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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
ギルド編
29/32

閑話02 妖精は強い?弱い?(2)

先週はすみませんでした。

閑話はまだ続きます。


 アクセルは魔族の例に洩れず肌が黒く、背中に紺色の羽が生えていた。髪は青みがかった銀で、肩より少し長い程度だ。目の色も銀。


「お前がアクセルだな?」


 サディヘルが声をかけると、アクセルは頬杖をつきながら怪訝そうに見上げてきた。ディラクが二人の間に入り、紹介する。


「アクセル、サディヘルとシェリエルだ。ヘル、エル、こいつがアクセル」


「ふぅン?ディラクが言ってた妖精?」


 どうやら名前もきちんと話してあったようだ。サディヘルとシェリエルはディラクを見た。


「私達はそれなりに有名だと思っていたのですが……自意識過剰だったのでしょうか」


「いや、二人共間違いなく有名だ。こいつが疎いだけだから」


 ディラクが疲れたように言った。




 サディヘル、シェリエルの兄妹といえばゲーム内では知らない者はモグリだと言われるほどのプレイヤーである。サディヘルは黒い羽の黒魔術使い、シェリエルは白い羽の白魔術使いである事からそれぞれ悪魔、天使と呼ばれていて、遠くからでも目立つ金髪をプラスした“金の悪魔”“金の天使”が二つ名だ。アクセルとて聞いた事ぐらいあるはずだが……。


「まぁ何でもいい。お前は妖精が弱いと思っているようだな?」


「事実弱いだロ?」


「あのなぁアクセル。妖精が弱いなんて誰が決めたんだ?確かに使いにくいが、それがイコール弱い事にはならないだろう」


 使いにくいからこそ、使いこなせた時にすごい威力を発揮するのだとディラクは常々思っている。ただ、使いこなす前に挫折してしまうだけで。


 そもそも、アルヴェディアの魔術は色々と不親切だった。詠唱が長い上に一度でも間違えると発動しない。サディヘルやシェリエルほどにもなると全ての呪文を暗記しているが、初心者や暗記が苦手な人には難しい。それでも魔術師がいるのは、自分の魔術を作れるという魅力のためだろうか。


「ガチガチの装備でも並以下にしかならない妖精のドコが強いっていうんダ?魔術で身体強化を施してもやっと並だって言うじゃないカ」


 確かに、魔族なら術攻撃力、術防御力共に高い。物理攻撃力や防御力も妖精や翼族より高めだし、刀を使う以上強くしてあるだろう。敏捷にしたって低くはないはず。


「妖精は妖精の戦い方がある。そもそも、ソロならともかくパーティーで行動するのに物理防御力が重要なのか?どうせ後方支援だろう」


 サディヘルはキレる事なく落ち着いて話している。横で聞いているシェリエルは少しだけホッとした。戦闘禁止区域である町中でいきなり暴れられたら困るのだ。


「足手まといになるようならイラナイって事だヨ。妖精なんか流れ矢に三回当たったダケで死にそうじゃないカ」


「流れ矢に三回も当たるようなヘマをするわけがないだろうが」


「例えだヨ、例エ」


 馬鹿じゃないカ、というような目でサディヘルを見上げる。サディヘルのこめかみがわずかに動いた。


「大体、後衛に攻撃がいかないようにするのが壁役の仕事だろう?」


「万が一もあるだろうガ」


「やる前から万が一を考えてどうする。第一、オレもメインで使わないだけで白魔術は一通り使える。どちらかが負傷しても、死んでもそれほど問題にはならない」


 聞きながら、シェリエルはあれ、と思った。自分と同じく一歩下がった位置にいるディラクをつつく。


「ん?どうした?」


「アクセルさんって戦闘狂でしたよね?」


 万が一、なんて言葉を使っている辺り違和感がある。ディラクはシェリエルの言いたい事がわかったようで、あぁ、と言った。


「あいつは戦闘になると人が変わるんだ。普段は少々頭が固いだけでわりと常識人なんだが」


「なるほど」


 それにしても、とシェリエルは思う。


 サディヘルは面倒臭がりで始終だるそうにしている人だ。まぁ、ゲームは好きだし戦闘狂の気はあるが、大抵の事には消極的で眠そうなのが標準装備である。口数もそれほど多くない。しかし、アクセルと口論しているサディヘルは饒舌で目も開いている。猫背も直り、ハキハキしているので好青年にしか見えない。シェリエルはアクセルなら兄の良い友達になるのではないかな、と思った。




「わかっタ。そこまで言うなら試してやろうじゃないカ。このメンバーで依頼を受けル。足手まといじゃないと証明してみせナ」


「のぞむところだ。元々前衛なしでやってるんだから、そう簡単にやられるわけがない」


 クエストは好きだが他人と競う事のないサディヘルがやる気になっているのを見ると、アクセルとは案外気が合うのかもしれない。アクセルの方も強い敵やプレイヤーと戦うのは積極的だが、弱いと思っているプレイヤーとパーティーを組むなんて槍でも降りそうなくらい珍しい事だ。


 シェリエルとディラクは顔を見合わせ、お互いに良い傾向なのではないかと目だけで語り合った。


「ところでディラクさん、他の方はいいのですか?」


「あー……、まぁ、あいつがあんな調子だから無理だろうと思って断ったんだ」


「そうですか。では四人だけですね」


 あまりバランスが良いとは言えないが、サディヘルと二人よりはマシだろう。


「おい、シェリエル!」


「ディラクもダ!置いて行くゾ!」


 やはり似た者同士なのではないかと、苦笑する二人であった。



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