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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
ギルド編
28/32

閑話01 妖精は強い?弱い?(1)

ゲーム時代の話です。


 青年はだるそうに首をコキッと鳴らした。


 スラッとした長身で、癖のない鮮やかな金髪。赤い目は半分も開いていない。端正な顔立ちではあるのだが、いかんせん青年本人の態度がそれを半減していた。


 身にまとっているのは黒や紺を基調にしたローブ。切り込みが入っていたりと、動きやすいように工夫されたものだ。細かな刺繍といい、並大抵の代物ではない事は一目でわかった。


 青年の隣には小柄な少女が立っている。


 青年と同じく鮮やかな金髪で、腰まで真っ直ぐなストレート。目は赤に近い濃いめのオレンジだろうか。可憐な美少女といった感じで、すれ違う人々の目を集めている。声をかけられないのは隣にいる人物から放たれる威圧感のせいだろう。


 青年とおそろいの茶色を基調にしたローブを着ていて、会話がないにもかかわらずにこにことしている。気まずそうな様子は全くない。


「遅いですね」


「そうだな」


 青年が深々とため息をつく。少女が気遣わしげな目を向けたが、何も言わなかった。


 二人がいるのはトマシオという町だ。それほど大きくはない港町だが、いくつかの無人島に定期船が出ているためにプレイヤーが訪れる事は多い。すれ違う人々も半数以上がプレイヤーである。


 スッと指を空中へ向け、画面を開いた。右下に表示される時間を見て、再びため息をついた。頭一つ以上違う少女を見下ろし、口を開く。


「エル、あと十分待って来なかったら勝手に行くぞ」


「えっ、でも、前衛がいなければ大変なのでは?」


「大変なだけで不可能ではない」


 それだけ言うと、会話を続けるつもりがないように周囲に目を戻した。少女の方も気にした風もなく、通り過ぎる人々を眺める。


 五分ほど経っただろうか。町の入り口の方向から一人の青年が走って来た。赤髪に金の目、がっしりとした体型の竜人である。


「悪い。待っただろう?」


「あぁ。一時間ほどな」


 金髪の青年は不機嫌さを隠しもせずに返す。


「色々あってな……話は後だ。とりあえず、来てくれないか?」


 散々待たせておいてそれは何だ、と眉をひそめるが、少女が間に入った。


「ヘル、行きませんか?言い合いをしていても仕方ありませんし」


「……わかった」


 渋々頷き、赤髪の青年の後に続いた。






 ◆◇◆






 赤髪の青年――ディラクの説明はこうだった。


 元々ディラクと金髪の青年――サディヘルと少女――シェリエルを含めた数人でとあるクエストを受ける予定だったのだ。しかし、紹介する予定だった一人がダダをこねた。曰く、「妖精なんかとパーティを組めるか」との事。


「妖精は弱いってイメージがありますからねぇ」


 シェリエルがのんびりと言う。確かに妖精の物理攻撃力、物理防御力は無に等しい。装備品でもカバーしきれないほどだ。その上、レベルやスキルが上がりにくいという欠点もあった。最初は興味本位で選んだプレーヤーも、すぐに変えてしまったほど酷かった。


 その妖精を極めたのがサディヘルとシェリエルである。


「そいつの名前は?」


「アクセル。俺の幼馴染みだが、かなりの戦闘狂だ。強い奴にしか興味がなくて、弱い奴はクズだと思っている……と言ったらわかりやすか」


 ディラクは困ったように笑った。苦労しているに違いない。


「へぇ……戦闘のタイプは?」


「刀を使う。前衛だな。種族は魔族だが」

 

「魔族の前衛、ねぇ」


 魔族は黒魔術に特化した種族だ。弱いと言われている妖精を選んだサディヘル達が言える事ではないが、わざわざ前衛を選ぶとは変わった人物である。


「単に外見は魔族が良かった、武器は刀が良かったというだけの本人の趣味だ」


「まー何でもいいか。そいつは余程死にたいらしいからな」


「ヘル、ほどほどにしませんと」


「わかってる。魔術がいかに重要かわかっていない阿呆が目を覚ます程度にしておくさ」


 つまり、相手次第では殺すかもしれない、と。


「妖精は極めれば魔術チートだからな」


 何度かパーティーを組んだ事があるディラクが言った。極めるのが大変なのだが、極めさえすればこれほど良い種族はいない。サディヘルはそう思っている。


 確かに、妖精は物理攻撃力が低い。レベルが100の状態で伝説級の装備をしても竜人のレベル10と変わらないのだ。おまけに、物理防御力は紙。同じく伝説級装備で同レベルの竜人に一撃でやられるだろう。素早さもないし、HP自体も少ない。


 しかし、その代わりMPと術攻撃力、術防御力はダントツで多い。詠唱に多少時間がかかるのが弱点だが、同レベルの竜人くらいなら一撃で倒せる。他の種族でも二、三発打てば十分だ。それに、物理防御力や素早さくらいなら魔術で補える。さすがに物理攻撃力は、魔術で上げたところで武器を使えなければ意味がないのだが。


 実際に妖精が最弱だったとしても、サディヘルはそれで見下すようなクズが大嫌いだった。シェリエルは困ったような顔をしながらも、兄の性格は良く知っているので止める事はない。


 これで変わればいいんだがなぁ、と一番被害をこうむっているであろうディラクがつぶやいた。



ストックが切れました。

諸事情によりしばらくパソコンを触れません。

携帯で頑張ってはみますが、来週の更新はできるどうかかわかりませんので、あらかじめご了承ください。

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