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三題噺もどき5

自転車

作者: 狐彪
掲載日:2026/04/06

三題噺もどき―はっぴゃくごじゅうに。

 




 少し冷たい風が吹く。

 今日は生憎、青空は見えない。

 重たいとは言わずとも、白い雲が空を覆いつくしている。

「……」

 このまま、曇り程度で一日が終わってくれればいい。

 雨が降ると色々と面倒というか……自転車通学をしていると、合羽を着たりするのがとても面倒になるのだ。

「……」

 今日のこの登校が、高校生活の最後だとか、あしたから長期休暇だとか、そういう言うのだったら、別に制服が濡れてもいいのだけど。よくはないが、どうせクリーニングに出される。

「……」

 むしろ、クリーニングに出して帰ってきたばかりの。

 今日からまた、学校生活が始まると言う今日のこの状況で。

 制服を濡らすなんてことをしたら、なんと言われるか……予備があるからそうでもないか。

「……」

 そういえば、今月から自転車のルールが厳しくなったらしいが、この田舎までそれは届いているんだろうか。

 そもそも、学校からも何も言われていない。

 それに……。

「……」

 真隣の道路を走る車は、ものすごい勢いでか駆け抜けていく。

 こんなのが走っている真横を、自転車で漕いでいくなんて、自殺行為にもほどがある。

 怖いなんてものじゃないだろう……ちゃんと自転車用のレーンがある場所なんてこの町にはないし、少なくとも私は見たことがない。

「……」

 それに、色々情報が飛び交っていて、何が正解なのか正直よくわからない所がある。

 今日学校で何か言われるかもしれないが、その時はその時だろう。

 そのルールを守れるかどうかは、分からないが……どうしよう歩道を走ってはいけないなんて言われたら。

「……」

 制服で自転車に乗っていると、スカートが捲れたり、好き勝手暴れたりする。

 これがそもそも危険だと私は思うのだけど……何かに引っかかったらどうする。たいして整備されている道路でもない。何かに躓いて倒れたら?

 幅を取ればいいと言われているらしいけど、そんな真後ろを車が走っている状態が長時間続く方がストレスだ。

「……」

 まぁ、こんなことを思ったところで、何かができるわけでもない。

 それに、今日はようやくあの子に会えるかもしれない日だ。

 会いに行くから、『会える日』にするけれど。

「……」

 今日も部活はないだろうし、午前中で授業は終わる予定だ。

 今日することは、始業式とクラス替えくらい。……明日の入学式の準備は、野球部とサッカー部がするらしい。

 それが終われば、さっさとあの子と合流して、図書館にでも誘おう。

「……」

 春休み中に借りていたものを返そうと思って。

 自転車についている前カゴには、学校指定の鞄が入っている。

 背中にリュックサックを背負い、その中に本が数冊入っているので地味に重い。

 それに、学校の図書室で借りたものも入っているので、重いったらない。いや、それに関しては学校指定の鞄の方に入れているから、リュックの重さではないのだけど。

「……、」

 目の前の信号が赤に変わる。

 ブレーキをかけながら、徐々にスピードを落とし、少し離れた位置で止まる。

 反対側の歩道には、同じ制服を着た学生が集団で歩いていた。

「……」

 私は、いつものように、りんごのポーチを探す。

 あわよくば、あの子に会えないかと思って。

 そう簡単に会えることはないんだけど、約束しているわけでもないし。

「……」

 まぁ、そうだよね。

 いることないか。


「――~!」


「……!」

 とまぁ、諦めた所。

 学生の集団から少し離れた位置から、手が降られていた。

 同じように自転車を漕ぎながら、器用に手を振っている。危ないからやめたらいいのに。

「おはよ~!」

 丁度、そう言われたところで、信号が変わった。

 心なし、高揚した気分のままに、漕ぎだしてしまわないように、慎重にペダルを漕ぐ。

 いい、新学期の始まりだ。










 お題:ポーチ・図書館・スカート

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