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金の悪魔と金の天使  作者: 活字中毒
リーンテアの森編
1/32

Lv.000『神よ、二人を頼みます』


 うるさいな。


 周りが騒がしい。僕は目を開けようとしたが、開かなかった。手足も思うように動かない。まるで全身麻酔を打ったようだ。打った事ないから想像だけど。


「頑張ってね、あとちょっとだからね。かわいい私の子供達」


 優しい声がして、体が少し窮屈になる。


 私の子供達?という事は、転生したんだろうか。


 身動ぎすると、温かいキスが降ってきた。


雨水うすい。いい子だから泣かないでね」


 どうやら僕は雨水というらしい。よくわからないが、母親らしき女の人の言う通り大人しくする事にした。


立夏りっか。目を覚まさないでね」


 もう一人は立夏、か。おそらく妹だろう。なんとなくわかる。


「雨水、妹を、立夏を守ってあげて。あぁ、見えてきた」


 今度も兄妹か。ややこしくなくていい。


水月すいげつ様、こちらに」


 テノールの男の声がする。母親はカサカサと音を立て、僕らをまた強く抱いた。


「いたぞ!こっちだ!」


「さ、お早く」


 男が落ち着いて、安心させるように言う。母親が頷くのが気配でわかった。


「神よ、二人を頼みます」


 震える声でかすかに呟き、僕らは硬いものの上に置かれた。気のせいでなければ、水が流れるような音がする。


「願わくは、また会えますように。しっかりと、たくましく生きて頂戴ね」


 その声を最後に、僕の意識は途絶えた。






 ◆◇◆






『……って感じだった』


 僕は覚えている事を目覚めた妹――――立夏に教えた。


『そっか。優しそうなお母さんだね』


『うん』


 何があったのかはわからないが、会いに行けたらと思う。




 僕らは双子だ。そして、どういうわけか前世の記憶がある。


 前世でも双子だった僕らは、全く似ていない容姿だった。どちらも十人並みだが僕はつり目で立夏はたれ目、天然の立夏と面倒臭がりな僕。身長差は三十くらいあったんじゃないかな。男女だから当然なんだけど。


 僕らには前世の記憶があるが、人格などが同じというわけではないらしい。まだ生まれてすぐなのに人格があるのは変な感じがする。


 それから、今話しているのは前世で言うところの念話っぽい。立夏限定なのか、他の人ともできるのかは全くわからないけれど。


『でもここ、どこだろうね』


 何かに乗せられて川を下ったのは確かだ。流れは結構速くて、途中でひっくり返ったりしなかったのが奇跡だと思う。滝がなかったのは幸いだ。


『川の下流……としかわからないな。目も開かないし、音だけじゃわからない』


 どこかに引っかかって止まったようだ。目も開かないって事は本当に生まれてすぐなんだろう。そんな子供を捨てる――――いや、逃がすなんて、余程の事があるに違いない。




 その後は赤ん坊の体が僕らの思考に耐えられなかったのか、意識はプッツリ途切れてしまった。






 ◆◇◆






『おや、妖精の子供ではないか』


 しわがれた老人の声がして、僕は目が覚めた。


『上から流されて来たのか?……む、これは』


 老人が僕の服をつかんだ。服ではなく、ただの布かもしれないけど。


『雨水に立夏、か……訳ありのようじゃな』


 どうやら名前が書いてあったらしい。


『ユーラン、いるか』


『はい、レソト様。どうかしましたか』


『この赤子を育ててやる事はできるか?』


『見たところ妖精のようですし、できなくはないでしょうが……おや、人間の血も混ざっているようですね』


 妖精?まさかここは地球ではないのだろうか。では、なぜ言葉がわかるのだろう。


『ハーフですか……妖精と人間の特徴をどのように受け継いでいるかによりますね。ですがまぁ、何とかしてみせましょう』




 色々と疑問は尽きないが、また眠気が襲ってきた。


 面倒くさいな、この体!



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