最期ぐらい自分で選びたいと思って女子に噛まれたら、彼女ともども何故か助かりました
女子「こんな時にお弁当を教室で食べるというのも……すごいですよね」
高校の校舎内では、とんでもない大事件が起きていた。
午前の授業中、急に生徒数人の風貌がおかしくなった。あなたに分かりやすく言えば、ゾンビ化だ。
ゾンビになった生徒がまた別の生徒を噛んで、どんどんゾンビが増殖する。
叫び声とともに大パニックとなった。ゾンビ化していない生徒達は一斉に校舎の外を目指す。あなたも大勢の流れに従った。
どうにかグラウンドに出たが、そこでも体育の授業中にゾンビ化した生徒達がたくさんいる。次々と生徒がゾンビ化しているという惨状だった。
「せんせいどぅああああああああッ!」
奇声を発する女教師がヤバかった。人間とは思えない素早い動きで生徒に噛みつきまくる。生徒を一番ゾンビに変えていたのは、恐らく彼女だろう。
「わおおおおおおおおんッ!」
どこかからやって来た大型の野良犬もゾンビ化していて、女教師の次ぐらいに大暴れしていた。
他にも素早く動いて活発に仲間を増やすゾンビ生徒が何人もいて、あなたは校舎の中のほうが安全かと思い、引き返した
下駄箱にも廊下にも不気味なゾンビがいる。幸い、校舎内のゾンビの動きは遅い。あなたは必死で避けつつ逃げた。
階段にゾンビはいなかったが、あなたを見つけた男子ゾンビが下りてこようとして階段から落ちた。その横であなたが階段を駆け上がり、廊下を進んですぐの教室の中に入った。そこも複数のゾンビがいた。
教室内には、三人、ゾンビ化した女子生徒がいた。長い三つ編みを二本垂らした痩せ型の女子もいた。
あなたはどうせなら、かわいい女子に噛まれたかった。
三つ編みの女子ゾンビの顔は、他のゾンビ同様に青白く、醜く変貌している。けれども、どのゾンビを見たって大差はないだろう。
どこに行っても、逃げ場はない。それなら最期ぐらいは自分で選びたい。
彼女でいいとあなたは妥協し、近寄って止まった。
「ウアアアアッ!」
彼女に首筋を噛まれた。
あなたは体力を根こそぎ奪われた感覚になった。立っていられず、木の床の上で倒れてしまう。
意識が遠くなる……かと思えば、だいじょうぶだった。
三つ編みの女子ゾンビを床から見上げる。長めのスカートの下に、紺色のハーフパンツを着用しているのが分かった。
あなたはゾンビの両足をつかむ。……つかめた。力が入った。ゾンビがその場で倒れた。
あなたはせめて、自分がゾンビ化する前に、いい思いをしたかった。彼女のスカートの中にあるハーフパンツを強く抱き着く。とにかく強く密着する。興奮する。気持ち良いという感情を、しっかりと理解していられる。
「いやああああッ!」
女子の足に蹴られた。すごく痛かった。右が利き足なのだろうか。何度も蹴られて、思わずあなたは彼女から離れた。
「何するんですかぁ……っ!」
ゾンビは両手を後ろの床につけて、上半身を起こしていた。……いや、ゾンビだったはずなのに、彼女の顔は元々のそれに戻っている。かわいい涙目が、あなたに向けられている。
不思議なことに、彼女のゾンビ化が解けていたのだった。
あなたはすぐさま彼女に、君に噛まれて必死で動いていたら、急に君が元に戻ったと、説明した。
「そうだったんですか……。すみませんでした」
謝罪出来るということは、彼女は正気だということだろう。
あなたが教室内で彼女と会話をしていても、他のゾンビ二体は、あなたや彼女を襲うことがない。それどころか、反応さえしないのが不自然だった。
そもそも、彼女がどうして戻ったのかも分からない。
単に、自然に回復したのか。あなたを噛んだことで正常になったのか。それとも、あなたが抱き着いたからなのか。
真相は分からない。
とりあえず、あなたは三つ編み女子と教室の椅子に座って、情報交換を試みた。
彼女によると、急にゾンビ化した女子の近くにいて、運悪く噛まれてしまったらしい。その女子だったゾンビを、彼女は済まなそうに指差した。その後の記憶は、あなたが抱き着くまで、何もないとのことだった。
二年の男子であるあなたに対し、彼女は三年の女子だった。このことが分かった後も、彼女は敬語のまま、あなたに話していた。
