5・富士の泉
この日、ぽーはプールで溺れていた男の子を助けるために、たくさん触ってしまいました。
そのため、ぽーの体はとても小さくなってしまいました。
「ただいま……」
「あらっ! どうしたの? ぽー!」
ママは、とても小さくなったぽーを見て、ビックリしました。
「いっぱい、さわっちゃった……」
ぽーは、今にも泣きそうでした。
「ここまで小さくなってしまうと、ワポの実ではどうにもならないわね」
「ママ、どうしよう?」
「うーん……、長老にきいてみるしかないわ」
ママは、ぽーを背中にのせて、長老の家へと向かいました。
長老は大きな雲の上に住む、おばけたちの中で一番えらいおじいさんです。
ママとぽーが長老の家の前に着くと、そこには『門』という大きな入り口がありました。
「門番さん、長老さんはいますか?」
「はい、いらっしゃいます。どうぞ」
お兄さんが大きな木の扉を押しました。
ギッ ギー
扉がゆっくりと開いていきました。
庭では、長くてまっ白な口ひげのおじいさんが椅子に座って本を読んでいました。
「おお、ひさしぶりじゃな。今日はどうしたんだい?」
「それが……うちのぽーが……」
ぽーがひょこっと顔を出すと、長老はビックリしました。
「あらら、ずいぶんと小さくなってしまったね」
「長老さん、なにか良い方法はありますか?」
長老は口ひげをさわりながら、しばらく考えてから言いました。
「そうじゃな……、ここまで小さくなってしまうと、富士の泉の水を飲むしかないな」
「やっぱり、それしかないですね。では長老さん、泉への道を開けてくれますか」
「よし、分かった。では、ちょっと待っておれ」
長老は門番のお兄さんに言いました。
「富士の泉にいる門番に、道を開けるように伝えてくれるかい」
「はい、分かりました」
門番のお兄さんは、木の箱の上にいる白いハトに手紙を渡しました。
白いハトは、ふわりと空へ飛んでいきました。
「ありがとうございます、長老さん」
「じゃあ、気をつけてな」
こうして、ママとぽーは富士山の上の雲へと飛んでいきました。
「ねえ、ママ。もんばんさんって、なにをする人なの?」
「門番はね、門や扉の前にいて、
この人は中に入ってもだいじょうぶかな? って、しっかり見てくれている人よ」
「へえー、かっこいいね! ボク、もんばんになりたい!」
「そうね。じゃあ、もっとがんばらないとね」
「うん、がんばる!」
大きな湖の上を飛んでいると、ぽーがききました。
「ところで、ふじのいずみって、なに?」
「富士山という大きな山の、一番高い場所の雲にある泉よ。
そこに、富士山の水が出ているの。それを飲むと、ぽーは元に戻れるわ」
「そっか、よかったぁ」
しばらくすると、大きな富士山が見えてきました。
「わあ、大きな山!」
白い階段の前には、ガッシリとした大きな門番のお兄さんが立っていました。
「長老さんから聞いてますか?」
「はい、すでに手紙が来ています。どうぞ」
門番はにっこり笑って、ぽーに手をふってくれました。
「ありがとう、もんばんのおにいさん!」
門の中に入ったところで、ママがぽーに言いました。
「いい? ぽー。泉の水を飲むのは、今回だけよ」
「うん、わかった。……でも、どうして?」
「ここの水を飲むと、『歳』をとってしまうの。
歳をとると、ぽーのだいじな『子どもの心』がなくなってしまうのよ。
私たちおばけは、泉の水を飲まなければ歳をとらない。
だから、子どもの心はとても大事なの」
「わかったよ、ママ」
白い雲の階段を上っていくと、富士の泉につきました。
「うわぁ……きれい」
まっ青な泉。
赤や青や金色のきれいな魚が、気持ちよさそうに泳いでいます。
ママは、長老から借りた木のコップで泉の水をすくい、ぽーに飲ませました。
ごくっ、ごくっ
「おいしい! もういっぱい!」
「だめと言ったでしょ」
「そっか。えへへ」
すると、ぽーの体が泉の水のように青く光りだして……元の大きさに戻りました。
「やったぁ、もどったもどった!」
ぽーは、ぴょんぴょん飛びはねてよろこんでいます。
ママも、ホッとしました。
「さて、雲のレストランで、おいしいものでも食べて帰ろっか、ぽー」
「やったぁ♪ 積乱雲のソフトクリームたべよっと♪」




