◆






 五歳になりました。


 魔術は面白いぐらいにどんどん吸収したよ。元々知っていたってのもあるんだけど、やっぱり妖精はチートだ。ゲームとは比べ物にならない。限界がないからね。自惚れじゃなく、そこらの宮廷魔術師より強いんじゃないかな。実戦経験もあるし。


 もちろん、五歳でもう実戦をしたわけじゃないよ。ゲームでの話。


 たかがゲームだって侮っちゃあいけない。“アルヴェディア”はよりリアルにするために、“現実度”っていうものがある。


 現実度は五段階。一は痛みはないし、見た目怪我もしない。どころか、服が汚れたりしわになったりもしないのだ。逆に、五は現実そのもの。怪我したら痛いし、装備品はボロボロになるし、殺したモンスターが消えるなんて事はない。討伐を証明する部位も自分でとるのだ。一のように落ちていたりしない。


 何より、“アルヴェディア”には盗賊などもいた。生々しい肉の感触は、日本人にとって衝撃だっただろう。当然五は危険だという事で、経営側が許可した者しか選択できないようになっていた。


 僕らは発売当日から参加している古参のプレイヤーで、妖精を使い続けた変わり者だった。あちらこちらでコネを作り、コツコツとレベル上げをした結果が魔術チート。古参だから珍しいアイテムもたくさん持っているし、滅多な事では死なない。現実度は四で、華々しく活躍した。


 転生する二年前だろうか。現実度を五にする許可が出て、僕らはいつものようにプレイした。弱いモンスターから慣らすように狩ったけど、吐き気や罪悪感は半端ない。ましてや、ノンプレイヤーとはいえ人間を殺した時は……。


 人間とは慣れる生き物で、半年もすれば平気になった。PKとかもあったけど、吐かなくなった。現実度を下げなかったのは意地なのかもしれない。


 勘違いしないで欲しいのは、決して殺しを何とも思わないわけではないという事。できるなら殺さないし、殺しても相手に対する礼節を忘れなかった。“アルヴェディア”をゲームではなく、もう一つの現実として扱った。


 それが、僕らなりの覚悟だった。




 体術に関しては、まだまだ基礎だけ。一通りの型は習ったけどね。こっちは全くの初心者だから。


 それに、僕らはまだ一日の三分の二を寝て過ごさなければならない。大人になっても他の種族よりたくさん寝るっていうし、そこは人間に似てほしかったな。


 でも、そうすると自我ができるのは大分遅いから、魔術や体術の訓練はできなかった。良い面と悪い面は背中合わせなんだね。




 魔術を教えてくれたのはレソト、体術はユーランだ。護身術程度ですけどね、なんて言ってたけど、どう見ても護身術の域を超えている。相手の力を利用するものらしいから、僕らでも十分使えるんだ。せっかくだからユーランと同じくらいにはなりたいと思う。男としてはね。


 それから、もうちょっとしたら他の精霊にも訓練をつけてもらおうって事になっている。それぞれの得意分野で。


 僕らはレソトとユーラン以外の精霊に会った事がないから、他にもこの森にいるって事に驚いた。なんでも、近づかないように言っていたらしい。小さい内は見境なく食べるかもしれないから。精霊って魔力の塊だし。


 まぁ、僕らの場合、魔力じゃないと生きていけないってわけじゃないから、魔力を吸収する本能みたいなのは弱いらしい。ひどい人は二割くらい減っただけでおなかがすくんだって。僕らはわからないけど、八割も減れば間違いなくおなかがすくだろうって話だ。


 あ、二人以外の精霊を見ないって言っても、実体を持たない低位精霊は別だ。彼らは小さな光の玉に見えてすごく綺麗だ。自我はあるけど、話せない。残念。



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