この先どうなるんだろうという話が、最も多かった気がする。天気の話や、今日のゾンビ化前の話、適当な世間話、どうでもいい話をして、お互い気を落ち着かせた。
途中、二人でトイレに行った際も、ゾンビの興味を引くことはなかった。まるで、透明人間にでもなったかのようだった。ちなみに、トイレの水は問題なく使えた。
二人だけの世界が続く。
その後もあなたは彼女の教室に戻り、彼女と話をしたり、弁当を食べたりして過ごしていると、午後三時頃に大きな変化があった。
教室でうろついていた女子ゾンビ二人の顔色が戻り、正常になった。彼女達は今まで何をしていたのか、分かっていないふうに見えた。
あなたが教室を出て、廊下を見に行った。ゾンビだった生徒の姿は消えている。つまり、全員が普通の生徒になっていたのであった。
不意に校内放送が流れ始める。
本日、原因不明の集団感染現象が起きた、しかし事態は収束に向かい市内の安全も確保されたので、気をつけて下校して下さい、とのことだった。
良く分からないまま、ゾンビはいなくなった。この教室にも生徒が戻って来るので、あなたも自分の教室に戻ることにする。
「……後でもう一度、お会い出来ますか?」
彼女にそう頼まれて、校舎の玄関で落ち合うことにした。
「今日はありがとうございました」
彼女に再会した際、丁寧に感謝された。
自分は大したことをしていない、むしろ迷惑をかけたと、あなたは彼女に言葉を返す。
「そんなことはありません。……ずっと一緒にいてくれて、不安にならずに済みました」
そう言って、彼女は驚きの行動に出た。
制服のブレザーの正面ボタン、襟のリボンを外し、白いブラウスのボタンも一番上からどんどん外し、ブラウスを開いた。
白い下着をつけた胸部が、あなたに見せられた。
こんなところで恥ずかしくないのかとあなたは思ったものの、ゾンビ騒ぎが起きたことに比べれば、些細なことなのかもしれない。
「あの時は蹴ってしまい、すみませんでした。お詫びになるかは分かりませんが……」
彼女にあなたの右手が掴まれて、そのまま胸部に押しつけられた。
「男子はこういうことをされたら喜ぶと思ったのですが……。どうでしたか?」
右手を解放された後に、あなたは聞かれた。彼女は恥ずかしそうな顔をしていた。
嬉しいとは答えたけれども、あの時みたいに下がいいと、あなたは話した。
「分かりました」
そう言って彼女は胸部で隠し、制服を綺麗に着直す。
あなたが彼女の様子を見ながら待っていると、彼女がスカートを大きくたくし上げた。彼女の着用する紺色ハーフパンツが完全に晒される。
「……どうぞ」
彼女の申し出に、あなたは、じゃあ遠慮なくと言って、しゃがみつつハーフパンツを抱き締めた。……素晴らしいぐらいに幸せを感じた。
脱がしてもいいかと、ついあなたは抑えられずに聞いてしまった。
「そういうことは……いつか、もしものお話ですけれど、私達が結婚してからで、良いですか?」
真っ赤になった表情で、彼女は先延ばしを提案した。
結婚という言葉が出たが、彼女とは友達以上の親しい関係になれたと、あなたは疑わない。それでいいよと答えると、
「ありがとうございます」
彼女の微笑みは、ゾンビだった時とは比較にならないぐらい、愛らしかった。
あなたが三つ編み女子と急接近したこの日、人類は一時的なゾンビ化によっておよそ半日の時間が失われた。どうしてこうなったのかは、未だに謎である。
この影響が大きいか少ないかはともかくとして、人々はゾンビ化から脱することが出来た。
まだ人類は、より良き未来に向かって進んで行けるらしい。
より良き未来、であることを願って、あなたは彼女とともに高校生活を謳歌する。
(終わり)
ゾンビパニックものが書きたかったというか、かわいい女子ゾンビを選びたいというのを主題で書きたかったのでした。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。別作品『ピンクだらけ!』と『ブラック企業が開催するノーデスゲーム』もパニックものです。読んでいなかったら、ぜひどうぞ。




