Lv.014『何かパートナーみたいでいいよね』
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ありがとうございます!
僕らが転生した理由を知ったところで何かが変わるわけではないが、まぁ疑問が解けて良かったと思う。ずっともやもやしているのも嫌だしね。機会なんて絶対ないと思うけど、神竜と会えたら面白いのにな。
……なんて事を考えながら立夏が入れてくれたお茶を飲んでいたら、サモア達がぶらりと遊びに来た。前に普段何をやっているか気になって尋ねたところ、大抵は森をぶらぶらするか宿っているものの中で眠っているそうだ。さっきの騒ぎで来なかったところを見ると、今日は後者だったらしい。
『うおっ!?何か変なのがいるぞ』
ナウルがクロードを見て大げさにのけぞった。フィジーは小さく首を傾げ、サモアは不思議そうな顔をしただけである。サモアの場合、わかる人にしかわからない微妙な変化だったが。
『おい、誰かつっこめよ。無視か?無視なのか?』
いつも通り騒がしいのは放っておくとして。
「サモア、フィジー、古代竜のクロードだよ。クロード、こっちは僕と立夏に戦う術を教えてくれた精霊のサモアとフィジー」
「紫竜王と呼ばれています。事情があって雨水様と契約しました」
クロードがにこやかに言った。頭を下げたりしない辺り、文化の違いなのか古代竜として当然の事なのか。
『まぁ、そうですか。ウスイをよろしくお願いしますね』
のんびりと言ったのはフィジーだ。サモアは無言で目礼した。
『はぁ!?古代竜?何でこんなところにいるんだ?しかも契約したって、ウスイは本名を知らないのに……』
「こっちのうるさいのがナウルね。話は聞き流してていいから」
『オレの扱いひでぇな、オイ!』
「よろしくお願いしますね」
くすくす笑いながらあいさつをするクロードに、ナウルは一瞬キョトンとした。
『……ふぅん?古代竜ってのは皆偉そうなのかと思ってたが、そうでもないんだな。お前とは仲良くやれそうだ』
他の古代竜を知っているのだろうか。笑顔で差し出した手をクロードが握る。クロードって協調性があるよね。ドラゴンのイメージとは大分違うかも。敬語とか。
『それで?契約したんだっけか?コイツらは仮契約しかできないだろうに』
「えぇ。あの時は止むを得なかったんです。それでもほとんどの力を出せるのですから驚きですよ。事情があるのは聞きましたが、できればきちんと契約したいですね」
「それについては、僕も考えてたんだよ。やっぱり母親を探すしかないのかな。このままだと色々不便だろうしね。ねぇ、立夏」
リスクも結構ありそうだけど。厄介事のフラグがね……。
「そうだよね。私だって契約したいし。妖精が一番得意なのは召喚魔術と精霊魔術だから」
『あら?立夏は契約したいの?』
「うん。何かパートナーみたいでいいよね。心強いし」
いつでも呼び出せるから、それは大きいんだよね。契約って。召喚魔術や精霊魔術は一応魔術なんだけど、黒魔術や白魔術とは違う。実際に魔術を使うのは自分じゃないし。戦闘の時も、契約した幻獣や精霊がいてくれると大分楽だ。
『それなら私とする?前から考えてたのよ~』
「さっきも言ってたんだけどね、仮契約しかできないから申し訳ないなぁ~って」
『そんなの、別にいいじゃない。後で契約し直してくれるのでしょう?立夏って変な人につかまりそうだし~』
確かに、それは僕も思ってたんだよね。
『お前が言うか?というか、お前で役に立つのか?』
「ナウル、フィジーは見た目ぽややんだけど強いから」
『そうよ~。見かけで判断しちゃダメでしょ』
特に精霊や妖精はそうだ。体が成長しないから。強そうに見えない人が強い場合が多いらしい。まぁ、既にフィジーよりも立夏の方が強いと思うんだけど、油断する事もあるだろうからいてくれた方が安心できる。
『ま、確かにな。雨水、契約の事だが、オレ達もしないか?ここにいてもどうせ暇だしな』
ちらっとサモアを見ると、サモアも頷いた。どうやら心配してくれていたらしい。
「本人達が良いと言っているのですから、それでいいのではないですか?」
迷っている様子の立夏に、クロードが言った。断るのも失礼だろうしね。僕は立夏次第なんだけど。
「う~ん……わかった。お願いする。よろしくね、フィジー」
『えぇ、よろしく』
立夏とフィジー、僕とサモアとナウルが契約して、その日は一緒に夕食を食べた。
正直サモアかナウルに立夏と契約してもらった方がいいかな、とも思ったんだけど、それは何か違う気がしてやめておいた。ナウルに頼んで立夏の護衛をしてもらう手もあるわけだし。普段は騒がしいけど、そういう事に関してはすごいからね。
こうして、更に月日は流れる。
次回から新章に入ります。