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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
ギルド編
30/32

閑話03 妖精は強い?弱い?(3)


 サディヘルとアクセルが選んだクエストとはグランドウルフの討伐だった。詳しくはこうだ。




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☆クエスト201【グランドウルフ討伐】S


 シメオンから南西にある森でグランドウルフの群れが目撃された。エサが少なく、飢えている様子である。町が襲われる前に討伐せよ!


募集対象:200レベルの冒険者二人以上のパーティーか、四人以上からなる平均レベルが180を上回るパーティー

達成条件:グランドウルフを20匹以上討伐

成功報酬:500000マルク、紫ポーション(人数分×2)


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 ちなみに、グランドウルフは単体ならAランクのモンスターで、普段群れる事はない。元々予定していた依頼ではないが、サディヘルとシェリエルは200レベル、ディラクは187レベル、アクセルは195レベルなので腕試しには丁度良いはずだ(200レベルでカンスト)。


 紫ポーションはHPMP全回復薬なので、かなり有り難いアイテムだ。尤も、妖精であるサディヘルとシェリエルはMP全回復薬である青ポーションで十分なのだが。この紫ポーション、店で買うと一つ45000マルクはする代物である。


「シメオンの南西の森……か」


 ディラクは依頼書を見ながら呟いた。


「あそこって名前なかったか?」


「なかったんじゃないか?あればそう書くだろう」


「手抜きだナ」


「そう言うな。まぁ、これぐらいなら妥当だろう。受けるか」


 ディラクは依頼書を掲示板からはがし、カウンターに持って行った。




「しかしグランドウルフですか……久しぶりですね」


 前に狩ったのは二ヶ月ほど前だろうか。他のクエストで山の中をウロウロしている時だった気がする。一匹では所詮Aランクなので、SSランク冒険者であるサディヘルとシェリエルの敵ではなかったが。


 モンスターでSSランクといえばギルディアドラゴン、ファメールドラゴン、ドクルドウルフ、ニーシア、レネティスだ。ニーシアは上半身が人間の女、下半身が海蛇で海に生息するモンスターである。レネティスは虹色の巨大な鳥。見る事すら稀なレアモンスターだが、噂ではどこかの無人島に住むらしい。


 冒険者のSSランクというのは、これらのモンスターを単独で倒せる者に与えられる。SSランクモンスターは換算すると200レベル相当なので、200レベルであればいいというわけではない。他にも細かい決まりがたくさんある。


 現在SSランク冒険者は五人だが、そのうちの二人がサディヘルとシェリエルなのであった。






 ◆◇◆






 シメオン南西の森は強くてもCランクほどのモンスターしか生息しない森である。クエストもあまり大きなものはなく、レベル上げやお金稼ぎに役立つ程度だった。“グランドウルフの討伐”はランダムで発生する結構レアなクエストだったりする。


「繁殖期のグランドウルフが子連れで新しい縄張りを探すために移動してきた……だったか?」


 攻略サイトに載っている裏設定を、ディラクがつぶやいた。


「あア。子育て中だから気性が荒くなっているらしいナ。前にどこかのサイトで見た事があル」


「一つの群れで何匹ぐらいでしたっけ?」


「大体十。多くても十五だナ」


 つまり、最低二つの群れを探さなければならない。


「……というか、何で複数の群れが同じ方向に来てるんだ?しかも名前もない小さい森に」


「そこはほら、ゲームですからつっこんではいけませんよ」


 まだVRMMORPGが出てから数年しか経っていないせいか、所々おかしい点がある。メインであるバーチャルリアリティーのキャラクター操作やグラフィックなどには不調が見当たらないため、それほど不満があるわけではないが。“アルヴェディア”はバーチャルリアリティーの技術が売りのゲームなのだ。




「……ン?」


 突然アクセルが止まった。辺りをうかがうように目を走らせ、鼻や耳にも集中しているようだ。


【サーチ】


 サディヘルは小声で呪文を唱え、目を閉じる。


「九匹だな」


「内子供が六匹。後はオスとメス二匹ってトコロカ」


 アクセルがにやりと笑う。狂気混じりのその笑みは、なるほど、戦闘狂というのも頷けた。


【我らに更なる力を与えたまえ――リフィート】


 シェリエルが素早く唱えたのを合図に、ディラクとアクセルが動いた。木が多く動きにくい森であるにも関わらず、サディヘルとシェリエルが平地を走るよりも早いスピードで目標に近付く。さりげなく風下からであるのはさすがと言えよう。


「前衛だけでつっこむなよな……」


 サディヘルは呆れた顔で言った。動いたのは二人共だが、暴走中のアクセルにディラクが付いて行っただけだろう。


「ヘル、早く追いませんと」


「あぁ」


 サディヘルとシェリエルは薄い羽を広げ、僅かな動きで飛翔した。心を通わせる妖精の行く手を植物が遮るはずもなく、むしろ率先して道を開けてくれるため森の中でも楽に飛ぶ事ができる。


「かかって来いやァ!腐れオオカミが!!」


 高笑いと共にそんな声が聞こえてきて、二人は無言で速度を速めたのであった。



◆グランドウルフ◆

 単体ならAランクのモンスターで、普段群れる事はない。繁殖期に子連れで新しい縄張りを探すために移動する。子育て中は気性が荒くなっている。一つの群れで大体十匹。多くても十五。


◆レベル◆

 200レベルが最高。200レベルになってもアイテムを使えばある程度まで能力値を上げる事ができる。ただし、アイテムを使える回数は決まっているので要注意。


◆SSランクモンスター◆

 ギルディアドラゴン、ファメールドラゴン、ドクルドウルフ、ニーシア、レネティスの五つ。ギルディアドラゴンは金色の小柄な西洋竜。ファメールドラゴンは黒の巨大な東洋竜。ドクルドウルフは緋色に青の目をしたオオカミ。ニーシアは上半身が人間の女、下半身が海蛇で海に生息するモンスター。レネティスは虹色の巨大な鳥。見る事すら稀なレアモンスターで、噂ではどこかの無人島に住むらしい。


◆SSランク冒険者◆

 SSランクのモンスターを単独で倒せる者に与えられる。SSランクモンスターはレベルに換算すると200相当なので、200レベルであればいいというわけではない(それだけで勝てるようなモンスターではない)。他にも細かい決まりがたくさんある。現実のアルヴェディアで記録に残っているSSランク冒険者は三人。ゲームでは主人公死亡時で七人だが、そのうちの二人がサディヘルとシェリエル。


◆サーチ◆

 無属性の下級魔術(ゲームでは初級)。半径2キロ以内にあるものを見る事ができる。現実のアルヴェディアでは魔力と術者の精神力次第で範囲を広げる事も可能。


◆リフィート◆

 無属性の上級魔術(ゲームでは中級)。パーティー全員の全能力値上昇。詠唱は『我らに更なる力を与えたまえ――リフィート』。上級魔術にしては詠唱が少ない魔術。

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