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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
ギルド編
22/32

Lv.018『よくわからないけど邪魔だ。始末しよう』


「ねぇ、ワイバーンって食べれるのかな?」


 立夏が目をキラキラさせて言った。


「食べれない事はないかもしれないけど、あんまりおいしくなさそうだよ」


「進んで食べたくはないですよね」


 クロードが苦笑を浮かべる。


「皮ばっかりだもんね。あきらめた方がいいかなぁ」


 がっかりしながら言う立夏の視線の先にいるのはワイバーンの群れ。ざっと十匹だろうか。……あれ、ワイバーンの数え方って匹?羽?頭?


 ワイバーンは僕らの頭上を旋回するようにして飛んでいる。狙う気満々だ。


「転生してから初めて見たけど、おっきいなぁ」


 のんびりと言う立夏。その余裕は十六年間の努力からきているのだろう。この距離だと一撃で倒せるし。


「食べるかどうかは別として、倒したらお金にならないかな?」


「ワイバーンのどこが売れるんですか?」


「えっと……皮、とか?」


 なんとなく爪や羽が売れそうには思えない。肉も同様だし、牙はないだろうから――あぁ、ワイバーンの外見はプテラノドンと小型ドラゴンが混ざったような感じだ。一応ドラゴンの一種である。時々こちらに威嚇をするところを見ると、近くに巣があるのかもしれない。


 ……ん?


「確か、ワイバーンは山に生息するんだよね?」


「ええ、そのはずですが」


 草木のない山のてっぺんや、崖に巣を作るはずである。


「あれ?じゃあ何でここにいるの?」


 立夏が首を傾げた。


 近くに山はあるが、エサを探しに来たにしては遠すぎる。という事は、当然縄張りに入ってしまったわけでもないし。第一……。


「ワイバーンって群れを作らない魔物だよね?」


 そう、ワイバーンはドラゴンの一種である。ドラゴンに分類される種は、力に関係なく群れないのだ。子育てはするし、子煩悩な面はあるが。


 これはおかしい。何かあるに違いない。


 立夏やクロードもそう感じたらしく、考えるような目付きでワイバーンを見上げた。




 ワイバーン同士が争う様子は全くない。縄張り意識は強いが知能は高い魔物なので、協力せざるを得ない状況だという事だ。余程食料が足りないのだろうか。これから冬だから、冬眠はしないまでも食料を集めるぐらいはしそうである。


 まぁ、いいや。


 考えてもわからないものは考えるだけ無駄だ。それよりも、このまま何事もなかったかのように歩き出していいだろうか。


 お金にならない上に腹もふくれない以上、こちらにワイバーンを倒す意味などない。体力の無駄である。ワイバーンごときでへたばるほどやわな体はしていないが、十となると微妙だった。少し疲れるかもしれない。


 しかし、ワイバーンが素直に通してくれるだろうか。奴らがなぜここにいるのかは置いておくとして、僕らの上を旋回しているのだ。しかも威嚇のおまけ付き。すんなり通れるとは思えない。


「……よし、よくわからないけど邪魔だ。始末しよう」


 僕は一人で頷いた。うっかり油断して立夏が怪我でもしたら大変だ。すぐに治せるが、痛みはどうにもならない。


 手の届く範囲ではないので、魔術を使おうと集中する……が。


 近くに別の気配を感じて、僕は目を走らせた。


「オラァ!よくも逃げやがったな!このトカゲもどきが!」


 言葉と共に割り込んで来たのは背中に紺色の羽が生えた青年。肌は黒く、青みがかった銀髪だ。腕をむき出しにした動きやすそうな格好をしている。


 彼の後から、赤い髪の竜人も現れた。竜人の例に漏れずがっちりとした体つきで、背中には大きな両手剣を背負っている。年齢は二十代後半から三十代くらいだろうか。


「大丈夫か?子供を二人も連れて何をやっているんだ」


 竜人の男がクロードを責めるように言った。クロードは肩を苦笑してすくめる。確かに、状況から考えるとそう見えなくもない。


『雨水』


 僕は立夏をちらっと見た。立夏が頷く。僕らの気持ちは同じらしい。


【【炎の豪雨よ――ファイアレイン】】


 僕と立夏が同時に唱えると、通常の二倍以上の威力を持った魔術が発動する。


「うお!?っぶね!」


 ワイバーンしか見えていない様子だった魔族の青年が慌てて飛び退く。その身のこなしはしなやかで美しく只者ではない事がうかがえる。まぁ、近付くまで僕が気付かなかった時点でわかっていたけど。


 ワイバーンが燃えているのを確認すると、僕らは互いを見もせずに口を開いた。


【【レイン】】


 今度は普通の雨が降り注ぎ、火を鎮火した。後に残ったのは炭化したワイバーンのみ。


「お見事です」


 クロードは満面に笑みを浮かべて手を叩いたが、魔族と竜人の顔は引きつっている。


 それもそのはず、“ファイアレイン”と“レイン”は下級魔術――現実世界のアルヴェディアで言うところの中級魔術――だ。Cランクの魔物であるワイバーンに致命傷を与えられる魔術ではない。だが、目の前でワイバーンは消し炭になった。致命傷どころではない、圧倒的な火力で。




 さて、子供扱いされた事とクロードを責めた事にイラッとしてやったけど、どうしようか。


 そう思って二人を見ると、見覚えがある事に気がついて目を見開いた。立夏も気付いたようで、ぱちくりしている。


「アクセルとディラク?」


 立夏の口から漏れた名前に、彼らは怪訝そうに眉を寄せた。



◆ワイバーン◆

 Cランクの魔物。プテラノドンと小型ドラゴンを合わせたような外見。属性は個々により異なる。ドラゴンの一種で群れをなさず、山などに生息する。売っても金にはならない。


◆ファイアレイン◆

 火属性の中級魔術(ゲームでは下級)。炎の雨が降る。稀に相手を火傷させる。


◆レイン◆

 水属性の中級魔術(ゲームでは下級)。防御力を低下させる小規模な雨が降る。

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